キャリアップ助成金という名前を聞いたことはありますか?
その名の通り、既にあなたの職場にいる「非正規」雇用者のキャリアアップを支援する助成金です。
今回の記事では、人気のキャリアアップ助成金がどのような内容なのかをわかりやすく解説します!
1.パート労働者などの正社員化や処遇改善を目的とした助成金
キャリアアップ助成金は厚生労働省が長年募集しているもので、従業員のキャリアアップや処遇改善を目的としています。平成30年の4月からが内容が一部リニューアルされていて、企業だけでなく、個人事業主も対象の助成金です。
2.ここで確認!有期・無期・正規の違いとは?
この助成金のポイントとなるのは、数ある労働者の雇用形態の違いです。今職場にいる従業員の雇用形態を充分に把握していますか?
【有期・無期・正規の違いのポイント】
・有期雇用労働者→派遣労働者、有期アルバイト・パートを指します。
労働契約法により、現在の法律では有期労働契約が更新され通算5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより無期雇用契約に転換できます。
有期の場合は、嘱託社員・契約社員・出向者もこれに含みます。
・有期雇用労働者→期間限定のアルバイト、パートがこれに当たります。契約社員は多くの場合、有期雇用が多いようです。
・有期雇用労働者→事業所から正規雇用されフルタイムで働く者を指します。勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員も含みます。 出向や嘱託社員の場合は法で厳密に整備されていないため、その規定についてはグレーゾーンであいまいな部分もあります。
3.キャリアップ助成金には、現在以下7つのコースが設けられています。
①.正社員化コース
有期契約労働者(派遣労働者など)の契約を無期契約に変更し再雇用、または正社員として直接雇用する場合に以下の助成金が受け取れます。
変更パターン |
中小企業のもらえる助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
有期労働者→正規労働者に変更 |
一人当たり57万円 ※生産性向上で72万円 |
一人当たり42万7,500円 ※生産性向上で54万円 |
有期労働者→無期労働者に変更 |
一人当たり28万5,000円 ※生産性向上で36万円 |
一人当たり21万3,750円 ※生産性向上で27万円 |
無期労働者→正規労働者に変更 |
一人当たり28万5,000円 ※生産性向上で36万円 |
一人当たり21万3,750円 ※生産性向上で27万円 |
生産性向上というのは助成金でよくあるオプション条件のようなものです。例えば有期労働者を1名正規労働者に変更した中小企業の場合は57万円がもらえますが、生産性向上の条件を満たした事業所に関してはプラスで72万円もらえるので
57万円+72万円=129万円
と計算すると、129万円をもらえる計算になります。
②賃金規定等改定コース
有期契約労働者党の賃金規定を2%以上増額改定した場合に助成金を受け取れますが、労働者数の多い会社や工場では一気に全員の賃金アップをするのはなかなか難しいかもしれません。
そのため、賃金改定については以下のように「すべての」労働者の場合と「一部の」労働者の賃金を改定した場合の2パターンの助成金が用意されています。
【すべての労働者の賃金改定の場合】
対象労働者数 |
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
1~3人 |
一人当たり95,000円 ※生産性向上で12万円 |
一人当たり71,250円 ※生産性向上で9万円 |
4~6人 |
一人当たり19万円 ※生産性向上で24万円 |
一人当たり14万2,500円 ※生産性向上で18万円 |
7~10人 |
一人当たり28万5千円 ※生産性向上で36万円 |
一人当たり19万円 ※生産性向上で24万円 |
11~100人 |
一人当たり28,500円 ※生産性向上で36,000万円 |
一人当たり19,000円 ※生産性向上で24,000万円 |
【一部の労働者の賃金改定の場合】
対象労働者数 |
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
1~3人 |
一人当たり47,500円 ※生産性向上で6万円 |
一人当たり33,250円 ※生産性向上で42,000円 |
4~6人 |
一人当たり9万5千円 ※生産性向上で12万円 |
一人当たり7万1,250円 ※生産性向上で9万円 |
7~10人 |
一人当たり14万2,500千円 ※生産性向上で18万円 |
一人当たり95,000円 ※生産性向上で12万円 |
11~100人 |
一人当たり14250円 ※生産性向上で18,000万円 |
一人当たり9,500円 ※生産性向上で12,000円 |
やはり、すべての労働者の賃金を改定した方が多くの助成金をもらえます。すべての労働者賃金改定をした場合は一部と比べて約2倍の助成金を受け取れます。
③健康診断制度コース
有期契約労働者を対象に「法定外の健康診断」を新たに導入し、4名以上の実施をした場合に1事業所あたり1回限り!以下の助成金が受け取れます。
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
一事業所あたり38万円 ※生産性向上で48万円 |
一人当たり28万5,000円 ※生産性向上で36万円 |
一人当たり9万5千円 ※生産性向上で12万円 |
一人当たり7万1,250円 ※生産性向上で9万円 |
一人当たり14万2,500千円 ※生産性向上で18万円 |
一人当たり95,000円 ※生産性向上で12万円 |
一人当たり14250円 ※生産性向上で18,000万円 |
一人当たり9,500円 ※生産性向上で12,000円 |
ここで疑問が湧きませんか?「法定外の健康診断って??」法定外の健康診断とは、以下の健康診断のことです。
- 正社員の方より短い勤務時間で働いているアルバイト等に「定期健康診断等」を実施する
