赤字決算でも日本政策金融公庫から融資を受けるためのポイントを解説

赤字決算でも日本政策金融公庫から融資を受けるためのポイントを解説 更新日:2025.08.27 公開日:2018.03.20起業のための資金調達 – 日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫 赤字

赤字決算となってしまった会社の中には、日本政策金融公庫からの融資が受けられるのか不安に感じている人もいるかもしれません。追加融資を受けたいけれど、決算が赤字の場合はどのように評価されるのか知りたい人もいるでしょう。

当記事では、赤字決算でも日本政策金融公庫から融資を受けるためのポイントを解説します。融資を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

ポイントは事業性を評価してもらうこと

赤字決算の事業者が日本政策金融公庫から融資を受けるためのポイントは、事業性を評価してもらうことです。平成26年に金融庁が定めた「金融モニタリング基本方針」によると、事業性を評価して融資することを重点施策として金融機関に依頼しているからです。

事業性評価とは、財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業内容や成長可能性などを適切に評価することです。日本政策金融公庫は政策を反映した融資を実施しているため、民間の金融機関よりも事業性を評価する姿勢であると考えられます。

【事業性評価の項目例】

  • 事業継続の実績があるかどうか
  • キャッシュフローが健全かどうか
  • 改善見込みがあるかどうか

当記事では、事業性評価の項目として以上の3点を挙げて解説していきます。事業を過去・現在・未来の流れから総合的に判断することにより、事業性を評価されて融資を受けられる可能性があるため、赤字決算でも融資を受けられるか気になっている人は確認してみてください。

なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、事業資金に関する融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から無料診断できるため、日本政策金融公庫から融資を受けられるか気になる人は無料診断を試してみてください。

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事業継続の実績があるかどうか

事業性評価の項目のひとつとして、「事業継続の実績があるかどうか」が挙げられます。決算書の数字だけでは測れない事業性を、事業を継続してきた実績の有無を通して評価される可能性があります。

【事業継続の実績例】

評価の観点 実績の例
顧客基盤 地域密着営業で固定客がついている
取引先との関係 ニッチ商材で特定の取引先との関係が強い
金融機関の支援 民間の金融機関がメイン行として取引している
業歴や売上推移 創業10年以上、売上は安定的に推移している
業界内評価 商工会議所や業界団体の表彰歴がある

事業継続の実績は、単なる年数の長さだけではなく「安定性」と「信頼性」を裏付ける根拠となりえます。固定客の存在や取引先との継続的な関係は、今後の売上が見込みやすいと判断され、将来の返済原資が見込めると評価されやすくなります。

また、金融機関からの支援実績や業界団体からの表彰歴などは、第三者による客観的な評価として事業性を強める要素です。とくに中小企業や小規模事業者においては、数値に表れにくい技術力や信頼性を補う証拠となる可能性があります。

事業継続の実績を示す資料として「商工会議所の表彰状」「業界団体の認定証」「長期取引先との契約書」などが挙げられます。こうした資料は事業の実績として評価される可能性があるため、融資審査時に持参することも検討してみましょう。

キャッシュフローが健全かどうか

事業性評価の項目のひとつとして、「キャッシュフローが健全かどうか」が挙げられます。決算書の数字上では赤字でも、実際の資金繰りが不健全とは限らないため、日本政策金融公庫の担当者はキャッシュフローの観点からも評価する可能性があります。

【キャッシュフローの観点から整理した例】

キャッシュフローが健全な例 キャッシュフローが不健全な例
新規出店や設備投資の費用が一時的に発生 慢性的に売上が減少し改善の兆しがない
減価償却費が大きく、実際の現金は黒字 運転資金が不足し借入に依存している
研究開発費など将来の収益につながる投資が中心 本業の利益率が低く資産売却や借入で補填している

キャッシュフローが健全な例では、赤字が必ずしも問題とはならないことが分かります。たとえば、新規出店や設備投資による一時的な支出、減価償却費の計上、研究開発費など将来の収益につながる投資は、現金の流れに支障がない限りマイナス評価にはつながらない可能性があります。

