「労働移動支援助成金」の〔再就職支援コース〕とは

「労働移動支援助成金」の〔再就職支援コース〕とは 更新日:2020.10.23 公開日:2018.09.27助成金・補助金 – 助成金の基礎知識
「労働移動支援助成金」の〔再就職支援コース〕とは

離職をする方の再就職支援を行った事業主が受給可能なコース

「労働移動支援助成金」には2つのコースがあります。事業者が、労働者を離職させた場合、その対象の労働者の再就職を支援したり、早期の雇用拡大や生産性向上を行った場合に受給される助成金が、「労働移動支援助成金」です。

今回は、離職する方の再就職を支援することで受給することができる〔再就職支援コース〕を主に、本助成金のコース別の目的や、受給対象者や受給方法などについて解説していきます。

 

 

 

1.「労働移動支援助成金」の2つのコースについて

〔再就職支援コース〕

このコースは、事業の縮小などが理由となり、労働者を離職せざるを得ない状況にぶつかった事業者が、対象の労働者の再就職を考え支援し、再就職を実現させることで受給可能となるコースです。

再就職の支援となる具体的な内容は、職業紹介を行う事業者へ就職先を探す依頼をすることや、就職活動のための休暇を労働者へ与えること、また、再就職に必要な訓練などを実施するなどが当てはまります。

このコースの目的は、離職せざるを得なくなってしまった労働者の再就職を、早く実現させることにあります。

〔早期雇入れ支援コース〕

前職場の離職の際に【再就職援助計画】、もしくは【求職活動支援書】の対象者となった労働者を、前職場の離職日翌日から3カ月以内に、雇用を行うことで受給可能となるコースです。

雇用を行う際の具体的な条件として、”半年間のみ”等の期限がない雇用であることや、雇用対象者に職業訓練を行った事業者である必要があります。

このコースの目的は、離職せざるを得なくなってしまった方の、早い段階での再就職かつ、次の就職先での雇用の定着をさせることにあります。

             

2.〔再就職支援コース〕の受給対象となる支援

上記項目内でも簡単にご説明した、労働者に対する再就職支援ですが、詳しい内容を下記にてご説明します。

※注意

■ 本助成金を受給希望の場合、下記のいずれかを行う必要があります。

 ①【再就職援助計画】を作成後に公共職業安定所の所長の認定を受ける(厚生労働省:再就職援助計画に関するPDF)

 ②【求職活動支援基本計画書】を作成後に都道府県労働局に提出をする(厚生労働省:求職活動支援基本計画書に関するPDF)

■ 労働者の解雇にあたり、どんなに経済状況が厳しい場合であっても、下記のルールは守る必要があります。

厚生労働省:事業主の方へ(適切な労務管理のポイント) 

その① 再就職支援

職業紹介を行う事業者に対象となる労働者の再就職支援の委託を行い、再就職が実現した際に助成されるというものです。また、再就職支援の一部として「訓練」や「グループワーク」を行っていた場合には、上乗せして受給することが可能です。

「訓練」および「グループワーク」については、下記パンフレットの10~11ページに記載されています。

労働移動支援助成金ガイドブック―再就職支援コース―

その② 休暇付与支援

今後離職することが確定している労働者に、再就職先の求職活動を行うための休暇を設けた際に助成されるというものです。

その③ 職業訓練実施支援

これから離職する労働者が再就職の際に有効となる職業訓練を、訓練施設等に委託し実施した場合に助成されるというものです。

 

各支援の対象となる具体的な措置については、下記パンフレットの8~12ページに記載されているため、ご確認ください。

労働移動支援助成金ガイドブック―再就職支援コース―

             

3.受給対象となる労働者

本助成金の受給対象となる労働者は下記7つの条件すべてを満たしていることが必要です。

① 助成金の申請を行う事業主が申請の際に作成した「再就職援助計画」か「求職活動支援書」の対象者であること

② 助成金を申請する事業主が、1年以上雇用保険の一般被保険者、もしくは高年齢被保険者として継続雇用していた者であること(受給対象となる支援の初日や委託日など、それぞれ前日の時点で1年以上であることが必要)

③ 助成金を申請する事業主の事業場へ復帰する見込みがない者であること

④ 離職する労働者の再就職先が下記時点において決まっていない、または同様の状況であること

  • 〔再就職支援〕を行う場合→  該当する委託契約日の時点
  • 〔休暇付与支援〕を行う場合→ 休暇開始日(初日)の時点
  • 〔職業訓練実施支援〕を行う場合→ 該当する委託契約日の時点(委託契約がない場合、教育訓練を行う施設等への訓練申込日の時点)

