国金とは、政府系の金融機関である日本政策金融公庫の旧称です。 創業者や中小企業でも利用しやすい金融機関と言われていますが、誰しもが融資を受けられるわけではありません。 今回は、国金で借りれない人、審査落ちしてしまう人の特徴について、創業融資、コロナ融資、既に事業を始めている人向けの融資のケースごとに解説します。
日本政策金融公庫の融資で審査落ちしてしまう原因
日本政策金融公庫には、創業融資や一般融資、追加融資など様々な融資がありますが、以下の条件に当てはまる人はどんな審査に通るのも難しいです。
- 信用情報や支払いに問題がある
- 融資希望額が過剰
- 融資後の経営計画が曖昧
日本政策金融公庫の担当者は、いずれの融資制度であっても審査の際に返済能力と事業の見通しを重視しています。そのため、過去に延滞や滞納があったり、事業計画が甘かったりすることが審査落ちの原因になります。
①信用情報や支払いに問題がある
個人の信用情報や税金や公共料金など支払いに問題がある場合、日本政策金融公庫の審査に通るのが難しいです。
信用情報に問題があると、金融機関側は「貸したお金をきちんと返してくれないのではないか」と予想します。そのため、事業主や代表取締役の信用情報に問題がある場合、審査に通りにくくなります。
信用情報の問題には次のものが含まれます。
- 債務整理・自己破産の経験がある
- 今借りているローンの返済が滞っている
- クレジットカードの支払いが1日でも遅れている
- 携帯の支払いが1日でも遅れている
また、税金や公共料金の支払い遅れや滞納も審査結果に影響する可能性があります。税金や公共料金は信用情報には載りませんが、審査の際に通帳を見られるので、支払っているかは確認されるためです。
支払いの遅れが1.2回あった程度であれば審査に大きく不利になることはありませんが、過去に債務整理をしている、現在の借入の返済や支払いを放置しているなどの場合は審査に影響が出る可能性があります。そのため、借入の返済に問題がある場合は信用情報の異動がなくなるまで待ち、税金や公共料金の未支払いは早めに解消するようにしてください。
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②融資希望額が過剰
融資希望額が過剰だと審査落ちになる場合があります。審査の担当者は融資希望額が妥当かをチェックしているので、必要以上の資金を希望してしまうと減額されるか、審査落ちになるリスクがあるのです。
たとえば営業車の設備資金の融資を希望する場合、営業として外回りするのには軽自動車や乗用車があればよく、SUVなどの高級な車種や余計なオプションをつけることを想定した融資は受けられない可能性があります。
融資は事業の改善や拡大をするための必要額までしか受けられないと思って申請した方が良いです。審査に落ちないようにするため、見積もりは慎重に行い、必要な金額のみを申請するようにしましょう。
③融資後の経営計画が曖昧
融資後の経営計画が曖昧な場合、審査落ちになることがあります。審査担当者は融資をすることで事業の改善や拡大が可能と判断した際に審査を通すのであり、不要な融資や事業の拡大の見込めない計画には融資をしてくれないためです。
融資を受けるには、具体的な経営計画を提出する必要があります。融資を使ってどれくらいの売上を作り、どれくらいの利益を出せる予定か説明できるように準備できていれば、具体的な経営計画ができているといえるでしょう。
創業融資で審査落ちしてしまう原因
創業融資とは、開業前から開業2期目まで利用できる日本政策金融公庫の融資制度です。開業前後のみの融資制度という特性上、すでに事業を始めている人とは別の基準で審査が実施されます。
とくに創業融資で審査落ちになるのは、以下のようなケースです。
- 自己資金がない
- 開業予定の業種での経験が浅い
- 事業を開始するのに必要な許認可がそろっていない
創業融資では事業実績がないので、とくに開業のためにどれだけ準備をしていたかが審査で重視される傾向にあるといえるでしょう。
①自己資金がない
自己資金がない場合、創業融資を受けるのは難しいです。制度上、創業融資を受けるには最低でも融資希望額の10分の1以上の自己資金が必要なためです。
創業融資を受けるのに自己資金が必要なのは、創業当初は売上をたてることが難しく、半年間は安定的な売上がたたないケースも多いためです。自己資金がなく開業資金における融資の割合が大きい場合、貸し倒れになる可能性が高く融資ができないと判断されます。
また、可能なら希望額の3分の1から半分程度の自己資金があることが望ましいです。審査は自己資金だけでは決まりませんが、申込条件である10分の1までしか準備できない場合は、開業予定の業種での経験が長い、または見込み顧客がいて売上が立つ見込みがあるなど、事業計画でフォローをする必要が出てきます。
自己資金は申込みの半年前から貯めておく必要がある
自己資金は半年以上前から計画的に貯めておく必要があります。日本政策金融公庫の審査では預金通帳の提出が必須です。通帳の預金が半年前と比較して増えているかといった確認作業が行われやすいからです。
