日本政策金融公庫の据置期間とは?設定する場合の判断基準と留意点を解説&金利と制度

日本政策金融公庫の据置期間とは?設定する場合の判断基準と留意点を解説 更新日:2025.08.18 公開日:2019.12.19起業のための資金調達 – 日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫 据置期間

日本政策金融公庫から融資を受ける際に、据置期間を設定するかどうか迷っている人もいるでしょう。日本政策金融公庫の借入申込書には据置期間の希望欄があるものの、据置期間の詳細が分からない人もいるかもしれません。

当記事では、日本政策金融公庫の据置期間の概要を解説します。設定する場合の判断基準や留意点も紹介するため、据置期間の設定を検討している人は参考にしてみてください。

据置期間とは利息だけを払い込む期間のこと

日本政策金融公庫の据置期間とは、利息だけを払い込む期間のことです。日本政策金融公庫の用語集では、据置期間とは「元金返済が猶予され利息だけを払い込む期間」と定義されています。

【据置期間の概要】

項目 内容
目的 融資直後の資金繰り負担を軽減するため
設定方法 融資申込時に希望する
設定可能な期間 融資直後~数か月もしくは数年の間(融資制度による)
注意点 据置期間中であっても利息は支払う

据置期間を設定することにより、返済開始直後の資金繰り負担を抑える効果が期待できます。設定する方法は融資申込時に希望を出し、審査担当者に据置期間も含めた融資判断をしてもらう流れになります。

設定可能な期間は、融資直後から数か月もしくは数年の間です。利用する融資制度によって期間の幅はありますが、融資直後の元金の返済を遅らせるものであるため、融資後に据置期間を追加することは原則としてできません。

なお、据置期間中であっても利息の支払いは発生します。据置期間中は元金の返済がストップしますが、融資残高に応じた利息は支払うことになるため、全く支払いがない期間とはならない点を注意しておきましょう。

当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、事業資金に関する融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から無料診断できるため、日本政策金融公庫から融資を受けられるか気になる人は無料診断を試してみてください。

金融機関から融資を受けられる?
無料診断

日本政策金融公庫の据置期間は制度ごとに上限がある

日本政策金融公庫の据置期間は、利用する融資制度によって設定できる上限が決まっています。据置期間の上限は融資制度の性質や目的に応じて設定されているため、据置期間を設定したい場合は利用する制度の詳細を確認することになります。

【融資制度の例】

融資制度 据置期間の上限
新規開業・スタートアップ支援資金 ≪設備資金≫
据置期間5年以内

≪運転資金≫
据置期間5年以内
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付) ≪設備資金≫
据置期間3年以内

≪運転資金≫
据置期間3年以内
一般貸付 ≪設備資金≫
据置期間2年以内

≪運転資金≫
据置期間1年以内

たとえば、新規開業・スタートアップ支援資金の据置期間は「運転資金と設備資金ともに5年以内」です。創業時はとくに資金繰りが不安定な傾向があるため、初期の返済負担を緩和させる目的もあり、据置期間の上限は他の融資制度と比較して長く設定されています。

一般貸付の据置期間は「設備資金2年以内」「運転資金1年以内」と定められています。設備資金と運転資金で設定できる据置期間の上限が異なるため、据置期間を設定したい場合は融資制度だけでなく、資金使途による上限があるかどうかも確認しておくようにしましょう。

なお、実際に設定される据置期間の目安は6ヶ月〜1年程度です。「据置期間が長引くと利息額が増える」「資金繰りが安定するまでの期間として妥当な範囲」などの観点から、実務上では据置期間は6ヶ月から1年程度の間で設定される傾向にあることを留意しておきましょう。

据置期間を検討する場合の判断基準の例

据置期間の設定を希望するかどうかは、事業の特性や資金繰りの状況を考慮して決めることになります。据置期間の有無は毎月の返済負担に深く関わるため、いくつかの判断基準を参考にして検討してみてください。

【判断基準の例】

  • 収益が安定するまでの期間が長い
  • 固定費の比率が高い
  • 仕入れが先行する業種
  • 自己資金に余裕がない

据置期間の設定を検討する際は、事業の状況や性質から資金繰りの見通しを立てることが重要です。据置期間を設定するかどうか迷っている人は、上記の判断基準の詳細を確認してみましょう。

収益が安定するまでの期間が長い

据置期間を検討する際の判断基準のひとつは「売上が安定するまでの期間が長いかどうか」です。売上が安定しないと毎月の返済負担が重くなる傾向にあるため、売上が安定するまで数か月かかる見通しの場合は、据置期間の設定を検討する余地があります。

たとえば、創業時は売上が安定するまでの期間が長い傾向にあります。新規事業は顧客開拓や認知度向上に時間を要するため、売上が軌道に乗るまで半年から1年程度かかることも珍しくありません。