一方、キャッシュフローが不健全な例とは、赤字の背景に継続的な売上減少や運転資金不足があり、資金繰りの改善が見込めない場合です。本業の利益率が低く、資産売却や借入で補填している場合も同様です。こうしたケースでは、事業性評価において慎重な判断が必要とされます。

キャッシュフローが健全かどうかは、決算書や試算表の数字に加え、預金通帳の流れや他行の返済予定表などからも確認されます。決算書の内容次第では、公庫の担当者から資金繰り表の作成を依頼される場合もあるため、赤字決算の人はあらかじめ留意しておきましょう。

改善見込みがあるかどうか

事業性評価の項目のひとつとして、「改善見込みがあるかどうか」が挙げられます。現状は赤字決算であっても、その要因を分析し改善策があるならば、将来の返済が見込めると日本政策金融公庫が判断する可能性があります。

【赤字の要因と改善策の例】

赤字の要因 改善策
売上減少による収益低下 新規顧客開拓や販路拡大・価格戦略の見直し
原価・仕入れコストの上昇 仕入先の見直し・コスト削減策の実施
人件費や固定費の増加 業務効率化・固定費の圧縮
一時的な投資負担 投資計画の見直し・資金繰りの分散化
季節変動や特需の影響 事業計画に季節変動を組み込む・資金計画を調整

売上減少や原価上昇などの赤字要因は、単に数字の悪化として捉えられるだけでなく、改善策を示すことで将来の収益回復が可能であることを伝えられます。たとえば、新規顧客開拓や販路拡大を具体的に計画している場合、収益改善の見込みがあると評価されやすくなります。

また、人件費や固定費の増加、一時的な投資負担に関しても、効率化や資金繰りの分散化など具体策があるかが重視されます。日本政策金融公庫の審査では、過去の決算状況だけではなく、改善策の実効性や実施計画の妥当性も評価対象となります。

改善策次第では、日本政策金融公庫の特別融資が適用できる可能性があります。企業活力強化資金」「新事業活動促進資金」など、一定の要件を満たすと適用できる融資制度があるため、改善策の内容によっては特別融資を利用することも検討してみましょう。

赤字決算でも融資を受けるためには事前準備が必要

赤字決算でも融資を受けるためには事前準備が必要です。とくに、赤字の要因が明確でない場合は、経営課題を洗い出し、改善策を提示できるかどうかにより、審査の結果が変わる可能性があるため、事前に審査の準備をしてから臨みましょう。

【融資における事前準備の例】

準備項目 具体例
赤字の要因を分析する 過去の決算と比較して要因を探す・経費のうち、割合の大きい費目を探す・内部要因もしくは外部要因によるものか考察する
改善策を検討する 削減可能な経費を見直す・売上増加に向けた取り組みの強化・投資の分散化やキャッシュフローの調整
今後の収益予測をつくる 今後の売上予測やコスト削減効果を反映する・返済計画を含めた月ごとの資金繰り表を作成する・融資金の資金使途と収益改善効果を示す

事前準備として挙げた各項目は、審査担当者が事業の現状と将来性を判断するための材料となります。赤字の要因を明確にし、改善策を示すことで、単なる赤字ではなく「改善の余地がある事業」として評価されやすくなります。

さらに、今後の収益予測や資金繰り表を作成することで返済可能性の根拠を数値で提示できます。融資金の具体的な使途と収益改善の効果も示すことにより、赤字決算であっても事業が成長する余地が伝わるため、公庫が支援する意義があると評価される可能性があります。

事前準備には時間や手間がかかります。とくに、資金繰り表や収益予測を作成するとなると相応の時間がかかりますが、返済可能性を示す重要な資料として評価されるため、赤字決算の場合は作成することを検討してみてください。

