返済が厳しいときは?日本政策金融公庫の条件変更手続きを解説

返済が厳しいときは?日本政策金融公庫の条件変更手続きを解説 更新日:2025.07.31 公開日:2018.03.29起業後の資金調達 – 起業後に実施しておくべき準備
日本政策金融公庫 返済 変更

日本政策金融公庫から借入したあと、売上の減少や材料費高騰などの要因から資金繰りが困難になってしまった場合、返済条件の変更を検討する人もいるかもしれません。

融資を受けたお金は期日通りに返済しなければなりませんが、返済が遅れそうで不安な場合は事前に公庫へ相談し、返済条件の変更を希望することができます。当記事では日本政策金融公庫の条件変更手続きを解説するため、返済に不安を感じている人は参考にしてみてください。

返済が厳しいときは条件変更(リスケ)を検討できる

日本政策金融公庫の返済が厳しいときは、条件変更という手段を検討できます。条件変更とは、返済期間や返済額の見直しを金融機関と協議し、返済負担を一時的に軽減するための手続きです。

【条件変更手続きの例】

項目 概要
元金の据置 一定期間、元金の返済を停止して利息のみを支払う方法
元金の減額 一定期間、元金返済額を減らす方法

条件変更の手続きとして、「元金を据置する方法」と「元金を減額する方法」が挙げられます。どちらも返済負担を軽減する方法ですが、元金を据置する方法のほうが返済負担はより少なくなります。

「返済期間の延長」「返済方法の変更」などの方法も条件変更の手続きとして挙げられます。しかし、元金の据置や減額する方法のほうが資金繰りへの即効性が期待できることから、条件変更の初期対応としてはこれらが実施される傾向にあります。

条件変更は事業を継続するための調整手段であり、金融機関ではリスケジュールと呼ばれることもあります。条件変更手続きを実施する場合は、事業継続のために返済プランも含めた再建計画を立てていきましょう。

条件変更は一定期間しか認められない傾向にある

条件変更によって返済を軽減できる期間は、一定期間に限られる傾向があります。無期限に元金据置や減額が認められるわけではなく、あくまでも一時的な資金繰り改善のための対応として位置付けられています。

一般的には6ヶ月〜1年間を目安に条件変更が認められる傾向にあります。条件変更の期限が近づくと、債務者の資金繰り状況に応じて延長の可否が判断されます。継続を希望する場合は、再度条件変更の手続きをおこなうことになります。

条件変更はあくまで「一時的な支援措置」である点に注意しましょう。返済困難な状況が長期化する場合には、より抜本的な経営見直しが必要になる可能性もあるため、手続きを行う際は条件変更後の返済負担を考慮した計画を立てるようにしましょう。

条件変更の流れ

条件変更を希望する場合は、日本政策金融公庫の所定の手続きを踏む必要があります。自己判断で返済条件を変更することはできず、正式な手続きを経ることにより初めて返済条件の変更が認められるため、条件変更の流れを押さえておきましょう。

【条件変更の流れ】

  1. 相談
  2. 書類提出
  3. 審査
  4. 契約

まず、公庫の取引支店に相談するところから始めます。公庫から経営状況や返済状況をヒヤリングされたあと、返済方法の変更申込書が送付されるため、「経営状況や資金繰りの実情がわかる書類」「今後の経営改善の計画書」などの書類と一緒に返送します。

審査では、現在の返済能力や改善見込みが確認されます。返済条件を緩和することにより、事業の継続や今後の返済が見込まれると判断されると、日本政策金融公庫と新たな返済条件の契約を結ぶことにより手続きが完了します。

なお、条件変更の手続きが完了するまでは、既存の契約通りに返済を継続する必要があります。手続き中に返済を停止すると延滞や未払いとみなされるおそれがあるため、自己判断による返済の停止は避けましょう。

条件変更の留意点

日本政策金融公庫における返済条件の変更を検討している人は、条件変更の留意点も押さえておきましょう。

【条件変更の留意点】

  • 支払総額が増える
  • 断られる可能性がある
  • 今後の資金調達に影響する

条件変更の留意点として、「支払総額が増える」「断られる可能性がある」「今後の資金調達に影響する」ことが挙げられます。返済を軽減できる一方で、今後の経営や資金調達に影響を与える可能性があるため、それぞれの留意点を確認しておきましょう。

