補助金は条件が当てはまればもらえる助成金と違い、必ず審査があります。
補助金審査を受けるには、決められた期間内に規定の書式を提出する必要があります。
さらに、補助金の審査に通過したあとも、経費報告などのやるべきことがあります。
今回の記事では、複雑で理解しづらい補助金の一般的な申請方法を、できるだけ分かりやすく具体的にご説明します。
1. 国の補助金の申請の流れ
①【申請前】その補助金を狙うか決めて、申請書をダウンロードする
以下の表は、国の実施している補助金の一例です。補助金について説明している公式ページや分かりやすく説明している情報サイトを参照すれば、補助金の大まかな内容を理解できます。
但し、情報サイトの場合はネット上に古い情報が残っている場合もあります。公式ページで公開されている最新の公募要領も併せて必ずチェックしましょう。
補助金名(実施している組織名) |
内容 |
創業・事業承継補助金 (経済産業省) |
【創業補助金】 創業で新たな需要や雇用を生む創業者に対する補助金(上限200万円で補助率1/2) 【事業承継補助金】 経営者交代による承継後に経営革新を行う方を支援する補助金 (上限1,200万円で補助率2/3以内)※上乗せ額ありの場合 |
IT導入補助金(経済産業省) |
自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部をサポートする 補助金(上限450万円、補助率1/2以下) |
津波・原子力災害被災地域 雇用創出企業立地補助金 (経済産業省) |
東日本で大きな被害を受けた地域を支援し住民生活を支える商業機能の復活を目的とする補助金 (上限30億円、補助率1/10~1/2) |
軽減税率補助金 (中小企業庁・中小機構) ※受付終了 |
2019年10月の消費税10%引き上げに対応する中小企業・小規模事業者等に向けての補助金 (上限レジ一台あたり20万円、基本補助率は3/4) |
中小企業知的財産活動支援事業費補助金 (関東経済産業局) |
中小企業者が、他企業や大学、研究機関等と連携し、新たなサービスモデルの開発やサービス産業の競争力の強化に向けた取組の支援を目的とした補助金 (上限1,000万円、補助率1/2以内) |
事業者向きの国の補助金でよく知られているのが上記の表の最初の2つ「創業・事業承継補助金」と「IT導入補助金」です。また、これから消費税の10%導入が始まりますので(現在は2019年7月)、軽減税率補助金も事業者の皆様には大いに関係ある補助金と言えます。
②【申請前】補助金をもらえる条件を自分が満たしているかチェックする
補助金をもらうためには、欲しい補助金の条件を自分が満たしているかを事前に確認しておきましょう。10~20ほどの条件があります。事業者に対する条件だけでなく、補助を受けられる事業についても条件があり、補助金をもらうために使う経費についても条件があります。
補助金により条件は異なります。補助金の条件は必ず公式ページのTOPページまたは公募要領(PDFでダウンロードできるパンフレット)に記載されています。
【よく補助金の条件にされている項目リスト】
- 交付時点に日本国内で事業を行っている個人または法人である(IT導入補助金の場合)
- 労働生産性の伸び率について数値目標を作成する事業主である(IT導入補助金の場合)
- 必要書類を提出することができる事業主である(全補助金)
- 〇年〇月〇日以降に認定市区町村で創業または創業予定の従業員を1名以上雇う方(創業支援事業者補助金の場合)
- 認定経営革新等支援機関の確認を受けている(事業承継補助金の場合)
- 発行済株式の総数または出資価格の総額の1/2以上を同一の大企業が所有している中小企業または小規模事業者ではない(軽減税率補助金A型の場合)
- 経済産業省から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者ではない(全補助金)
③【申請前】補助金の申請の仕組みを理解する
助成金は「キャリアアップ助成金」や「人材開発助成金」など主に雇用と人材に関わるものが多く、実施しているのは日本の厚生労働省です。これに対し、補助金の場合は日本の経済産業省が実施している傾向があります。
補助金はキャッシュバック制度です。補助金審査に合格したら、①基準を満たすモノなどをあなたが購入し、②書類を提出し、審査に通れば③補助金が振り込まれる、という流れとなります。実際に補助金が支給されるまでは、1~1.5年以上の年月がかかる可能性があります。
補助金の申請は経済産業省が委託している指定事務局が直接の申請手続きを担当しています。
上記の図はIT導入補助金の場合の申請の仕組みを図にしたものです。上記の図で、あなたは補助事業者で青い丸のイラスト、補助金事務局はビルのイラストとなっています。補助金事務局は2019年では「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」という組織が事務局を担当しています。
補助金事業者は、IT導入補助金事務局に対して「補助金申請書」をという用紙を提出します。
IT導入補助金事務局は、IT導入補助金の申請をしてくる事業者の補助金申請書を審査します。審査の結果、あなたに補助金を交付すると決めた場合はあなたに交付通知書を送り、続けてあなたへ補助金交付申請書を送ります。
つまり、補助金の申請で、補助業者であるあなたは審査を通過すれば2回申請書を提出するわけです。IT補助金の場合、あなたと補助金事務局の2者でどんどん話を進められるわけではありません。間にIT導入支援事業者(大塚商会など経済産業省に認定された大手IT企業)の存在があり、実際にあなたが事業をIT化する際にはIT導入支援事業者が間に入りIT化を進めます。
③補助金交付決定通知を受け取ったあとに2種類の書類を提出する