- 正社員ではないアルバイト等に人間ドックや生活習慣病予防検診(癌検診や歯周病等の健診 等)を実施する
逆に法定内の健康診断とは労働安全衛生法による健康診断で、「常時使用する」労働者へ年1回、事業主が医師による健康診断を受けさせなければいけません。
④賃金規定等共通化コース
有期契約労働者の賃金を正規雇用労働者の賃金と同じ職務の場合は同等にするという賃金規定を作成し、実際に実行した場合に以下の助成金が受け取れます。
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
一事業所あたり 一人目57万円 ※生産性向上で72万円 |
一人当たり42万7,500円 ※生産性向上で54万円 |
2人目以降(上限20名) 一人当たり2万円追加 ※生産性向上で24,000円 |
2人目以降は(上限20名) 一人当たり15,000円追加 ※生産性向上で18,000円 |
こちらも、1事業所あたり1回限りまでとなります。
⑤諸手当制度共通化コース
上記の「賃金規定等共通化コース」の福利厚生版と言えるのが、この諸手当制度共通化コースです。賃金ではなく、諸手当である「通勤手当」や「引っ越し手当」など正社員の持つ手当と共通の規定を新たに作成し、実行した事業主が以下の助成金をもらえます。
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
一事業所あたり38万円 ※生産性向上で48万円 |
一人当たり28万5,000円 ※生産性向上で36万円 |
【対象労働者2人目以降(上限20名)】 対象労働者一人当たり1万5,000円追加 ※生産性向上で18,000円 【対象手当2つ目以降(上限10個まで】 対象労働者一人当たり16万円追加 ※生産性向上で19万2千円 |
【対象労働者2人目以降(上限20名)】 対象労働者一人当たり1万2,000円追加 ※生産性向上で14,000円 【対象手当2つ目以降(上限10個まで】 対象労働者一人当たり12万円追加 ※生産性向上で14万4千円 |
⑥選択的適用拡大導入時処遇改善コース
こちらのコース名だと内容がイメージしづらいのですが、要は「労使合意の上で」「有期雇用労働者に社会保険を適用し」「基本給を増額する」という内容のコースです。
フリーターさんなどでは、社会保険を引かれてしまったら手取りが減ってしまうため、社保加入を喜ばない場合もあります。でも、それでは老後に困ってしまうかもしれません。
【基本給の増額割合に応じて】
増額割合 |
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
3%以上5%未満 |
一人当たり19,000円 ※生産性向上で24,000円 |
一人当たり14,250円 ※生産性向上で18,000円 |
5%以上7%未満 |
一人当たり38,000円 ※生産性向上で48,000円 |
一人当たり28,500円 ※生産性向上で36,000円 |
7%以上10%未満 |
一人当たり47,500円 ※生産性向上で6万円 |
一人当たり33,250円 ※生産性向上で42,000万円 |
10%以上14%未満 |
一人当たり76,000円 ※生産性向上で96,000万円 |
一人当たり57,000円 ※生産性向上で72,000円 |
14%以上 |
一人当たり95,000円 ※生産性向上で12万円 |
一人当たり71,250円 ※生産性向上で9万円 |
ただ社保に入るのではなく、基本給のアップとセットであればきっと労働者も納得するのではないでしょうか。
⑦短時間労働者労働者時間延長コース
パート主婦やフリーターなど3~6時間程度の短時間労働者でお店を回している中小企業は多いのではないでしょうか。彼らの労働時間を延長し、新規で社会保険に適用する場合、以下の助成金が受け取れます。
中小企業の助成金額 |
中小企業以外の助成金額 |
一人あたり19万円 ※生産性向上で24万円 |
一人当たり14万2,500円 ※生産性向上で18万円 |
2.厚生労働省のパンフレットも参考に
以上、非常にざっくりとした各コースの概要をご紹介しました。しかし、実際に助成金をもらう場合は以下のパンフレットも熟読する必要があります。
※上記URLをクリックすると、厚生労働省作成のパンフレットへリンクします
3.受給するにはまず条件を満たそう
キャリアアップ助成金を受け取るためには、まずあなたが以下の条件に当てはまるかをチェックしてください。
・雇用保険適用事業所の事業主であること
これは、多くの事業主がクリアしています。
・ 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
キャリアアップガイドラインを厚生労働省が規定していますが、その内容にある「キャリアアップ管理者」のことを指します。職場でのキャリアアップに対して一定の知識や経験を持ち認められたものをキャリアアップ管理者として事業主は配置することができます。
・ 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であること
他の助成金でもそうですが、キャリアアップ助成金をもらうためには「キャリアアップ計画」という計画書(エクセルなどで作成)を事業所管轄の労働局長へ提出しなければいけません。
キャリアアップ計画が認定されると、その期間中に実際に各コースの内容に沿った計画を実施します。
まとめ
キャリアアップ助成金は事業主に人気の助成金です。飲食店でも小売業でもあらゆる事業所をカバーする助成金ですので、これをお読みのあなたの職場でも対象となるかもしれません。
助成金の仕組みは、細かい規定などを理解し書類も準備しなければいけないので簡単ではありません。しかし、融資と違い返済不要のお金がもらえるチャンスです。助成金を受け取れば、事業をする上で大きなアドバンテージ(前進)となるでしょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
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