個人事業主で開業!日本政策金融公庫からの融資を受けよう。
個人事業主とは「会社を設立せずに事業を行う事業主」のことで、「街でラーメン屋を経営する」方も「インターネット上で輸入品を個人で販売している」方も個人事業主です。
多くの個人事業主は、日本政策金融公庫で創業融資を受けて、事業をスタートしています。
創業融資を申し込むには書類を提出しなければいけませんが、必要な書類は最低でも2種類以上あり、その他にも用意すべき書類が7種類もあります。審査を通過するために、個人事業主は各書類を完璧に用意する必要があります。
今回の記事では、個人事業主が融資で必要な書類の種類、記入の方法、提出の方法をご説明していきます。
1.「日本政策金融公庫」の公式HPに書かれている必要書類とは
個人事業主が創業時に融資を受ける場合、その金融機関は「日本政策金融公庫」が圧倒的に多いという事実があります。なぜなら、日本政策金融公庫自体が「銀行からお金を借りられない小規模事業者に事業融資をする」ためにつくられた、税金で運営されている政策金融機関だからです。
①所定の借入申込書 |
融資を受けるための申込書 |
②添付書類1 創業計画書 |
創業する目的や動機と経営上の課題項目の選定、業績推移と今後の計画書 |
③添付書類2 見積書 |
【設備資金が必要な方のみ】 レストランなどを経営される方で内装工事をする方は、その見積書や工事請負契約書を提出します。 |
④添付書類3 不動産の登記簿謄本 または登記事項証明書 |
【担保をご希望の方のみ】 管轄の法務局またはオンラインできます |
⑤添付書類5 都道府県知事の推薦書 または生活衛生協同組合の「振興事業に関わる資金証明書」 |
【生活衛生関係※の事業を営む方のみ】 ※理容・美容・クリーニング・銭湯・旅館・ホテル・民宿・映画館など まずは日本政策金融公庫へ相談をしてから生活衛生指導センターへ連絡します。 |
上記をみると、添付書類については1以外は該当する人のみが提出すればいいということになっており、添付書類以外は「借入申込書」の1種類のみとなっています。
2.日本政策金融公庫の公式ホームページに記載がない「創業融資の必要書類」とは
日本政策金融公庫の公式ホームページの記載を鵜呑みにした方は「日本政策金融公庫で融資を受けるのは簡単そうだ」と感じることでしょう。
しかし、実際に日本政策金融公庫の創業融資に通った方が提出した書類はもっと大量です。必要な書類を大まかに分けると、以下の3種類に分けられます。
- ①本人と本人の保持する自己資金を確認するための書類
- ②本人に必要なお金の支払い(ローン)や事業に必要な資金を確認するための書類
- ③事業を知るために必要な書類
適切に記入された提出書類が多ければ、それだけあなたの計画を詳しく説明していることになるので、日本政策金融公庫の審査に通る可能性は高くなります。
それでは、日本政策金融公庫の創業融資を受けるために個人事業主が提出する必要のある「借入申込書と創業計画書以外の書類」について、記入方法を1つずつみていきましょう。
①本人と本人の保持する自己資金を確認するための書類
1つ目は、創業融資を申し込む本人の身分や印鑑登録状況などを確認するための書類です。また、本人の自己資金を把握するために預金通帳のコピーも提出する必要があります。
申込書類の名称 |
ポイント・注意点 |
本人確認書類のコピー |
運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどのコピー ※ない場合は保険証+クレジットカードまたはキャッシュカードでOK |
印鑑証明書 |
印鑑証明書は、事業所管轄の市区町村の役場で登録できます。登録の際は、実印と身分証明書を持参しましょう。 |
申込人名義の銀行通帳コピー |
直近6ヶ月分の預金通帳またはコピーが必要です。 (メモ) 銀行の通帳コピーは、配偶者のものも併せて提出できれば一緒に提出できます。配偶者の通帳コピーは、「家族が事業に協力している」「申込者が万が一の時にも、返済できる根拠になる」という理由で、プラスの評価につながります。 |
最近増えているのは、ネット銀行の口座のみをお持ちで紙の通帳を持っていない申込者です。ネット銀行の口座しか持っていない場合は、Web明細をコピーすれば自己資金を証明する書類として利用できます。
自己資金の最低の目安は100~300万円程度ですが、人からもらったお金ではなく、一定期間にコツコツと通帳記入されたお金が理想的です。
②お金(ローン等の支払い・事業に必要な資金・税金)を確認するための書類
2番目の必要書類は主にお金の額面が分かる証拠書類です。創業融資では一般的に300~1,000万円の事業用の資金を借りることができますが、大事なポイントは「事業用のお金をかしてくれる」という点です。つまり、生活費としては利用することは不可なのです。
そのため、貸したお金を生活費として使う可能性のある事業主へ日本政策金融公庫はお金を貸してくれません。事業主がお金に困っていないかを、日本政策金融公庫は以下の4点で判断していきます。
- ①リボやカードローンなどの借入額がどのくらいあるのか
- ②公共料金や携帯電話の支払いの遅延がないのか
- ③納めるべき税金を納めているのか
