補助金や助成金は安易に使うと資金繰りの悪化に繋がる?!
補助金や助成金は要件を満たしているとお金を支給してもらえる制度です。 中小企業を対象としている制度で、資金調達の方法の一つとして利用を検討される方も多いと思います。 補助金や助成金の申請を検討されている方、ちょっと待ってください!! 補助金・助成金の特徴をしっかりと理解し、先のことを考えて申請をしないと資金調達の つもりが、かえって資金繰りを悪化させてしまう可能性があります。
1.補助金と助成金の特徴
(1)補助金について
補助金は、国や自治体が主体となって行っている制度で、産業の育成・施策遂行や目的達成のために交付されます。補助金の多くは公募制となっており、申請したら必ずもらえるというわけではありません。
(2)助成金について
助成金は厚生労働省が実施している雇用に関するものが一般的です。(自治体で行っている助成金もあります。)助成金の多くは、補助金と異なり、基準を満たしていれば交付を受ける可能性が極めて高いです。
また、申請期間も長期間に及びものが多く、随時募集しているため申請しやすいという特徴があります。
(3)補助金と助成金の共通する特徴
補助金と助成金に共通する特徴は2つです。
特徴1:後払い
補助金も助成金も、申請を行い、申請内容を実施した後、支給申請を行い、補助金・助成金が交付されるという流れになります。そのため、先に、費用を立て替え、後からお金を支給されることになります。
特徴2:返済不要
補助金や助成金は原則として、返済は不要です。ただし、補助金の中には、補助金受給後の一定期間に得た利益が多い場合には、返済が必要になるものもあります。
助成金・補助金の違いについての詳細はこちら「 補助金と助成金は、行政機関の違いだった!2つの意味の違いについて 」 |
2.補助金・助成金を申請する前に融資が必要な理由
補助金と助成金に共通する特徴で述べたように、補助金と助成金はどちらも「後払い」です。つまり、補助金や助成金を受けるためには、先に、申請内容に関するものに対して支払いを行う必要があります。
補助金、助成金が入金されるまでの期間は、申請する補助金・助成金によって異なりますが、半年から1年程かかることが一般的です。つまり、先にお金を使って、入ってくるのは半年から1年先になってしまうということです。
例えば、従業員の教育や雇用形態の変更(有期から無期、正社員化)などを目的とした助成金の申請を行う場合、それに伴い、人件費の増加等が考えられます。
わかりやすく、例を使って考えてみたいと思います。
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、以下のような流れで支給申請を行います。
無期契約のパートさんを正社員に変換すると・・・・
正社員転換に伴い、まず給与が50,000円増えました。今回の例はもともとがパートさんなので、平均月収から50,000円の増です。さらに、給与が増加することで社会保険料等も増えました。結果的に、月の人件費は57,000円増えることになります。
懸念点1:支給申請できるまで6か月以上
まず、正社員転換を行ったら、6か月以上の給与支給が条件となりますので、支給申請を行うまでの半年間は確実に人件費が増加します。つまり、57,000円×6か月=342,000円の費用が発生することになります。
もし、この半年間の間に転換対象の従業員が退職してしまったら・・・・支給申請はできません。
懸念点2:助成金を受給しても増えた人件費は変わらない!
6か月経過し、支給申請を行い、それから半年~1年後に助成金が支給されます。キャリアアップ助成金の正社員化コースの助成金額は1人あたり57万円です。
仮に、支給までに1年かかったとすれば、転換から1年半後に57万円が支給されますが、転換に伴い増えた人件費総額は102万6,000円です。そして、転換後の人件費は、助成金が下りたから元に戻るわけではありません。ずっと支払っていかなければならないのです。
助成金の多くは、職場環境の改善や雇用の安定を目的としており、労働者が働きやすいように企業が努力することを前提としています。
整備が整い、円滑に進んでいくことが出来れば従業員のモチベーション向上などに繋がります。長く従業員に働いてもらうためにも有期契約から無期契約や無期契約から正社員などのキャリアップを提案することは決して悪いことではありません。
もともと、そういった計画を予定していた上での助成金の活用は効果が高いと言えます。
しかし、経費の増加を視野に入れた資金計画に基づいた補助金・助成金の活用でない場合、助成金が支給されるまでの間は、会社に体力がないと資金繰りが厳しくなる可能性があるということです。
3.資金繰りの悪化を防ぐために申請前に「融資」を受けるべき!
上記でご紹介したように、補助金・助成金は、先にお金を使う必要があり、支給を受けるまでに半年から1年待つ必要があります。
返済する必要がないからという理由だけで、安易に補助金・助成金をあてにしてしまうと、補助金・助成金が交付されるまでに資金繰りが悪化してしまい、最悪のケース、補助金・助成金の受給前に会社が倒産してしまうという事も起こり得るのです。
資金繰りの悪化を防ぐためには以下の順で資金調達を行うことがベストです。
まずは、融資を受け、余剰資金を確保した上で、補助金や助成金の申請を行うことが資金繰り悪化のリスクを防ぐことが出来ます。
つまり資金繰りに余裕のある状態で助成金・補助金の申請を行い、支給された助成金や補助金は会社の余剰資金として蓄えておく、支給金額を使ってあらたな助成金や補助金の申請を行うといった活用が理想的と言えるのです。
創業時でも受けやすい日本政策金融公庫の融資
創業して間もない、これから創業されるという方は、日本政策金融公庫からの融資をおすすめします。また、融資は創業時が受けやすいという特徴があります。
補助金・助成金の申請を検討されている方は、まずは、日本政策金融公庫での融資を検討されることをお勧めします。

平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
inQup » https://inqup.com/