東京都でもらえる不妊治療の助成金制度では、対象者の所得制限が緩和されました。
2017年、子を授かる方の16人に1人は体外受精からの出産だったそうです(「日本産科婦人科学会」調査より)。その人数は国内初の体外受精児が生まれて以降、総計で59万人を超えています。
しかし、不妊治療への助成は助成金額や条件など地域でバラつきがあります。
今回は不妊治療で東京都からもらえる助成金にスポットをあてて解説したいと思います。
1. 正式名称は「東京都特定不妊治療費助成金」
ネット検索する際は、「助成金 不妊治療」などの検索語で調べる方が多いことでしょう。東京都の不妊治療でもらえる助成金の正式名称は、東京都特定不妊治療費助成金。その名の通り、特定の不妊治療にのみ支給される助成金なのです。
⓵対象は体外受精と顕微授精のみ
不妊が疑われる場合は、まず不妊検査を受けます。不妊検査は婦人科で受診が可能です。問診や内診、超音波検査や血液検査などを行い、費用はだいたい1万円程度で、この検査についての助成金はありません。
不妊検査を受け原因を突き止めたら、次は不妊治療を実行します。不妊治療にはさまざまな種類があります。たとえば、以下のような種類があります。
-
タイミング療法(費用:初回保険適用で2,000円~。2回目以降は1回3,000円くらい)
基礎体温や超音波検査などのデータから医師が排卵日を予測する
- 排卵誘発法(費用:保険適用で内服薬は500円~。注射は1回1500円くらい)
内服薬や注射で卵巣を刺激し、排卵を起こさせる
- 人工授精(費用:1回2~3万円。保険適用外)
採取した精液を妊娠しやすい期間に細いチューブで子宮内に注入する
- 体外受精(費用:1回30万円。⇒助成金アリ)
女性から採取した卵子に男性から採取した精子を大量にふりかけ、精子が自力で卵子へ入り込むようにする
- 顕微授精(費用:1回30~50万円。⇒助成金アリ)
体外受精と方法は似ていますが、1匹の精子を慎重にごく細い針を使い卵子に注入する
東京都の助成金の対象となるのは、この中で体外受精と顕微授精の2種のみとなります。助成金はあくまで実際にかかったお金(実費)があとからキャッシュバックされる仕組みです。実際に1回の治療に100万円かかった場合、仮に上限まで受給したとすると、助成金の上限額は30万円ですので、残り70万円は自腹となる計算です。
この他に、男性の不妊治療として以下の4種の治療にかかる費用の一部を助成します。ただし、男性不妊治療単独での助成申請はできないことにご注意ください。また、特定不妊治療費が助成の対象とならなかった場合、男性不妊治療についても助成の対象とはなりません。
- 精巣内精子生検採取法(TESE)
- 精巣上体内精子吸引採取法(MESA)
- 経皮的精巣内精子吸引採取法(PESA)
- 精巣内精子吸引採取法(TESA)
②治療ステージとは?
次に、治療ステージについてお話ししましょう。体外受精と顕微授精には治療の初期~終了までをA~Hまでの全8ステージに分けています。
この中で、ステージGとHに関しては治療を中止する段階ですので助成対象外の治療となります。A~Fまでの治療が助成金対象です。東京都特定不妊治療費助成金では、治療ステージごとに助成金額が決められています。
③いくらもらえるの?何回もらえるの?
初めて助成を受ける場合と2回目以降の場合で、以下のようにもらえる助成金額が異なります。
治療ステージ | 助成1回目 | 助成2回目以降 |
治療ステージA | 30万円 | 20万円 |
治療ステージB | 30万円 | 25万円 |
治療ステージC/F | 7.5万円 | 7.5万円 |
治療ステージD/E | 30万円 | 15万円 |
助成1回目、2回目以降とあるということは、この助成金は1回のみしかもらえない助成金ではないということです。不妊治療は時間がかかるため、複数回の助成で治療をバックアップしています。なお、複数の治療を同時進行するケースもありますよね。その場合は、治療が完了した順に助成が認定されると規定されています。
この他に、男性の不妊治療に対しては上記でご紹介した治療(TESEなど)に対し、手術1回につき最大15万円が支給されます。
なお、平成31年4月1日以降に行った手術は、初回の治療に限り助成額が30万円に拡大されました。
<年齢により異なる助成の回数>
妻の年齢が39歳までの夫婦・・・通算6回まで
妻の年齢が40歳以上42歳までの夫婦・・・通算3回まで
助成回数は、妻と夫の両方の分を足した一組での通算となります。妻が37歳では6回の助成が可能ですが、うち2回を男性が使った場合は妻の使える助成回数は4回となります。
また、助成回数の通算は、初回助成認定時の治療開始時点の年齢で固定されます。たとえば妻が39歳までに初めて助成を受けた場合は、40歳を超えても通算回数は6回のままです。
なお、助成を受けた回数が上限回数に満たない場合でも、妻の年齢が43歳以上でスタートした治療は例外なく助成の対象外となります。
④朗報!東京都では平成31年4月1日~所得制限が緩和!
