確定申告の時期が近付くと、フリーランスで働かれている方や自営業の方は頭を悩ませるかもしれません。
毎年必ず提出しなければならず、内容次第で自分の支払う税金に影響するもの、それが確定申告書です。
今回の記事では、日本政策金融公庫の融資にも提出する書類である確定申告書の見方をかんたんにご紹介します。
1.確定申告してないと日本政策金融公庫の融資が受けづらいって本当?
利益が出ていて確定申告をしないといけない事業者なのに手続きしていない場合、追徴課税の対象や事業融資を受けられないという状況になる可能性があります。
事業者で融資が受けられないって結構キビシイ状況ですよね。確定申告の対象なのであれば、毎年きちんと申請をした方が身のためではないでしょうか。
2.確定申告書にはAとBがある。どっちを使えばいい?
確定申告書には主にAとBという2つの種類があります。なぜこのような違いがあるのかと言うと、税金を納めるみなさんの働き方や資産状況に違いがあるからです。
①確定申告書Aを使う人はどんな人?
簡単な記入で済むAはシンプルな働き方の人(給与所得のみの会社員や年金所得のみの定年退職者)が使う確定申告書で、予定納税がない人が使います。予定納税とは、つまり事業で儲けて税金を納めることです。普通の会社員で予定納税はありません。
確定申告書Aは確定申告書Bの簡易版です。Bが全部で58行あるのに対しAでは45行まで。13行分コンパクトになっています。普通の会社員の場合は確定申告書Aを使いましょう。
②確定申告書Bを使う人はどんな人?
個人事業主やフリーランスで働いている人は、項目多めの確定申告書Bを使います。また、Aに当てはまらない人もBを使います。確定申告書のBを利用する人で、株式・FX・先物取引での所得や土地や建物や山林(!)の譲渡所得がある場合、この場合は「確定申告書 分離課税用」という用紙もあわせて記入することになります。
3.確定申告書AとBで対象の所得の種類
確定申告書AとBで対象となる所得には、以下のような違いがあります。ざっくり言えば、Bの方は事業をしている人が使うもの、不動産や株や退職金がある人が書くもの、と定義することができます。
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確定申告書A |
確定申告書B |
当てはまる人 |
以下①~③のいずれかに当てはまる方 ①予定納税をしない人 ②会社員 ③年金受給者 |
以下①~③のいずれかに当てはまる方 ①個人事業主 ②不動産所得のある方 ③土地や株式の売却利益がある方 ④退職所得がある方 |
所得の種類 |
【給与所得】 ・給与、賃金、賞与 【配当所得】 ・株式・出資の配当金 【一時所得】 ・懸賞や競馬・競輪で得た所得 【雑所得】 ・年金、作家など著名人以外の人が受け取る原稿料・講演料など |
左のAの所得に加え ・不動産所得 ・土地や株式の売却所得 ・退職所得
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ちなみに、普通の会社員でも確定申告書Bを使っても問題はありません。ただ、記入欄が増えていますのでBを使うメリットって、給与所得のみのサラリーマンにはありません。
4.【確定申告書Bの見方】第二表を書いてから第一表を書く
今回の記事ではフリーランスや個人事業主の方が使う確定申告書Bについて触れていきましょう。確定申告書Bには向かって左側の第一表と右側にある第二表があります。
記入する流れは①第二表を記入して次に②第一表に第二表で記入した数字を書き写すという順番になります。
①第二表を書く前にマイナンバーカードを用意しよう
今の確定申告書にはマイナンバーを書く欄がたくさんあります。第二表を書く前にはマイナンバーカードや通知書を用意しておくとスムーズです。
②第二表の記入例
(1)所得の内訳
第二表の「所得の内訳」の部分は、以下のように所得の種類別に税金を差し引かれる前の金額を記入します。
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所得の種類 |
~氏名・名称 |
収入金額 |
所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の合計額 |
例 |
・配当 ・給与 ・雑 |
・株式会社SBI証券 ・株式会社Write ・カルビー株式会社 |
・\1,000,000 ・\3,000,000 ・ \50,000 |
・\〇〇 ・\〇〇 ・\〇〇 |
一番右側の所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の合計額という部分は、源泉徴収票の以下の赤い部分で囲った数字を記入します。ここに記入する数字を、確定申告書第一表の44番に記入します。
(2)特例適用条文等とは?
