創業融資を受けようと検討している創業予定者の中には、申込に適した時期を疑問に感じる人もいるかもしれません。事業計画の策定や資金調達の目処が立つと、いよいよ融資申請を検討するフェーズに入ります。しかし、融資は、申込時期を誤ると、審査に影響を与えかねません。
本記事では、創業融資を成功させるための適切な申込時期から、申請プロセスにおける重要なポイントまでわかりやすく解説します。事業をスムーズにスタートできるよう、ぜひ参考にしてください。
創業融資を受けられるタイミングは設立・開業前後
創業融資を受けられるタイミングは、設立や開業の前、もしくは後です。会社設立前の段階であっても事業計画書と自己資金を用意すれば融資を申し込めるため、特に事業実績がない新規事業者にとって創業融資は重要な資金源となるでしょう。
すでに会社を設立していたり、開業していたりしても、創業融資を受けられる場合があります。たとえば、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」では、「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内」と規定しています。
ただし、信用保証協会の保証付き融資や各自治体の制度融資は、事業開始後からの期間が要件となるケースが多く見られます。たとえば、信用保証協会の「創業関連保証」は、事業開始後5年未満の企業を主な対象としています。また、自治体による制度融資も同様に、創業から5年以内を融資の条件にしているのが一般的です。
創業融資は、事業のスタートアップ期において、資金繰りを安定させる上で不可欠な制度です。自身の事業計画と照らし合わせ、適切なタイミングで融資を検討しましょう。
創業融資の申込に適した時期
創業融資の申込に適した時期は、以下の通りです。
- 事業計画書を完成させたタイミング
- 自己資金要件をクリアした時期
- 支払いに必要なタイミングの2か月前程度
創業融資は、事業計画書の完成や自己資金の準備が整った段階で、事業開始の2〜3ヶ月前に申し込むのが適しています。審査期間を考慮しつつ、必要な資金を適切なタイミングで確保することを検討してください。
事業計画書を完成させたタイミング
創業融資の申込に適した時期として、事業計画書を完成させたタイミングが挙げられます。事業計画書によって、事業の全体像と具体的な戦略が明確になるため、金融機関に対して説得力のある説明が可能になるからです。
事業計画書が完成していると、融資担当者は事業の収益性や成長性、返済能力を具体的に評価できます。審査プロセスがスムーズに進み、融資実行までの期間を短縮できるでしょう。事業計画の具体的な内容が、融資担当者の信頼を得る上で不可欠です。
また、事業計画書を完成させたタイミングで申し込むと、資金の具体的な使途や調達額の根拠を明確に示せます。資金の必要性や計画性が明確であれば、金融機関も数字的な根拠をもって融資を検討でき、必要な資金を適切なタイミングで調達できる可能性が高まります。
以上の事から、事業計画書が完成したタイミングは、創業融資を申し込むのに適した時期と言えます。事業の成功に向けて、綿密に練られた計画を持って融資に臨むようにしましょう。
自己資金要件をクリアした時期
自己資金要件をクリアした時期も、創業融資の申込に適しています。これは、自己資金の有無が融資審査において重要な判断材料となるからです。
自己資金があることで、事業への本気度や返済能力の高さを示せます。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資では、一般的に創業資金総額の10%以上の自己資金が求められます。この要件を満たしていれば、金融機関は事業主の自己規律と計画性を高く評価し、融資の実行に前向きになるでしょう。自己資金は、事業の安定性を示す具体的な証拠となります。
また、自己資金が十分にある場合、金融機関は返済計画がより確実なものだと判断します。充分な自己資金を提示することで、希望する融資額を得やすくなるだけでなく、より有利な条件で融資を受けられる可能性も高まります。
自己資金要件を満たしたタイミングは、創業融資を成功させる上で有利な時期です。計画的に資金を準備して融資の成功確率を高めましょう。
支払いが必要なタイミングの2か月前程度
支払いが必要なタイミングの2か月前程度も、創業融資の申込に適しています。この時期は、資金の具体的な使途や必要額が明確になっているため、金融機関への説明がしやすくなるからです。
