最近の傾向として、日本政府が民間に起業を盛んに勧め、一般の人々も起業への関心が高くなっています。
起業は会社勤めに比べると「自由」や「やりがい」といった長所もありますが、一方では会社員では必要ない初期費用がかかり、リスクがあるという短所もあります。
起業は良いことばかりではないのに、なぜ最近日本では起業に関心のある人が増加しているのでしょうか?
今回の記事では、「2019年版中小企業白書・小規模企業白書」などの政府公式データを参照しながら、いまの日本でなぜ起業が増加しているのかを考えていきたいと思います。
日本政府はいま盛んに「起業」を勧めている
インターネットで起業について調べていると、起業に関する記事が非常に多いことに気づきませんか?具体的な業界のノウハウだけでなく、資金調達の攻略法や会社設立まで、ありとあらゆる起業に関する情報がネット上には溢れています。
人々の起業への関心が今どれぐらいあるのかを知るために、Googleの提供する「キーワードプランナー」というツールで調べてみました。キーワードプランナーの使い方は簡単で、調べたいワードを入力して「開始する」ボタンを押すだけで、「過去の指標」というタブにキーワードごとに検索ボリュームが表示されます。
※上記URLをクリックすると、Googleキーワードプランナーのサイトへリンクします
試しに、キーワードプランナーで「起業」と入力したところ、検索ボリュームは月間33,100回でした。
次に、別の言葉(消費税10パーセント)で検索すると18,100回でした。なんと、起業の方が消費税10%を検索する人より多いという計算になります。
次に、中小企業庁の公式ページ内で見つけた興味深いグラフ(厚生労働省の「雇用保険起業年報が出展」をご覧いただきましょう。日本と世界の起業率についてのグラフです。
日本はアメリカ(9.3%)やイギリス(14.3%)などの先進国の開業率と比べると、5.2%とかなり低い水準であることがわかります。総合人材サービス会社ランスタッドホールディングの実施した労働者意識調査によれば、「より多くの機会を得るために起業したい」という質問で「はい」と答えたのは世界平均で63.8%でしたが、日本人の場合はわずか28.3%という結果でした。
起業意識の低さが開業率の低さにつながり、開業率の低さが日本経済の低迷につながっていると考えた日本政府では、政府広報オンラインで「起業・創業を支援し日本経済を活性化!」という特設サイトを開設しました。
※上記URLをクリックすると、政府広報オンラインへリンクします
起業・創業特設サイトでは、日本政府が実施している起業支援がまとめられています。現在、一般の人々が月間で3万回以上も「起業」を検索する理由は、日本政府の盛んな起業支援も一つの理由であると考えられるでしょう。
では、実際に人々が起業する理由はどこにあるのでしょうか?引き続き、中小企業白書などの政府系データを元にみていきましょう。
(理由1)事業者の高齢化により、事業承継をしているから
純粋な起業ではないですが、今の日本では事業承継(事業の引継ぎ)をする機会が増えています。なぜかと言うと、日本社会の高齢化が加速しているからです。
【引用:平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)第一章 高齢化の状況】
上記の表は、内閣府の発表した高齢化白書の平成30年度版からの抜粋です。表の下の構成比をみると、65歳以上人口は全体の27.7%と約3割を占め、日本全体の人口3.5人に一人は65歳以上、という計算になります。
高齢者の中には、事業を行う事業主がたくさんいます。それらの事業を高齢化によりすべて手放してしまえば、日本経済の大きな損失となります。そこで、最近では若手の後継者や親族内の後継者が事業承継(事業の引継ぎ)をしています。高齢者に代わってビジネス上のバトンタッチが増えている。これが起業の増加の一つの理由と考えられます。
【引用:平成30年版中小企業白書(パンフレット版)起業を目指すきっかけ】
平成30年度版の中小企業白書によると、起業家になるまでには上記の画像のように「起業希望者」→「起業準備者」→そして「起業家」となるフェーズ(段階)があります。事業承継であれば、起業希望者と起業準備者という段階を飛ばしていきなり経営者になれるという利点があります。
③事業承継には時間もお金もかかる
既に事業として成立しているビジネスを引き継ぐだけなので、事業承継にお手軽なイメージを持つ人も少なくありません。しかし、実際に事業承継を完了するには時間もお金もかかります。以下の表をご覧ください。
【専門家に事業承継を依頼した場合の料金相場】
会社組織再編計画の作成 |
30~250万円 |
自社株の評価 |
10~30万円 |
経営計画の策定 |
20~30万円 |
事業承継では①現在の会社組織を把握し②問題点を洗い出し③相続問題④法律上の事務処理といった4点を行う現・事業主と新・事業主とで行う必要があります。株式の譲渡などの法律上の事務も発生するため、事業承継を弁護士などの専門家に依頼する方もいらっしゃいます。
日本政府では事業承継を円滑に進めるために「事業承継補助金」や「事業承継融資」などの施策を実施中です。(2019年9月現在)当サイトの運営会社:株式会社SoLabo(ソラボ)でもご相談に応じています。でお気軽にお問合せください。
補助金額200万円!H29年度も募集予定の創業・事業承継補助金はどんな補助金?
