各制度の受給要件を確認することが大切
融資ほどの大きな金額が手にできるわけではありませんが、事業に必要な一部の資金調達、実質返済が不要な資金、という観点から、補助金と助成金を利用する事業主は多いことが特徴です。
受給要件の他に、各制度が定める計画や目的を達成することで申請を行うことが可能となりますが、利用者が多い分、受給対象となるかどうかの審査も厳しく行われます。各制度の受給要件と、提出する申請書の内容に矛盾があれば受給を受けることもできなくなってしまうため、利用する制度の受給要件をしっかり確認するようにしましょう。
今回は、補助金・助成金を受給するための申請書の書き方やポイント、また、申請書の記載項目などについても確認していきましょう。
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1.補助金と助成金 各制度の申請書内の記載項目
補助金
利用する制度によって申請書内の項目は異なりますが、今回は事業承継等をきっかけに、新しい商品の開発、生産工程などの見直しなどを行った事業主が対象となる、「事業承継補助金」の申請書を例に、ご紹介していきます。
申請書内の項目は下記の通りです。記載項目数が多いため、大きく分類した質問項目のみ記載しています。
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助成金
次に、助成金の申請書についてですが、助成金も制度によって記載項目が異なることがありますが、今回は非正規雇用の従業員を、正社員、もしくは待遇の改善等を行い、従業員の企業でのキャリアアップに務めた事業主が対象となる、「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の申請書を例にご紹介していきます。
申請書内の項目は以下の通りです。
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上記内容を見ても分かる通り、申請の際には10以上の項目に回答する必要があります。項目を見ただけでは分からないことでも、記載例なども一緒に掲載されているため、分からなくなった場合には、各制度の申請書記載例を参考に書き進めていくようにしましょう。
電子申請について
2020年から、補助金の申請は原則電子化への変更が発表されました。電子申請を行うことには、〔提出時の郵送費や交通費の削減〕〔過去の申請情報(事業主情報)の反映〕〔書類への捺印不要〕などの目的があるとされています。
申請を行う場合には、3つの手順が必要となり、手順に沿って申請書を作成、提出を行いましょう。
手順その1〔ミラサポを通じて企業IDの取得〕
中小企業や小規模事業者の未来を支える、サポートする、という意味を持つサイトが「ミラサポ」です。下記のミラサポHPから、まずは企業IDの取得を行いましょう。
取得には15~30分程度の時間が必要となるため、時間に余裕をもって行いましょう。
手順その2〔電子申請ページにて必要事項の記入・送信〕
企業IDの取得完了後、申請したい制度の電子申請ページにて、必要事項を記入していきます。記入が完了した後に、書類の添付行います。
必要書類はPDF等で先にパソコンへ読み込んでおき、読み込んだPDF等の書類を添付していく形になります。記入内容、添付書類の最終確認を行った後に、内容の送信を行います。
手順その3〔受給が決定した場合は電子申請で添付した書類の送付〕
申請が採択されると、電子申請で添付した書類の送付があります。そのため、申請後でも書類はすぐに送付できるよう、準備をしておくようにしましょう。
2.書き方のポイント
共通するポイント
申請する制度の趣旨や目的等を理解する
補助金の多くは、新たな試みの事業や、既存事業の促進を目的とした制度が充実していることが特徴です。助成金では、事業のために働く労働者の雇用や育成などを目的とした制度が充実していることが特徴です。
どちらの場合においても、利用する制度には、その制度を運営している国や政府などの機関側の目的があります。制度を実施することで、受給者に何を求めているのか、どのようになってほしいのか等、趣旨や目的を理解することで、その制度に見合った申請書を作成することができます。
ただ申請書の質問項目を埋めるだけでは、制度の目的から離れた内容となってしまい、受給の確率も下がってしまうため、気を付けましょう。
第3者が見ても分かりやすい内容にまとめる
事業に関わっていると、どうしても専門用語や使い慣れている言葉を使いがちになってしまい、採択を行う側が見ても、何を伝えたいのか、どのような事業を行っているのか、などが分かりにくくなってしまいます。
申請書を見て採択を行うのは、事業のことを良く知らない第3者となるため、使用する言葉や用語は、誰が見ても分かるようにまとめることが大切です。
また、手書きで申請書を作成する際は、見やすく綺麗な字で記入するようにしましょう。
補助金のポイント
① 事業の新規性や他社との違いをアピールする
