既存の事業所で新しい事業を行う場合、経営革新計画を作成し各自治体に承認されると、融資や助成金や税制の面で優遇されてオトクです。
気になるのは、実際に承認されるまでどれほど期間がかかり、どのくらいの率で承認されているという点ではないでしょうか?
今回の記事では、経営革新計画の承認についていろいろとまとめてみました。
1.経営革新計画承認件数が7万件を突破
経営革新計画では、既にある事業所が「ぼくの会社、新しい事業を始めます」と申請し、既定の数値目標をクリアすることで経営革新計画の承認起業として認定されます。承認された企業は嬉しいので、ホームページに「わが社は経営革新計画に承認されました」と堂々とアピールしています。
経営革新計画は、中小企業等経営強化法という「中小企業にパワフルに稼ぐ体力をつけさせるよ!」という法律の中の経営革新改革で決められたもの。
例えば、あなたの会社で今まで金属の加工のみを請け負っていたとしましょう。しかし、金属の加工業のみでは業績が伸び悩んでいるため、新たに「金属の加工技術を利用して、アクセサリーショップ事業をはじめま~ス!」と宣言、実行した場合は、この経営革新計画の対象となります。
平成19年の時点では3万件だった承認企業数が、平成30年では7万2,000件ほどに膨れ上がりました。現在の国内の全事業所数は580万ほどですので、まだまだ増える余地は多いにあります。
2. 各自治体の平均の承認率は?
経営革新計画は、中小企業庁が主催し各自治体に「やってね」と委託している事業です。そのため、あなたが経営革新計画の承認を受けたいのであれば申請先は事業所を管轄する都道府県の役所となります。
申請は随時受け付けており、毎月承認された企業は自治体のホームページ(東京都の場合は東京都産業労働局のホームページ)で公表されています。
ということは、各都道府県での経営革新計画の承認数を応募数で割れば、承認率が割り出せるということですね。しかし、残念ながら応募数については公表されていません。
そこで、経営革新計画に落ちた方のブログや経済産業省の公表資料を参照しました。経営革新計画の承認は簡単ではなく一発目で承認されるのはなかなか大変なようです。一度審査に落ちると、その後1年間は再申請ができないようなので慎重な計画が必要です。
割合で言うと、3件に2件は落ちるようなので約30%。東京都の場合は応募数が多いので承認率は約10%前後という難関になるようです。
3. 承認企業になるためのコツとは?
①どんな新事業が承認されるのか?
自治体のホームページでは、過去に承認された企業の新事業計画が掲載されていますので、まずはざっと目を通しておくとよいでしょう。
例えば、東北の企業による承認テーマには以下のようなものがありました。
- ステビア堆肥の生産販売(廃棄物リサイクル)
- 難削材精密切断用小型ワイヤーソーの開発
- 店舗力向上のための「自家製イタリアンジェ ラート」と「自家製生パスタ」の新商品開発に取り組む
- 大館で“難しい階段創り世界一”を目指す階段 屋の人材育成を戦略とする経営体質改革
個人的に気になったのは世界一の階段です。是非世界一の階段ができたらのぼってみたいと思います。経営革新計画を書く上でのポイントは以下の3つです。
- 経営目標を決める
- 目標に向けて新しい事業に自主的に取り組む
- 目標を実現する高い可能性がある
新事業だけをとってつけたように考えるのではなく、まず経営目標を決めてからそれに関連する新事業の計画を立てるのですね。そして、机上の空論ではなく実際に実現していける計画であることも大切です。
②数値目標は厳しい?簡単?
さて、新事業の計画を立てるところまでは何だかできそうな気がしますが、経営革新計画の承認企業となるのは以下の数値目標を達成しなければいけません。
計画期間 |
「付加価値額」又は 「一人当たりの付加価値額」の伸び率 |
「経常利益」の伸び率 |
3年計画 |
9%以上 |
3%以上 |
4年計画 |
12%以上 |
4%以上 |
5年計画 |
15%以上 |
5%以上 |
計画期間が3~5年計画になっていますが、この期間に関しては事業主が3年~5年のいずれかで選択できます。3~5年でこの計画を実行し、この数値目標を達成しますよ~!と宣言するまでが申請時の作業となりますので、実際に3~5年後に業績を報告することはありません。しかし、「この事業主は実際にこの計画を実行しそうもない」、と自治体に判断されてしまうと、承認企業にはなれません。
付加価値額や一人当たりの付加価値額、経常利益は、以下の算式で求められます。
・付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
・一人当たりの付加価値額 = 付加価値額/従業員数
・経常利益 = 営業利益 - 営業外費用(支払利息・新株発行費等)
普段から帳簿を付けるのが得意な方は、これらの数値を見てもそれほど困難には感じません。しかし、そうでない方は「経営革新計画支援機関」という経済産業省認定のお助け機関がありますので、そちらに相談をしましょう。
4. ノープラン・ノービジネス?!
ノープランのビジネスたまたま上手く行く人もいますが、やはりビジネスには計画が大切です。事業計画を立てない経営者が非常に多いため、経済産業省ではこの経営革新計画を企画し、事業所が自分で考え自分で稼ぐ力をつける支援をしています。
これまで企業の中でも一人ひとりの社員に対して年間目標を課すところが多くありましたが、時代の流れで「事業主にも事業計画を立ててもらおう」という風潮になっています。
まとめ
経営革新計画の承認企業になるには、事業所の住所を管轄する自治体に経営革新計画を提出しましょう。承認の割合は3~1割と狭き門ですが、不安な方は経営革新計画支援機関に相談ができます。
経営革新計画に承認されると、低金利での融資や税制面での優遇があります。加えて、経営革新計画の承認企業でないと応募できない助成金・補助金もあるため、経営革新計画の作成は事業を継続する上で欠かせない手続きとなるでしょう。
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