事業再構築補助金は、コロナ禍で苦しむ中小企業の事業再構築を支援する補助金です。
補助金額が大きく、また補助対象となる経費も広いため、公募前から事業者の期待が高まっていました。
今回は事業再構築補助金と申請方法について解説します。
1.事業再構築補助金とは?
(1)事業再構築補助金の目的
現在の日本経済は、コロナ禍で令和以前とは大きく様変わりしており、経済社会の変化に中小企業が対応していくためには事業転換を行うことが求められています。
そこで、事業転換を支援していくのが事業再構築補助金の目的です。
(2)申請するための3つの要件
事業再構築補助金を申請するためには、3つの要件を満たすことが必要です。
- 売り上げが減っている
- 事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
①売り上げが減っている
まず大前提として、事業再構築補助金は減っている売り上げを改善するために、事業の転換、再構築を行うことを支援する補助金です。
そのため、売り上げが減っていることが補助金の申請要件となっています。
具体的には、申請前の直近6か月の内、任意の3か月を選び、その期間内の合計売上高が2019年から2020年1~3月の同月と比較して10%以上減っていることが必要です。
②事業再構築に取り組む
事業再構築とは、新分野の展開、業務転換、業種転換、業態転換、事業再編に取り組むことです。
中小企業庁が定める「事業再構築指針」や「事業再構築指針の手引き」に沿った内容の事業再構築が必要なので、申請をしたい場合は内容を確認しておきましょう。
③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
認定経営革新等支援機関とは、「認定支援機関」とも呼ばれ、中小企業が経営相談する先として専門知識と実務経験を持つ機関であると、国が認定した機関です。
事業再構築補助金を申請する場合は、事業者自身が申請する必要があるのですが、事業計画の作成にあたっては認定支援機関に協力してもらわなければなりません。
また補助金額が3,000万円を超える場合は認定支援機関に加えて、銀行などの金融機関も事業計画策定に参加する必要があります。
事業計画は、補助事業終了後3~5年を目途に付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加の達成を見込む計画でなければなりません。
(3)補助額と補助率
事業再構築補助金は申請する企業の規模によって補助額と補助率の内容が変わります。
・中小企業
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補助額 |
補助率 |
通常枠 |
100万円~6,000万円 |
2/3 |
卒業枠 |
6,000万円超~1億円 |
2/3 |
※卒業枠とは
400社限定の特別枠。事業計画期間内に、組織再編、新規設備投資、グローバル展開を行うことで資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長することを目指す事業者向け。
※中小企業に分類される企業
資本金または出資総額 | 常時使用する従業員数 | |
製造業その他 | 3億以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
・中堅企業
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補助額 |
補助率 |
通常枠 |
100万円~8,000万円 |
1/2(4,000万円超は1/3 |
グローバルV字回復枠 |
8,000万円超~1億円 |
1/2 |
※グローバルV字回復枠とは
100社限定で、以下の要件を全て満たす中堅企業のための特別枠。
- 直近六か月中三か月の売上高が依然と比較して15%以上減少している中堅企業であること。
- 策定する事業計画が補助事業終了後3~5年を目途に付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加の達成を見込むこと
- グローバル展開を行う事業である。
※中堅企業に分類される企業
中堅企業には、以下の3項目すべてを満たす企業が分類されます。
- 中小企業基本法に定める中小企業者に該当しないこと。
- 資本金の額又は出資の総額が10億円の未満の法人であること。
- 資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000人以下であること。
・緊急事態特別枠
令和3年1月から3月にかけて栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県に対して発出された緊急事態宣言によって、飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けた事業者が対象となる特別枠です。
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補助額 |
補助率 |
中小企業者 |
【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】 100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】 100万円 ~ 1,500万円 |
3/4 |
中堅企業 |
【従業員数5人以下】 100 万円 ~ 500 万円 【従業員数6~20 人】 100 万円 ~ 1,000 万円 【従業員数21人以上】 100万円 ~ 1,500万円 |
2/3 |
(4)補助対象となる経費
事業再構築補助金の使用用途は、主に設備投資です。
設備費以外にも建物の建設費や改修費、撤去費、システム購入費に利用可能となっています。