半年前から預金額が増えていなかったり、減っていたりする場合、開業に向けて計画的に準備をしてこなかったと見なされ、審査落ちになる傾向にあります。
なお、カードローンや知り合いからの借金はいわゆる「見せ金」とみなされ、自己資金としては認められません。
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②開業予定の業種での経験が浅い
開業予定の業種での経験が浅い場合、創業融資の審査に通るのは難しいです。
事業をする際は、商品・サービスを販売するだけでなく、仕入や広報のやり方などその業界に根ざした手法があることも珍しくありません。全く創業する業界の経験が無い場合、事業をするために必要な経験があると証明ができないため、審査が通りにくいです。
経験があると認められる目安としては、6年以上経験していることが証明できるといいでしょう。
直近で業界経験があることがベストですが、過去の業界経験や、アルバイト経験でも考慮してもらえるケースもあります。また、6年以上の経験がなかったとしても、「営業でトップだった」「支店統括をしていた」など実績を示すこともできますので、複数のアピール要素として考えておくと良いでしょう。
③事業に必要な許認可等の条件が揃っていない
事業に必要な許認可等の条件が揃っていないことが、創業融資の審査落ちの原因になることがあります。
許認可がないままに事業を始めると、罰金を課されたり、営業停止を命じられたりします。営業停止を命じられると事業が止まるので、利益を出せなくなり融資の返済することができなくなります。そのため、日本政策金融公庫の担当者は申込者が開業に必要な許認可の取得しているのかを確認します。
もし許認可を取るのと創業融資の申し込みを並行して行うなら、許認可の申請書類の写しを審査の際に提出することで手続きを進められます。ただし、許認可の合格が出るまでは融資をストップされ、許認可が取れなかった場合は審査落ちになります。
創業融資の審査に一度落ちると半年は再申し込みできなくなるので、許認可は先に取っておくのをおすすめします。
コロナ融資で審査落ちしてしまう原因
コロナ融資で審査落ちになるのは、主に以下のようなケースです。
- コロナ融資の要件に当てはまらない
- コロナと関係なく業績が悪化している
- 2回目のコロナ融資
コロナ融資は、コロナの影響により業績が悪化していると見なされる事業主に対して行われる融資です。そのため、要件に当てはまらなかったり、コロナと無関係で業績が悪化していたりする場合には審査落ちになります。
また、2回目以降のコロナ融資は厳しく審査が行われるため、融資を受けるのが難しい傾向にあります。
①コロナ融資の要件に当てはまらない
コロナ融資の要件に当てはまらない場合は審査に通りません。
一般的にコロナ融資と言われている融資制度の正式名称は「新型コロナウイルス感染症特別貸付」です。
細かい要件などが都度変更されているため、申し込み前には確認が必要です。
現在の制度では、次が要件です。(2022年12月7日時点)
新型コロナウイルス感染症の影響を受け、一時的な業況悪化を来している方であって、次の1または2のいずれかに該当し、かつ中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれる方 1.最近1ヵ月間等の売上高(※1)または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高が前3年のいずれかの年の同期と比較して5%以上減少している方 2.業歴3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高(業歴6ヵ月未満の場合は、開業から最近1ヵ月までの平均売上高)が次のいずれか(※2)と比較して5%以上減少している方 (1)過去3ヵ月(最近1ヵ月を含みます。)の平均売上高 (2)令和元年12月の売上高 (3)令和元年10月から12月の平均売上高 (※1)「最近1ヵ月間等の売上高」には、最近1ヵ月間の売上高に加え、「最近14日間以上1ヵ月未満の任意の期間」における売上高を含みます。 (※2)最近14日間以上1ヵ月間未満の任意の期間における売上高と比較する場合は、上記(1)~(3)の売上高を日割り計算し、当該期間に対応する日数を乗じて算出した売上高 (※注)中小企業基盤整備機構の行う特別利子補給制度は令和4年9月30日時点で取り扱いが終了。 |
コロナが始まった2020年1月と比べて現在は要件が複雑化しています。要件に当てはまるか自信のない方は専門家に当てはまるか診断してもらうこともおすすめです。
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②コロナと関係なく業績が悪化している場合
コロナと関係なく業績が悪化していると見なされた場合は、コロナ融資を受けるのは難しいです。