補助金は、新規事業を行う事業者などに対して行われる制度が多いため、事業の新規性を記載する項目があります。全国的に見て全く初めての事業であれば、十分新規事業として記載することは可能ですが、そのような事業はなかなか存在しません。
この場合、「地域で初めて・・・」などという文言を記載することで、新規性をアピールすることが可能です。例えば、申請先が県であれば、「県内で初めて」といった記載、自社の中で新たな試みの事業であれば、「自社の新規事業」といった記載で新規性をアピールすることが十分可能となります。
中には、既に他社で行われている事業で申請を考える事業者の方もいるかと思います。
この場合、他社とは異なる自社独自の強みを記載しましょう。例えば、配達事業者で新規事業を考え申請を行う場合、「〇社では送料300円ですが、自社では半額の150円に抑え・・・」といった記載で他社との差をつけます。
② 市場において事業が必要だということを伝える
申請を行っても、市場において必要がないと感じられれば、採択されるのは難しくなります。申請書で市場性を問う項目は、市場に受け入れられるか、つまり「売れるかどうか」ということを説明するものです。
ですが、実際にヒットする商品となるかどうかを判断することは難しいため、需要があるということを説明する、説得力のある内容にすることを考えましょう。例えば、「醤油の消費量および、塩分を気にしている人口が統計データから増加傾向にあるため、減塩を考慮し塩分を70%カットした醤油の製造を行う」といった記載をするというものです。
統計データなどは、各省庁が発表しているもの等から閲覧することが可能で、国が行う調査のため、説得力があると判断されやすくなります。
③ 受給後の収支計画を立てる
制度を行う側は、将来の事業発展を見据えて採択を行います。受給後も事業の継続が確実なものかどうかを示すためにも、目標を加えた受給後の収支計画を立てることも大切です。
例えば、
【受給後の収支計画】
- 設備費→ ○○万円
- 広告費→ ○万円
- 人件費→ ○○万円
- 売上額○○○万円で目標達成
【受給後のスケジュール】
- 〇日目→ 必要設備を導入し、事業実施に向けて活動や制作
- 〇日目→ 広告費をかけて宣伝
- 〇日目→ 事業の実施/売上○○万円達成
- 〇日目→ 売上○○○万円達成
といった記載をするというものです。
受給後の資金を何にいくら使い、どのようなスケジュールで売上を達成し、どのくらいの利益獲得が可能となるのか、などの収支計画を立てて、事業の発展が狙えることを示しましょう。
④ 期限を決めた具体的な事業計画を立てる
上記で決めた収支計画のスケジュールを形にするための、具体的な事業計画を立てます。収支計画を立てたとしても、実際に目標を達成するためには、誰がいつまでにどのように行動しなければならないのか、ということがはっきりしていなければなりません。
新規事業のために従業員を増員するのであれば、いつ頃何人増員させるのか、新規事業に向けた社内体制をいつまでにどのように変更するのか、など具体的な中身を記載していきましょう。
例えば、
■1か月目
- 設備をリース契約することで○%の設備費が削減できる
- 従業員を○名増員することで、作業時間が○時間短縮する
- 社内体制を「○○~に変更」することで、部署ごとにやるべきことが明確になる
■2ヶ月目
- 新体制に向けた従業員の移動
- 事業の宣伝を○○部に特定し、宣伝に力を入れる
■3ヶ月目
- 利用顧客の調査を○○部が行い、結果をまとめて全社員へ共有する
- 調査によって分かった事業の改善や改良を○○部が担当する
といった記載です。
また、「経費削減」「時間の短縮」などの抽象的な表現になっていないかを確認しながら記載していきましょう。数字を使って表せる部分には数字を使い、目で見て分かるようにしておくと良いでしょう。
助成金のポイント
① 制度の要件に沿った書類の選択
助成金は制度の要件を満たしていることで、国の予算内であれば助成を受けることができます。そのため、送付する書類はその制度に合った書類を選択することが重要です。
送付する書類を見て、制度の目的を満たす書類となっているかどうかを再確認し、送付しましょう。
② 制度の助成対象期間や助成対象を確認
助成金の多くは、助成される対象期間内に、制度が定める助成内容を満たしているかどうかがチェックされます。助成となる条件が対象期間に当てはまるかどうかをきちんと確認して申請を行いましょう。
まとめ
今回は、補助金と助成金の申請書を書く際のポイントを解説しました。
補助金や助成金にはそれぞれ受給の要件があり、制度別に申請時のポイントは異なりますが、どちらにも共通するポイントが、【制度の要件や目的に沿った申請書となっているのか】【誰が見ても分かりやすくまとまった内容となっているのか】という点です。
補助金・助成金の申請に迷ったり、悩んだり、ちょっと大変そうだなと思う場合は、是非、助成金申請のプロである社労士さんに相談してみるのも、受給の可能性を高める1つの方法です。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
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