新事業の開始に必要になる研修費、広告宣伝費、販売促進費も用途として認められます。
従業員の経費や旅費、不動産や汎用品は対象になりません。
【主要経費】 ●建物費(建物の建築・改修に要する経費)、建物撤去費、設備費、システム購入費、リース費 【関連経費】 ●外注費(製品開発に要する加工、設計等)、技術導入費(知的財産権導入に係る経費) ●研修費(教育訓練費等)、広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等) ●クラウドサービス費、専門家経費補助対象 補助対象外の経費の例 ●補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費 ●不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費 ●販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費 |
2.事業再構築補助金の申請の流れ
(1)事業計画を立てる
事業再構築補助金を申請するには、まず事業計画を立てなければなりません。
事業計画を立てる際には、以下の4項目がポイントとして挙げられます。
●現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性 ●事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等) ●事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法 ●実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む) |
事業計画作成時は、申請時に電子申請システム操作マニュアルの指示に従って、入力漏れがないよう必要事項を入力して申請します。
そのため必要な添付書類は、提出するときに電子化して指定のファイル名をつけておかなければなりません。中小企業庁が公表している「ファイル名確認シート」に従ってファイル名を付けておきましょう。
また事業計画策定の際は認定支援機関の支援を受けて、補助事業終了後3~5年を目途に付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加の達成を見込むものにする必要があります。
資金調達ノートを運営する株式会社SoLaboは認定支援機関です。
事業再構築補助金を申請する際は、ぜひ一度ご相談ください。
(2)補助金の申請を行う
補助金の申請を行います。同一法人・事業者での「通常枠」、「卒業枠」、「グローバルV字 回復枠」及び「緊急事態宣言特別枠」への応募は、1回の公募につきどれか1つのみの申請しかできません。「卒業枠」、「グローバルV字 回復枠」及び「緊急事態宣言特別枠」に応募した場合、特別枠審査に落ちても自動的に通常枠で再審査されます。
また、1度審査に落ちても次回公募時には再度申請を行うことが可能です。現在、4回の公募が予定されているため、特別枠の再審査を考慮すると、最大8回審査を受けられます。
申請にあたっては「GビズIDプライムアカウント」が必要となりますので、早めにアカウントを作成しておきましょう。申請が始まると、中小企業庁の以下のページから電子申請システムへのリンクができる予定となっています。
(3)補助事業が採択される
事業再構築補助金によって補助を受ける事業が採択されます。採択には1か月程度時間がかかることが予想されますが、この期間内に事業を始めてしまうとその分は補助金を受け取れなくなってしまう可能性もありますので、注意しましょう。
(4)交付申請を行う
改めて事業再構築補助金の交付申請をします。
(5)交付が決定される
ここで交付が決定されます。この時点ではまだ補助金は下りないので、資金繰りが悪化しないように気を付けましょう。
(6)補助事業を行う
この段階でようやく補助事業を開始できるようになります。補助事業期間は1年程度で、当然のことながら期間内に設備投資した金額をきちんと管理しておかなければなりません。
(7)実績を報告する
補助事業期間で設備投資した金額や事業を再構築した実績を報告します。
(8)確定検査される
実際の成果が評価され、補助金の額が決定されます。
(9)清算払請求を行う
決定した補助金額分の請求申請を行います。
(10)補助金が交付される
最終的な補助金の支払いが行われます。
3.事業再構築補助金の申請に必要な書類
事業再構築補助金の申請時に必要な添付書類は以下の通りです。
- 事業計画書
- 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
- コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
- 決算書
- ミラサポplus「活動レポート」の事業財務情報
- 海外事業の準備状況を示す書類
- 従業員数を示す書類
- 令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していることを証明する書類
- 2021年1月~3月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類
- 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類
(1)事業計画書
wordなどで作成し、PDFに変換した電子ファイルを電子申請システムで送付します。最大15ページとされていて、最大数を超えても審査対象とはなりますが、指定されている以上、なるべく15ページに収まるように作成するのが良いでしょう。作成には認定支援機関への相談が必要です。
(2)認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書
