なぜ見せるの?日本政策金融公庫に預金通帳を提出する理由や注意点を解説

なぜ見せるの?日本政策金融公庫に預金通帳を提出する理由や注意点を解説 更新日:2025.08.14 公開日:2018.03.20起業のための資金調達 – 日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫 預金通帳

日本政策金融公庫から融資を受ける際、申込書や事業計画書だけでなく、預金通帳の提出を求められることがあります。なぜ通帳を見せる必要があるのか、提出時にどのような点に注意すればよいのか気になる人もいるでしょう。

当記事では、日本政策金融公庫に預金通帳の提出を求められる理由や、スムーズに審査を進めるための注意点を解説します。公庫からの融資を検討している人は参考にしてみてください。

日本政策金融公庫が預金通帳の提出を求める理由

日本政策金融公庫が預金通帳の提出を求める理由はいくつか挙げられます。預金通帳は、入出金の日付や金額などがそのまま記録されているため、申込者の資金面の情報を客観的に示す材料となります。そのため、公庫の審査では預金通帳から申込者に関する情報を確認しています。

【預金通帳の提出を求める理由】

  • 資産状況を確認するため
  • 支払振りを確認するため
  • 申告内容の整合性を確認するため

日本政策金融公庫の審査では、預金通帳からその人の「資産状況」「支払振り」「申告内容の整合性」を確認していると考えられます。公庫の審査を受ける人は、預金通帳を提出する理由を理解した上で、審査の事前準備を進めてみてください。

資産状況を確認するため

預金通帳の提出を求める理由のひとつは「資産状況を確認するため」です。日本政策金融公庫の審査では、申込者がどの程度の資産を保有しているかを確認しており、預金通帳はその裏付け資料となります。

【預金通帳から確認できる資産状況の例】

項目 確認事項の例
預金残高 自己資金の有無や運転資金の余裕を判断する
入出金履歴 収支の安定性や継続性を確認する
定期預金や積み立て 資金管理能力や計画性を判断する

預金残高は、申込者の現在の資金力を示す項目となりえます。残高が運転資金の数か月分あれば、資金繰りに余裕があると判断されやすくなり、一方で残高が運転資金の1ヶ月分にも満たない場合は、返済能力に懸念ありと判断されるおそれもあります。

入出金履歴や定期預金の有無も、資産状況の評価に影響します。定期預金の口座や証券口座など、複数の口座に資産が分かれている場合は、すべての口座の状況が分かるようにしておくのもポイントです。

もし資産状況が十分でない場合でも、通帳の内容を整理しておくことが大切です。通帳の残高推移と照らし合わせて資金繰り状況を説明することにより、資金管理能力があると受け取られる可能性があるため、預金通帳の内容は自身で把握するようにしておきましょう。

支払い振りを確認するため

預金通帳の提出を求める理由のひとつは「支払い振りを確認するため」です。日本政策金融公庫の審査では、申込者の日常的な支払い状況を把握するために、預金通帳を裏付け資料として確認しています。

【支払振りの確認項目の例】

項目 確認事項の例
公共料金(電気・水道・ガスなど) 生活基盤の安定性を確認する
家賃や住宅ローン 返済能力や支払負担を確認する
クレジットカードの支払い 信用情報の内容と整合性があるかを確認する

公共料金の支払い状況は、生活基盤の安定性を測る指標となります。たとえば、電気や水道、ガスなどの支払いに遅延や未納がある場合、生活面での資金繰りが安定していないと判断され、審査にマイナスの影響を与えるおそれがあります。

また、家賃や住宅ローンの支払い状況は、返済負担の大きさや資金繰りの健全さを示します。収入に対し返済負担や固定費の負担が大きい場合、生活費の負担が事業にどの程度影響を与えるか試算するための参考資料となります。

