資金調達の一つの方法として、助成金・補助金があります。
小規模事業者持続化補助金は、全国の事業者が対象で比較的応募しやすい補助金として知られています。しかし、同時に多くの方が審査に落ちている補助金でもあるのです。
小規模事業者持続化補助金に合格するには、申請書の書き方にコツがあります。早速みていきましょう。
1.小規模事業者持続化補助金とは?
小規模事業者持続化補助金がどのような補助金なのか、まずは簡単におさらいしましょう。
①日本商工会議所と全国商工会議所が募集している補助金である
「小規模事業者持続化補助金」は、2つの商工会議所組織が募集する補助金です。地域によって、応募先は日本商工会議所の場合と全国商工会議所のいずれかとなります。
この補助金は、経済産業省の傘下にある中小企業庁が商工会議所をバックアップして成り立つ補助金です。そのため、小規模事業者持続化補助金について検索すると商工会議所と中小企業庁の双方の記事が出てきます。
しかし、あくまで小規模事業者持続化補助金は商工会議所が募集する補助金ですので、申請前には申請書を商工会議所に事前確認してもらう必要があります。
②従業員人数5~20人以下の全国の事業者が対象
小規模という名の通り、小規模事業者は5~20名以下の従業員数の事業者のことを指します。
【小規模事業者の定義】
業種 |
常時使用する従業員の数 |
製造業、建設業、運輸業 その他(卸売業、サービス業、小売業以外) |
20人以下 |
卸売業 |
5人以下 |
サービス業 |
5人以下 |
小売業 |
5人以下 |
常時使用する従業員の数が上記の表の人数を満たせば、この記事を読んでいるあなたも小規模事業者補助金をもらえる可能性があります。この人数であれば、商店街の中の靴屋さんやカメラ屋さん、美容室など多くのお店が該当するでしょう。
残念ながら、この補助金は医師や歯科医師や組合、一般社団法人、学校法人などは適用外です。
③販路拡大目的のホームページやチラシ作成費用を50万円まで補助
この補助金のメリットとしてお伝えしたいのは、使用用途の自由度が高いという点です。補助金は返済不要の「もらえる」お金なので非常に有難いのですが、もらう条件が細かく決められている場合が多く難易度も高いのです。
小規模事業者持続化補助金の場合は、「販路拡大を目的とした経費であればいい」という緩めの条件なので事業者には嬉しい限りですね。以下のような経費をあなたが使った場合、 小規模事業者持続化補助金を利用すれば2/3までの経費を補助金としてキャッシュバックしてくれます。
【小規模事業者持続化補助金で対象となる経費(例)】
- 商品サンプル試供品製品
- ホームページ制作
- ホームページに貼るバナーの制作費
- 商品陳列棚の購入費
- 中古書籍の購入費
- 中古車の購入費
幅広い経費を負担してくれる補助金ですが、いくつか注意点もあります。以下をご覧ください。
- チラシ作成の場合は作成しただけではなく配布した実績が必要
- 中古品の購入の場合はどうしても中古でないといけないという説明をする。また、2社以上の相見積を取ってから購入する
- これらの経費は現金ではなく、原則銀行振込とすること(証拠を通帳記入で残せるため)
詳細は、以下の平成29年度版の公募要領をご覧ください。
平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金 【公募要領】
2.採択率は30~50%?どんな事業者が落ちるのか
採択とは、提出した申請書類が「OK」となることです。つまり、補助金の審査に合格することを「採択される」と言います。
しかし、小規模事業者持続化補助金の採択率は決して高くはありません。その採択率は30%~50%以下と言われています。10人が申請しても、そのうち5~7名は不合格なのです。
一体どのような理由で不採択となるのでしょうか。不採択理由は公表されていませんが、筆者の考える不採択理由は以下の3つです。
- 【不採択の理由1】経営計画が甘い
小規模事業者持続化補助金の目的は、お金のバラマキではありません。小規模事業者が継続的に事業を行えるように、きちんとした計画を立てることを目的としています。
ちなみに、あるアンケートでは小規模事業者持続化補助金に応募する60%の事業者が「補助金申請をきっかけに初めて経営計画を立てた」と答えています。小規模事業者の中で多くの方が経営計画を立てるのに不慣れであるということが分かります。
- 【不採択の理由2】地域によっては競争率が高い
小規模事業者持続化補助金の審査を経てめでたく採択となった事業者は、日本商工会議所のホームページに採択者一覧としてその事業所名が公表されています。
日本商工会議所 平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金|採択者一覧
こちらの一覧を見ると、東京では278件でその次は兵庫、大阪と商圏の広さと採択数は比例しているのが分かります。東京や兵庫、大阪などの地域で応募すれば、秋田や山形などの応募者よりも必然的に競争率は高くなります。
【不採択の理由3】事業内容が不明瞭
大量の応募書類をさばくわけですから、一見してわかりづらい内容の書類は一蹴されてしまうことでしょう。1つの会社で複数の事業を行っている場合、事業承継をしてから別の事業を始めたなど、少し複雑な事情のある事業者は審査に落ちやすいように見受けられます。
3.小規模事業者持続化支援補助金に合格しよう!申請書の書き方
補助金を申請するためには①経営計画書と②補助事業所の2つを記入します。申請書類はこちらのURLよりダウンロードできます。(平成29年度版)