支払い総額が増える

条件変更の留意点のひとつは「支払い総額が増えること」です。「元金の据置」や「元金の減額」といった方法は一時的に返済負担を軽減できますが、元金が減らない以上、利息の支払いが継続するため、長期的には支払い総額が増加する傾向があります。

【1年間の利息額の目安を算出する式】

項目 計算式
元金据置の場合 借入残高×金利=1年間の利息額の目安
(例:借入残高500万円×年利2.7%=135,000円)
元金減額の場合 借入残高×金利×平均残高率=1年間の利息額の目安
(例:借入残高500万円×年利2.7%×平均残高率0.85=114,750円)

条件変更によって1年間元金据え置きする場合、「借入残高×金利」の計算式により1年間の利息額の目安が分かります。1年間は元金が減らないため、条件変更しない場合と比較して1年間分の利息を多く支払うことになります。

また、条件変更によって1年間元金を減額する場合、「借入残高×金利×平均残高率」の計算式により1年間の利息額の目安が分かります。元金の減少ペースが鈍くなるため、条件変更しない場合と比較して利息の総額が多くなる傾向があります。

なお、支払総額が増えるかどうかは条件変更の期間によって異なります。短期間で通常返済に戻るならば支払総額はほとんど変わらない可能性もありますが、長期的に条件変更を実施するならば支払総額が増える傾向にあることも理解しておきましょう。

断られる可能性がある

条件変更の留意点のひとつは「断られる可能性があること」です。日本政策金融公庫は債務者の返済の意思や能力を確認した上で条件変更の可否を決めるため、準備不足や根拠の弱い申請内容では希望が通らない可能性もあります。

【条件変更が認められにくいケースの例】

  • 売上が大幅に減少し、回復の見込みが立っていない
  • 事業計画書や資金繰り表が提出されていない、または内容が不十分
  • 条件変更の理由があいまいで、必要性が伝わらない
  • 複数回の条件変更を繰り返しており、抜本的な改善策が見られない
  • 他の金融機関や関係先から協力(同意)を得られていない

たとえば、売上の大幅な減少が続いており、回復の見込みが立っていない場合には、返済能力が不足していると判断されることがあります。また、提出すべき事業計画書や資金繰り表の内容が不十分だと、説得力に欠けるとして審査に通らない可能性もあります。

他には、借入がある全ての金融機関と連携せず、特定の借入先にだけ条件変更を求めるような場合も注意が必要です。関係先からの同意や協力が得られていないと、返済計画の実現性が疑問視され、申請が否認されるケースがあります。

条件変更は、あくまで返済継続の見込みがあることが前提となる手続きです。申請にあたっては、状況の整理と実現可能な計画を示すことが重要となるため、支援機関や専門家を活用しながら申請準備をすることも検討してみましょう。

今後の資金調達に影響する

条件変更の留意点のひとつは「今後の資金調達に影響すること」です。条件変更の履歴があると、金融機関から「資金繰りに不安がある」と判断されやすくなるため、将来的な融資審査において不利に働く可能性があります。

追加融資を希望する際には、公庫を含め金融機関は過去の返済状況を判断材料とします。条件変更の内容や頻度によっては、返済能力に対する信頼性が下がり、融資審査が厳しくなるケースも想定されます。

また、条件変更の履歴が信用情報に登録される可能性もあります。日本政策金融公庫はCICと全国銀行個人信用情報センター(全銀協)に加盟しており、借入や返済状況に関する情報は信用情報機関に登録されるため、条件変更を実施した場合はその情報が登録される可能性があります。

ただし、条件変更をしたら今後絶対に融資を受けられないわけではありません。日本政策金融公庫には「企業再建資金」という条件変更を実施した先が対象となっている融資制度もあるため、今後の資金調達も検討している人はそちらの詳細も確認してみてください。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、事業資金に関する融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から無料診断できるため、日本政策金融公庫から追加融資を受けたい人は無料診断を試してみてください。