ちなみに、以下のグラフは年金以外の収入(事業収入や資産)がある人がどれぐらいいるのか、というグラフです。グラフのピンク色の54.2%は公的年金・恩給のみで生活している世帯です。しかし、それ以外の45%ほどは所得の2割~8割の事業収入や資産をお持ちの世帯だということが分かります。
【引用:平成30年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)第2節 高齢期の暮らしの動向】
今の高齢者は、事業収入や資産がある方がたくさんいらっしゃいます。しかし、我々現役世代が高齢者となる段階では、日本経済・金融・景気が違いすぎて同じような収入になるとは言えないでしょう。
起業を志す方の中には、起業家らしく、会社員勤めでは実現できない年収を手にしたいということで起業を志す方も非常に多くいらっしゃいます。
(理由2)日本企業の変化→起業への憧れという図式の起業ブーム
①30年前の日本より、いま会社での労働環境は悪化している
30年前の日本企業と今の日本企業の体質は異なっています。いわゆる「ブラック企業」が増え、過労死やパワハラを苦とした自殺者も増え、労働生産率も先進国の中で低いいまの日本。ブラック企業では、以下のような問題点を抱えています。
【ブラック企業における労働者側の問題点】
- 長時間労働
- 労働条件の悪化
- 若者の使い捨て
- 賃金未払い
- 職場のパワーハラスメント
- 外国人技能実習生への適切な保護の欠如 など
こうした悪環境に嫌気がさした人々の中に、インターネット環境の普及率の増加もあいまって、起業に対するあこがれや興味が芽生えています。
②ネットの普及で起業の情報が仕入れやすくなった
以前であれば、何か情報を仕入れるためには図書館に行き、本屋で書籍を購入する、というお金と手間がかかっていました。しかし、今はネットで手軽にあらゆる情報を仕入れられる時代です。起業も設備資金を投入する本格的なものだけではなく、ネットとパソコンで始められる気軽な事業(ブログ、アフェリエイト、Webサービス、コンサル業など)が増えました。
【引用:平成30年版中小企業白書(パンフレット版)起業を目指すきっかけ】
起業に関心がある人達の中で起業を希望する人(起業希望者)と準備している人(起業準備者)に「何が起業のきっかけとなったか?」という質問をアンケートでしたところ、第一位は「(起業する業種で)正社員としての勤務経験があったこと」が第一位、第二位は「(起業する業種について)本・テレビ・インターネットなどから情報収集したこと」でした。
最近では、本・テレビに次いでネットでの情報収集も起業に大いに関係があるようです。
③ネットビジネスで必要な開業費用とは
ネットを使ったビジネスを開業する場合、例えば自宅でパソコンとインターネット環境さえ整っていればすぐに起業は可能です。但し、気軽に起業できるビジネスほど競合が多いものです。
ブログ、アフェリエイトなどで生活費を稼ごうと思うのであれば、相当な時間(半年以上毎日)をかけないと稼げるサイトを作るのは難しいでしょう。サイト作りを頑張っている間の生活費を準備してからでないと、ただのネットを使った副業になってしまいます。
レンタルサーバーを契約し、ドメインを取って、本当に稼げるネットビジネスを目指すのであれば、最低200万円ほどの自己資金(預貯金)を準備してから始める方が成功率は上がります。詳細は、当サイトの以下の関連記事も是非ご覧ください。
ネットショップを開業するための費用や基礎知識を知っておこう!
(理由3)日本経済の停滞により政府がベンチャー企業支援
起業する人が増えているとはいえ、世界全体をみればいまだに日本の起業率は低いのが現状です。これは、日本人の性格や文化によるものも大きいのかもしれません。
以下は愛知大学により公表されている興味深いデータを表したグラフです。日本、中国、タイ、ヴェトナム、インド、イギリス、アメリカで「起業家は将来役に立つ経歴だと思いますか?」という問いに対し、「はい」と答えた人の割合を示しています。
【参照:起業の国際比較と日本経済の活性化の方策】
日本人の起業家についての社会的イメージが他国に比べて低いことが伺えます。しかし、今後はこの数値も変化することでしょう。今の経済では、当分日本の株価が自力で上がることは難しいと言われています。そうなると、ますます日本企業は利益を内部保留します。そして、働くひとの賃金はすえおき状態でストレスが溜まります。そして、一部の起業成功者がネットで成功談を書くと→起業へ憧れる人がまた増える、という図式になることが予想されます。
起業文化が根付かない日本に対し、日本政府では現在盛んに創業セミナーや起業家支援を税金を使って行っています。例えば、東京都ではTOKYO起業塾を立ち上げ、自治体として起業率を高めることに注力しています。
※上記URLをクリックすると、TOKYO創業ステーションのサイトへリンクします
まとめ
起業する人が増えている理由を政府発表のデータを元に検証すると、①高齢化が進んでいるから②日本企業のブラック化が進み、働く人口の起業への憧れが増えているから③日本政府が起業やベンチャー支援に積極的だから、という3つの理由が考えられます。
起業は決して簡単でラクなものではありませんが、会社員勤めも安泰ではないいまの時代。将来的な一つの計画として、検討してみるのも良いかもしれません。
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