認定支援機関になって経営者へのサポートの幅を広げよう
中小企業の経営力を強化する目的で、国が認定する「経営革新等支援機関」。
通称「認定支援機関」と呼ばれ、税理士や弁護士などのいわゆる士業関連の個人や企業法人、金融機関などが認定支援機関として認められています。
この記事では、認定支援機関の基本、認定されることでのメリットやデメリット、認定のための要件、認定支援機関の申請から認定がおりるまでの流れをご紹介します。
1.認定支援機関とは?
中小企業や小規模事業者の経営力を強化する目的で、経済産業省・財務局が国策として認定する「経営革新等支援機関」の通称が「認定支援機関」です。
税理士、弁護士などのいわゆる士業関連の個人あるいは企業法人、金融機関などの組織団体が認定されます。
中小企業や小規模事業者からの経営に関する悩みや相談にのり、現状の課題や改善すべきことなどのアドバイスや事業計画の作成サポートを行ったり、資金調達のサポートを実施したりすることが主な業務内容です。
日本国内の企業の9割が中小企業とされる中で、日本経済の活性化のため、特に中小企業に特化したサポートが必要ということで、平成24年の中小企業経営力強化支援法の施行から認定制度が創設されました。
2.認定支援機関として認定されるメリット・デメリット
認定支援機関として認定されるメリットとデメリットをそれぞれ3つご紹介します。
メリット1:顧客に安心感を与え、信頼関係が築きやすくなる
顧客に国に認定されているということで、安心感を与えやくなります。
話を進める上での土台としての信頼関係を築きやすくなることで、業務がスムーズに行えるようになるでしょう。あなた自身には、国に認定されているという自負から、自信を持って顧客に接する効果も期待できます。
メリット2:認定支援機関としての教育を受けられる
認定支援機関のサポート内容の質を維持するため、国は各種研修や講習会を用意しています。あなた自身の能力の向上が見込めるでしょう。
メリット3:認定支援機関ならではのサポートが行える
認定支援機関として経営者をサポートした場合、中小企業の融資条件や税率などが優遇されることがあります。
例えば、日本政策金融公庫の融資を中小企業が受ける場合、認定支援機関を通じてであれば「中小企業経営力強化資金」が利用でき、低金利で借入ができるケースがあります。
他にも、認定支援機関を通して市町村に申請して認められた場合に事業の固定資産税が3年間軽減される「先端設備等導入計画」(生産性向上特別措置法)もあります。
デメリット1:認定支援機関は5年毎に更新する必要がある
認定支援機関制度では認定から5年毎に更新手続きが必要です。
新規で申請する場合と同様、電子システムを利用して申請しますので、入力作業などの手間がかかります。
デメリット2:認定支援機関の認知度がまだ低い
税理士や弁護士などの肩書と比べれば、認定支援機関の世間的な認知度は高くないのが現状です。認定支援機関になったとしても、顧客が認定支援機関の何たるかを知らなければ安心感を与えることは難しいでしょう。
国で認められている専門機関であること、経営者の経営・財務のサポートが行えることをアピールしましょう。
デメリット3:認定支援機関の登録が、金融機関の審査に対して有利に直結するわけではない
認定支援機関として経営者の資金調達サポートを積極的に行っていこうと考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「認定支援機関を通せば融資が必ず通る」、「融資額が希望額の通りになる」なんてことはありません。
個人で作成した事業計画書よりも、中小企業サポートの教育を受けた専門家が助言した方が、内容の質が上がり、結果として融資の希望が通りやすくなるだけなのです。
資金調達サポートをしていきたいと考えるのであれば、資金調達先の金融機関などと関係性を築き、コツコツと実績を積みあげることが大切です。
3.認定支援機関として認定されるための要件
認定支援機関として認定されるには、「専門的知識があるか」「実務経験があるか」この2つの基準を満たす必要があります。
まず、専門的知識を保有していることを証明するには、次の条件のいずれかを満たしているか確認します。
[条件1] 税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士の資格を持つもの、または金融機関である [条件2] 経営革新計画等の策定に支援者として関わった後、それらの計画に対する認定を3件以上受けている [条件3] 中小機構で指定された研修を受講し、合格している |
次に実務経験の有無です。どちらかの条件を満たす必要があります。
[条件1] 中小企業・小規模事業者に対する支援に関し、3年以上の実務経験があり、かつ経営革新等支援業務に係る1年以上の実務経験がある [条件2] 中小機構にて指定された実践研修を受講し、試験に合格している |
例えば、税理士の場合、中小企業への税務相談や税務申告などが実務経験に該当します。弁護士であれば、法律相談などが実務経験にあたります。
なお、専門的知識と実務経験の要件を満たしていても、実際の認定にあたっては次の2点も確認されますので、注意しましょう。