第二表の所得の内訳の下の部分には、特例適用条文等という空白欄があります。これは住宅を売却した際の特例や国・地方公共団体から保証金を受け取るといった特例が適用されている方は、ここにその特例の条文名称を記入する必要があります。関係ない方は空欄でOKです。
特例適用条文一覧は以下国税庁の公式ページをご参照ください。
(3)雑所得(公的年金等以外)・雑所得・一時所得に関する事項
ここでは、上記(1)で記入した給与以外の収入に対する経費があるかという点について記入していきます。生命保険からの返戻金などがある場合は、ここに記入します。各所得は(1)で記入したものを写しましょう。氏名・名称については一度(1)で記入していますので「上記の通り」で大丈夫です。
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所得の種類 |
~氏名・名称 |
収入金額 |
経費 |
差し引き金額 |
例 |
配当 雑 雑 |
上記の通り 上記の通り 〇〇生命保険 |
¥1,000,000 ¥50,000 ¥2,500,000 |
¥0 ¥0 ¥1,900,000 |
¥1,000,000 ¥50,000 ¥60,000 |
(4)住民税・事業税
配偶者控除の適用を受けない配偶者がいればその名前とマイナンバーを記入します。住民税の部分には16歳未満の子供がいる場合(扶養控除適用外)にその子供の名前とマイナンバー(これまでは生年月日)を記入します。その下の事業税の部分で番号を記入する欄があります。以下のリンクを参照して、事業内容に当てはまる番号を選択しましょう。
(5)所得から差し引かれる金額に関する事項
こちらは社会保険や配偶者など各種の所得控除に対して記入する欄です。控除を受けない場合は記入の必要はありません。控除の種類には以下のようなものがあります。
- 【雑損控除】納税者または納税者と生計を共にする親族が震災・水害などの自然現象での災害または火災などの災害、盗難などの事故にあい、生活に必要な住宅・家具・衣類などに損害を受けた場合に記入できる控除です
- 【医療費控除】納税者または納税者と生計を共にする親族の1月~12月の医療費総額が10万円以上の場合は確定申告することで税金対象額から差し引いて(控除して)税金を計算してくれる
- 【社会保険料控除】納税者が社会保険料(国民年金・国民健康保険)を支払った場合に受けられる控除で、全額が対象になります
- 【小規模企業共済等掛金控除】納税者が共済・個人型年金・確定拠出型年金(iDeCo)・心身障害者扶養共済制度の掛金を支払った場合に受けられる控除です
- 【生命保険料控除】国民年金や国民健康保険以外に納税者が加入している生命保険の掛金が控除されます
- 【地震保険料控除】納税者が地震保険料を支払った場合に控除されます
- 【寄付金控除】ふるさと納税などの寄付を行った場合に記入します
- 【障害者控除】納税者または納税者と生計を共にする親族が障がい者である場合に使える控除です
- 【配偶者(特別)控除】所得のない、または所得の少ない(103万円以下)の配偶者がいる場合に使える控除です
- 【扶養控除】12月31日時点で16歳以上の扶養親族がいる場合に使える控除です
(6)事業専従者に関する事項
この欄は、あなたが個人事業主または法人として事業を営む場合、年間6か月以上家族に給与を与えて働いてもらっている場合に書く欄です。その働いてもらっている家族(事業専従者)の名前・続柄・仕事内容や給与額を記入します。
(7)配当に関する住民税の特例等
この欄はよくわからない方が多い部分です。一行目の「配当に関する住民税の特例」の部分は株などの有価証券で利益を得た場合で少額配当に当てはまり「確定申告不要制度」を使いたい場合に利用する欄です。以下に当てはまる方は利用した方が節税になります。
【確定申告不要制度とは】
確定申告をしない代わりに、税率20.315%(上場株式の場合)の源泉徴収のみで納税を完了する制度。上場株式等の配当金え持ち株割合が3%未満の人や非上場株の配当金が1銘柄年間10万円未満の人が利用できす。
二行目の「非居住者の特例」については、該当の年度に海外赴任などで日本に住んでいなかった方が受けられる特例となります。
③第二表で記入した数字を第一表に書き写す
(1)所得から差し引かれる金額はそのまま記入
第二表で記入した数字は第一表にそのまま書き写せるものがあります。まず確定申告書Bの左側のピンクで塗られた「所得から差し引かれる金額」の部分。この部分は確定申告書B第二表にある「所得から差し引かれる金額」の数字を書き写せばOKです。
(2)みどり色「収入金額等」
次に記入するのは確定申告書Bのみどり色に塗られた「収入金額等」の部分です。収入とは経費などが差し引かる前の金額です。源泉徴収税が引かれる前の金額をここに記入しましょう。保険の満期返戻金がある場合は、この欄の一時の部分に記入します。
(3)所得金額
次に、その下の所得金額の部分を記入します。この金額は、給与の場合は給与控除、年金の場合は年金控除を差し引いた額を記入します。
【年収別・給与控除計算方法】
年収別で控除額は異なります。
180万円以下 |
収入金額×40%、65万円に満たない場合には65万円 |
180万円超360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超1000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1000万円超: |
220万円 |
【年金控除計算方法】(一部抜粋)
65歳以上と65歳未満で控除額が分けられています。
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年金等の収入 合計額 |
割合 |
控除額 |
65歳未満 |
70万1円~129万9,999円 |
100% |
70万円 |
130万円~409万9,999円 |
75% |
37万5千円 |
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65歳以上 |
120万1円~329万9,999円 |
100% |
120万円 |
330万円~409万9,999円 |
75% |
37万5千円 |
65歳以上の方が控除額は高くなっていますね。
(4)税金の計算
ここでは左側で記入した所得金額の9番を元に所得から差し引かれる金額の合計(25番)を差し引いて計算し、記入します。
まとめ
確定申告書の大まかな見方についてご説明いたしました。個人事業主も方が使う書式はBの方で、第二表を書いてから第一表を書くと少し楽になります。
書類作成の際は、手元に領収書や源泉徴収票などの資料を揃えてから始めましょう。
また、決算書の見方については下記をご確認ください。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
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