- ④住宅費の支払いがどれぐらいあるのか
2番目の必要書類は、この4点を確認するために提出する書類です。
申込書類の名称 |
ポイント・注意点 |
他社ローンの支払い明細書 |
【リボやカードローンなどの借入金がある場合のみ必要】 クレジットカードなどのWebサイトマイページから印刷できます。 (メモ) 現在、クレジットカードや消費者金融で借入している方は、今までどれくらいを返済してきて残債があとどれくらいあるのかを明確にする資料を提出します。 |
代表の自宅の水道・光熱費の支払状況の分かる資料 |
生活費を滞納していないかをチェックします。水道・光熱費等の領収書や口座引落がわかる通帳コピーを提出します。 |
個人の源泉徴収票または確定申告書2年分 |
直近2年分が必要です。 |
固定資産税の領収書 および固定資産税課税明細書 |
【持ち家の方のみ】 |
住宅ローンの返済予定表 |
【持ち家の方のみ】 |
③事業を知るために必要な書類
3つ目の必要書類の種類は事業を説明するやめの書類たちです。この書類は、最もちからを入れるべき書類と言えます。事業計画がしっかりしている場合は、多少自己資金が少ない場合(と言ってもまったくないのはNG)も審査上の弱点をカバーできる場合があります。
申込書類の名称 |
ポイント・注意点 |
企業概要書 |
【創業から1年が経過している方のみ】 企業として年月がたっているため、どのような企業なのかを説明する概要書が必要です。 |
売り上げの根拠資料 |
【創業から1年が経過している方のみ】 請求書や通帳コピーを用意しましょう。 |
所得税・住民税・消費税などの各種税金の納付の領収書 |
【創業から1年が経過している方のみ】 毎年、自治体から交付されている納付書で支払った際にもらえる領収書です。口座引落やカード決済の場合は、通帳コピーかカード支払い明細のコピーで証明できます。 |
直近年度分の確定申告書、青色申告決算書または収支内訳書 |
【創業から1年が経過している方のみ】 税務署で申請した際の控えを提出しましょう。税金を支払っていない場合は日本政策金融公庫でのあ融資は受けられません。 |
営業許可書、資格・免許 |
【許可が必要な事業をする方のみ】 飲食店、不動産屋など営業許可書が必要な事業をするのであれば営業許可書の提出が必要です。 (メモ) その他にも、美容院であれば美容師免許、整骨院をするのであれば柔道整復師などの必要資格の証明書を準備しましょう。 |
3.借入申込書の記入方法
融資をうけるための基本中の基本の書類が「借入申込書」です。
①氏名は手書き、捺印は印鑑証明書と同じものを使用
氏名は必ず辞書で手書きで記入します。捺印に使用する印鑑は、印鑑証明書と同じものを使用しましょう。別のものを使用した場合、電話がかかってきて再提出になる可能性があります。
②住所の記入欄は3つ。3つ目は自宅住所・1.2つ目は開業(予定)場所の住所
住所を書く欄は全部で3か所あります。1.2つ目は開業場所の住所を記載します。3つ目は自宅住所です。自宅を開業場所にする場合は、1~3つ目まで自宅住所を記載します。
③創業年月・業種・従業員数
これから創業しようとしている方は、創業した年月を記入します。これから創業していを予定している方は、その予定年月を記入します。
業種についてはほとんどの業種は融資対象となっていますが、風俗など一部融資NGの業種もあります。
従業員人数ですが、自分ひとりだけの場合は「0人」と記載します。家族従業員の場合も給与を与えて労働してもらうなら、従業員人数に含めます。
④【その他】お申込み金額とお借入れ希望日
申し込み名や住所、電話番号はそのまま記入すればよいだけなので、特に問題はないでしょう。
記入のポイントは、お申込み金額とお借入れ希望日です。日本政策金融公庫と過去に取引のない新規の事業主であれば、現実的な借入額は300~1,000万円程度にとどめるとよいでしょう。なぜなら、創業融資では融資希望額の最低1/10以上の自己資金(預貯金)をもつことが融資の必要条件となっています。
お借入れ希望日についてですが、日本政策金融公庫では申込みから着金まで約1~1.5ヶ月ほどかかります。そのため、2~3週間後の融資希望日は設定しない方がいいでしょう。希望日は1~1.5か月後以降の余裕をもった日程を記入してください。
4.創業計画書の記入方法
日本政策金融公庫で創業融資を受けるのであれば、この創業計画書の中身をしっかり記入することで融資の成功率はアップします。
ポイントは、記入する数字はできるか根拠に基づくという点です。適当に記入しても、「この数字の根拠はなんですか?」と融資担当者から質問されてしまいます。
そのため、同事業での経験がある場合はその際の売上明細などを添付し、「同じ事業をした時に単月でこれだけの数字が見込めましたので、、」と説明できるようにしておきましょう。
5.企業概要書の記入方法
企業概要書とは、既に法人を設立している場合に提出する書類です。事業の経歴や従業員人数・関連企業・取り扱い商品やサービス・取引先など、一枚の紙をみるだけで企業の概略が一目でわかる内容に仕上げなくてはいけません。
また、事業として借入がある場合は正直に記入する必要があります。
6.創業融資の申し込み書類の一部を紛失してしまった場合はどうすればいい?