⑤ 離職する労働者が職業紹介を行う事業者から退職を勧められたと受け止めていないこと

⑥ 助成金を申請する事業主から退職を勧められたと受け止めていないこと

⑦ 離職する労働者の再就職支援を、職業紹介を行う事業者に委託する場合、離職する労働者が再就職支援を受けることについて納得していること

             

4.申請が可能な事業者

本助成金の申請を希望する場合、当てはまらなければならない項目が5個、および当てはまってはいけない項目が11個存在します。下記にて当てはまる必要がある項目と、当てはまってはいけない項目をそれぞれ確認しておきましょう。

※注意

本助成金の中小企業の定義は、下記のいずれかを満たしている企業となります。

 

資本・出資額

常時雇用労働者数

飲食店含む小売業

5000万円以下

50人以下

サービス業

5000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

【全て当てはまらなければならない項目】

① 雇用保険を適用している事業主である

② 助成金支給の審査に関して下記のように協力することを承諾している

  • 助成金支給の審査に必要な書類を整備し保管している
  • 労働局から助成金支給の審査に必要な書類の提出を求められた際、提出に応じる
  • 管轄の労働局またはハローワークなどの実地調査を受け入れる

③ 助成金の申請期間内に申請を行う

④ 事業所、企業、事業部などの単位問わず、人員削減を行う組織において、下記いずれかに当てはまる事業主である

  •  事業活動を示す指標(売上高・生産や販売の量や金額等)が、前年に比べて10%以上減少している(”前年に比べて10%以上の減少”については、【再就職援助計画】の認定、もしくは【求職活動支援基本計画書】の提出日を基準とし、直前3カ月の平均で判断することを原則とするが、”直近1年間の平均で判断” や、”将来3年以内に10%以上減少する見込みがある” という場合であっても可能とする)
  • 直近の決算の経常利益が赤字、もしくは将来3年以内に赤字になる見込みがある

⑤ 中小企業の事業主でない場合、職業紹介を行う事業者へ委託する「再就職援助計画対象者」か「求職活動支援書対象者」の人数が30人以上である

【1つでも当てはまってはいけない項目】

① 不正受給に関する下記の項目に1つでも当てはまる

  • 過去に不正受給を行い5年以内に本助成金の申請を行う
  • 本助成金の申請日後の支給決定までに不正受給をした
  • 申請を行う事業主の役員等に、過去に不正受給に関わった者がいて、その行為から5年が経過せずに申請を行う
  • 不正受給を行った日から5年が経過しているが、不正受給に関係する請求金が未納である

※時効が完了している場合は対象外

② 申請日が属している年の前年度より以前の保険年度で、労働保険料が未納である年が1つでもある(※申請日翌日から計算して2ヶ月以内に納付した場合は対象外)

③ 申請日の前日から1年前までの間に、労働関係法令の違反によって送検されたことがある

④ 事業所にて風俗営業等の規則、かつ業務の適正化等に関係する法律に定められた、以下の業務に1つでも当てはまる

  • 接待飲食等営業(第2条第4項)
  • 性風俗関連特殊営業(第2条第5項)
  • 接客業務受託営業(第2条第13項)

※接待飲食等営業であり、許可を得ているが、実際に接待営業を行っていない、もしくは接待営業が事業全体で見たときに一部である場合は対象外

⑤ 事業主や役員等が暴力団との関りを持っている

⑥ 事業主や役員等が「破壊活動防止法第4条」に定められた暴力主義的破壊活動を行った、もしくは行う危険がある団体に所属している

⑦ 不正受給の発覚時に労働局等が実施している、事業主名公表等に同意をしていない

⑧ 本助成金の支給条件に従うことを承諾していない

⑨ 支給対象である労働者が再就職をした日の前日までの1年間、対象の労働者と再就職先が、資本的、経済的、組織的に関連事業主の関係にあった

⑩ 助成金の対象である労働者が離職する日の前日までの1年間で、離職者への職業紹介を依頼した事業者から、【再就職援助計画】の認定を申請、もしくは【求職活動支援基本計画書】を提出した日までの間に、退職コンサルティングを受けた

⑪ 離職者への職業紹介を行う事業者が退職コンサルティングを行う会社と連携していたことを知っていた

             

5.受給額

〔再就職支援〕を行った場合

下記計算で出された金額の、①~③を足した額が支給額となります。ただし、①~③の合計金額は、委託総額もしくは60万円のどちらか低い方が上限となるため注意しましょう。