めでたく補助金交付決定通知があなたの元に届いてから、あなたは補助金事業をスタートします。そのため、補助金交付決定通知で認められるまでは勝手にITツールを導入して「キャッシュバックして」と申請しても、補助金はおりません。実績報告書を提出しなければいけません。
実績報告書は1枚の紙ではなく、以下のように「領収書の提出」と「報告書の作成」の2部構成になっています。
- 補助対象経費とする証拠書類の作成
補助対象となる設備などを購入した際の領収書や証拠書類をA4サイズにコピーします。何枚もある場合は、規定通りの順番に並べ替えます。
- 報告書の作成
補助金規定の実績報告書に記入します。また、支出内訳書についても記入します。補助金によっては、これら以外に必要な書類がある場合もあります。
④補助金事務局より補助金確定通知書と請求書が到着
補助金の実績報告書に特に問題がない場合、補助金事務局より補助金確定通知書と請求書の2つが郵送されてきます。補助金の金額を確認し問題がなければ、添付されている請求書に記入をして補助金事務局へ返送します。その度、めでたく補助金が振り込みされます。
⑤補助金を受け取ったあとも、数年間、事務局へ 事業の報告書を提出する
補助金を受け取ったあとも、書類提出は続きます。補助金によっては、補助金を受け取ったあと3年間、事業報告を提出しなければいけません。補助金は返済不要のお金でとても魅力的ですが、事務手続きの負担があるものと覚悟して臨みましょう。
2. 自治体(市区町村)の補助金の申請の流れ
①【申請前】その補助金を狙うか決めて、申請書をダウンロードする
自治体が募集する補助金は、例えば東京都の場合は「東京都 補助金」のようにネット検索すれば、補助金についての情報を調べることができます。または、ご自身の住む街の役所のホームページの中から補助金についてのページを探すことも可能です。
以下は、自治体の実施している補助金の一例です。
補助金名(実施している組織名) |
内容 |
分煙環境整備補助金(東京都産業労働局) http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/kakusyu/syukuhaku/
|
中小飲食店や宿泊施設のうち条件に該当する事業者へ向けた分煙ための補助金(上限1施設400万円、補助率9/10または4/5) |
高度技術習得支援補助金(わかやま産業振興財団) |
製造分野などの県内事業者を対象に先端技術や先端技術課打つようで生産性向上と雇用促進を見込む事業に対し、経費の一部を補助 (上限50万円、補助率10/10以内) |
中小企業施設設備復旧支援事業費補助金(宮城県) |
県内の生産設備の復旧・整備を支援するための補助金 (上限1,000万円、補助率1/2以内) |
新産業事業化促進事業補助金(沖縄県産業振興公社) |
優れた研究開発や研究を伴う新規性の高いビジネスモデルの事業化を目指す企業の研究開発などに対する補助金 (上限500万円以内、補助率3/4以内) |
②補助金により申請の流れがバラバラ
国の補助金と大まかな申請の流れは違いますが、独自性があります。例えば、新産業事業化促進事業補助金(沖縄県)の場合は、補助金申請の前に必ずメールで事前相談をしなくてはいけません。必ず公式サイトで公募要領を熟読しましょう。
3.その他(商工会議所など)の補助金の申請の流れ
①その他(商工会議所など)の補助金にはどんな補助金があるのか
国と自治体が募集する補助金以外では、商工会議所や大学や企業が募集する補助金があります。
小規模事業者持続化補助金は卸売・サービス業・小売業で5人以下、製造業・建設業・運輸業で20名以下という小規模事業者が受け取れる補助金でよく利用されているポピュラーな補助金です。当サイトでも小規模事業者補助金についてはいくつか記事を投稿しています。
小規模事業者持続化補助金で資金調達!合格のための申請書の書き方とは
以下は、国と自治体以外が実施している補助金の一例です。
補助金名(実施する組織名) |
内容 |
小規模事業者持続化補助金 (日本商工会議所) |
自らの経営を見つめなおし、経営計画を立てて販路開拓等に取り組む事業主に経費の一部を補助する。原則、上限50万円。 |
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 (全国中小企業団体中央会) |
中小企業生産性向上のための革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金(上限1,000万円、補助率1/2以内) |
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(公益財団法人 日本環境協会) |
地域における低炭素な地域づくりのための再生可能エネルギー設備等の小津乳事業または事業化計画策定・調査事業に対する補助金 (上限:1,000万円、補助率2/3~1/1) |
②環境系の補助金は申請が大変
太陽光や二酸化炭素排出などの環境系の補助金については提出書類や規定が複雑で、情報サイトの1ページのみではお伝えしきれません。一つ言えるのは、環境系の補助金は提出書類が非常に多いということです。
例えば、以下のような書類を提出します。
- 事業実施計画書
- 地方公共団体からの推薦書
- プロジェクト概要書
- 入歳出予算書抄本
- CO2削減効果の算定方法及び計測方法概要
- 太陽光発電設備算定チェックシート
- 事業性評価シート
まとめ
補助金の申請はなん10ページもある公募要領を読み込むことからスタートです。無事に補助金を受け取るまでは、何種類もの書類を提出し、期間も長くかかるものと心得ておきましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
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