日本政策金融公庫で創業のための融資を受けるためには、「創業計画書」の提出が必要です。書類自体は用紙1枚なので、すぐに作れそうな感じがしますよね。
しかし、この創業計画書は用紙1枚では伝えることが出来ないと言っても過言ではない資料なのです。創業融資成功のカギとなる「創業計画書」の書き方とポイントをご紹介します。
1.創業計画書とはどんな書類
これから創業、起業される方で日本政策金融公庫に事業用の融資を申し込む際に提出する書類が創業計画書です。また、すでに創業・起業されている方でも創業から1年以内の方の場合には提出が必要となります。
日本政策金融公庫の担当者は「この人にお金を貸しても、しっかりと返済できる能力があるかな?」ということを見ています。
すでに創業している事業であれば、決算書や確定申告書を見ることでその事業の数字を把握することができます。しかし、まだ創業していない事業ではその数字がありません。
そのため、創業計画書が「しっかりと返済できる能力」の判断材料となります。
この創業計画書の内容が融資成功のカギを握っていると言えます。
2.創業計画書の項目ごとに書き方を見ていきましょう!
創業計画書(PDF)(日本政策金融公庫HPではエクセル書式もダウンロードが可能です。)
上記のホームページ内には業態毎の記入例を確認することもできますが、記入例を見ながら同じように記入していくことは避けましょう。
参考として掲載されているため、内容に具体性がありません。同じように書いて審査に通らなかったというケースもあります。
ご自身の言葉でご自身の事業への思いを記入してください。
(1)創業の動機
創業の動機は「なぜ創業をしようと思ったか」という思いを記入します。
上記の例のように、事業に対する思い、事業のために重ねた経験、独立を決意した理由がしっかりと伝わる内容にしましょう。
(2)経営者の略歴等
経営者の略歴は融資審査の大きなポイントとなる項目の一つです。
務めてきた会社名や役職、勤務年数、業務内容など職務履歴を作成します。
特に、創業予定の事業に関する内容は記入漏れの無いように、細かく書いて下さい。取得している資格がある場合には資格の情報も忘れずに記入します。
創業融資では「過去の経験」はとても大切です。全くやったことのない分野で独立を考えてる人と長年携わった事業で独立を考えている人であれば、当然、後者の方がその事業に対するノウハウを持っています。
事業が成功するかどうかはもちろんわかりませんが、判断材料とするのであれば、ノウハウのある人の方が有利になるということです。
産業財産権(特許・商標・意匠)や著作権、回線配置利用権、育成者権、商号権などを知的財産権と言います。
(3)取扱商品・サービス
取扱商品・サービスでは、以下の4項目を記入します。
① 取扱商品・サービスの内容
ここには実際のサービス内容や取扱商品を記入します。
② セールスポイント
①に記入したサービス内容や取扱商品のセールスポイントを記入します。抽象的な表現や曖昧な表現は避け、読み手に伝わるように具体的な内容を書くようにしましょう。
③ 販売ターゲット・販売戦略
ターゲット層と売上を獲得するためのアプローチ方法を記入します。
ターゲット層と販売戦略の方法がしっかりと合っているようにしましょう。
④ 競合・市場など企業を取り巻く状況
創業を考えているエリアにどれだけ競合があるか、その事業の市場はどのようになっているか、競合と比較して、自分を選んで貰える理由は何かを記入します。
(4)取引先・取引関係等
販売先・仕入先・外注先を記入します。
事業によって異なる部分ではありますが、取引先や仕入先、外注先は取引のシェア率が高いところを1~2社、記入しておきます。それ意外にある場合には「ほか◯社」と記入して、
補足資料を準備しておきましょう。面談で聞かれる可能性が高いです。
販売先(お客様)が個人を対象としている場合には、創業場所の人の流れや人口などお客様が来てくれることがイメージできるような補足資料を準備しておくとよいでしょう。
ちなみに、シェア率の高い販売先・仕入先・外注先の経営状況を確認されるケースもあります。もし、販売先・仕入先・外注先の経営状況が悪いと融資に影響する可能性があります。
販売先や仕入先、外注先は均等なシェア率となるパートナーを数社見つけておくようにしましょう。
(5)従業員
雇用する予定の従業員数を記入します。
(6)お借入の状況
借入がある場合には「借入先」「使いみち」「残高」「返済額」を記入します。
極稀に、「記入しなければ分からないのではないか」と考える方がいます。基本的には借入はバレます。
日本政策金融公庫の担当者の心象を悪くするだけなので、素直に記入しましょう。
ちなみに、借入は無いに越したことはありませんが、あるからといって必ずしも融資が通らないという訳ではありませんが、カードやその他(消費者金融やリボ払い等)の場合には融資に影響する可能性があります。
住宅・車・教育ローンがあるという場合には大きな影響は無いことが多いです。(遅延や延滞があると話しが変わってきますが・・・)
【信用情報に不安がある場合には】
クレジットカードやローンについての情報は「CIC」、消費者金融系の情報は「JICC」、銀行系の情報は「全銀協」で確認することができます。
(7)必要な資金と調達方法
左側は「設備資金」と「運転資金」の2項目、右側が「調達の方法」です。左右の合計値が必ず同じになるようにして下さい。
① 設備資金
