日本政策金融公庫の融資の審査では自己資金が必要ってご存知ですか?
日本政策金融公庫(国金)では審査において借入申込書や創業計画書を提出しますが、「自己資金も必要です」と明記されています。 自己資金とはいったいどんな資金を指すのでしょうか?またいくら必要なのでしょうか?
今回の記事では、自己資金とは何か、自己資金を持っていない場合の対処法についてをご説明します。
1.自己資金って何?
自己資金とはあなたがお持ちの余剰資金です。例えば、一番わかりやすいのは銀行や郵便局に預けている預貯金です。
もう少し詳しく説明すると、「平均の口座残高」となります。
毎月、給与として30万円入ってくる方で、月の支払いがだいたい25万円、給料日前日の残高平均が5万円の場合、自己資金は5万円です。自己資金は1時点(給料日等、一番口座にお金が入っている時点)での判断ではありません。その人が所有するお金のうち、「余剰」となる資金のことを指しています。
日本政策金融公庫の融資で提示する自己資金には、預貯金以外にも自己資金として判断してもらうことができる場合もあります。
(1)生命保険等の解約返戻金
「解約返戻金(保険契約解約時に払い戻しされるお金)」のある保険商品に加入されている方は、「解約返戻金」も自己資金として判断してもらうことが出来ます。解約返戻金を自己資金として提示する場合には、保険証券など解約返戻金の目安がわかる書類の提出が必要です。※実施に解約する必要はありません。
(2)配偶者やお子さまの預貯金
配偶者やお子さま名義の預貯金も自己資金として判断してもらうことが出来ます。配偶者やお子さま名義の預貯金を自己資金として提示する場合には、配偶者やお子さまの通帳の提出が必要です。
2.親や親族からの援助を受けた資金は「自己資金」にはならない
日本政策金融公庫の創業計画書には、「必要な資金と調達方法」という項目があり、その中の「調達の方法」には「親・兄弟・知人・友人等からの借入」という項目があります。記載の通り、「借入」という扱いになります。
借入とはなりますが、ご両親や親族からの支援が評価を下げることはありません。支援を受けることができる場合には、検討してみてください。
この際、注意点としては「必ず振り込みをしてもら」ということです。
現金手渡しでの資金援助は「いつ」「誰から」資金援助を受けたのかを明確にすることが出来ません。
そのため、「見せ金(一時的に借入て自己資金を多く見せる)ではないか?」という疑いをもたれる可能性があります。振込で対応してもらうことで、ご自身の通帳にも支援してくれる両親や親族の通帳にも記録が残ります。場合によっては、ご両親や親族の通帳の提示を求められることもありますので、必ず振り込み対応してもらいましょう。
3.なぜ融資の審査で自己資金の有無が求められるのか
自己資金が審査される理由は2つあります。1つは「返済能力」を把握するためです。
ある程度まとまった現金があれば、事業が軌道に乗っていない状態でも、自己資金から返済が可能になります。
日本政策金融公庫は日本国民の税金から成り立っている政府系の金融機関です。そのため、返済できない方が増えると最終的に日本国民に負担がかかってしまいます。
特に、創業・起業時は事業実績を示すことが出来ません。事業実績が提示できないということは、事業が成功するかどうかわからため、返済能力の判断基準の1つとして自己資金の有無が求められる傾向にあります。
また、自己資金を融資の審査の一つの条件にしているもう一つの理由は、「事業主の計画性」を判断しやすいからです。
事業をスタートするにあたり、しっかりと計画的に準備している経営者と、行き当たりばったりの経営者では、前者の方が「お金を貸しても大丈夫」という判断をすることが出来ます。また、事業スタートの準備は起業・創業への熱意としても捉えることが出来ます。そのため、きちんとこつこつと自己資金をためている方を日本政策金融公庫は評価します。
4.「お金は持っている」けど、現金で持っているのはNG
現金至上主義という言葉があります。クレジットカードは借金だから格好悪い。手元に現金があるのが一番いい、という考え方です。
しかし、日本政策金融公庫の融資の審査の場合は以下のようなやり取りをすると審査でNGになります。
- 融資担当者:「自己資金はお持ちですか?」
- あなた:「はい。現金で800万円あります」
- 融資担当者:「現金、、ですか、、。それを、あなたの銀行口座に入れて通帳記入することは可能ですか?」
- あなた:「イヤです。手元に置いておきたいです。」
