商売をする人で融資に関心のある方なら、誰もが知っている日本政策金融公庫。
銀行に相手にされない事業経験の浅い事業主でも、自己資金・経験・創業計画書という明確な条件をクリアさえすれば、多くの人が無担保・無保証の融資が利用できます。但し、一方で日本政策金融公庫の融資の審査ではじぶんで申し込む人のおよそ二人に一人は審査落ちすると言われています。主な原因は、日本政策金融公庫の融資の攻略法についてあまり知識がないからです。
そこで今回は、「審査や準備にかかる期間がどのくらいなのか」という点と「基準金利と特別金利の違い」「自分で金利と制度は選べない」という3つの大切な知識についてお話させていただきます。
1.日本政策金融公庫の審査までの期間は平均3週間
日本政策金融公庫で融資を受けには、あなたがまず日本政策金融公庫に電話をして、面談をして、審査をされる必要があります。審査の結果がOKであれば、晴れて融資がおりて、あなたが指定する口座にお金が振り込まれるわけです。つまり、基本的に電話→書類持参で面談→合否連絡。受かった場合は書類を返送→着金という4ステップで融資は行われます。
審査までの期間は平均的には3週間ほどですが、個人差があります。どのような個人差かといいますと、「初めての融資か2回目以降なのか」と「事業が黒字か赤字なのか」という個人差です。
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じぶん一人で申し込む |
認定支援機関に申し込む |
事業成績が悪い または 初めて融資に申し込む |
3週間~1か月以上 |
2週間~3週間以上 |
事業成績が良い または 2回目以降の融資申込み |
最短10日~ (平均2週間) |
最短1週間~ (平均10日) |
日本政策金融公庫で融資を初めて受ける方は、そうでない方と比べて、審査までに時間はかかります。最短でも1週間~10日、土日を挟む・大型連休を挟むのであれば、審査まで3週間以上かかることもよくあります。
2.【融資は計画的に】着金から逆算して融資に申し込もう
〇月〇日までに融資を受けたい!などの具体的な日程のリクエストがあるのであれば、逆算していつまでに申し込まなければいけないのかを考える必要があります。
例えば、初めて融資を受ける方で、5月10日までに絶対に融資を受けたい!受けないと抑えていた物件が逃げてしまう、という事情をお持ちの飲食店オーナーがいたとしましょう。5月10日までの着金であれば、審査から着金までに1週間ほどかかりますので、逆算すると4月のあたまには日本政策金融公庫の融資に申し込まなければいけません。(審査は遅くなる可能性もあるため、さらに1週間ほど余裕をもった計画をオススメします)
3.日本政策金融公庫の融資では必要書類の準備が不可欠です
では、日本政策金融公庫の融資に申し込む準備期間についても考えてみたいと思います。おさらいですが、日本政策金融公庫の融資の流れは以下の通りです。
電話→書類持参で面談→合否連絡。受かった場合は書類を返送→着金
この中で一番のネックなのが、「書類」です。日本政策金融公庫の事業融資でお金を融資してもらうためには、必ず書類を持参して面談に行かなければいけません。この書類作成と準備に一番時間がかかります。
電話はせいぜい30分程度で終わりますし、着金するのは融資に受かった場合に書類を返送すればすぐに振り込まれます。
4.日本政策金融公庫への融資相談はまず電話でします
日本政策金融公庫では一般の方の創業をサポートするべく、創業サポートデスクを設けています。創業サポートデスクの問合せ先は、事業資金相談ダイヤルで承っています。
事業資金相談ダイヤル0120-154-505 または 全国の支店
平日9時~17時
<ポイント> 1.事業資金相談ダイヤルの場合は音声ガイダンスのあとに以下の番号を選択してプッシュしましょう。
2.日本政策金融公庫は日本全国に支店があります。最寄りの支店に直接でんわをしてもOKです。 |
※ポイント※日本政策金融公庫の人と話す内容をメモしておこう!
