補助金によって得た財産の処分はどうするべき?
補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(略して補助金等適正化法)―。
長いネーミングですが、この法律をご存じでしょうか?
一言で言うと、補助金の不正受給や目的外利用を罰する法律です。補助金は一度申請が受理されると、その後対象者への定期的なチェックがないため、不正利用が長年まん延しています。補助金等適正化法は昭和30年とだいぶ昔に施行されましたが、平成20年以降も随時改正されています。
今回の記事では、補助金等適正化法の改正点についてわかりやすく解説したい
1.補助金の不正受給の実態
森友学園の補助金不正受給が記憶に新しいですが、それ以外にも国家予算である補助金や助成金の不正利用は長らく問題となっています。
最近では、スーパーコンピューター(スパコン)開発企業が先端技術などの実用化に向けた開発支援の助成制度で、費用を1億5千万円水増しした容疑で逮捕されています。この事件は不正金額の規模が大きく、しかも同企業は以前も領収証偽造で書類送検された経歴があるため、国会でも話題となりました。
本来であれば、国や人々のためになる事業や研究に使われるべき助成金や補助金。不適切な補助金利用を防ぐための「補助金等適正化法」は1955年の制定以降、比較的ひんぱんに改正されており、直近では令和元年にも改正が行われています。
2.今までの補助金等適正化法の主な内容
① 補助金等適正化法の概要
補助金等適正化法は、補助金が国民からの貴重な税金からなる資金であるという背景を踏まえて作られた法律です。補助金だけでなく、国会議員の給料や生活保護の資金など人々の税金からまかなわれているお金は、より大切に扱われるべきだからです。
適切な業者に適切な運営をさせるため、補助金等適正化法は1955年(昭和30年)に施行されました。その中身ですが、補助金だけでなく以下の2つの公的な資金についても規定しています。
- 負担金⇒公共事業のために徴収される特別な経費
- 利子補給金⇒国や地方公共団体に低利子で給付する補給金
補助金等適正化法の内容としては、下記のような補助事業、補助事業者、間接補助金、間接補助事業者といった基本的なことを網羅しています。
- 補助事業等:補助金の対象となる事務または事業。「元気なまちづくりを応援する事業」や「革新的なものづくりを推進する事業」などが挙げられます。
- 補助事業者等:商業・サービス等の事業を営む中小企業や小規模企業といった補助事業を行う者
- 間接補助金等:事業を直接行う事業者が直接、補助金を受けるのではなく、事業を取りまとめる事業者から間接的に受取る補助金
- 間接補助金事業者等:例えば街中に施設を作る建設業者のような間接補助事業等を行う者
その他には、補助金の申請方法や申請後の調査についてなど具体的な手続きに関する取り決めが記載されています。
②補助金申請の基本的な流れ
補助金にはさまざまな種類がありますが、基本的には下記のような流れで申請を行うことになります。
【補助金申請から着金までの流れ】
支給要件の確認
↓
必要書類の記載
↓
申請
↓
審査を通過する
↓
補助金支給申請書を提出する
↓
着金
申請後の審査において、各省庁の長は申請内容が正しいか、適切であるか、金額の算定に誤りがないか調査をした上で補助金の交付の決定をします。
補助金を受けた事業者には、補助事業の遂行状況を各省庁の長へ報告する義務があります。
もし補助事業者が補助金交付時の決定内容を遂行していなかった場合、補助金の一部または全額の返還を命じることがあります。
このように、各省庁では補助金の不正利用を防止するために厳正な審査を行っているのです。
3.補助金等適正化法の改正点とは
補助金が与えられる事業は多岐に渡ります。例えば、ものづくり補助金の場合は革新的サービス開発・試作品開発などが対象なので、製造業・ソフトウェア業・情報処理サービス業・卸売業・サービス業・小売業など多くの事業が対象となっています。
そのため、実際に補助金の申請を受けて審査をする機関は1つではなく、各業界に関わる省庁の長となります。補助金等適正化法自体の大きな改正点は、補助金支給によって得た財産の処分についてです。
ここからは、この財産の処分について詳しく解説していきます。
① 適正化法第22条に定められる「財産の処分」の定義とは?
補助金を得ることで補助金事業者等の財産は増えることになります。補助金を使える用途は人件費などの目に見えないものだけではなく、大型の設備や土地、建物など、事業の終了後も存在し続けるものが多数あります。
既に補助金事業は終了していても、補助金を得て購入した設備などについては補助金等適正化法により慎重に取り扱われなければなりません。例えば、補助金で購入した設備を事業関係者が自らの利益のために転売することは許されません。
このような、補助金支給によって得た財産の処分については適正化法第22条の下記の条文で示されており、各省庁の長から承認を受けずに財産を処分することが禁じられています。
第二十二条 補助事業者等は、補助事業等により取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を、各省各庁の長の承認を受けないで、補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、又は担保に供してはならない。ただし、政令で定める場合は、この限りでない。(引用:補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)
なお「財産の処分」は、法令で以下のように定義されています。廃棄や取り壊しだけでなく、所有者の変更を伴わない譲渡や貸付けといった行為も禁じられていますので、ご注意ください。
- 転用:処分制限財産の所有者の変更を伴わない目的外使用。
- 譲渡:処分制限財産の所有者の変更。
- 交換:処分制限財産と他人の所有する他の財産との交換。
- 貸付け:処分制限財産の所有者の変更を伴わない使用者の変更。
- 担保に供する処分:処分制限財産に対する抵当権その他の担保権の設定。
- 取壊し:処分制限財産(施設(土地を含む)に限る)の使用を止め、取り壊すこと。
- 廃棄:処分制限財産(設備に限る)の使用を止め、廃棄処分すること。
②例外的に認められる財産の処分とは?
条文にもある通り、補助金で購入した財産を各省各庁の長の承認を受けず、補助金等の交付の目的に反して使用あるいは譲渡等をすることは禁じられています。
しかし、補助事業の関連事業への転用や譲渡、交換や貸付などに関しては、場合によって経済産業大臣が認めるケースがあります。
【承認が得られる財産処分の基準】
- 財産処分に関して、既定の金額を国庫に納める場合
- 大臣等が適当であると個別に認める場合
- 補助事業に必要な資金調達をする場合
- 資金繰りの悪化で補助事業等の継続が困難であると認められる場合
改正は適宜実施されていますので、最新の情報を随時チェックするようにしましょう。
まとめ
補助金で得た財産の処分は、何が何でもダメという風潮から有効利用をしようという流れに現在変わってきています。
せっかく得た補助金からの財産。賢く処分し、事業に有効活用したいものです。
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