経営課題を整理したい場合は専門家の活用を検討する

事前準備を進める中で、経営課題の整理に時間がかかると判断した場合は、専門家を活用することも検討してみましょう。自力での対応が困難な場合、専門家や公的支援機関を活用することにより、改善策の立案や資料作成のサポートを受けられる可能性があります。

【専門家や支援機関の例】

項目 サポート内容の例
税理士 金融機関への書類作成支援、経費削減のアドバイス
中小企業診断士 事業分析、経営改善計画の策定支援
よろず支援拠点 経営相談や書類作成のアドバイス
商工会や商工会議所 経営相談や公的融資制度の紹介

税理士や中小企業診断士といった専門家は、金融機関への提出書類の作成や経営改善計画の策定など、実務面での支援を得意としています。とくに数字の整理や資金繰り改善の視点で助言を受けることで、自分では気づかなかった改善策が見つかることもあります。

一方で、よろず支援拠点や商工会議所などの公的支援機関は、無料または低コストで経営相談や制度融資の情報提供を行っています。相談窓口をうまく活用することで、専門的なアドバイスを得ながら、資金調達の選択肢を広げることができるでしょう。

専門家や公的支援機関によっては、日本政策金融公庫の管轄支店とつながりがあり、担当者を直接紹介してくれる可能性があります。専門家を活用する場合は、公庫への融資紹介を行っているかどうかも確認してみましょう。

なお、当サイトを運営する「株式会社SoLabo(ソラボ)」は中小企業庁の認定を受けた認定支援機関です。8,000件以上の融資支援実績があるため、日本政策金融公庫からの借り入れを検討している人は株式会社SoLabo(ソラボ)に相談することを検討してみてください。

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一時的に業況が悪化している場合は経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)を検討する

一時的に業況が悪化している場合は、経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)利用を検討できます。これは日本政策金融公庫の融資制度のひとつで、一時的に業況が悪化している事業者を対象とした制度となるため、赤字決算の要因によっては活用できる可能性があります。

【経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)の概要】

項目 内容
融資対象者 一時的に売上の減少等業況悪化をきたしているが、中長期的には業況が回復し発展することが見込まれている方
融資限度額 4,800万円
利率(年) 基準利率もしくは特別利率Q
※2025年8月時点の基準利率は2.80~4.30%
返済期間 設備資金15年以内
運転資金8年以内
※うち据置期間は3年以内

※日本政策金融公庫「経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)」をもとに株式会社SoLaboが作成

融資対象となるのは、一時的に売上が減少するなど業況が悪化しているものの、将来的な回復や発展が見込まれる事業者です。たとえば、外部環境の変化や一時的な需要減に直面しているものの、顧客基盤や事業モデルに強みがある企業は対象となり得ます。

また、返済期間が一般貸付と比べてやや長めです。事業者の資金繰り負担を軽減する目的から、運転資金と設備資金のどちらも一般貸付よりも長い上限が設定されています。

なお、日本政策金融公庫には他にも融資制度があります。事業の再建を図る方」「取引企業の倒産により経営に困難を来している方」などを対象とした融資制度もあるため、該当する場合は制度の詳細を確認してみてください。

まとめ

赤字決算の事業者が日本政策金融公庫から融資を受けるためのポイントは、事業性を評価してもらうことです。事業を過去・現在・未来の流れから総合的に判断することにより、事業性を評価されて融資を受けられる可能性があるため、赤字決算でも融資を受けられるか気になっている人は確認してみてください。

赤字決算でも融資を受けるためには事前準備が必要です。とくに、赤字の要因が明確でない場合は、経営課題を洗い出し、改善策を提示できるかどうかにより、審査の結果が変わる可能性があるため、事前に審査の準備をしてから臨みましょう。

事前準備を進める中で、経営課題の整理に時間がかかると判断した場合は、専門家を活用することも検討してみましょう。自力での対応が困難な場合、専門家や公的支援機関を活用することにより、改善策の立案や資料作成のサポートを受けられる可能性があります。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

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