・支援業務を行う上で必要な組織体制(管理組織・人事配置など)・事業基盤(財務状況など)を持っていること ・破産者、反社会的組織の一員、成年被後見人、禁固刑以上の刑執行後5年を経過した者、この4つすべてに該当しないこと |
4.認定支援機関の申請先
2019年時点、電子申請と郵送での申請を両方行う必要があるため、注意が必要です。
電子申請は手順通りに行えば、担当経済産業局へ回送されます。
郵送での申請は、関東経済産業局の経営革新等支援機関認定申請窓口です。
「STEP4:郵送する」の住所に郵送します。なお、申請者が金融機関の場合は、財務局の財務事務所申請窓口ですので注意しましょう。
5.認定支援機関として認定されるには:申請から認定がおりるまで
経営者の支援をするために認定支援機関になろうと思ったら、どのような流れで申請の手続きを進めればよいのでしょうか?流れを見ていきましょう。
(1)認定スケジュールを確認する
「STEP1:認定スケジュールを確認する」の認定日と受付期間を確認します。
電子申請が完了していても、申請書が受付期間内に郵送で届かなかった場合は、次号の申請として取り扱われるため、注意しましょう。
(2)添付書類を確認する
認定を受けるために必要な必要書類は次のとおりです。
①認定申請書(実印を押印した原本2部)
②添付資料(各2部)
※必要な添付書類は、申請者の属性によって異なりますので、ご自身に該当する書類を準備しましょう。
専門知識を持っていることを示す証明書 |
税理士 |
【法人】日本税理士会連合会で発行している登録事項証明書 2部 |
【個人】税理士商標の写しまたは登録事項証明書 2部 |
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監査法人 |
登録事項記載証明書 2部 |
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公認会計士 |
日本公認会計士協会等が発行する登録証明書 2部 |
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弁護士 |
【法人】登録事項記載証明書 2部 |
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【個人】日本弁護士連合会等が発行する登録証明書 2部 |
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中小企業診断士 |
中小企業診断士登録証の写し 2部 |
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支援者からの関与を有する証明書 |
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実務経験の証明書 |
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破産者や反社会的組織の一員・成年被後見人・禁固刑以上の刑執行後5年を経過した者でないことを証明する書類 |
(3)電子申請をする
「認定経営革新等支援機関電子申請システム」で電子申請をします。電子申請だけでなく、郵送も両方行う必要がある点に注意です。
なお、詳細版のマニュアルは、電子申請システム内で確認できます。
(4)郵送する※
用意した認定申請書(実印を押印した原本2部)、添付書類(各2部)、返信用封筒(切手付き、住所宛名記名済)をつけて、申請先に郵送します。
なお、申請に不備があった場合には、電子申請システムを通してメールが届きます。
※2020年6月26日より「認定経営革新等支援機関電子申請システム」によるオンライン申請に移行しています。そのため、2020年6月26日以降の申請は、書面による申請はできませんのでご注意ください。
6.申請から認定がおりるまでの期間目安
認定支援機関の新規申請は、認定日とその受付期間がセットになって区切られています。
例えば、認定号が第65号の場合、認定日は2020年12月18日で、その受付期間は2020年10月15日~2020年11月11日と決まっています。どの受付期間に申請するかによって、認定日は変わります。
基本的に受付期間が締め切られてから約1ヶ月〜1ヶ月半程度で認定されています。
まとめ
まだまだ世間の認知度は低い認定支援機関ですが、認定されることで顧客に対するサポート力が上がります。また、認定支援機関を通じて日本政策金融公庫の融資を申し込むことで金利優遇が受けられる可能性があるなど、顧客にメリットを伝えることも可能になり、業務の範囲が広がるかもしれません。
一定条件を満たした税理士、弁護士などのいわゆる士業関連の個人や企業法人、金融機関であれば申請可能ですので、ぜひ認定支援機関としての認定を受け、顧客へできること、サポートの幅を広げましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
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