コロナ融資とは、コロナの影響で一時的に事業は悪化しているものの、今を乗り越えれば事業を続け返済ができることを証明する必要があります。そのため、コロナ前から全く売上がたっていなかったり、利益が出ていなかったりする場合は、審査に通りにくいです。また、コロナ後から開業した場合は申込の条件を満たせません。
もともとの経営状況は、決算書・確定申告書で判断されます。2期分の決算書・確定申告書は最低でも求められるため準備しておきましょう。
③2回目のコロナ融資
1回目のコロナ融資でどのように借りたかにもよりますが、2回目のコロナ融資は厳しく審査されます。
コロナ融資は「withコロナでどのように経営するか」を考えることが求められます。たとえば、1回目のコロナ融資で運転資金の6月分で申請した場合、その運転資金でどのような経営改善や対策を行ったかをチェックされます。
2回目のコロナ融資では、1回目のコロナ融資をどのように使ったか審査の際に確認されるため、きちんと説明できるようにしておく必要があります。もし1回目の融資が有効に利用されていないと判断されれば、審査に通るのが難しくなります。
追加融資で審査落ちしてしまう原因
日本政策金融公庫は一度でなく、二回目以降の追加融資を受けることも可能です。以前の融資を返済中でも追加融資は受けられますが、利益が出ていない場合や資金使途違反をしている場合は審査落ちになるケースがあります。
①以前の融資後に利益が出ていない場合
追加融資では、以前に日本政策金融公庫から融資を受けた後に利益が出ていなければ審査に通過しにくくなります。
日本政策金融公庫側は利益が出るようになっていることを期待して一度目の融資をしています。利益が出ていないということは、事業計画が甘く、返済能力がないと見なされてしまうため、審査通過が難しくなるのです。
利益が出ていないけれど追加融資を受けたいと考えている場合は、税理士と相談しながら、決算書または確定申告書の作成し、融資を受ければ事業が改善されることを審査担当者にアピールするのがよいでしょう。
②以前の融資で申告した内容と違う用途で資金を使ったと判断される
追加融資の際に、以前の融資で申告した内容と違う用途で資金を使ったと判断された場合、審査落ちになる傾向にあります。
事業性の融資は資金の目的を明確にして貸し出されます。そのため、申告した資金使途以外のことに使用してはいけないからです。
たとえば、車を購入するための融資であったにも関わらず、車を購入せずエアコンなど他の設備を購入していたとします。この場合、融資が適切に使用されていないため、資金使途違反となります。
金融機関から資金使途違反だと判断された場合、「また違う目的に使用されるかもしれない」と考えられ、今後融資を受けるのは難しくなります。
追加融資を申請した際に資金使途違反が判明すると、場合によっては一括で返済を求められることがあるため、ご注意ください。
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国金の審査で落ちてしまった場合に必要な3つの対応
①原因を把握する
国金の審査で落ちてしまった場合に必要な対応の1つ目は、原因を把握することです。
国金で落ちてしまった場合、必ず理由があります。その理由を解消しなければ何度申し込んでも落ちてしまいます。なぜ審査に落ちてしまったのかまったく見当がつかない場合、専門家に相談してみるのがよいでしょう。
②再申し込みを半年後以上かけて準備する
国金の審査で落ちてしまった場合に必要な対応の2つ目は、再申し込みに向けて半年以上かけてしっかりと準備することです。
自己資金が足りない場合は、自己資金を貯める。経験が少ない場合は、アルバイトでもいいから経験する。信用情報に問題がある場合は、解消するなどです。一度申し込むと、落ちた原因にはよりますが、半年程度は再度申し込んでも通りにくいため、よりしっかりとした準備をしましょう。
③国金以外の金融機関(信金など)に申し込む
国金の審査で落ちてしまった場合に必要な対応の3つ目は、国金以外の金融機関(信金など)に申し込むことです。
既に事業をしている場合は、信用金庫などメインバンクにしている金融機関の方が融通のきく場合もあります。そのため、他の金融機関に申し込むことも手段の1つです。
しかし、この場合国金で落ちた理由を解消しなければ、同じ鉄を踏む可能性もあります。そのため国金で落ちた理由を把握し、解消して臨むことをおすすめします。
まとめ
今回は国金で借りられない人、審査に通りにくい人の特徴を徹底解説しました。融資の審査は総合判断です。できるだけ状況を改善し、しっかりと準備をすることで、融資の角度を高められます。加えて、融資は一度落ちると履歴が残るため、最初に申し込む前の準備が重要です。
融資には時間もかかるため、早めに専門家に相談することをおすすめします。事前準備をしっかりして、自分のやりたい事業をする土台を作っていきましょう。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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