① 再就職支援

■ 通常

※()内は45歳以上の場合

〈中小企業事業主〉

(委託総額 - 下記計算② - 下記計算③) × 2分の1(3分の2)の額

〈中小企業事業主以外〉

(委託総額 - 下記計算② - 下記計算③) × 4分の1(3分の1)の額

■ 特例区分

※()内は45歳以上の場合

〈中小企業事業主〉

(委託総額 - 下記計算② - 下記計算③) × 3分の2(5分の4)の額

〈中小企業事業主以外〉

(委託総額 - 下記計算② - 下記計算③) × 3分の1(5分の2)の額

② 訓練加算

〈中小企業事業主〉〈中小企業事業主以外〉

訓練実施時の委託費用 × 3分の2の額 ※上限30万円

③ グループワーク加算

〈中小企業事業主〉〈中小企業事業主以外〉

3回以上の実施で10,000円

〔休暇付与支援〕を行った場合

180日を上限とし、中小企業事業主では8000円、中小企業事業主以外では5000円が加算額として助成されます。しかし、通常支払われる労働日の賃金が8000円や5000円に満たない場合には、該当する金額が休暇付与1日当たりの支給額となるため、覚えておきましょう。

また、対象となる労働者が離職した日の翌日から計算し、1か月を経過するまでの間に、労働者の再就職が実現した場合には、対象労働者1人あたり10万円の上乗せがあります。

〈中小企業事業主〉

休暇付与1日あたり8000円

※早期再就職実現で、1人あたり10万円の上乗せ

〈中小企業事業主以外〉

休暇付与1日あたり5000円

※早期再就職実現で、1人あたり10万円の上乗せ

〔職業訓練実施支援〕を行った場合

対象となる経費は、受講案内などにて規定され、受講するためにかかる費用(入学金、受講料、教科書代 等)が対象となりますが、参加する訓練の中で都道府県からの「認定訓練助成事業費補助金」を受給している場合の受講料は対象外となるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

〈中小企業事業主〉〈中小企業事業主以外〉

訓練実施時の委託費用 × 3分の2の額 

※上限30万円

 

6.支給までの流れ

(1) 計画の作成と認定

【再就職援助計画】の作成と認定、もしくは【求職活動支援基本計画書】の作成と提出を行います。

【再就職援助計画】は事業所を管轄するハローワーク、【求職活動支援基本計画書】は事業所を管轄する労働局にてそれぞれ行いますが、【求職活動支援基本計画書】に関しては、ハローワークを経由しての提出も可能となります。

(2) 各支援の実施と支援別の流れ

本助成金の対象となる支援の措置を実施します。また、支援別に(3)までの流れが異なるため、確認していきましょう。

  • 〔再就職支援〕・・・離職する労働者の再就職支援を委託する職業紹介業者を選定し、再就職支援の委託を行います。
  • 〔休暇付与支援〕・・・助成金の対象労働者に求職期間としての休暇を付与します。
  • 〔職業訓練実施支援〕・・・教育訓練を行う施設へ委託を行い、再就職支援および訓練の実施を行います。訓練の開始は労働者の離職後でも可能です。

(3) 対象労働者の離職

(4) 再就職の実現

(5) 支給を申請

対象労働者の再就職が実現した日以降の助成対象期限の翌日から2ヶ月以内に申請を行います。

ここでの注意点が、対象の可能性がある労働者が複数いる場合は、最後の支給労働者の助成対象期限の翌日から2か月以内に人数分をまとめて申請することになるため、覚えておきましょう。

助成対象期限とは・・・

労働者が離職した日の翌日から6か月間のことを指します。(45歳以上の労働者は9ヶ月間)

例えば・・・

令和2年10月15日に離職した場合、令和2年10月16日~令和3年4月16日が助成対象期限となります。この助成対象期限の間である令和3年3月25日に再就職をしたとすると、令和3年3月26日~令和3年5月26日までが、本助成金の支給申請期間となります。

(6) 助成金の支給

             

まとめ

今回は、「労働移動支援助成金」の〔再就職支援コース〕について解説しました。景気の変動などで事業の縮小をせざるを得ない状況になってしまった場合、従業員の離職は大きな課題となります。

離職する従業員の再就職先を見つける有効な支援を行うことで助成を受けることができる再就職支援コースは、離職する労働者にとっても、事業主にとっても有難い制度です。申請を行う際には、支給要領や対象者をよく確認したうえで申請を行いましょう。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
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