日本政策金融公庫から借入を検討している人の中には、返済期間を何年に設定すればいいのか悩んでいる人もいるかもしれません。何年まで借りられるのかどうか、返済期間の上限が知りたい人もいるでしょう。
当記事では、日本政策金融公庫の融資における返済期間の上限と目安を解説します。返済期間を設定するときの参考にしてみてください。
返済期間の上限は融資制度によって異なる
返済期間の上限は融資制度によって異なります。日本政策金融公庫は申込者の状況に応じたさまざまな融資制度を用意しており、返済期間の上限も制度によって異なるため、公庫の返済期間の上限を知りたい人は各制度の詳細を確認してみましょう。
【各融資制度における返済期間の上限例】
制度名 | 返済期間の上限 |
---|---|
一般貸付 | 設備資金 10年以内 運転資金 7年以内 特定設備資金 20年以内 |
新規開業・スタートアップ支援資金 | 設備資金 20年以内 運転資金 10年以内 ※再挑戦支援関連の場合は運転資金15年以内 |
企業活力強化資金 | 設備資金 20年以内 運転資金 7年以内 |
企業再生貸付 | 設備資金 20年以内 運転資金 20年以内 |
日本政策金融公庫の一般貸付は、返済期間の上限が7年〜10年以内(特定設備資金の場合は20年以内)となっています。一般貸付は日本政策金融公庫の中でも最も基本的な制度であり、幅広い業種の事業者が利用できます。そのため、返済期間の上限についても一般貸付の「運転資金7年以内」「設備資金10年以内」が公庫の制度における基準になると考えられます。
日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、返済期間が10年~20年以内となっています。新規開業・スタートアップ支援資金は創業者向けの融資制度であり、創業期の資金繰りの負担を下げる目的のもと、一般貸付よりも返済期間の上限が長く設定されていると考えられます。
そのほか、企業活力強化貸付や企業再生貸付などは返済期間の上限が一般貸付より長く設定されている制度です。高額な設備投資等をする際において活用できるため、一般貸付よりも長い返済期間で組みたい場合は上限が長い制度を活用することを検討してみてください。
設備資金と運転資金によっても上限年数が異なる
返済期間の上限年数は設備資金と運転資金によっても異なります。同じ融資制度においても、設備資金と運転資金では返済期間の上限が異なるため、日本政策金融公庫の返済期間が知りたい人はまずその前提を押さえておきましょう。
設備資金は、機械の購入や店舗の改装など、長期的に事業の基盤をつくるために使われる資金です。こうした投資は収益の回収にも時間がかかるため、返済期間は長く設定される傾向があります。日本政策金融公庫においても、設備資金では10年〜20年といった長期の返済が可能です。
一方、運転資金は仕入代や人件費、家賃など日々の事業運営に必要な資金に充てられます。これらは設備投資よりも短期間で売上に結びつくため、返済期間も7年以内など短めに設定されます。迅速な資金回収が前提となるため、長期返済は想定されにくいのが特徴です。
設備資金と運転資金を一度に申し込んだ場合、借入は2口になります。店舗の拡大に伴う人件費の増加など、設備資金と運転資金がどちらも必要な場合は、返済条件が異なる関係上、設備資金と運転資金を明確に区分けして申し込むことになるため留意しておきましょう。
返済期間の目安は5年~10年程度
返済期間の目安は、5年〜10年程度が目安です。融資制度の上限とは別に、実際の審査で採用されやすい年数は5年〜10年程度となるため、日本政策金融公庫から借入を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。
【返済期間の目安】
資金の種類 | 返済期間の目安 |
---|---|
設備資金 | 7年~10年程度 |
運転資金 | 5年~7年程度 |
設備資金の場合、返済期間の目安は7年〜10年程度です。車両や機械など定期的な買い替えが前提の設備は7年程度に設定される一方で、工場の取得や店舗改装など耐用年数が10年以上の設備は、返済期間が10年もしくは10年以上に設定できる可能性があります。
運転資金の場合、返済期間の目安は5年〜7年程度です。運転資金は仕入れや人件費など日々の支出を補う性質がある関係上、その支出が売上に反映されるまでの期間も設備投資より短い傾向にあることから、5年~7年程度で完済する計画が資金繰りにおいても健全であると考えられています。
なお、上記の返済期間はあくまで目安となります。「購入する設備の種類」「申込者の財務状況」などにより適切な返済期間は変わってくるため、自身の状況と照らし合わせて返済期間を設定することを検討してみてください。
返済期間を決めるときのポイント
返済期間を決めるときのポイントは、返済可能な範囲で設定することです。公庫の審査担当者は申込者の「返済能力」を軸に融資の可否を判断しているため、月々の返済が無理なく続けられる範囲で計画されているかが重視されます。
月々の返済が無理なく続けられる範囲の目安として、営業利益に対する返済比率が30%以内であることとされています。たとえば、年間の営業利益が300万円の場合、年間の返済額は90万円以内(=300万円 × 0.3)に収まっている状態が目安となります。
また、毎月のキャッシュフローも考慮することが大切です。「売上に波がある業種」「入金サイトが長い取引先が多い場合」などは、年間の営業利益から返済比率を試算するだけでなく、月次の資金繰りの観点から見て、資金が不足する月にも返済できるかどうかを確認しておく必要があります。
なお、返済期間は長ければよいというものではありません。返済期間が一般的な目安よりも長い場合、返済能力を懸念されるおそれもあるため、返済期間の目安の範囲内で無理のない返済計画が組めるかどうかを検討するようにしましょう。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、事業資金に関する融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から無料診断できるため、日本政策金融公庫から融資を受けられるか気になる人は無料診断を試してみてください。