こんな人、本当にいるの?と思われるかもしれませんが、本当です。私どもへご相談として頂くお電話の数%の確率で、「お金はあるのに貯金箱に入っている」「現金のまま持っていたい」という方がいらっしゃるのです。理由としては、八百屋さんなどで現金での受け渡しや支払いが多く、いちいち銀行に預けに行くのが面倒だという方が多いようです。
単純に「自己資金がない」という理由で融資の審査に引っかかる方はたくさんいらっしゃいます。けれども、「自己資金はあるのに通帳記入が確認できないから」審査に通らないという方もいらっしゃるのです。その方たちは現金でお金を保有している場合があります。
手元現金は、自分で貯めたお金であることを証明できない
手元にある現金は、本当にご自身で貯めたお金であるということを証明することが出来ません。一時的に第三者から借り入れたお金であっても、「お金を持っている」と主張することが出来ます。
先に述べたように、自己資金は返済能力や計画性を判断するための材料であり、それを明確に提示することが出来なければなりません。
所有しているお金が自分のお金であることを証明する方法が通帳の提示です。従って、手元にいくら現金があっても、その現金が自分のお金であることを証明することが出来なければ「自己資金」として判断してもらうことが難しくなってしまいます。
手元現金は、なるべく早く口座へ
手元に現金を保管されている方で、融資を考えているという方は、なるべく早く口座に移してください。融資の直前に口座に入れると、やはり「見せ金ではないか?」という疑いを持たれる可能性があります。出来れば、少なくとも半年以上前に口座に移していただき、
その現金が継続的に増えいることを示すことが出来る状態が理想です。
しかし、すぐに融資を受けなければならいという方で、現在、タンス預金など手元で現金を保管している場合には、今すぐ口座に移してください。そして、きちんと融資担当者に説明しましょう。
5.通帳記入がなぜ日本政策金融公庫の審査で大切なのか?
通帳記入がされている自己資金は、お金の流れが明確です。日本政策金融公庫が自己資金の有無を審査の基準の一つとしている理由は、返済能力があるかだけではなく、計画性があるかをみるためです。
そのため、例えば300万円の自己資金がある場合でもいきなり通帳に「〇月〇日 〇〇 3,000,000 振込」と明細がある場合よりも、1~3年以上かけて5万円ずつくらい積み立てられて増えた預貯金の方が信頼性はり、審査で高評価になりやすい傾向にあります。
また、収支のバランスを見て経営能力をみる目的もあります。面倒ですが、お近くの銀行で通帳を作っておきましょう。出し入れは近所のコンビニの手数料無料の時間帯にすればムダなお金はかかりません。
6.自己資金がない場合の対処法
起業・創業を予定しており、事業用資金の融資を検討している方で、自己資金がない場合にはどうしたら良いのでしょうか?起業・創業まで、まだ期間があるという場合には、出来るだけ貯金することが一番です。最も評価の高い自己資金は、ご自身がコツコツと貯めたお金です。
起業・創業までにあまり時間がないという場合には、上記で説明した、「解約返戻金」や「配偶者・お子さまの預貯金」の確認、ご両親や親族からの資金援助を受けるなどの方法をご検討ください。
また、「担保を設定する」という方法もあります。
日本政策金融公庫は無担保・無保証人で融資を受けることが出来ます。しかし、担保設定することで、融資が通りやすくなる可能性があります。土地や建物などの不動産を所有されている場合には、担保を設定するということもご検討ください。ただし、住宅ローンを組んでいる不動産は、担保を設定することが出来ない可能性があります。担保を設定する場合には、事前に担保提供できるかどうかもきちんと確認しましょう。
まとめ
毎月の通帳残高を気にしていないという方もいらっしゃるかもしれませんが、平均的な通帳残高が自己資金として判断されるということを理解し、融資をご検討の方はなるべくこまめに通帳記帳を行うようにしましょう。
ご自身の預貯金以外にも、配偶者やお子さまの預貯金、保険等の解約返戻金は自己資金として判断してもらうことが出来ます。ご両親や親族からの資金援助は借入ですが、余剰金にはなりますので、必ず振り込みで入金してもらうようにしましょう。
1つ1つの行いが、融資審査を有利に運びます。
日本政策金融公庫で融資を受ける場合には、少なくとも必要な事業用資金の1/10以上の自己資金が必要です。自己資金が少ないという方は、出来るだけ頑張って準備していただくしかありません。自己資金が全くない、自己資金が少ないという場合には、
どのような方法があるかを探るためにも、認定支援機関に登録している資金調達の専門家に相談してみてください。
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