他にも、信用情報との整合性が取れているかどうかを確認する目的もあります。 クレジットカードの支払い状況等から、信用情報と通帳の記録に整合性が取れているかどうかを確認することにより、申込者の支払状況を総合的に評価する可能性があることを留意しておきましょう。

申告内容の整合性を確認するため

預金通帳の提出を求める理由のひとつは「申告内容の整合性を確認するため」です。日本政策金融公庫の審査では、申込者の事業計画書や話の内容と、預金通帳に記録された資金の動きが一致しているかを裏付け資料として確認します。

【申告内容の整合性における確認例】

項目 確認事項の例
取引先への入出金の状況 取引条件と一致しているか確認する
事業収入や経費の内訳 決算書や確定申告書の記載と一致しているか確認する
自己資金の蓄積状況 申告した自己資金額と一致しているか確認する

たとえば、通帳からは取引先への入出金の状況が分かります。取引条件に従って入出金がおこなわれていない場合、取引先とのトラブルの有無や事業の信頼性に懸念を持たれる可能性があります。

また、事業収入や経費の内訳が申告内容と一致しているかどうかも確認されます。通帳の記録と決算書上の数字にかい離がある場合、申告内容の正確性に疑問を持たれる可能性があります。

なお、創業時に融資を受けたい場合は自己資金の蓄積状況を預金通帳から確認されます。自己資金の出所や蓄積経過を確認されるため、質問されたときにスムーズに回答できるように記録を整理しておきましょう。

預金通帳を提出するときの注意点

日本政策金融公庫に預金通帳を提出するときは、いくつかの注意点を押さえておきましょう。公庫の担当者が通帳を確認する目的によって注意すべき点がいくつかあるため、審査を控えている人は確認してみてください。

【預金通帳を提出するときの注意点】

  • 原本が必要か確認する
  • 提出期間を確認する
  • 複数口座の通帳が必要か確認する
  • ネットバンキングの場合は入出金履歴を印刷する

預金通帳を提出するときは、原本の有無や提出期間などの注意点を押さえておきましょう。これらの注意点を押さえておくことにより、審査にかかる手間や審査期間の短縮につながるため、日本政策金融公庫の審査を受ける人はそれぞれの注意点を確認してみてください。

原本が必要か確認する

預金通帳を提出するときの注意点のひとつは「原本が必要か確認すること」です。日本政策金融公庫の支店方針によっては、記録の改ざんや偽造を防ぐために預金通帳の原本を持参するように依頼される場合があるからです。

預金通帳のコピーやスキャンデータでは、取引履歴を加工や削除されても気づきにくいという理由から、通帳の原本を持参するよう依頼される可能性があります。その場合、審査面談時に通帳の原本を確認した上で、公庫担当者がその場でコピーする流れになります。

預金通帳の提出を依頼された場合は、原本が必要かどうかも確認しておくようにしましょう。提出前に原本とコピーのどちらが必要かを確認しておくことにより、作業の手間や再提出の手間を省けるため、事前に担当者に確認することを検討してみてください。

提出期間を確認する

預金通帳を提出するときの注意点のひとつは「提出期間を確認すること」です。提出期間が短すぎると資金の流れが把握できず、その半面、期間が長すぎると審査に時間がかかる場合があるため、あらかじめ担当者に確認しておきましょう。

日本政策金融公庫の審査では、直近3か月分〜6か月分程度の取引記録を求められる傾向にあります。支店や担当者の方針によって期間に差はありますが、直近の資産状況や支払振りを把握する意図として、直近3ヶ月〜6ヶ月分の記録を確認される可能性があります。

なお、指定された期間においては、通帳の記帳漏れがないよう注意が必要 です。記帳されていないと正確な資金状況が分からなくなるため、再提出の手間を防ぐためにも審査の前日に記帳をすませておくようにしましょう。

複数口座の通帳が必要か確認する

預金通帳を提出するときの注意点のひとつは「複数口座の通帳が必要か確認すること」です。複数の口座に分けて資金を管理している場合は、全体の資金状況を把握する目的から複数口座の預金通帳を提出するよう依頼される場合があります。