資金繰りの観点から据置期間を設定することも検討する
返済期間を決めるときは、資金繰りの観点から据置期間を設定することも検討してみましょう。据置期間を設定することにより、その期間中は利息のみの支払いとなるため、借入初期の返済負担を抑えることができるからです。
据置期間とは、元金の返済が猶予される期間のことです。返済期間のうち、最初の6ヶ月や1年間などに据置期間を設けると、その間は利息のみを支払い、終了後から元金の返済が始まります。
【据置期間のメリットとデメリット】
項目 | 内容 |
---|---|
メリット | ・借入直後の返済負担を減らせる |
デメリット | ・据置期間終了後の返済負担が増える |
据置期間を設定するメリットは、借入直後の返済負担を減らせることです。とくに、創業時や設備投資時などの売上が安定しないタイミングでは、据置期間によって元金返済を猶予できるため資金繰りに余裕が生まれます。
一方、据置期間を設定するデメリットは、据置期間終了後の返済負担が増えることです。据置期間を設定したことにより元金の返済期間が短縮されるため、月々の返済額は高くなります。据置期間中に資金繰りや利益を確保していなければ、返済が重荷となるリスクもあります。
据置期間を設定するかどうかは、事業の状況や将来の収支見通しをふまえて判断することが大切です。月々の返済額だけでなく、利息の支払いや返済期間全体の資金繰りも視野に入れたうえで設定するかどうかを検討してみてください。
返済期間の延長や変更は避ける
一度設定した返済期間の延長や変更は、原則として避けておきましょう。日本政策金融公庫の担当者は返済条件も含めた上で審査をおこなうため、その条件をあとから延長したり変更したりすることは、公庫からの信頼を落とすおそれがあります。
返済期間を延長や変更する場合は、条件変更(リスケジュール)の手続きを踏まなければなりません。一度設定した返済条件を組み直すことになるため、日本政策金融公庫の担当者に返済条件を変更したい旨を伝え、承認してもらわなければなりません。
返済期間の延長や変更は、公庫との信頼関係に影響します。返済条件を組み直した履歴が公庫側に残ることにより、今後の追加融資を受けにくくなるおそれがあるため、返済期間の延長や変更は簡単にはできないことを理解しておきましょう。
なお、一括返済や繰り上げ返済であれば問題ありません。期日よりも早く返済する分には公庫との信頼関係に影響することはないため、その点を踏まえつつ適切な返済期間を設定することを検討してみてください。
条件変更に関する情報が知りたい人は、「返済が厳しいときは?日本政策金融公庫の条件変更手続きを解説」の記事も参考にしてみてください。
返済期間ごとの返済負担はシミュレーションできる
日本政策金融公庫では、返済期間ごとの返済負担をシミュレーションできます。今回は「借入金額500万円」「金利2.70%」「据置期間なし」という条件のもといくつかの返済期間における返済シミュレーションを紹介します。正確な返済金額は借入後に分かりますが、目安として活用してみてください。
【返済期間ごとの返済シミュレーションの例】
項目 | 返済負担の目安 |
---|---|
5年返済の場合 | 返済総額…5,343,128円 うち利息分…343,128円 月々の返済額…約88,000円 |
7年返済の場合 | 返済総額…5,478,122円 うち利息分…478,122円 月々の返済額…65,300円 |
10年返済の場合 | 返済総額…5,680,628円 うち利息分…680,628円 月々の返済額…47,300円 |
返済期間が長くなれば、利息額も大きくなります。融資時点での金利が2.7%と仮定すると、5年返済の場合と10年返済の場合では、10年返済のほうが支払う利息は約33万円多くなります。
返済期間が短くなれば、月々の返済額が大きくなります。元金が減るにつれて月々の返済額も少なくなりますが、5年返済の場合と10年返済の場合を比較すると、5年返済のほうが月々の返済額は約4万円高くなります。
返済期間によって支払う利息や月々の返済額は大きく異なります。申込者の収益計画やキャッシュフローの状況によって適切な返済期間も異なるため、日本政策金融公庫の返済シミュレーションを活用し、返済可能な範囲での期間を設定するようにしましょう。
まとめ
返済期間の上限は融資制度によって異なります。日本政策金融公庫は申込者の状況に応じたさまざまな融資制度を用意しており、返済期間の上限も制度によって異なるため、公庫の返済期間の上限を知りたい人は各制度の詳細を確認してみましょう。
返済期間の目安は、5年〜10年程度が目安です。融資制度の上限とは別に、実際の審査で採用されやすい年数は5年〜10年程度となるため、日本政策金融公庫から借入を検討している人はその前提を踏まえておきましょう。
返済期間を決めるときのポイントは、返済可能な範囲で設定することです。公庫の審査担当者は申込者の「返済能力」を軸に融資の可否を判断しているため、返済期間の目安の範囲内で無理のない返済計画が組めるかどうかを検討するようにしましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/
融資支援実績 6,000件超独立・開業・事業用資金の資金調達を
ソラボがサポートします。
- 独立するための資金調達をしたい
- 金融機関から開業資金の融資を受けたい
- 手元資金が足りず資金繰りに困っている
中小企業庁の認定を受けた認定支援機関である株式会社SoLabo(ソラボ)が、
あなたの資金調達をサポートします。
ソラボのできること
新規創業・開業の相談受付・融資支援業務、既存事業者の融資支援業務(金融機関のご提案・提出書類作成支援・面談に向けたアドバイス・スケジュール調整等)