また、季節性の強い業種の場合も売上が安定するまでの期間が長い傾向にあります。観光業や農業、建設業などは繁忙期と閑散期の売上格差が大きく、年間を通じた安定収入の確保に時間がかかる特性があります。

売上が安定するまで相応の時間がかかると予想される場合は、据置期間を設定することにより、借入直後の返済負担を抑えられます。返済不安を軽減し、事業の安定化に向けて集中できる可能性があるため、売上が安定するまでの期間が長い場合は据置期間を設定することを検討してみましょう。

固定費の比率が高い

据置期間を検討する際の判断基準のひとつは「固定費の比率が高いかどうか」です。固定費の比率が高い事業では売上に関係なく一定の支出が発生するため、売上の増減に関わらず返済負担が重くなる傾向があります。

たとえば、店舗移転や新店舗開設を行った場合は一時的に固定費の比率が高くなります。移転先の家賃や内装費の償却、新たな設備導入費用などが重なり、売上が移転前の水準に回復するまでの間は固定費の負担が重くなる傾向があります。

また、事業拡大に伴う人員増強を行った場合も一時的に固定費の比率が高くなります。新規採用した従業員の人件費や研修費用が先行して発生し、新たな人員による売上効果が現れるまでの期間は固定費の負担が大きくなります。

一時的に固定費の比率が高くなることが想定される場合は、据置期間を設定することにより月々の返済負担を軽減できます。ただし、恒常的に固定費が高く、返済に回す余裕がないのであれば、収益構造そのものの見直しが必要となる点を留意しておきましょう。

仕入れが先行する業種

据置期間を検討する際の判断基準のひとつは「仕入れが先行する業種かどうか」です。仕入れが先行する業種では商品代金の支払いが売上回収よりも早く発生するため、売上が回収されるまでの間は資金繰りが厳しくなる傾向があります。

たとえば、卸売業は仕入れが先行する業種のひとつです。メーカーから商品を仕入れて販売先に卸すまでに一定期間を要するため、仕入れ代金の支払いが売上代金の回収よりも先行します。

また、製造業においても原材料の調達が先行する場合があります。受注生産であっても原材料の仕入れから製品完成、納品、代金回収までに数か月を要することがあり、原材料費の支払いが売上回収に先行する構造になります。

こうした仕入れが先行する業種では、据置期間を設定することにより仕入れ資金と返済資金の重複による負担を軽減できます。売上回収までのタイムラグがある業種では、資金繰りが安定するまでの間は据置期間を設定することを検討してみましょう。

自己資金に余裕がない

据置期間を検討する際の判断基準のひとつは「自己資金に余裕があるかどうか」です。自己資金に余裕がない場合は、元金返済が始まると資金繰りが厳しくなるリスクが高いため、手元資金が確保できるまでの期間は据置期間を設定する余地があります。

たとえば、創業時に最小限の自己資金で事業を開始した場合は据置期間の設定が重要になります。3ヶ月分〜6ヶ月分程度の運転資金が確保できていない状況では、元金返済が開始されると資金繰りが急激に悪化する可能性があります。

また、新規投資をおこなう際に大部分を自己資金でまかなった場合も据置期間の検討が必要です。設備投資や店舗拡張などに自己資金を投入した結果、手元資金が不足している状況では、投資効果が現れるまでの期間は資金繰りが困難になる可能性があります。

こうした自己資金に余裕がない状況では、据置期間を設定することにより資金繰りが破綻するリスクを抑えられます。手元資金が限られている場合は、据置期間中に事業を安定させ、確実に元金返済できる体制を整えることを検討してみましょう。

据置期間を設定する場合の留意点

据置期間を設定することは資金繰りの負担軽減に効果的ですが、設定する際にはいくつかの留意点があります。据置期間の設定は一時的な措置であるため、その後の返済計画に与える影響を考慮した上で判断することが重要になります。

【据置期間を設定するときの留意点】

  1. 返済負担をシミュレーションしておく
  2. 面談時に据置期間が必要な理由を伝える

据置期間を設定するときの留意点として、「返済負担をシミュレーションしておく 」「面談時に据置期間が必要な理由を伝える」ことが挙げられます。日本政策金融公庫からの融資に据置期間を設定したい人は、それぞれの留意点を確認してみてください。

返済負担をシミュレーションしておく

据置期間を設定する際の留意点のひとつは「返済負担をシミュレーションしておくこと」です。据置期間中は利息のみの支払いになりますが、据置期間終了後は元金返済が始まるため、据置期間の有無による返済負担の違いを事前に把握しておきましょう。

