確定申告と年末調整という法的手続きをすれば、あなたが納めるべき正しい税金額が計算されます。
また、確定申告と年末調整ではいずれもさまざまな「控除」(控除対象者の税金額が安くなる仕組み)を利用できます。 確定申告と年末調整という2つの手続きはこのように共通点が多いため、一般人のわたしたちはつい混同しがちです。
今回の記事では、確定申告と年末調整の違いと両方の手続きをしなくてはいけないパターンについて解説していきます。
1.年末調整と確定申告の違いとは
まずは年末調整と確定申告の違いからお伝えします。
①年末調整とは
確定申告と年末調整はいずれも日本に住む課税対象者(税金を払うべき人)に課せられている税制(税金の制度)です。年末調整の用紙は基本的に会社などから給与をもらっている方はすべて記入します。(日雇い労働者や海外に居住する方を除く)
その後、会社の経理担当者があなたの代わりに税務署へ書類を提出してくれます。正しい納税額は、会社から支払われる給与に反映されます。税金を多く支払った方は年末ごろの給与振り込み時に還付金が追加され、税金を少なく払っていた方は給与から不足分を差し引かれます。
年末調整を終えると、会社から源泉徴収票という小さな紙をもらえます。学生さんのアルバイトでも、年収103万円以下の場合は対象です。
【年末調整の対象者】
- 普通の会社員
- 普通のアルバイト・パートの方
- 事業をしている家族から給与をもらっている方(青色専従者)
- 副業をしていない方
- 副業をしているけど副業から得られる所得(もうけ)が20万円以下の方
②確定申告とは
一方、確定申告は年末調整より対象年齢が幅広くなっています。高額所得者(年収2,000万円以上)のタレントさんや年金暮らしの高齢者(65歳以上の場合で年収158万円以上)も必ず提出すべき書類です。
勤務先で年末に近くなると上記のような用紙が配られますので、署名・捺印して提出します。
確定申告書は最寄りの税務署に行けばもらえます。また、事業主が開業して一度目の確定申告を終えた場合、翌年からは確定申告の時期に自動的に税務署が確定申告書を郵送してくれます。
【確定申告の対象者】
- 年収2,000万円超の給与所得者
- 個人事業主(自営業者、フリーランス)、・年金暮らしの方
- 該当年に退職金をもらう方
- 副業の雑所得が20万円を超える方
- ふるさと納税でワンストップ特例申請書を出さなかった方
その他の特徴については、以下の表でまとめました。ご参照ください。
確定申告の時期 |
年末調整の時期 |
毎年2/16~3/15 |
毎年11月中旬~12月上旬ぐらい |
確定申告で手続きできる所得控除・申告 |
年末調整で手続きできる所得控除・申告 |
・医療費控除(年間10万円以上の医療費利用で所得により5%~45%の還付金あり) ・住宅ローン控除(年間最大40~50万円) ※1回目のみで、2回目からは年末調整で手続き可 ・寄付金控除(上限はだいたい所得の30~40%まで)※ふるさと納税など ・株の購入などでの配当金の申告 ・副業の雑所得の申告 ・消費税の申告 ・贈与を受けた場合の申告
|
・基礎控除(38万円) ・配偶者控除(38万円) ・配偶者特別控除(3~38万円) ・扶養控除(38万円) ・社会保険料控除(全額控除・家族の分も合計) ・生命保険料控除 ※介護護医療保険・個人年金保険(最大12万円) ・地震保険料控除(最大5万円) ・小規模企業共済等掛金控除 (該当年に支払った全額) |
確定申告書を提出する場所 |
年末調整の書類(給与所得者の保険料控除申告書)を提出する場所 |
税務署 |
会社、アルバイト・パート先、旦那や妻などの家族 |
年末調整の対象者(例、会社員)の方でも、左側の「確定申告で手続きできる所得控除・申告」をする必要があるのであれば、年末調整だけでなく確定申告もする必要があります。
年末調整と言われているのは手続きの名称で、実際に記入する用紙の名前を見てみると「給与所得者の保険料控除申告書」という書類名になっておりこの書類名からも年末調整が保険料を控除するための手続きだということが分かります。
年末調整とは? |
会社や家族から給与をもらっている人で、基本的な控除と保険料控除以外に関係ない方がする所得税の手続き |
確定申告とは? |
上記以外の人すべてがする所得税の手続き |
2.確定申告と年末調整の両方が必要なパターン6つ
年末調整と確定申告は基本的にどちらか片方をすればOKです。しかし、働き方によっていくつかの例外のパターンがあります。
- 医療費控除をしたい会社員・パート・アルバイトの方
- 【ふるさと納税】ワンストップ特例申請書を提出しなかった方・6か所以上にふるさと納税をした方
