業績低下で雇用に問題が起きた際は「雇用調整助成金」の活用を!
事業を行う上で、業績を保ち続けるために様々な対策をしている人もいるでしょう。自然災害や経済の状況に左右され、前年の売上と比較した際に思った以上に下がっていることもあるのではないでしょうか。
業績が下がることで事業主の方が頭を抱えることの一つに、従業員の雇用問題があります。雇用の問題を抱える事業主の方に知っておいてほしい制度が、雇用維持が目的とされ、厚生労働省が行う「雇用調整助成金」です。
助成金は、融資と異なり実質返済の必要がなく、条件を満たすことで受給が可能です。将来のリスクを少しでも軽減するために、助成金を上手に活用し、事業の将来に繋げていきましょう。
今回は、厚生労働省が行う雇用調整助成金の受給対象や要件、基本的な内容から、申請方法などについて解説していきます。
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1.雇用調整助成金とは
雇用調整助成金とは会社の業績が安定せずに下がってしまい事業の縮小を行うことになった際に、事業主の方が従業員に対し一時的な休業や出向、職業訓練を行うことで受給することが出来る助成金です。具体的には、休業手当や出向先の賃金の一部を助成してくれます。
世の中の景気や災害によって左右されてしまう企業の業績の中で、維持しようと頑張る事業主の不安や、自身の生活のために頑張る労働者を少しでも支えようという目的があります。
2.受給対象となる調整内容
雇用調整助成金は誰もが受給できるわけではなく、〔受給対象〕となる雇用調整の内容が定められています。事業主が行う雇用調整は、下記の3つに分類され、それぞれの調整が制度の中の基準を満たしていることが条件となります。
3つの雇用調整
- 〔休業〕・・・生産量の低下の回復が短期間のうちに推測される場合に行う調整
- 〔教育訓練〕・・・従業員に新しい技術を教えるなどの教育訓練を行い、従業員の能力の向上を図る場合に行う調整
- 〔出向〕・・・他会社へ出向し、従事することで雇用の維持を行う場合の調整
制度が定める調整の基準
〔休業〕により雇用の維持を行う場合
所定の労働日1日にわたり休業とすること、または対象の事業所の従業員全員に対し1時間以上実施すること。
〔教育訓練〕により雇用の維持を行う場合
所定の労働日1日にわたり職業訓練とすること、または対象の事業所の従業員全員に対し1時間以上実施すること。また、訓練内容が職業に関する知識や技術の取得等を目的としているものであり、教育訓練を実施する日は就業しないこと。
教育訓練を受けた者は、レポートなどの提出を行うことが必須。
〔出向〕により雇用の維持を行う場合
助成対象である期間の内に開始し、3か月~1年以内の出向を終え、元の事業所に復帰すること。
3.具体的な受給要件
次に、雇用調整助成金を受給することができる具体的な要件を確認しましょう。
①事業主
雇用保険の適用対象者である
②生産量・売上
生産量や売上が直近の3か月の平均が前年の同じ時期と比較して10%以上減っている
③雇用指標
雇用保険の対象である従業員、派遣の従業員の直近3か月間の1ヶ月平均雇用指標が前年の同じ時期と比較し、下記人数よりも増えていない
対象 |
雇用指標 |
中小企業 |
10%を超える、また4人以上 |
中小企業以外 |
5%を超える、また6人以上 |
④労使協定
助成金受給の対象となる休業や出向が計画書と一緒に提出した労使協定に基づいている
⑤以前受給したことがある場合
以前に雇用調整助成金を受給したことがあり、新しく対象期間の設定を行い再び受給する場合、前回の受給対象の期間が満了した日の翌日から1年以上経過している
4.雇用調整助成金の申請方法
雇用調整助成金の対象となる期間は1年間です。次に、1年間の間におこなった休業等に対する支給申請の流れを確認しましょう。
①計画書の提出
休業等を開始する2週間前をめどに管轄のハローワークや労働局に計画書を提出します。手続きは最大で3つの判定基礎期間分を一緒に行うことが可能です。
※申請が2回目以降の場合は休業などの開始前日までに提出が必要となります。
判定基礎期間について・・・ 計画書提出の際に選択する期間のことを指し、会社ごとの賃金締め切り期間(月末締め・翌15日締めなど)のことを言います。 |
②支給申請
休業などの実施を行い判定基礎期間が終了し2か月以内に申請をしましょう。
〈例〉 8月に休業等を行い、8月31日に終了した場合、10月31日までが申請期間となります。 |
③審査・支給
管轄の労働局もしくはハローワークに支給の申請を行い、審査に通り雇用調整助成金の支給が決定した場合、支給される金額が振り込まれます。
5.受給可能な金額
(1)休業・教育訓練をおこなった場合
休業を行った場合は従業員の休業手当て、教育訓練を行った場合は賃金相当額が、下記の通り助成されます。
対象 |
助成率 |
中小企業 |
3分の2 |
中小企業以外 |
2分の1 |
※上限額は一人あたり、8,370円となります。(令和2年8月1日現在)
※教育訓練を行った場合、従業員1人に対し、1日1,200円が加算されます。
※休業・教育訓練ともに、開始日から1年の間に最大で100日分の受給、3年の間に最大で150日分の受給となります。
(2)出向をおこなった場合
出向元の事業主が負担する金額が、下記の通り助成されます。
対象 |
助成率 |
中小企業 |
3分の2 |
中小企業以外 |
2分の1 |
※上限額は一人あたり、8,370円となります。(令和2年8月1日現在)
※最長で1年の出向期間中の受給となります。
6.新型コロナウイルス感染症の影響に伴う「雇用調整助成金」の特例
雇用調整助成金と聞いて、事業主の方が思い浮かべる出来事として、令和2年2月から流行した「新型コロナウイルス感染症」があります。日本でも、緊急事態宣言や外出自粛などに伴い、経営が傾いた企業が多く存在し、閉店や廃業といった影響を受けました。
経済状況が悪化しているなか、経営を立て直そうと頑張っている事業主の方のためにも、「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」が厚生労働省から発表されました。
通常の雇用調整助成金と異なり、対象者1人に対して上限額が15,000円、そのうちの最大10分の10の助成、また教育訓練を行った従業員に対しては、1日最大2,400円の加算など、内容が緩和された制度となっています。
通常の雇用調整助成金では、生産量や売上が、前年同月比で10%の減少が必要ですが、特例の場合は、前年同月比で5%の減少があることで対象となります。令和2年4月には、助成対象の従業員の条件拡充、助成率の拡充や引き上げもあり、利用できる事業主の幅が広がりました。
まとめ
事業を行う場合、景気の変動による企業業績への影響は少なからずあります。事業主にとっても会社の経営が悪化した際の従業員の解雇は心苦しく、従業員にとっても会社の事業縮小などによる離職は避けたいでしょう。
雇用調整助成金は、雇用を維持したい事業主、事業縮小による労働者の不安を軽減するための制度です。業績回復のために雇用維持を行うことで、受給を受け、少しでも負担を減らすことができます。
従業員との信頼関係を保ち、景気回復後に人手不足になってしまうことを防ぐためにも雇用の維持を行うことは大切です。経営が傾き、従業員の雇用維持を行う際には雇用調整助成金を活用することも検討してみてください。
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