たとえば、事務所の敷金礼金や設備の購入費用など具体的な支払いが迫っている場合、2か月前に融資を申し込めば、必要な資金を期日までに準備できる可能性が高まります。具体的な支払い義務が明確であるため、金融機関に融資の必要性を理解してもらえる可能性が高まります。
また、支払いが必要なタイミングの2か月前であれば、融資審査に時間がかかったり、追加資料を求められたりしても対応する余裕があります。資金調達のスケジュールに予期せぬ遅れが生じても、事業開始に影響が出にくいだけでなく、計画通りの事業スタートが期待できます。
計画的な資金調達は、事業を円滑に進める上で重要です。具体的な支払いが差し迫っている場合は、その2か月前を目安に創業融資の申込みを検討しましょう。
創業融資の申請方法
創業融資の申請方法は、融資元によって異なります。それぞれの金融機関が独自の審査基準や必要書類を設けているため、事前に確認が必要です。
たとえば、日本政策金融公庫の創業融資を利用する場合、まず窓口での相談やWebサイトからの情報収集を行います。その後、事業計画書や自己資金額、資金使途などを記載した申込書類を提出し、面談を経て審査が行われます。
また、信用保証協会が保証する制度融資を利用する際は、地域の金融機関を通じて申し込みます。この場合、金融機関の審査に加え、信用保証協会の審査も必要となり、融資実行までに時間を要することがあります。
創業融資を申し込む際は、利用したい融資元の申請プロセスを事前に把握し、必要な書類を漏れなく準備することが重要です。不明な点があれば、融資元に問い合わせましょう。
必要書類を準備する
創業融資の申請には、融資元が指定する必要書類を準備しましょう。書類を事前に揃えておくことで、申請プロセスをスムーズに進められ、融資実行までの時間を短縮できます。
たとえば、日本政策金融公庫の場合、以下の書類が必要です。
- 創業計画書
- 通帳
- 見積書や契約書 など
必要な書類が不備なく提出されれば、担当者は事業計画の実現可能性や資金使途の妥当性を迅速に判断できます。各書類の準備にはそれぞれ時間がかかり、特に創業計画書は事業内容の検討に時間を要します。通帳の準備では、自己資金の出所を明確にすることが注意点です。
また、金融機関によっては、履歴事項全部証明書や印鑑証明書など、法人設立後の書類が求められるケースもあります。これらの書類を漏れなく揃えておくことで、再提出の手間を省き、融資審査の停滞を防げます。登記関連書類の取得には数日かかる場合があり、印鑑証明書も発行から3ヶ月以内という有効期限がある点に注意が必要です。
創業融資を申し込む際は、事前に必要書類を確認して各書類の準備にかかる時間や注意点を把握した上で、計画的に準備を進めるようにしましょう。
面談対策をする
融資を受ける際は、面談対策も行いましょう。面談は、事業計画書では伝えきれない熱意や事業への理解度を直接示す貴重な機会だからです。
たとえば、面談で事業計画の具体的な数字や市場分析について質問された際、準備していれば明確に回答できます。事業の実現可能性や経営者の能力を融資担当者に効果的に伝えられるでしょう。
また、事業への熱意や将来のビジョンを自身の言葉で語ることで、融資担当者との信頼関係を築けます。事業に対する強いコミットメントは、融資審査において高く評価される要素です。
なお、面談前には想定される質問に対する回答を準備し、模擬面談を行うのが効果的です。本番での緊張を和らげ、自信を持って臨めるでしょう。
創業融資を成功させる申請のコツ
創業融資を成功させる申請のコツはおもに以下の3つです。
- 資金繰りは余裕を持って申し込む
- 再申請の場合は現在の事業実績を積んでから行う
- 初めて申請する場合は専門家を活用する
これらのコツを実践することで、融資の成功率は高まります。
しかし、最終的には事業計画の実現可能性や経営者の熱意が審査を左右します。事業への強い思いと具体的な計画をしっかり準備して申請に臨みましょう。
資金繰りは余裕を持って申し込む
創業融資を成功させるためには、資金繰りは余裕を持って申し込むようにしましょう。資金に余裕がない状態で申し込むと事業計画に不備が生じやすく、審査担当者から見て返済能力に疑問を持たれる可能性があるからです。
資金繰りに余裕を持たせることは、事業の安定性や計画性をアピールする上で非常に重要な要素となります。たとえば、事業開始に必要な初期費用に加え、半年分の運転資金を用意しておくとよいでしょう。以下のような運転資金を具体的に算出しておくことで、事業の実現可能性を高く評価してもらえます。
- 家賃
- 人件費