- 1/1~12/31の間で退職して働き方の属性(会社員・アルバイトなど)が変わった方
- 年間の給与が2,000万円を超える方・2か所以上から給与をもらている方・副業している方
- 住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)の1回目を受ける方
- 雑損控除または寄付金控除を受ける方
①医療費控除をしたい会社員・パート・アルバイトの方
この記事の中にある表の中の「年末調整で手続きできる所得控除・申告」という部分を見ると、医療費控除という文字はありません。そのため、会社勤めやアルバイト・パート者などで年末調整の対象者であっても医療費控除を受けたい方は、別途、確定申告をする必要があります。
生命保険や基礎控除の部分は会社の年末調整で申告できますので、確定申告では使った医療費の額のみを申告します。年間で10万円以上の医療費を使った場合は、その領収書・レシートを添付すれば、10万円を超えた額について翌年の所得税から控除(際引いて税金額を計算)されます。
②【ふるさと納税】ワンストップ特例申請書を提出しなかった方・6か所以上にふるさと納税をした方
ふるさと納税という名前でおなじみですが、ふるさと納税を正式名で言うと「寄付金控除」です。現在、ふるさと納税では寄付時に「ワンストップ特例申請書」という書類を提出すれば、確定申告をしなくても良いシステムになっています。しかし、プリンターで印刷するのが面倒、などの理由で寄付時にワンストップ特例申請書を出さなかった方については、確定申告が必要です。
また、ワンストップ特例の仕組みは5か所までのふるさと納税に適用です。北海道・沖縄・大阪、などと目移りして6か所以上の自治体へ寄付をした方は同じく、確定申告が必要です。
③1/1~12/31の間で退職して働き方の属性(会社員・アルバイトなど)が変わった方
年末調整は11月上旬~12月中旬頃に会社(アルバイト・パート先)に所属している方に対し、会社が用紙を配って手続きします。そのため、この期間に会社に所属せず求職活動などをしていた場合は源泉徴収がされないので、所得税の申告は自分で申告=確定申告する必要があります。
例えば、10月に前の会社を退社して、11月に次の会社に入社が決まった場合。この場合は、前の会社を退職時にもらった源泉徴収票を新しい会社の人事・総務の方へ渡せばOKです。新しい会社で前の会社でもらっていた給与の額がわかるため、給与額を合算して年末調整してくれます。
④年間の給与が2,000万円を超える方・2か所以上から給与をもらている方・副業している方
非常に羨ましいパターンですが、年間の給与が2,000万円を超える方は確定申告をする必要があります。また、副業などで2か所以上の会社から給与をもらっている場合も同様です。
2か所以上から給与をもらっている場合は、給与額を多くもらっている会社で年末調整をします。(もし副業の会社から年末調整の紙をもらったら、メインで働いている方で年末調整するので!と断りましょう)副業の会社では年末調整をしないため、国は正確な給与を把握できないため、確定申告が必要なのです。
ただし、副業の収入が合計して20万円以下の場合は確定申告の必要はありません。
⑤住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)の1回目を受ける方
一定の条件にある住宅を住宅ローンで購入した場合、住宅借入特別控除を受けることができます。1回目のみ確定申告が必要ですが、2回目からは自動適用となるので翌年からは申告が必要ありません。
⑥雑損控除または寄付金控除を受ける方
雑損控除はあまり聞いたことがない方も多いかもしれません。雑損控除とは、あなたの持ち物で生活に必要と認められるもの(車、パソコンなど)が自然災害・火災・生物による異常な災害・盗難・横領により被害を受けた場合が対象です。
雑損控除は時価額で計算され、保険に加入中で保険金がでる場合は保険金を指しい引いた額が控除されます。
寄付金控除はふるさと納税と同じように、国で寄付金控除が認められている組織・団体へ寄付井した場合に適用になります。寄付した際の領収書・証明書が確定申告に必要です。
まとめ
年末調整は会社員などが確定申告を簡易的にするためのシステムです。
控除をうまく使えば、支払う税金額を低く抑えることが可能です。
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資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
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