日本政策金融公庫から融資を受けたいと考えている人の中には、現在すでに借入した資金があり、返済中の人もいるかもしれません。追加融資を受けたいけれども、返済負担が増えてしまうことから、借り換えによる融資を希望している人もいるでしょう。
当記事では、日本政策金融公庫は借り換え融資を実施しているのかどうかを解説します。日本政策金融公庫から融資を受ける際に、別の借入を借り換えることができるのか気になっている人は参考にしてみてください。
日本政策金融公庫で既存の借入があれば借り換えを検討できる
日本政策金融公庫からすでに借入してる場合、その借り換えを検討できます。日本政策金融公庫の借入申込書には「借り換え希望の有無」欄が設けられているため、日本政策金融公庫から借り換えによる融資を受けたい場合はその旨を伝えることになります。
借り換えとは、既存の融資を新たな融資で返済することです。「返済元金」「金利」などの条件を組み直しつつ新たに資金調達できるため、個人事業主や中小企業にとって有効な資金繰りの手段といえます。
ただし、公庫が提供するすべての融資制度で借り換えが可能というわけではありません。設備資金や創業資金など、資金使途が厳密に定められているものは、既存借入の返済には使えない可能性があるため、事前に担当者へ確認しておくことも検討しましょう。
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民間金融機関の借入は借り換えできない
日本政策金融公庫では、民間金融機関からの借入金を原則として借り換えることはできません。借入申込書にも、「原則として他の金融機関の借入金のお借り換えにはご利用いただけません」と記載されています。
これは、日本政策金融公庫が「民間金融の補完的な立場」であることが理由です。公庫は、民間では金融支援が難しい創業者や中小企業の資金ニーズに応えるための機関であるため、民間金融の支援内容を否定するような借り換えには応じていないからです。
たとえば、地方銀行や信用金庫などから受けた融資の返済負担が重くなっていても、その融資を公庫で借り換えることは原則として認められていません。申込段階で他行の借り換え資金と判明した場合は、審査を断られる可能性があります。
民間金融機関の借入はそのままに、日本政策金融公庫から新たに融資を受ける場合は申込可能です。その場合は民間金融機関の返済に加え、公庫の返済も上乗せされるため、返済負担を考慮しながら資金調達するかどうかを判断しましょう。
資金使途を偽ると一括返済となる場合もある
日本政策金融公庫からの融資を、実際には民間金融機関の借り換えに充てた場合、資金使途の違反として一括返済を求められることがあります。申込時に申告した資金用途と異なる使い道をした場合は、契約違反とみなされるからです。
たとえば「人件費増加に伴う運転資金」として申請したものの、実際には信用金庫の既存借入を返済したようなケースでは、発覚次第、公庫側から全額返済を求められる可能性があります。悪質と判断されれば、今後の融資取引にも支障が出ます。
金融機関の審査では、決算書や個人信用情報が確認されます。借り換えをした場合、その履歴が決算書や信用情報に記録されるため、日本政策金融公庫が資金使途の矛盾に気づく可能性は十分にあります。
資金使途を偽って融資を受けると、金融機関との信頼関係が崩れます。一括返済のペナルティだけでなく、その後の融資取引を受けられなくなるおそれもあるため、資金使途を偽って他行から借り換える行為は絶対に避けましょう。
借り換え融資のメリット
借り換え融資には、「返済条件を組み直しつつ新たに資金調達できる」メリットがあります。借り換え前の返済条件と借り換え後の返済条件を比較しつつ、そのメリットを確認してみましょう。
【借り換え前後による比較例】
項目 | 借り換え前(既存の融資) | 借り換え後 |
借入残高 | 1,000万円 | 2,000万円 ※うち1,000万円は返済に充てるため、手元に残る金額は1,000万円 |
金利(年) | 2.5% | 2.0% |
返済期間 | 5年間(60回払) | 7年間(84回払) |
月々の返済額 | 33万程度 | 24万円程度 |
たとえば、借り換えすることにより金利が下がる可能性があります。上記の比較表では、借り換え前の金利が2.5%であるのに対し、借り換え後は2.0%になっているため、利息の負担軽減が見込めます。
また、借り換えによって毎月の返済額が抑えられる可能性もあります。上記の比較表では、借り換え前が33万円程度の返済額に対し、借り換え後は24万円程度に抑えられているため、資金繰りの負担軽減が見込めます。
新たな融資によって既存の融資残高を完済する形になるため、差し引いた金額が手元に残ります。「仕入れ代」「販管費の支払い」などの運転資金に充てることができるため、新たな資金需要がある人は借り換え融資の活用を検討してみてください。