東京都では、これまで対象者の所得制限を夫婦合算(申請日の前年)で上限730万円未満としていました。しかし、都はこの条件を緩和させ、平成31年4月1日以降に開始した治療については905万円未満に引き上げました。
但し、「所得制限」とは「課税所得額」のことを指しています。額面の所得とは異なりますので、正確な課税所得額はご自身で確認するようご注意ください。
その他、以下の要件を全て満たしている方が助成対象となります。
・特定不妊治療以外での治療法によって妊娠する見込みがない、または極めて少ないと医師が診断した方
・指定医療機関で特定不妊治療を受けた方(中断は×)
・申請日の前年の夫婦合算の所得が730万円以下である方
・東京都内に住所があること。または夫婦いずれかの所得が多い方が東京都内に住むこと。
・事実婚の場合は、1回の治療の初日から申請日まで夫婦で継続して東京都(八王子以外)に住民登録をしている方。他に法律上の配偶者がいない方
詳細は、以下のURL(東京都特定不妊治療費助成の概要)よりご確認ください。
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kodomo/kosodate/josei/funin/top.html
2、不妊治療の助成金をもらうまでの流れとは?
⓵申請までの流れ
助成金を確実にもらうには、申請までの流れを把握しておくとスムーズです。
確実に助成金を申請できるよう、スケジュールを確認して準備を進めましょう。
不妊検査開始
↓
不妊検査終了
↓
不妊治療開始(1回目)
↓
不妊治療終了(1回目)
↓
申請書類の提出
②審査結果通知は申請から約2か月後
申請書類が東京都福祉保健局に届いてから約2か月後、審査結果通知(「承認決定通知書」)が申請者宛に届きます。
なお、助成金が振り込まれるのは、通知が発送されてから約1か月後となります。
3、不妊治療の助成金の申請方法
助成金の申請には、下記の書類が必要になります。
No. | 必要書類 |
1 | 特定不妊治療費助成申請書(原本)(第1号様式) |
2 | 特定不妊治療費助成事業受診等証明書(原本)(第2号様式) |
3 |
住民票の写し(原本) ※個人番号(マイナンバー)の記載のないもの |
4 | 戸籍全部事項証明(戸籍謄本) |
5 |
夫婦両方の所得関係書類 ・住民税課税(非課税)証明書 ・住民税額決定通知書 |
6 |
領収書のコピー(指定医療機関が発行したもの) ※複数回の申請をまとめて行う場合、領収書のコピーは申請書ごとに分類 |
7 | 精巣内精子生検採取法等受診等証明書(原本)(第3号様式) |
8 | 上記7に係る領収書のコピー |
引用元:東京都特定不妊治療女性の概要(東京都福祉保健局Webサイト)
申請書はこちら(東京都福祉保健局Webサイト)からダウンロードいただけます。
説明書及び指定様式は、東京都指定医療機関のほか、一部の区市町村でも配布していますので、事前にお電話で在庫確認をしてから取りに行くことをおすすめします。
注意点として、都に提出した書類は返却されません。必ずご自身の控え用のコピーを取った上で、申請するようにしましょう。
なお、最新の情報は東京都福祉保健局のWebサイト内「東京都特定不妊治療女性の概要」をご覧ください。
4、【注意】助成の締切は1回の治療が終了した年度末まで
高額な不妊治療に対してまとまった金額を支給してくれるこの助成金は、子供を授かりたい夫婦にとってとても頼りになる存在ですよね。
しかし、いつでも申請できるというわけではなく締切があります。1回の不妊治療の完了した日を含む年度末までとなるのです。
例えば、3月1日に治療を完了した方は・・・当月の3月31日が申請の締め切り日
4月10日に治療を完了した方は・・・翌年3月31日が申請の締め切り日
また、せっかく不妊治療をしても指定医療機関以外では助成はなく自費となってしまいます。八王子にお住いの方は申請先が東京都ではなく八王子市となりますので、気を付けましょう。
なお、八王子市の不妊治療費助成事業の詳細は、八王子市不妊に悩む方への特定治療支援事業(八王子市Webサイト)をご覧ください。
まとめ
不妊治療には精神的・肉体的なストレスだけでなく、お金も非常にかかります。この助成金があることで、多くの家族の笑顔を生み出していることは間違いないでしょう。
但し、申請期限を過ぎてしまった場合には助成対象となりませんので、助成金を申請しようと検討している方は、 事前にスケジュールを確認し、東京都福祉保健局の担当者や不妊治療を受けている医療機関に相談しておくとよいでしょう。
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