金融機関から融資を受けられる?
無料診断

公庫以外からも借入している場合は同様に条件変更する

日本政策金融公庫以外の金融機関からも借入をしている場合は、公庫だけでなく他行にも同様に条件変更を依頼する必要があります。公庫のみ返済条件を変更しても、他の借入がそのままであれば資金繰りの改善は限定的で、経営再建の実効性が乏しくなってしまうためです。

【他行を含めた条件変更の例】

金融機関名 変更前の返済条件 変更後の返済条件
日本政策金融公庫 月々の返済元金・・10万円 元金0円(元金の据置)
A銀行 月々の返済元金・・8万円 元金0円(元金の据置)
B信用金庫 月々の返済元金・・15万円 元金0円(元金の据置)

日本政策金融公庫の返済を元金据置する場合は、他の金融機関の返済も元金据置に条件変更することが一般的です。「他の金融機関の返済は通常通りする」「他の金融機関の返済は元金減額にする」など対応にバラつきがでないようにします。

他行とも返済条件の足並みを揃える背景としては、特定の金融機関だけが優遇されているような状況を避けるという目的もあります。返済条件に差があると、「一部の債権者だけが先に返済を受けている」と公平性を欠く対応とみなされることがあります。

なお、条件変更の相談は、まずは日頃から取引のあるメインバンクから始めるのが基本です。メインバンクは自社の財務状況を比較的よく把握しており、他の金融機関への働きかけや調整役を担ってくれるケースもあるため、最初の相談先として検討してみてください。

返済計画を相談できる機関

日本政策金融公庫に条件変更の手続きを進める際に、返済計画を相談できる機関を紹介します。中小企業や小規模事業者の経営をサポートする公的機関となるため、返済計画の立て方や経営改善に向けたアドバイスをもらえる可能性があります。

【返済計画を相談できる機関】

機関名 概要
中小企業活性化協議会 各都道府県に設置されており、商工会議所等が運営している。「収益力改善支援」「プレ再生支援・再生支援」「再チャレンジ支援」「早期経営改善計画策定支援」「経営改善計画策定支援」といった5つの支援策を提供している。
よろず支援拠点 国が全国に設置している無料の経営相談所。経営上のさまざまな課題に対してワンストップの窓口となっているため、経営改善に向けた幅広い相談ができる

中小企業活性化協議会は、経営改善に特化した公的機関です。収益力改善に向けたアクションプランや収支計画の作成などを支援してくれるため、条件変更の手続きに必要な返済計画の立て方や今後の経営改善策について相談できます。

よろず支援拠点は、経営に関するさまざまな相談ができる機関です。「資金調達」「経営改善」「販路開拓」など、さまざまな課題に対しワンストップ窓口として機能しているため、返済計画の立て方も含めた幅広い悩みを相談できます。

それぞれの機関は各都道府県に設置されています。相談は事前予約制となるため、まずは自身の管轄拠点から問い合わせてみてください。

まとめ

日本政策金融公庫の返済が厳しいときは、条件変更という手段を検討できます。条件変更とは、返済期間や返済額の見直しを金融機関と協議し、返済負担を一時的に軽減するための手続きです。

条件変更を希望する場合は、日本政策金融公庫の所定の手続きを踏む必要があります。自己判断で返済条件を変更することはできず、正式な手続きを経ることにより初めて返済条件の変更が認められるため、条件変更の流れを押さえておきましょう。

条件変更の留意点として、「支払総額が増える」「断られる可能性がある」「今後の資金調達に影響する」ことが挙げられます。返済を軽減できる一方で、今後の経営や資金調達に影響を与える可能性があるため、それぞれの留意点を確認しておきましょう。

資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

融資支援実績 6,000件超独立・開業・事業用資金の資金調達を
ソラボがサポートします。

  • 独立するための資金調達をしたい
  • 金融機関から開業資金の融資を受けたい
  • 手元資金が足りず資金繰りに困っている

中小企業庁の認定を受けた認定支援機関である株式会社SoLabo(ソラボ)が、
あなたの資金調達をサポートします。

ソラボのできること

新規創業・開業の相談受付・融資支援業務、既存事業者の融資支援業務(金融機関のご提案・提出書類作成支援・面談に向けたアドバイス・スケジュール調整等)

今すぐ融資の無料診断