たとえば、事業用と生活用に口座を分けている場合、どちらの通帳も依頼される可能性があります。その場合、申込者の総資産を把握する目的や、双方に不正な資金移動がないか確認する意図が考えられます。

また、家族名義の口座の提出を依頼される可能性もあります。原則として本人名義の通帳をもとに審査されますが、同居家族に資産がある場合は生活費の補てん材料とみなされることがあるため、参考資料として求められるケースがあります。

複数口座に分けて管理していること自体は、資金管理能力があると判断される傾向にあります。正確な資金状況を申告する意味においても、複数口座がある場合は事前に担当者に持参すべきかどうか確認することを検討してみてください。

ネットバンキングの場合は入出金履歴を印刷する

預金通帳を提出するときの注意点のひとつは「ネットバンキングの場合は入出金履歴を印刷すること」です。ネットバンクや通帳レスの口座を利用している場合でも、取引記録を資料として提出すれば対応してもらえるからです。

ネットバンクの場合は、各銀行のウェブサイトやアプリから取引明細をダウンロードし、印刷する方法が一般的です。銀行によって保存形式や取得できる期間が異なるため、事前に操作方法を確認しておきましょう。

なお、印刷した入出金履歴が実在することの証明として、面談時にウェブ画面の提示を求められる可能性があります。スマホやPC上で実際にログインし、取引明細を見せることも想定して、事前にログインしておくことも検討してみてください。

審査面談時に説明が必要な預金通帳の例

預金通帳の内容によっては、審査面談時に説明を求められる可能性があります。日本政策金融公庫の担当者は、通帳から資金の流れや事業の健全性を確認するため、違和感のある点があれば面談時に質問される可能性があります。

【説明が必要な預金通帳の例】

項目 内容
直前に大口入金がある 売上や資金調達によるものかどうかを説明する。不自然な資金流入は見せ金を疑われる要因となる。
用途不明な入出金がある 金額や取引相手との関係性を説明する。事業と無関係な資金の流れと判断される可能性がある。
事業資金と生活資金が混在している 事業資金と生活資金を分けて説明する。事業の収支を把握できない場合、審査が長引くおそれがある。

預金通帳に不自然な資金の流れがある場合、担当者から確認される可能性があります。とくに、直前に大口入金がある場合や用途不明な入出金記録がある場合は、審査担当者に経緯を明確に説明できないと信用評価に影響します。

また、事業資金と生活資金が混在している場合も注意が必要です。通帳を見ただけではそれぞれの区別がつきにくいため、必要に応じて事業資金分だけ補足や別紙にまとめることにより、資金管理できていると印象付けられる可能性があります。

事業規模によっては、経営者自身がすべての取引内容を把握しておくことは難しい場合もあります。しかし、面談の場で曖昧な返答をすると信頼を損ねるおそれがあるため、もしその場で答えられない質問があれば、経理担当者や税理士に確認したのち回答するようにしましょう。

まとめ

日本政策金融公庫が預金通帳の提出を求める理由はいくつか挙げられます。預金通帳は、入出金の日付や金額などがそのまま記録されているため、申込者の資金面の情報を客観的に示す材料となります。そのため、公庫の審査では預金通帳から申込者に関する情報を確認しています。

日本政策金融公庫に預金通帳を提出するときは、いくつかの注意点を押さえておきましょう。原本の有無や提出期間など、公庫の担当者が通帳を確認する目的によって注意すべき点がいくつかあるため、審査を控えている人は確認してみてください。

預金通帳の内容によっては、審査面談時に説明を求められる可能性があります。面談の場で曖昧な返答をすると信頼を損ねるおそれがあるため、もしその場で答えられない質問があれば、経理担当者や税理士に確認したのち回答するようにしましょう。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

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