資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか?

資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか? 更新日:2025.06.16 公開日:2018.02.16起業のための資金調達 – 日本政策金融公庫からの融資
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日本政策金融公庫から創業融資を受けたいと考えている人の中には、資本金が1円の法人を設立した人もいるかもしれません。法人として融資を受けたいけれども、資本金が少ないことを理由に融資が断られるかもしれないと不安な人もいるかもしれません。

当記事では、資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられるかどうかを解説します。資本金が少ない場合の対策も紹介するため、資本金の少なさに関して不安を感じている人は参考にしてみてください。

資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられる可能性はある

資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられる可能性はあります。なぜなら、日本政策金融公庫の審査は資本金の額面だけでなく、事業計画の妥当性や自己資金の準備状況など、さまざまな観点から総合的に評価するためです。

日本政策金融公庫の融資には、資本金に関する要件はありません。「新規開業・スタートアップ支援資金」「創業支援貸付利率特例制度」などの創業前後に活用できる制度においても、資本金に関する要件はないため、資本金が1円の法人であっても融資の検討対象から外される可能性は低いです。

審査においてより重要視されるのは、事業のために準備してきた自己資金です。創業融資では、相応の自己資金を投入した資金計画を立てなければ融資を受けることは難しいため、登記上の資本金の額よりも、実際に手元にある自己資金額のほうが重視される傾向にあります。

ただし、法人が融資を申し込む際は、登記事項証明書(登記簿謄本)の提出が必要です。法人の謄本には資本金の額が記載されているため、その金額の多寡が審査に全く影響しないとは断言できない点は留意しておきましょう。

資本金と自己資金の違い

資本金と自己資金はどちらも創業者が用意した資金という点で混同されやすいですが、異なる性質の資金です。創業融資の審査においても資本金と自己資金は切り離して判断されるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。

【創業時における資本金と自己資金の特徴】

項目 内容
資本金 ・会社を作るときに、会社に出資したお金を指す
・法人の登記簿謄本に記載される
・原則として引き出せない(手続きが必要)
自己資金 ・会社を作る人が所有する全資金のうち、事業に回すことができる資金を指す
・法人の登記簿謄本には記載されない
・自由に引き出しできる

創業時における資本金とは、法人を立ち上げるときにその会社へ出資したお金のことです。発起人によって払い込まれた資本金は、法人の登記簿謄本に記録され、法人の資産として取り扱われるため、個人が資本金を自由に引き出すことは原則としてできません。

創業時における自己資金とは、法人を立ち上げる人が所有する全資金のうち、事業に回すことができるお金のことです。事業のために自由に出し入れできる資金となるため、日本政策金融公庫の審査では、資本金よりも自己資金額を確認する傾向にあります。

資本金は、自己資金の一部を充てて設定するのが一般的です。ただし、自己資金のすべてを資本金に回してしまうと、運転資金など柔軟に使える手元資金が不足してしまいます。資本金の額は対外的な信用を示す目安にはなりますが、それだけで事業の安定性は判断されない点を理解しておきましょう。

資本金が少ない場合の審査対策

日本政策金融公庫は資本金の額を確認しているため、資本金が1円の場合は審査に少なからず不利な影響を与える可能性があります。とはいえ、日本政策金融公庫の融資はさまざまな観点から総合的に判断することになるため、資本金1円で会社を設立した場合は相応の対策をおこなってから審査に臨んでみてください。

【資本金が少ない場合の審査対策】

  • 相応の自己資金を用意する
  • 妥当性のある創業計画書を作成する

資本金が少ない場合の審査対策として、「相応の自己資金を用意する」「妥当性のある創業計画書を作成する」方法が挙げられます。資本金が少ないことに不安を感じている人は参考にしてみてください。

