小規模事業者の中には、小規模事業持続化補助金という制度があることを知り、自身が利用できる制度なのか知りたいと思った人もいるでしょう。
当記事では、小規模事業持続化補助金とは何かを解説します。制度の概要を把握できるように、要点をわかりやすく紹介しているため、小規模事業持続化補助金の利用を検討している人は参考にしてみてください。
小規模事業持続化補助金とは小規模事業者の事業発展を支援する制度のこと
小規模事業持続化補助金とは、小規模事業者の事業発展を支援する制度のことです。事業を発展させるための経営計画を策定して取り組む小規模事業者に対し、国が取り組みにかかる経費の一部を補助する制度です。
小規模事業持続化補助金の目的は地域の雇用や産業を支える小規模事業者の持続的発展を図ることです。小規模事業者が長期にわたって事業を継続、発展させることができるように、国が補助金による支援を行っています。
小規模事業持続化補助金は国が地域の商工会や商工会議所と連携して支援を行っている制度です。申請の窓口は商工会や商工会議所であるため、小規模事業持続化補助金を申請する際は、事業所が所在する地域の商工会や商工会議所で手続きを行います。
なお、小規模事業持続化補助金には審査があります。小規模事業持続化補助金の目的に沿った取り組みであり、補助金の交付に値すると判断された場合にのみ受給できるため、申請すれば必ず補助を受けられるわけではないことに留意しておきましょう。
補助の対象となるのは販路開拓と生産性向上の取り組み
小規模事業持続化補助金の補助の対象となるのは事業の発展を目的とした販路開拓と販路開拓と合わせて行う生産性向上の取り組みです。販路開拓を行う市場は国内に限らず海外市場も可能とされており、消費者向けと企業向けのいずれの取り組みも補助の対象です。
たとえば、今までに取り扱っていなかった子供向けの商品の開発やサービスの提供は補助の対象となる販路開拓の取り組みに該当します。新商品や新サービスを提供して、新たな顧客層を獲得できれば、販路開拓を実現できる可能性があるためです。
また、開発した新商品の受注管理に対して、新たな管理システムを導入することは補助の対象となる生産性向上の取り組みに該当します。新たな受注管理システムを導入して業務の効率化が可能になれば、生産性の向上が図れるためです。
なお、取り組みの目的が生産性向上のみである場合は補助の対象外となります。小規模事業持続化補助金は販路開拓の取り組みが主な目的である場合に生産性向上の取り組みが認められるため、小規模事業持続化補助金の予備知識として覚えておきましょう。
小規模事業持続化補助金の対象経費
小規模事業持続化補助金の対象経費は販路開拓と販路開拓に合わせた生産性向上の取り組みにかかる経費です。補助の対象となるのは販路開拓および生産性向上の取り組みのために使用したことを明確に特定できる経費に限られます。
【小規模事業持続化補助金の対象経費】
対象経費科目 | 経費の概要 |
機械装置等費 | 販路開拓と生産性向上の取り組みに必要な製造装置等の購入費 |
広報費 | 販路開拓の取り組みに基づく商品やサービスの広報活動で支払った経費 |
ウェブサイト関連費 | 販路開拓と生産性向上を目的としたウェブサイトやECサイトの制作や運用などにかかる経費 |
展示会等出展費 | 販路開拓を目的として実施する展覧会や商談会の出展料(オンラインによる実施を含む) |
旅費 | 販路開拓の取り組みを行うために必要な旅費 |
新商品開発費 | 販路開拓に繋がる新商品の試作開発にかかる経費 |
借料 | 販路開拓と生産性向上の取り組みに必要な機器や設備のレンタル料やリース料 |
委託、外注費 | 販路開拓の取り組みに必要な業務を第三者に委託、外注するときにかかる経費 |
小規模事業持続化補助金の対象経費として、機械装置等費が挙げられます。販路開拓と生産性向上の取り組みに必要な製造装置等の購入費を指し、新商品を製造するための機械装置導入費や、新サービスの提供を効率化するための備品導入費などが該当します。
また、小規模事業持続化補助金の対象経費として、展示会等出展費が挙げられます。オンラインによる実施を含めた、販路開拓を目的として実施する展覧会や商談会の出展料のことを指し、出展物の運搬にかかる運搬費も該当します。
なお、委託と外注費は他の対象経費科目に該当せず、自らの実行が困難な業務を外部に委託する場合に限り補助の対象となります。日常的に実行している業務は販路開拓の取り組みにおいても自社で担うべき業務であるとして認められない点に留意しておきましょう。
補助の対象外となる経費
小規模事業持続化補助金の対象外となる経費は販路開拓および生産性向上を目的としない経費や目的以外の使用と捉えられやすい経費です。補助の対象経費に該当する場合においても、経費の内容や経費の支払先などによっては補助の対象外となる可能性もあります。
【小規模事業持続化補助金において補助の対象外となる経費】
- 国が助成するほかの制度を利用しており、その事業と重複する経費
- 通常の事業活動にかかわる経費