【据置期間有無による返済負担の比較例】

項目 据置期間なし 据置期間1年設定
融資額 1,000万円 1,000万円
金利 年2.8% 年2.0%
返済期間 7年 7年(据置1年+返済6年)
据置期間中の月額 約23,000円(利息のみ)
元金返済開始後の月額 約140,000円 約160,000円
総利息額 約1,000,000円 約1,130,000円

※日本政策金融公庫「事業資金用 返済シミュレーション」を参考に株式会社SoLaboが作成

据置期間を設定すると、元金返済開始後の月額負担が重くなります。据置期間中に返済されなかった元金を短い期間で返済する必要があるため、月額返済額は据置期間を設定しない場合と比べて高額になる傾向があります。

また、据置期間を設定すると総利息額が増えます。据置期間中も融資残高全額に対して利息が発生し続けるため、据置期間の長さに応じて支払利息の総額は増加することになります。

据置期間を設定すると、全体としての支払総額は増加する傾向にあります。据置期間の長さや金利によっては影響が少ない場合もありますが、事前に据置期間後の返済負担をシミュレーションしておき、その返済額を考慮した資金繰り計画や返済計画を立てておくようにしましょう。

面談時に据置期間が必要な理由を伝える

据置期間を設定する際の留意点のひとつは「面談時に据置期間が必要な理由を伝えること」です。希望の据置期間が設定できるかどうかは日本政策金融公庫の判断によるため、面談時に審査担当者に据置期間が必要な理由を説明することになります。

たとえば、創業融資の場合は事業が軌道に乗るまでの期間を具体的に説明することが重要です。顧客獲得の見込みや売上計画を示しながら、なぜ据置期間が必要なのかを数値根拠とともに伝えることで審査担当者の理解を得やすくなります。

また、設備投資を伴う融資の場合は設備の稼働開始時期や収益効果の発現時期を明確に説明する必要があります。設備導入から本格稼働までのスケジュールや、収益が安定するまでの期間を具体的に示すことで、据置期間設定の合理性を審査担当者に納得してもらえます。

据置期間を設定する合理的な理由を事前に整理し、面談時に伝えることにより据置期間の設定が認められやすくなります。必要に応じて、据置期間を設定した場合の資金繰り表を作成し、面談時に表を用いて説明することも検討してみてください。

据置期間を延長したい場合は支店に相談する

一度設定した据置期間を延長したい場合は、支店に相談することになります。据置期間中に不測の事態が発生し、元金の返済が困難な場合は、据置期間の延長を含めた返済の相談を日本政策金融公庫の担当者におこなう流れになります。

据置期間を延長する場合は、条件変更(リスケジュール)の手続きが必要です。一度設定した返済条件を組み直すことになるため、日本政策金融公庫の担当者に返済条件を変更したい旨を伝え、承認してもらわなければなりません。

ただし、据置期間を延長すると公庫との信頼関係に影響します。返済条件を組み直した履歴が公庫側に残ることにより、今後の追加融資を受けにくくなるおそれがあるため、据置期間の延長は簡単にはできないことを理解しておきましょう。

なお、感染症や災害などの特別な事情がある場合は、通常とは異なる対応がなされる場合もあります。過去に政府が金融機関に対し、据置期間の延長を含めた柔軟な対応を要請した事例もあるため、特別な事情により経営環境が悪化した場合は、日本政策金融公庫の担当者に相談することを検討してみましょう。

条件変更に関する情報が知りたい人は、「返済が厳しいときは?日本政策金融公庫の条件変更手続きを解説」の記事も参考にしてみてください。

まとめ

日本政策金融公庫の据置期間とは、利息だけを払い込む期間のことです。日本政策金融公庫の用語集では、据置期間とは「元金返済が猶予され利息だけを払い込む期間」と定義されています。

据置期間の設定を希望するかどうかは、事業の特性や資金繰りの状況を考慮して決めることになります。据置期間の有無は毎月の返済負担に深く関わるため、いくつかの判断基準を参考にして検討してみてください。

なお、据置期間を設定することは資金繰りの負担軽減に効果的ですが、設定する際にはいくつかの留意点があります。据置期間の設定は一時的な措置であるため、その後の返済計画に与える影響を考慮した上で判断してみてください。

資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

融資支援実績 6,000件超独立・開業・事業用資金の資金調達を
ソラボがサポートします。

  • 独立するための資金調達をしたい
  • 金融機関から開業資金の融資を受けたい
  • 手元資金が足りず資金繰りに困っている

中小企業庁の認定を受けた認定支援機関である株式会社SoLabo(ソラボ)が、
あなたの資金調達をサポートします。

ソラボのできること

新規創業・開業の相談受付・融資支援業務、既存事業者の融資支援業務(金融機関のご提案・提出書類作成支援・面談に向けたアドバイス・スケジュール調整等)

今すぐ融資の無料診断