認定支援機関や金融機関が事業計画書の策定に関与したことを証明する確認書です。形式は指定されておらず、必要事項が記載された電子ファイルを電子申請システムで送付します。
(3)コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類
一部事業や店舗ごとではなく、企業全体で売上高が減少している必要があります。売上高に該当する概念がない事業は、収入に該当する額が対象となります
(4)決算書
直近2年間の貸借対照表、損益計算書(特定非営利活動法人は活動計算書)、製造原価報告書、販売管理費明細、個別注記表です。過去の決算情報を確認するための書類です。2年分が用意できない場合は1期分で構いませんので、電子化して送信します。
(5)ミラサポplus「活動レポート」の事業財務情報
「中小企業向け補助金 総合支援サイト ミラサポ plus」の電子申請サポートを利用して事業財務情報を作成し、PDFデータを送付します。
(6)海外事業の準備状況を示す書類
卒業枠(グローバル展開を実施する場合に限る)・グローバルV字回復枠のみ必要な書類です。
以下の該当書類をWord等で作成し、PDF化して送付します。
- 海外直接投資:海外子会社等の事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料
- 海外市場開拓:海外市場の具体的な想定顧客が分かる資料
- インバウンド市場開拓:インバウンド市場の具体的な想定顧客が分かる資料
- 海外事業者との共同事業:共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む) 等
(7)従業員数を示す書類
緊急事態宣言特別枠を申請する場合に必要です。労働基準法に基づく労働者名簿の写しを準備しましょう。
(8)令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等による影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していることを証明する書類
緊急事態宣言特別枠を申請する場合のみ必要です。
(9)2021年1月~3月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類
こちらも緊急事態宣言特別枠を申請する場合のみ必要です。
(10)審査における加点を希望する場合に必要な追加書類
以下2点の書類を準備することで、審査において加点になる可能性があります。
- 令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、2021年1月~3月のいずれかの月の売上高が前年(又は対前々年)同月比で30%以上減少していることを証明する書類(令和3年の国による緊急事態宣言による影響であることの誓約書)
- 2021年1月~3月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類
上記2点は緊急事態宣言特別枠に申請する場合に必要な書類と重複しますので、緊急事態宣言特別枠を希望される方は追加提出が不要です。
4.事業再構築補助金を申請するときの3つのポイント
(1)補助金は基本的には後払い
補助金は基本的に後払いのため、資金繰りに注意が必要です。余裕がないのに「補助金がもらえるから大丈夫」と事業を急拡大すると、最悪補助金が下りる前に倒産となってしまう可能性すらあります。
資金繰りに余裕を持つ意味でも、融資での資金調達も選択肢の一つとして検討しておきましょう。
ものづくり補助金など、例外として概算払い(先に概算しておいた金額を補助し、金額確定後に過不足を清算する方法)が認められている補助金もあります。事業再構築補助金も概算払いが認められる予定ですが、詳細はまだ未定です。
(2)認定支援機関の協力が必須
事業計画策定には認定支援機関の協力が必須事項となっています。認定支援機関の協力を得ずに事業計画を策定しても、事業再構築補助金の申請はできません。
資金調達ノートを運営する株式会社SoLaboは、4500件以上の資金調達支援実績を持つ認定支援機関です。
(3)補助事業に新規性があるかどうか
事業再構築補助金の補助を受ける事業は、事業者が新たな分野を開拓、展開する事業でなければなりません。
- 過去に製造等した実績がないこと
- 製造等に用いる主要な設備を変更すること
- 定量的に性能又は効能が異なること(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
①過去に製造等した実績がないこと
過去に同じ商品の製造した実績がないことです。現在製造していなくても、過去に製造したことがある場合は対象になりません。
②製造等に用いる主要な設備を変更すること
既存の設備流用でそのまま新たな製品を生産することは、事業再構築とは言えません。設備の変更を行って新製品を製造することが必要な要件です。
③定量的に性能又は効能が異なること
性能や効能を定量的に計測できる商品の場合は、似たような性質の商品でもデータで違うものだと証明できれば新規性が認められます。
まとめ
事業再構築補助金は、コロナ禍の時代を生き抜くための大きな手助けとなる補助金であると期待されています。新分野への事業展開を考えている場合はぜひ申請してみましょう。
補助金は後払いとなるため、資金繰りが悪化する可能性がある場合は、融資での資金調達も視野に入れておくといいでしょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
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【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/
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