- 仕入れ費用
- 広告宣伝費 など
また、融資の申し込みから実行までには、通常1か月から2か月程度の時間がかかります。この期間を考慮せずに資金が尽きる直前に申し込むと、審査結果が出るまでの間に資金がショートするリスクがあります。余裕を持った申請は、資金不足などのリスクを回避し、事業を安定的に立ち上げるための大切な準備と言えます。
なお、余裕のある資金計画を立てるためには、開業にかかる費用を正確に把握することが不可欠です。事業計画書を作成する際は、必要な資金の総額だけでなく、その内訳や用途を詳細に記載するようにしましょう。
再申請の場合は現在の事業実績を積んでから行う
再申請の場合は、現在の事業実績を積んでから行うことも創業融資を成功させるうえで重要です。前回の申請で融資が否決された場合、金融機関は事業計画の実現性や経営者の返済能力に懸念を抱いている可能性があります。そのため、現在の事業で実績を積んでから再申請することで、事業の成長性や収益性、返済能力を具体的に示せるようになります。
たとえば、前回の申請時に売上が見込み通りに立たず融資が否決されたとします。この場合、再申請するまでに売上目標を達成し、安定した収益を証明することが大切です。具体的な売上推移や顧客数の増加を示すことで、事業計画の実現性をアピールできるでしょう。前回の計画と比較して、どのような改善を行ったかを説明するのも効果的です。
また、自己資金の不足が原因で否決された場合は、再申請までに自己資金を積み立てることが重要です。毎月の貯蓄額を増やしたり、新たな資金調達方法を検討したりして、自己資金を増やす努力をしましょう。自己資金を積み立てた実績を提示することで、金融機関に経営能力と真摯な姿勢を評価してもらえる可能性や再申請への信頼を高められます。
なお、事業実績を積む期間は、最低でも6ヶ月以上を目安にすると良いでしょう。6ヶ月以上かけて、売上や利益、自己資金の推移などの客観的なデータを準備することが重要です。再申請の際はこれらの実績を基に、より説得力のある事業計画書を作成し、融資担当者に提示してください。
初めて申請する場合は専門家を活用する
創業融資を初めて申請する場合は、専門家を活用するのも良いでしょう。専門家のサポートを得ることで融資審査で重要となる事業計画書の質を高め、金融機関との面談をスムーズに進められるためです。
たとえば、融資を成功させるには、事業計画の実現可能性や返済能力を具体的に示す必要があります。専門家は事業内容を客観的に評価し、説得力のある数値目標や戦略を盛り込んだ事業計画書の作成を支援してくれます。
また、創業融資の面談では、事業の強みや市場の動向など専門的な質問が多くされます。専門家はこうした質問への適切な回答方法をアドバイスしてくれるため、自信を持って面談に臨むことができます。
なお、専門家による書類作成や面談対策は有料ですが、初期の相談は無料で受け付けています。まずは無料相談を活用し、その専門家が信頼できるかどうか、そして支払う費用に見合うだけの価値があるかを見極めてから依頼を検討すると良いしょう。
まとめ
融資を受けることができるタイミングは、会社設立や開業の前後です。創業融資の申込に適した時期は、創業2〜3ヶ月前です。創業2〜3ヶ月前に申し込むと、事業開始までの準備期間と融資実行までの時間を考慮でき、資金繰りが安定する可能性が高まります。
創業融資の申請方法は、融資元によって異なります。それぞれの金融機関が独自の審査基準や必要書類を設けているため、事前に確認が必要です。融資元によって異なる必要書類を事前に確認して漏れなく揃えることで審査を円滑に進められます。面談では事業への熱意や計画の実現性を具体的に伝えられるよう、想定質問への回答を準備しておくことも大切です。
融資を成功させるためのコツとして、以下の3点が挙げられます。
- 資金繰りには余裕を持って申し込む
- 再申請の場合は事業実績を積んでから行う
- 初めて申請する場合は専門家を活用する
余裕を持った資金計画を立て、具体的な事業実績を積み重ねることで、金融機関からの信頼を得られます。また、初めて申請する場合は、専門家のサポートを受けることで事業計画書の質を高め、融資成功の確率を上げることができるでしょう。これらのコツを押さえ、計画的に準備を進めることが、事業の円滑なスタートにつながるでしょう。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
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