あなたが日本政策金融公庫に「融資してほしいのですが」と電話をしたら、公庫の人にいろいろ聞かれます。電話をする前に、話す内容を自分でイメージしておくと、電話内容もスムーズに進みます。
「どんな事業をお考えですか?」
「いつ頃創業をお考えでしょうか?」
「事業計画書は作成されていますか?」
などなど。
この時点で、具体的なことが何もできていない方であれば、融資のステップへはまず進めません。あくまで「相談」という形で、公庫の方からいろいろアドバイスをしてもらい、事業計画書などの作成など必要な作業が済んだ段階で初めて、「それでは融資のご面談のご案内をいたします」という話になります。
5.日本政策金融公庫の金利はどれぐらい?金利が適用される仕組みについて
①現在の平均的な金利は2.5%前後
現在の日本政策金融公庫の事業融資の金利は2.5%前後です。
例えば、500万円(金利2.5%)を7年間の毎月返済で借り入れた場合の利息を計算すると、利息は45万円となりました。
しかし、同じ条件で金利が0.1%下がり2.4%になるとどうでしょうか。
利息は43万円と2万円下がる結果になりました。同じ融資額でも、金利0.1%で2万円が変わるのですから、融資額が大きい方はなおさら低金利の日本政策金融公庫は魅力的ですよね。
ちなみに、日本政策金融公庫には国民生活事業部、という部署がありますが、ここは個人事業主や小規模事業主の事業融資を担当している部署の名前です。(融資希望者の事業規模が大きければ、中小企業事業部が担当します)
②基準金利と特別金利の違い
日本政策金融公庫の金利の仕組みは独特です。金利の種類を大きく分けると「基準金利」と「特別金利」の2種類に分けられています。
基準金利は、基本的に適用される金利です。例えば、上記の画像の一番上にある1.担保を不要とする融資を希望される方、のところでは、令和元年12月2日現在では2.15~2.45%となっていますね。
しかし、その右側にある特別金利Aをみると1.76~2.05、特別金利Bでは1.51~1.80と1%台の金利へと利率が下がっています。つまり、日本政策金融公庫の金利にはもともと低い基準金利がありますが、さらに低い金利の特別金利が用意されているというわけなのです。
③カンタンではない特別金利が適用される条件
金利は低い方が良いですよね。どうしたら特別金利が適用されるのでしょうか。1つの方法として、担保をつけることでより低い金利が適用されます。その他には、以下のような適用条件があります。
【特別金利が適用されるための4つの条件】
- 土地や不動産などの担保をつける
- 利用できる人が限定の制度を利用する(女性、若者/シニア起業家支援、災害貸付など)
- 認定支援機関経由で申込みをして「中小企業経営力強化資金」制度を利用する
- 代表者による連帯保証をつける
2つ目は、条件をクリアした人だけが利用できる特別な制度を利用するという方法です。例えば、女性起業家や35歳未満の若者の起業などは国が支援していますので、特別金利が適用されています。
また、認定支援機関を経由して「中小企業経営力強化制度」という制度で融資を受けることです。認定支援機関とは、当サイトのように経済産業省から認定を受けた専門機関です。専門機関の中身は、税理士や会計士や弁護士などの士業の人々が属する一般の組織(企業)です。公庫への融資をじぶんで申し込むのではなく、こういった認定支援機関へ電話をして事業計画書を作成してもらうことで、金利は特別金利が適用されて低くなります。
6.日本政策金融公庫の金利同様、融資制度(プラン)は自分で選べないという話
日本政策金融公庫には複数の融資制度があり、「〇〇資金」や「〇〇制度」という名前で呼ばれています。日本政策金融公庫の融資制度の一覧は、日本政策金融公庫の公式ページに一覧として掲載されています。
ここで重要なポイントとなるのが、「制度は自分で選べない」という点です。ここが、形態のプランを決めるのと大きく違うところです。
例えば、ソフトバンクであなたがホワイトプランを使おうとすると「ホワイトプランにします」とあなたが指定できますよね。しかし、日本政策金融公庫の融資制度の場合はあなたに決める権限はありません。
申込みをしたい制度に合う条件をあなたが満たすことで、日本政策金融公庫の担当者が「あ、この人は女性だから女性、若者/シニア起業家支援資金が使えるね」というように適用してくれるという仕組みになっています。
7.日本政策金融公庫の融資の審査はフィギアスケートのジャッジみたいに複雑?!
語弊があるかもしれませんが、日本政策金融公庫の審査基準はフィギアスケートのジャッジに少し似ています。フィギアスケートでは国際スケート連盟(ISU)が採用しているISUジャッジングシステムという採点方法で審査されています。ISUジャッジングシステムでは、テクニカルエレメンツ(技術)+プログラムコンポーネント(演技構成)+ディダクション(減点)の3つの合計点で順位をつけています。
フィギアスケートの採点結果はプロトコルという書類で管理されています。こちらを見ると、フリーの演技では13の基準(加点があるか、4回転サルコウなどの技の点数)、そしてショートプログラムでは7の基準に沿って点数がつけられています。あわせると、合計20の審査基準があるのです。
日本政策金融公庫の場合は個人のお金の借り入れの話ですので、誰が何点をとったという書類はもちろん企業秘密であり公にはされていません。しかし、フィギアスケートと似たように、事業経験や技術があるのか、事業計画という構成はしっかりしているのか、という採点基準があります。
また、事業経験と計画が素晴らしい場合でも、自己資金がない場合やリボ払いなどの借り入れが多く生活に困っているようなみかけになる場合は、融資の審査では減点となります。
まとめ
日本政策金融公庫で融資の申し込みをしてから審査までは3週間ほど、審査をしてから着金までは1週間ほどの時間がかかります。
そのため、「この日までに融資を受けたい」という希望があるのであれば、最低でも希望日から1か月前には融資の申し込みをしなくてはいけません。
また、金利や制度の適用については申込み書類やあなたの信用度によって総合的に(フィギアスケートのように)判断されます。
自己資金なしやリボ払いが多すぎ、などの人は減点の対象です。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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