- 販売や有償レンタルを目的とした製品、商品などの生産、調達にかかわる経費
- 他社のために実施する経費
- 自動車等車両購入費
- 交付決定日以前に発生した経費
- 補助事業期間外に支払いをした経費
- 領収書や請求書などの 証憑資料等によって支払金額が確認できない経費
たとえば、長年使用して古くなった業務用冷蔵庫を同等の性能のものに買い替える際の設備購入費は補助の対象外となります。古い設備や機器を更新するための機械装置の購入費は新たな販路開拓を目的とした取り組みにかかる経費ではないためです。
また、文房具やパソコンなどの備品や機器購入費は日々の事業活動においても使用が想定されるとして補助の対象外となります。販路開拓の取り組みに必要となる経費であっても取り組み以外の使用と捉えられやすい経費は認められません。
なお、販路開拓に必要として計上した経費の大半が補助の対象外である場合、小規模事業持続化補助金の活用は適していないと判断されてしまいます。小規模事業持続化補助金を利用する際は補助の対象経費を意識した事業計画の策定が重要となります。
小規模事業持続化補助金の補助額
小規模事業持続化補助金の補助額は制度において定められている「補助率」と「補助上限額」に基づいて決定します。補助率は、補助の対象経費に対してまかなわれる補助金の割合のことをいい、補助上限額は、申請者が受給できる補助金の最大金額のことをいいます。
【小規模事業持続化補助金の補助率と補助上限額】
項目 | 概要 |
補助率 | 補助の対象経費の2/3 |
補助上限額 | 最大50万円まで |
小規模事業持続化補助金の補助額は販路開拓の取り組みにかかった経費の合計金額に補助率を乗じて求められます。そして、補助率によって算出された金額と補助上限額とを比較し、低い方の金額が補助される金額として決定します。
小規模事業持続化補助金の補助率は補助の対象経費の2/3、補助上限額は50万円です。販路開拓の取り組みにかかった経費の合計金額が100万円である場合、補助率を乗じた金額は約67万円となり補助の上限額を超えるため、補助される金額は50万円となります。
小規模事業持続化補助金の補助上限額を超える金額は自己負担となります。小規模事業持続化補助金は販路開拓の取り組みにかかった経費の全額が補助されるわけではないことに留意しておきましょう。
補助の上限額が引き上げられる特例もある
小規模事業持続化補助金には、補助の上限額が引き上げられる特例もあります。一定の条件を満たした場合にのみ適用される特例ではあるものの、補助上限額として定められている50万円が100万円〜250万円まで引き上げられます。
【小規模事業持続化補助金の補助上限額に関する特例】
特例の名称 | 引き上げ後の補助上限額 |
インボイス特例 | 100万円 |
賃金引上げ特例 | 200万円 |
補助上限額が引き上げられる特例のひとつには、インボイス特例があります。特例で定める一定期間において、インボイス制度への登録をきっかけに免税事業者から課税事業者になった小規模事業者に適用され、補助上限額が100万円に引き上げられます。
また、補助上限額が引き上げられる特例のひとつには、賃金引上げ特例があります。販路開拓を目的とした事業を実施する期間中に従業員の最低賃金を50円以上引き上げた小規模事業者に適用され、補助上限額が200万円に引き上げられます。
なお、インボイス特例と賃金引上げ特例のどちらの条件も満たす小規模事業者は補助上限額が250万円に引き上げられます。小規模事業持続化補助金の利用にあたって、制度を最大限に活用したい人は特例に該当する可能性があるかにも注視しましょう。
小規模事業持続化補助金の対象者
小規模事業持続化補助金の対象者は常時使用する従業員数が一定数以下であり、事業の業態が営利法人や個人事業主、特定非営利活動法人である事業者です。日本国内に本店を有している営利法人や特定非営利活動法人、所在している個人事業主が対象となります。
【小規模事業持続化補助金の対象者】
業種 | 常時使用する従業員数 |
商業、サービス業(宿泊業や娯楽業を除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業や娯楽業 | 20人以下 |
製造業やその他の業種 | 20人以下 |
小規模事業者持続化補助金の対象者は事業の業種ごとに設けられた従業員数の条件を満たす事業者です。常時使用する従業員数が、商業と宿泊業や娯楽業を除くサービス業の場合は5人以下であり、宿泊業や娯楽業、製造業などの場合は20人以下であれば対象となります。
また、事業状況が一定の条件に該当していないことも対象者の要件としています。資本金または出資金が5億円以上である法人に100%の株式を保有されておらず、確定済みである過去3年分の課税所得平均額が15億円を超えていない小規模事業者であれば対象となります。
なお、特定非営利活動法人が対象者として認められるのは法人税法上の収益事業を行っており、認定特定非営利活動法人でない場合にのみです。特定非営利活動法人である小規模事業者の人は小規模事業持続化補助金の前提条件として覚えておきましょう。