日本商工会議所 平成29年度補正予算 小規模事業者持続化補助金
なお、こちらでは単純に事業所名や住所を書けばよいだけの書類(様式1、様式5など)の書き方については省略いたします。
①経営計画書の書き方(様式2)
(1)「企業概要」は分かりやすく写真も交えグラフも入れる
企業概要は、以下の内容を網羅しましょう。
- 何年に設立
- 何を経営理念にしているか
- 従業員数
- 事業内容
- 代表の資格保持や経験
- 顧客にどのような点で満足してもらっているのか(特徴)
- 事業をする上での工夫
- 事業分析及び課題
- 今後の顧客獲得について
- 主要取引先
この中で、
- 事業をする上での工夫 と
- 事業分析及び課題
については写真(画像)やグラフがあった方がよいでしょう。
例えば、このように文章で書いたスケジュールの実施予定をグラフ化したものも書類がより見やすくなります。また、問合せ件数の増加をグラフ化するのも効果的です。
(2)「顧客ニーズと市場の動向」では募集要項から「本事業の目的」の意図をつかむ
小規模事業者持続化補助金の募集要項は毎年だいたい同じような内容ですが、その応募要項の「本事業の目的」にはその年の商工会議所の意図がよく反映されています。
どういうことかと言うと、例えばH29年度の「本事業の目的」の内容は以下の通りでした。
「わが国の小規模事業者のほとんどは経営資源が不足していることから、全国にネットワー クを持ち、地域に密着している商工会を活用しながら、人口減少や高齢化などによる地域の需要の変化に応じた持続的な経営に向けた取り組みを支援し、地域の原動力となる小規模事 業者の活性化を図ります(以下省略)」
この文章を筆者なりに読み解くと、こうなります。
「地域にある商工会議所と連携して、上手に人口減少や高齢化に対応する地域需要を満たす持続的な経営をしてくれるのであれば、補助金をあげますよ」
つまり、この意図に関連しない事業であれば不採択となるのです。では、地域の需要とはなんでしょうか。ネットスーパーやアマゾンにはできないことで地域の小規模事業者にできることとは、地域のつながりや交流ではないでしょうか。
その点を意識して文章を作成するだけで、グンと採択率はアップします。
(3)自社や自社の提供する商品・サービスの強み
だらだらと長い文章にするのではなく、まず「当社の強みは〇点あります」と箇条書きにし、1点ずつ簡潔に具体的に記載しましょう。例えば、以下のように箇条書きにしてから1点ずつの説明を書くと、文章として分かりやすくなります。
当社の強みは3つ
①業界の随一の認知度
②30年間変わらぬ製品の品質
③当社のヒット商品「〇〇」
(4)「経営方針・目標と今後のプラン」は数値を入れて具体的に
2020年までに顧客数を30%増、など具体的な数値目標を記載します。今後のプランも、机上の空論ではなく実際にできるものを計画しましょう。
②補助事業計画書の書き方(様式3-1)
補助事業計画書は3部構成になっており、まず1部は以下の内容を記載します。
-
補助事業で行う事業名:補助事業で行う、と書かれていますが、ご自身の事業名(例、アパレル小売業)を記入するのではありません!アパレル小売業をしているあなたが、補助金をもらったら何をするのかを記載します。(例、通販サイト作成、など)
-
販路開拓等の取り組み内容:ホームページ作成とSNS拡散と店頭チラシ、ポスターなど取り組み内容を具体的に記入します。
- 業務効率化の取組内容:従業員人数の少なさをどうやってカバーするのか、という視点で記入します。例えば、電話予約だけでなくWeb予約を受け付ける、などです。
- 補助事業の効果:「地域で〇〇に関する店は当社しかなく、多くの高齢者の癒しとなっている」、などあなたの事業の効果についての文章を記入します。
二部では経費明細書を記載します。二部では経費区分で迷う方もいるかと思います。以下を参考にしてください。
等費 |
新商品製造のための新規購入 |
広報費 |
チラシ印刷費 |
展示会等出店費 |
〇〇フェア出店費用 |
旅費 |
〇〇フェア出店備品運搬費 |
開発費 |
鯖のすり身 |
資料購入費 |
食品衛生に関する書籍購入 |
3部では資金調達方法の明細を記入します。
区分 |
金額(円) |
資金 調達先 |
1.自己資金 |
500,000 |
|
2.持続化補助金(※1) |
500,000 |
|
3.金融機関からの借入金 |
|
|
4.その他 |
|
|
5.合計額 (※2) |
1,000,000 |
|
上記の表のように、自己資金と補助金の額が50:50の割合が望ましい割合です。金融機関からの借入金と自己資金のバランスが極端に悪い(借り入れが多すぎる)場合は、自己資金を増やせるように工夫しましょう。
4. 小規模事業者持続化補助金の申請までの段取り
上記のように経営計画書・補助事業計画書を作成したら、次はそれを最寄りの商工会議所に持参します。
経営計画書・補助事業計画書を作成
↓
最寄りの商工会議所に持参
↓
事業支援計画書を商工会議所からもらう
↓
締め切りまでに申請書類一式を商工会議所に郵送する
いきなり郵送するのではなく、まず商工会議所に行ってチェックしていただくという流れになります。
まとめ
小規模事業者持続化補助金に合格するには、簡潔に分かりやすく具体的な書類を作成する必要があります。また、事業内容自体が補助金の目的に沿っていないものは申請を再考の必要があるでしょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
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