融資型クラウドファンディングとは、資金が必要な企業と投資をしたい投資家がWEB上で出会うマッチングサービスです。
通常、融資は銀行などの金融機関が企業に対して行います。しかし、融資型クラウドファンディングでは金融機関が介さず、ネット上の情報のみで法人が個人投資家から融資を受けられます。
市場規模が拡大している融資型クラウドファンディングですが、いくつかの詐欺クラウドファンディング業者が行政処分を受ける事例も発生しました。今後、金融庁はクラウドファンディングをどのような立ち位置でみていくのでしょうか。
本記事では、融資型クラウドファンディングと金融庁との関係性を主に解説します。
1.融資型クラウドファンディングとは
融資型クラウドファンディングはクラウドファンディングの5つある型(購入型・寄付型・融資型・ファンド型・株式型)のうちの一つです。別名・貸付型クラウドファンディングともソーシャルレンディングとも言われています。
融資型クラウドファンディングの仕組みをご説明します。融資型クラウドファンディングを運営する会社(以下、クラファン会社)がまず一般の投資家に向けて利回り6%などと謳い小口の資金(10万円~100万円ぐらい)を募集します。そして、投資家から集めた小口資金をまとめて大口資金とし、資金が必要な企業へ融資をします。
2.融資型クラウドファンディングで問題視されている点
①融資を受ける法人企業を匿名にしている点
融資型クラウドファンディングに問題があると考える人は、一般の投資家に向けクラファン会社が投資する際に案件情報を十分に与えていない点に疑問を感じています。
通常、私たちが投資をする際は証券会社や株式会社が提示する情報(投資信託の場合は基準価額、目論見書、過去の成績)を十分に吟味してから投資をするかどうかを決定するものです。投資家が期待しているのは、投資先の業績がうまくいき、自分が投資した分に対してリターン(見返り)があることだからです。
例えば、Aファンドの融資額は2,000万円だとします。個人で2,000万円をポンと一括で出し個人投資家はなかなかいないため、クラファン会社はAファンドを複数の案件に分けて募集します。ファンドを構成する案件では「有名不動産会社 利回り7% 5万円」などと投資条件が書かれていますが、5万円という額は2,000万円を投資しやすく分割するために実際に融資先の企業が必要とする額ではない仮の額として設定しています。
2.融資型クラウドファンディングへの金融庁の対応
①最初は金融庁から融資型クラウドファンディングの匿名・複数化を指導していた
実は、融資型クラウドファンディングで現在問題しされている匿名と複数化については、クラファン会社が金融庁の指導に準じて行っていたという見方も見逃せません。
クラファン会社の中には融資先の企業名を公開し、複数化を取りやめる動きも出ていましたが、融資先の企業名が分かった状態で個別の法人企業へ個人投資家が融資をすることは「賃金業法」違反であると金融庁が指導をしたのです。
賃金業法を順守すると、企業名の分かっている一つの企業へ個人投資家が融資をする場合、個人投資家は賃金業者扱いになり賃金業者としての登録をしなくてはいけない、との見解を示したのです。
②金融庁によるmaneoなどのクラファン会社4社の行政処分
2017年から2018年にかけて、以下のクラファン会社4社が金融庁より賃金業法違反で行政処分を受けました。
- みんなのクレジット(1回目:2017年3月30日、2回目:2017年8月2日)
- ラッキーバンク(1回目:2018年3月2日、2018年3月14日)Lucky Bank
- maneo(2018年7月13日)日本初!ソーシャルレンディング|maneo
- トラストレンディング(1回目:20018年12月14日、2回目:2019年3月8日)資産運用の新提案 ソーシャルレンディングサービス|Trust Lending
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③金融庁が「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」と公式ページで忠告
融資型クラウドファンディングを事業として行う場合、第二種金融取引業の登録を受ける必要があります。金融庁では投資家保護の目的で、公式ページで以下の注意喚起を行いました。
(要約)「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」
- ソーシャルレンディングの仲介者(クラファン会社)は第二種金融商品取引業の登録を受けなくてはいけない。非登録会社とは一切かかわらないようにしてください。
- ソーシャルレンディングで高い利回りが提示されている場合は、商品より貸付先が返済遅延しないかなどのリスクが高い場合があります。
- 高い利回りだけでなく、業者が提供する様々な情報を確認した上で投資すると判断しましょう。
【参照】金融庁|ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください
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②融資先情報を投資家へ開示の方向へ
融資型クラウドファンディングに対して公式に投資家へ情報提供をしなさい、という見解を出していなかった金融庁ですが、2019年3月、事業者よりノーアクションレター制度を使って融資型クラウドファンディングの匿名・複数化に疑問を呈する照会書への公式回答により以下のように述べています。
「融資型クラウドファンディングで一定の方策を行う場合、融資をする個人投資家は融資先の企業名などの情報を開示された場合でも、賃金業法において賃金業者であるとは判断されない」
つまり、クラファン会社が融資先企業名などを開示してもOKという流れになったのです。このことを受け、金融業界の大手であるSBIホールディングスも以下のように「当社も借り手(融資先)の情報開示を順次開始することにしました」と発表しています。
SBIホールディングス|ソーシャルレンディングにおける借手開示対応の開始について
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3.今後ますます拡がると思われる融資型クラウドファンディング
日本での融資型クラウドファンディングの市場規模は世界の市場規模(2024年に約90兆と予測)に比べるとまだまだ低く、約1兆5339億円でした。しかし、融資型クラウドファンディングは中小企業の活発化や社会経済の発展にも寄与される今後重要な金融サービスであると考えられています。
融資型クラウドファンディングでは金融機関を通さないことにより、より柔軟な融資が可能です。しかし、メリットばかりではありません。事業者が融資型クラウドファンディングで資金調達の際には、クラファン会社の手数料や契約内容を十分に吟味した上で利用しましょう。
まとめ
融資型クラウドファンディングに関わる金融庁による賃金業法の扱いが、投資家保護の観点で変更となりました。
融資型クラウドファンディングの法規制が整備されたため、今までより借り手側の企業(法人)も安心して融資を受けることができるのではないでしょうか。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
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