創業融資を申し込む段階で、いろいろな書類が必要と言われても焦ってしまいます。特に、日頃使わない書類は手元にない場合もあります。
以下を参考に、時間に余裕をもって必要な場合は再交付手続きをすすめてください。
【運転免許証の再交付】
- まず最寄りの交番へ遺失物届を提出しましょう。
- 受付場所:住民票のある警察署または運転免許試験場または運転免許センター
- 受付時に必要な書類:①住民票・マイナンバーカード・健康保険証・学生証などの本人確認書類②申請用写真1枚③再交付手数料:3,500円
- 申請から運転免許証の受け取りにかかる期間:運転免許センター・運転免許試験場での手続きは即日。警察は2~3週間。
【パスポートの再交付】
- 受付場所:各地域のパスポートセンター
- 受付時に必要な書類:①紛失一般旅券当届出書1通②本人写真③本人確認書類④紛失を証明する書類
- 申請からパスポートの受け取りにかかる期間:最短で6営業日
【マイナンバーカードの再交付】
- 受付場所:各自治体の住民課戸籍年金担当窓口
- 受付時に必要な書類:①運転免許証・パスポートなどの本人確認書類②最近6か月以内の本人写真(4.5×3.5cm)③紛失の経緯を証明する書類(警察署へ提出した遺失物届や自分で書いたメモなど)
- 申請からカードの受け取りにかかる期間:約1か月
【印鑑署名書の再交付】
印鑑登録の廃止手続きをしてから、再度印鑑登録の手続きをする必要があります。受付場所:各自治体の市民課など
- 持参物:本人確認書類、登録印、印鑑登録証(カード)の再発行料は300円 ※必要な方は委任状または代理人の印鑑
- 申請からカードの受け取りにかかる期間:即日~翌営業日
7.全部イチから作る必要はありません!フォーマットまたは認定支援機関を活用しよう
「書類が多くて大変だな~」と気を落とす方もいらっしゃるかもしれません。しかし、領収書や支払い明細書・本人確認書類など、はただ持っているものを持参するかコピーすればいいだけです。
日本政策金融公庫では、中小企業庁の認定した街の税理士や弁護士など(認定支援機関と言われます)を経由して申し込むめば、創業計画書や企業概要書の作成をしてもらえ、認定支援機関によっては面談当日までのサポート(何をどうすればいいかの指示、面談への同行)などを行ってくれます。
8.提出方法は、まず日本政策金融公庫に電話相談して、OKなら持参!
日本政策金融公庫で創業融資を受けたいのなら、まずはどの支店で融資を受けたいのかを公式ホームページで確認しましょう。
日本政策金融公庫は南は沖縄~北は北海道まで支店があります。基本的には、事業を行う場所の最寄りの支店がよいでしょう。
支店を確認したら、以下の事業資金相談ダイヤルに平日の9~17時の間で「創業融資を受けたいのですが」と相談しましょう。
0120-154-505
電話相談をして、特に問題なさそうだと判断されれば、「一度公庫へいらしてください」「どの支店がご希望ですか?」と聞かれます。
その際に、必要書類を言われますので、メモを取ってから準備しましょう。
9. 中小企業経営力強化資金を利用する場合は、創業計画書だけではなく「事業計画書」を提出します
日本政策金融公庫で創業融資を利用する場合は「新創業融資制度」という制度のみだと思われがちですが、これから創業する方でも「中小企業経営力強化資金」という制度を利用することが可能です。
新創業融資制度 |
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条件:創業または創業から2期以内の個人事業主または法人が利用できる 融資限度額:1,000万円 年金利:1.7%~2.5%程度 |
条件:事業で新たな利益・雇用を創出しようと努める事業主、認定支援機関のアドバイスを受けて事業計画を作成する事業主 融資限度額:最大2,000万円 年金利:1.4%~2.2%程度 |
中小企業経営力強化資金を使うための条件は、新創業融資制度のように「創業から2期(年)以内の事業主」という縛りがありません。また、認定支援機関を経由することにより年金利が0.3%ほど低金利になり、融資の限度額が最大1,000万円ほど引き上げられる可能性もあります。
中小企業経営力強化資金制度を利用する場合は、上記の提出書類に加え、別途「事業計画書」を提出する必要があります。認定支援機関に依頼すると、この事業計画書を有償で作成してくれます。
※認定支援機関の融資サポート料金・サービス内容(事業計画書作成や面談対策など)は各機関ごとに異なります。詳細は、各認定支援機関にお問合せください。
まとめ
融資の必要書類は最小限でも8種類、最大では18種類と非常に多く、準備の手間や時間は意外にかかります。
しかし、これらの書類も日々スケジュールを決めて揃えることで、余裕をもって準備できますので、スケジュール管理をして万全な体制で審査に臨みましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/
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