日本政策金融公庫の「海外展開・事業再編資金」とは?

日本政策金融公庫の「海外展開・事業再編資金」とは? 起業のための資金調達 – 日本政策金融公庫からの融資
海外展開

人口減少や国内での需要の頭打ちで海外進出する企業が増えています。

海外での事業の場合、資金調達はまず国内で融資を受けてから海外へ赴くのか、それとも海外で直接融資を受ければいいのか?海外での事業資金については情報が少ないので分からないことが多いですよね。

今回の記事のテーマは、海外での事業資金です。日本政策金融公庫では海外展開する事業にも融資を行っているのでご紹介しましょう。

1.海外での事業展開は2パターンある

海外で事業を行う場合、以下のように2パターンが考えられます。

  •  (1)国内で既に事業を開始しており、海外展開をするという事業
  • (2)国内では事業をしておらず、海外で初めてスタートする事業

 (1)の場合は、比較的融資は受けやすいと言えるでしょう。なぜなら、既に国内での実績があることで融資に際し一定の評価を受けられるからです。(2)の場合は、事業も海外進出も同時に初めて行うため、(1)よりも事業の難易度が高めです。融資を受ける際、国内での実績がないので「なぜ国内じゃダメなのか」「国内で基盤を作ってからではだめなのか」というような質問も受けることも、(2)の融資の場合は覚悟しておきましょう。

 2. 日本政策金融公庫の海外展開・事業再編資金とは?

まず国内で事業を開始している前提として、利用しやすい事業融資(事業資金用の融資)をご紹介します。それは、日本政策金融公庫の海外展開・事業再編資金という名の融資です。このサイトをご覧頂いている方なら既に、日本政策金融公庫が何かはご存じでしょう。創業融資や災害資金など日本国民のライフライン的な意味合いの強い融資を得意とする、公的金融機関ですよね。

 この日本政策金融公庫の海外展開・事業再編資金とは以下のような特徴を持つ融資です。

 ①労働力不足、原材料の不足などの理由による海外展開に融資

国内では人件費が高い。海外に工場を作って現地で雇った方が安くつく。そんな理由で海外展開している企業は味の素やユニクロなど国内に数多くあります。

 また、人件費の問題だけでなくバナナやコーヒー豆のように、そもそも日本国内での流通が乏しい原材料を使った事業の場合も海外展開を検討するかもしれません。労働力や原材料などの点で海外展開した方が事業は好転すると認められると、海外展開・事業再編資金を利用できます。

 ②取引先が海外進出・海外展開する場合に融資

主要な取引が海外進出するので、自社も海外進出する必要がある場合も、海外展開・事業再編資金を利用できる条件に当てはまります。例えば、ホテルを経営する会社に人材を派遣する人材派遣業の場合。国内での人材派遣で大半を任されていた実績があるため、海外での人材派遣も要請されました。

 このように、取引先からの要請を受け海外進出するのであれば、海外展開・事業再編資金を利用できます。

 ③海外展開しないと国内での成長が止まってしまう場合に融資

他にも、急速に国内での需要が縮小し海外展開しないと成長が見込めず廃業に追い込まれてしまうという場合も利用対象となります。ネットの普及や人工減少により、日本人のライフスタイルが変化してきました。今まで新聞・雑誌を読んでいた人がスマホやタブレットで購読するようになり、買い物もネット通販の全体利用率は7割を超えています。(出展:総務省:社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究平成27年)

 この他にも、海外資本に頼っているためどうしても海外進出しなければいけないという事業やある事業や、海外展開することで国内の事業が中期的に発展することが見込まれる事業も対象です。

 ④基準利率は1~2%台!特別利率は・・?

気になる融資の利率は2018年3月現在、1.81~2.30%となっています。しかし、以下の基準を満たす場合は特別利率としてさらに低い、0.91~1.90%の利率が適用されます。

 【特別利率の条件】

  • 海外直接投資を行う方であって、クールジャパンの推進に資する事業を行い、利益率の増加や本邦内の雇用維持など一定の要件を満たす場合
  • 海外直接投資を行う方であって、利益率の増加や本邦内の雇用維持など一定の要件を満たす場合

 海外生産委託又は海外販売強化を行う方であって、クールジャパンの推進に資する事業を行うなど、一定の要件を満たす場合4. 海外生産委託又は海外販売強化を新たに行う場合(海外展開後5年以内の場合を含む。)

 ⑤融資限度額は7,200万円だが実際は5掛けで考える

融資限度額の公式アナウンスは、運転資金が4,800万円、設備資金が2,400万円の合計7,200万円が最大値です。しかし、他の融資と同様、あなたが初めて日本政策金融公庫を利用するのであれば、実際に成功する融資額はこれより減額となると心得ましょう。

 ⑥返済期間は長め!設備資金で20年以内、運転資金は7年以内

海外事業は国内よりも軌道に乗るまでに時間がかかる場合が多いため、返済期間は他の融資よりも少し長めに設定されています。特に設備資金は最長で20年ですので、長期で返済したい方にはとても魅力的な制度です。

 3. 中小企業庁の海外展開資金とは?

中小企業庁でも海外展開資金という名の融資を実行しています。しかし、実態は前述した日本政策金融公庫を経由する融資です。日本政策金融公庫に申込みをして審査を通過した場合は融資限度額が最大7,000万円台ですが、中小企業庁に申込み中小企業庁から直接融資を受けた場合(直接貸付)、最大融資額は7億円までと10倍になります。

 しかし、中小企業庁から直接融資を受けるのは銀行のプロパー融資のように難易度が高いものです。国を巻き込むほどの公共性がない場合、通常は申込み自体ができません。

 4. 日本貿易保険海外事業資金貸付保険は事業資金の融資ではない

海外展開する場合の資金調達法として、その他には日本貿易保険(略称:NEXI)の海外事業資金貸付保険が気になる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この商品は融資ではなく保険です。保険の契約者貸付のように、ご自身で掛金として保険料を納めた範囲内で融資を受けられるものですが、その条件は以下の2点です。

 ・不可抗力によるリスクにあった場合

  • 海外でのテロや戦争に巻き込まれた
  • 国連の経済制裁による入金遅延 など

・契約相手方の責任に帰するリスクにあった場合

  • 取引先が破産宣告したため入金されない
  • 取引先が3か月以上代金を支払ってくれない など

 海外での事業では確かに、上記のようなテロや外貨送金などでのトラブルが発生するかもしれません。この商品は設備資金や運転資金とではなく、事業開始後の保険として利用価値のある資金調達法です。

 まとめ

 海外事業展開することで事業が上向きになるのであれば、事業融資を受け設備資金と運転資金に充てましょう。海外事業展開の前には、国内での事業以上の緻密な収支計算や現地でのコンプライアンスに熟練した人材の確保が必要です。

株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
融資支援業務に力を注ぎ、現在では400件以上の融資支援を行っている。