相応の自己資金を用意する

資本金1円の法人が日本政策金融公庫から創業融資を受けるための対策として、相応の自己資金を用意する方法があります。日本政策金融公庫「新規開業実態調査」によると、創業資金のうち自己資金の平均割合は約24%とされているため、融資希望額に対して約3割の自己資金を用意することを検討してみましょう。

自己資金を用意することは、創業への熱意や準備状況を示す指標となりえます。とくに、資本金1円の法人の場合は、事業にどれだけ本気で取り組む意思があるかが数字で伝わりづらいため、自己資金の蓄積によって誠実な計画性を示すことを検討する余地があります。

たとえば、創業にかかる資金が1,000万円必要な場合、そのうち自己資金は300万円を目安に用意しておきます。24%はあくまで開業者の平均値となるため、「返済できる融資額かどうか」「開業後の運転資金に余裕があるかどうか」など、用意すべき自己資金額は自身の状況によって判断が必要です。

自己資金の金額だけでなく、その出所や貯蓄の経緯も審査で見られます。他の金融機関から一時的に借入した資金(見せ金)は自己資金とはみなされないため、計画性をもって自己資金を貯蓄してきた経緯を示せるようにしておきましょう。

妥当性のある創業計画書を作成する

資本金1円の法人が日本政策金融公庫から創業融資を受けるための対策として、妥当性のある創業計画書を作成する方法があります。創業融資では、自己資金に加えて創業計画書の内容が審査の可否を決める判断材料となるため、妥当性がある内容かどうかをとくに意識して作成してみましょう。

【創業計画書の妥当性に関するチェックポイントの例】

項目 チェックポイントの例
創業の動機 ・事業への熱意があるか
・動機や事業の目的が明確か
経営者の経歴 ・これから始める事業と関連する経験や知識があるか
取扱商品・サービス ・強みやセールスポイントが明確か
・競合との差別化が図れているか
取引先 ・取引関係等 ・販売先や仕入先の見込みがあるか
・入出金のサイクルに無理がないか
必要な資金と調達方法 ・資金使途(設備・運転)の内訳が明確か
・金額の根拠(見積書など)があるか
事業の見通し(収支計画) ・売上や費用の算出根拠が明確か
・収益から借入分の返済が可能か

創業計画の妥当性を判断するうえで重要なのは「事業内容や戦略に一貫性があるかどうか」です。商品やサービスの特徴、戦略などに一貫性があれば、計画に筋が通っており妥当性のある創業計画であると評価される可能性があります。

また、資金計画や収支計画の数値の根拠が明確かどうかも、創業計画の妥当性を判断する材料となります。「設備の見積書」「過去の実績データ」など、資金計画や収支計画に記載する数値に根拠があると、創業計画の妥当性があると評価される可能性があります。

とくに、資本金1円の法人の場合は計画の準備不足を懸念されやすいです。「資金面での準備不足」「事業内容の詰めの甘さ」など、創業計画が十分に練られたものであるかどうかを慎重に判断される傾向にあるため、数値の根拠や計画の一貫性を意識して作成することを検討してみてください。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)は融資のサポート実績が8,000件を超える認定支援機関です。日本政策金融公庫から融資を受けられるかどうか無料診断を実施しているため、資本金に関して質問や不安がある人は、まずはお気軽にご相談ください。

まとめ

資本金1円でも日本政策金融公庫から創業融資を受けられる可能性はあります。なぜなら、日本政策金融公庫の審査は資本金の額面だけでなく、事業計画の妥当性や自己資金の準備状況など、さまざまな観点から総合的に評価するためです。

ただし、法人が融資を申し込む際は、登記事項証明書(登記簿謄本)の提出が必要です。法人の謄本には資本金の額が記載されているため、その金額の多寡が審査に全く影響しないとは断言できない点は留意しておきましょう。

資本金が少ない場合の審査対策として、「相応の自己資金を用意する」「妥当性のある創業計画書を作成する」方法が挙げられます。資本金が少ないことに不安を感じている人は参考にしてみてください。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

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