借り換え時は新たな資金需要が前提となる
日本政策金融公庫から借り換え融資を受けるときは、新たな資金需要が前提となります。返済条件を組み直せるメリットがある一方で、単なる返済条件の変更を目的とした借り換え融資では、審査に通らない可能性があります。
日本政策金融公庫は「資金需要に基づく前向きな事業支援」を目的とする政策金融機関です。そのため、融資の審査では、資金使途が明確かつ事業の発展に資するかどうかが重視されます。単なる返済条件の緩和や繰り延べを目的とする融資は、制度の趣旨に合わないと判断される可能性があります。
たとえば「既存借入の毎月返済額を減らしたい」といった理由だけでは、借り換えとは見なされない可能性があります。「売上の一時的な減少に伴う運転資金」「人件費の増加に伴う運転資金」など、明確な資金需要がある点を担当者に伝えることが重要です。
既存借入の返済条件を組み直したい場合は、返済条件の変更(リスケジュール)をおこなう方法もあります。「毎月の返済額を減額」「元金据置期間の設定」など、返済条件の緩和ができる可能性があるため、返済条件の緩和が目的の場合はリスケジュールする方法も検討してみてください。
借り換え融資のデメリット
借り換え融資にはメリットがある一方で、注意すべきデメリットもあります。借り換え融資のデメリットも押さえたうえで、借り換えするかどうか検討してみてください。
【借り換え融資のデメリット】
- 審査に落ちる可能性がある
- 返済負担が重くなる可能性がある
借り換え融資のデメリットのひとつは「審査に落ちる可能性がある」点です。日本政策金融公庫は借り換えを理由に審査が甘くなることはないため、「既存融資の返済が滞っている」「直近の業績が悪化している」などの懸念点がある場合は融資が否決される可能性があります。
借り換え融資のデメリットのもうひとつは「返済負担が重くなる可能性がある」点です。返済条件が組み直されるため、そのときの金利や担当者との交渉次第では、毎月の返済額や金利の負担が増加する可能性があります。
借り換えしたい場合は、事前に担当者へ相談することも検討しましょう。「現在の金利」「審査通過に関する所感」など、借り換えの検討材料を教えてくれる可能性があるため、借り換えを検討している人は公庫の窓口に相談することも考えてみてください。
借り換えではなく別口での借入も検討できる
日本政策金融公庫から資金調達したい場合は、借り換え融資ではなく別口での借入も検討できます。既存の融資とは別枠で新たに資金を借り入れる選択肢もあるため、借り換え融資にデメリットを感じた場合は別口での借入も検討してみましょう。
たとえば、既存の借入よりも現在の金利が高くなっている場合は、借り換えによって返済負担が増すことがあります。そのようなケースでは、既存借入はそのまま維持しつつ、別口で必要な分だけを新たに借り入れる方が、資金繰りの観点で適切な判断となる可能性があります。
また、既存の借入を受けた当時よりも業績が悪化している場合、借り換えを申し込んでも審査で不利になる可能性があります。そのような場合では、資金使途が明確で事業の立て直しに資すると判断されれば、特別融資制度を活用した別口での融資が検討される可能性があります。
返済条件や審査結果に不安がある場合は、借り換えではなく別口での借入も選択肢となります。資金使途を明確にしたうえで、公庫の窓口や認定支援機関に相談することにより、どのような資金調達方法が適しているかを検討してみてください。
まとめ
日本政策金融公庫からすでに借入してる場合、その借り換えを検討できます。日本政策金融公庫の借入申込書には「借り換え希望の有無」欄が設けられているため、日本政策金融公-庫から借り換えによる融資を受けたい場合はその旨を伝えることになります。
一方、日本政策金融公庫では、民間金融機関からの借入金を原則として借り換えることはできません。借入申込書にも、「原則として他の金融機関の借入金のお借り換えにはご利用いただけません」と記載されています。
借り換え融資にはメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットを押さえたうえで、自身の経営状況や資金使途などを考慮しつつ、借り換え融資を検討してみてください。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
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2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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