設備資金には設備として必要な内容を(内訳)から下に記入し、それぞれの見積先、金額を記入します。
右上の「 万円」の部分は設備資金の合計を記入します(エクセル書式を利用される場合には、自動計算で合計値が表示されます)
設備資金は額が大きくなるので、ここで減額されないように添付書類として見積書を提出しましょう。
② 運転資金
運転資金とは、実際に事業がスタートした際に必要となる部分です。
(内訳)から下に仕入代金や人件費、消耗品等の内容を記入し、それぞれの金額を記入します。運転資金は事業開始から3ヶ月程度で見ておくようにしましょう。
例えば、1ヶ月30万円の人件費であれば、記入する金額は30万円×3ヶ月で90万円です。
運転資金は損益計算書を作成しておくと、1ヶ月に必要な経費や最低限確保する必要がある売上などを把握することができます。作成した損益計算書を添付資料として提出しましょう。
③ 調達の方法
設備資金や運転資金として必要な資金をどのように調達するかという質問です。
自己資金、身内からの借入、他の金融機関等からの借入の合計で足りない金額を「日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入」欄に記入します。
自己資金を含む、お金の流れがしっかりと確認できるように、面談の際に過去半年分の通帳を見せる必要があります。通帳記帳はこまめにしておきましょう。
また、タンス貯金などで貯めた資金は預入をしておかないと自己資金にならないこともあります。手渡しで貰う給与なども同様です。入金・出金がわかるようにしておく必要があります。
(8)事業の見通し(月平均)
この部分も、数字の根拠がとても重要です。つまり、右側の「売上高・売上原価、経費を計算された根拠をご記入下さい」という部分です。
特に、売上高は商品やサービスの単価に対して販売数や客数がどれくらいあり、どの程度の売上を確保できるかを具体的な数字を使って表します。
もちろん、原価や経費の計算についても具体的な数字で示す必要があります。
また、利益から借入の返済を行っても、経営者が生活することができるかどうかという点もポイントになります。ご自身とご家族の生活のための費用がどれくらい必要かということも把握しておきましょう。
日本政策金融公庫のホームページに売上高の計算方法などを解説してくれているPDFがありました!参考にしてみてください。
日本政策金融公庫のHPに中小企業の経営等に関する調査というページがあります。
このページを下にスクロールすると、業種毎の調査結果を確認することができます。
これは各業種の利益率や売上高比率等の平均値が記載されています。ご自身の数字が平均値と大きくずれていないか確認して見ましょう。
3.創業計画書作成の4つのポイント
ポイント1:いきなり書かない!記入前にしっかりした事業構想を整理する!
創業計画書はとりあえず埋めていけば良い!という訳ではありません。
先にもご説明したように、融資成功のカギを握る創業計画書です。まずは、ご自身の事業構想をしっかりと表現できるように整理しましょう。
ターゲットは?競合は?商品やサービスのウリとなる特徴は?単価は?原価は?売上は?収支は?創業のために何が必要?資金はどれだけかかる?など、細かく考えていく必要があります。
ポイント2:書ききれないなら別紙参照!添付書類もしっかり準備!!
創業計画書のフォーマットの枠はそれほど大きくありません。しっかりとした事業構想を立てていると、書ききれないはずです。そんな時は別紙を作成しましょう。
また、創業計画書の内容の根拠を示すための添付書類も重要です。
例えば、競合調査や市場分析の結果や損益計算書などの数字を示す書類や、店舗や事務所の図面、メニューや商品が伝わる資料、購入する設備等の見積など準備できるものはどんどん準備しておきましょう。
ポイント3:自己満足はNG!第三者の目線で客観的に確認する!
時間をかけて完成させた「創業計画書」はきっと達成感に満ち溢れた内容になっていると思います。しかし、そこで終わらせるのはNGです。
日本政策金融公庫の担当者が見た時に、担当者が知りたいと思う部分をしっかりと伝えきれているか確認する必要があります。
第三者目線で創業計画書を確認し、不明な点はないかチェックしましょう。
ポイント4:面談で焦らない!記載内容を隅々まで理解する!
日本政策公庫の融資審査は、担当者との面談があります。この面談では創業計画書の内容を基に担当者が質問します。
そのため、記載内容はしっかりと頭に入れておく必要があります。
面談で緊張してしまうと、頭が真っ白になってしまうこともあります。忘れないように何度もシミュレーションをしておきましょう。
まとめ
創業計画書はこれから始まる未来が良い形になるための計画書です。
夢や希望ではなく、現実として、事業を成功させるためにはどうすべきかを見つめるためにも、真剣に作成しましょう。作成前に事業構想を整理することで、より具体的な創業計画書を作成することが出来るようになります。
簡単に作成できる資料ではありませんので、専門家に相談するという方法もあります。
第三者に介入してもらうことで、より伝わりやすい資料が作れることもあります。新しい未来のために綿密な創業計画書の作成を行ないましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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