補助の対象外となる小規模事業者
小規模事業持続化補助金の対象外となるのは事業の業種や業態、状況などが制度の目的に該当しない小規模事業者です。小規模事業者持続化補助金の利用を検討している人は補助の対象外となる小規模事業者の特徴を確認しておきましょう。
【補助の対象外となる小規模事業者】
項目 | 概要 |
事業の業種や業態 |
・医師、歯科医師、助産師 ・系統出荷による収入のみである個人農業者や林業者、水産業者 ・協同組合等の組合(企業組合、協業組合を除く) ・一般社団法人、公益社団法人 、一般財団法人、公益財団法人 ・医療法人、宗教法人、学校法人、農事組合法人、社会福祉法人 ・任意団体 |
事業の状況 |
・申請時点で開業をしていない創業予定者 ・過去に小規模事業者持続化補助金の「卒業枠」で採択を受け、補助事業を実施した事業者 ・現在公募している小規模事業持続化補助金に申請中である事業者 ・過去に採択された小規模事業持続化補助金の報告書が未提出である事業者 |
小規模事業持続化補助金の対象外として挙げられるのは系統出荷による収入のみである個人農業者や林業者、水産業者です。農業協同組合や全国森林組合連合会、漁業協同組合などの販売ルートのみで自身の農産物を販売している小規模事業者が該当します。
また、小規模事業持続化補助金の対象外として挙げられるのは申請時点で開業をしていない創業予定者です。すでに税務署に開業届を提出していたとしても、開業届上の開業日が小規模事業持続化補助金の申請日以降である場合には、補助の対象外となります。
なお、小規模事業持続化補助金は補助の対象外となる範囲に該当する業種や業態、事業状況にある小規模事業者は申請することができません。補助対象者の要件を満たしていれば、必ず利用できるわけではないことに留意しておきましょう。
特定の小規模事業者に対する支援もある
小規模事業持続化補助金には、特定の小規模事業者に対する支援もあります。販路開拓の取り組みを計画する小規模事業者の事業状況はそれぞれに異なることから、支援の内容が異なるいくつかの類型が用意されています。
【小規模事業持続化補助金の類型】
類型 | 概要 |
一般型(通常枠) |
・販路開拓の取り組みを計画する多くの小規模事業者が対象 ・補助の対象者に該当する小規模事業者が利用できる |
一般型(災害支援枠) |
・能登半島地震や能登豪雨によって被災した小規模事業者が対象 ・事業再建の取り組みを計画しており、事業所や事業資産などの罹災が分かる公的書類が提出できる場合に利用できる |
創業型 |
・販路開拓の取り組みを計画する創業後3年以内の小規模事業者が対象 ・特定創業支援等事業プログラムの認定を受けた創業後の小規模事業者が利用できる |
共同協業型 |
・小規模事業者の支援を行う地域振興等機関が対象 ・10者以上の小規模事業者が連携して、共同で販路開拓の取り組みを実施する場合に利用できる |
ビジネスコミュニティ型 |
・小規模事業者の販路開拓や事業承継などの支援を行う法人の内部組織が対象 ・一定の要件を満たす法人の内部組織が利用できる |
たとえば、小規模事業持続化補助金の「一般型(災害支援枠)」は能登半島地震や能登豪雨によって被災した小規模事業者を支援する類型です。事業再建に向けた取り組みに対して、200万円を補助上限額とした対象経費の2/3あるいは定額の補助金が交付されます。
また、小規模事業持続化補助金の「創業型」は創業後3年以内の小規模事業者を支援する類型です。市区町村が実施する特定創業支援等事業プログラムの認定を受けている場合に利用でき、200万円を補助上限額とした対象経費の2/3の補助金が交付されます。
なお、小規模事業持続化補助金には、事業の状況や支援の目的に応じたいくつかの類型が用意されているため、自身の事業状況に適した申請を行うことが可能です。小規模事業持続化補助金を利用する際には、策定する事業計画の内容に応じて申請する類型を選択しましょう。
まとめ
小規模事業持続化補助金とは、小規模事業者の事業発展を支援する制度のことです。事業を発展させるため、販路開拓と生産性向上を目的とした取り組みの経営計画を策定する小規模事業者に対し、国が取り組みにかかる経費の一部を補助します。
小規模事業持続化補助金の対象経費は販路開拓と販路開拓に合わせた生産性向上の取り組みにかかる経費です。販路開拓の取り組みにかかった対象経費の全額が補助されるわけではなく、50万円を補助の上限額として、対象経費の2/3の補助金が支給されます。
小規模事業持続化補助金を利用できる小規模事業者は常時使用する従業員数が一定数以下である営利法人や個人事業主、特定非営利活動法人である事業者です。小規模事業者の事業状況に応じた支援も用意されているため、利用する際は自身の事業状況に適した支援の型を選択しましょう。
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