不動産で日本政策金融公庫から融資を受けるメリットとデメリットと金利とは

不動産で日本政策金融公庫から融資を受けるメリットとデメリットと金利とは 更新日:2019.10.25 公開日:2019.04.17起業のための資金調達 – 不動産(販売・仲介・内外装・リフォーム)
日本政策金融公庫で不動産投資のための融資を受ける場合、金利は何%になるのでしょうか。

不動産賃貸業や不動産投資を行うとき、 不動産を購入するための資金がない人もいるでしょう。しかし、日本政策金融公庫を利用することで、融資を受けられる可能性があります。

事業融資で最も有名かつ公的な金融機関ですが、不動産事業でお金を借りる方もよく申込みをしています。では、不動産投資ではどうなのでしょうか?

 今回の記事では、不動産事業で日本政策金融公庫から融資を受けるメリットとデメリット、不動産事業で融資を受けた場合の金利。そして、不動産投資で融資を受けられるかどうかについて考えていきたいと思います。

1.日本政策金融公庫で不動産事業のために融資を受けるメリットとデメリット

①日本政策金融公庫で不動産事業の融資を受けるメリット

(1)日本政策金融公庫はとにかく低金利(0%後半~2%前半)である

日本政策金融公庫は、国が運営している政策金融機関です。以前は「国民生活金融公庫」という名前でした。

日本政策金融公庫が事業融資で人気がある理由の一つとして、ほかの金融機関と比べて低金利であるということが挙げられます。

(2)日本政策金融公庫は、全期間固定金利で据置期間がある

日本政策金融公庫で不動産賃貸業のためのお金を借りる場合、借入期間は最大10年ですがその中で最初の2年は金利だけを支払えばいいという据置期間をつけることができます。据置期間をつけることで3年目以降の毎月の支払いは結果的に増えますので、早く完済してしまいたいという方は据置期間をつけないという選択肢も可能です。 

また、全期間固定金利ですので融資契約時に低い金利で契約を終結できれば、完済までずっと低金利が続くというのは大きなメリットとなります。 

(3)日本政策金融公庫は、民間の銀行から融資を受けづらい事業主にも貸してくれる

決算書の成績の悪い事業主が、民間の金融機関から融資を受けるのは難しい傾向にあります。しかし、事業が活発化しないと日本経済はいずれ衰退していまいます。

そこで、日本政策金融公庫の融資では審査を行い、一定の基準以上であれば事業がはじめての事業主にも融資をしています。たとえば、以下のような基準をもとに審査がされます。

  1. 融資を受けて行いたい事業の経験がどれぐらいあるのか
  2. 事業を始めるための資金は計画的に貯めているのか(自己資金があるか)
  3. 事業に集中できるよう、生活資金に困っていないか(借金が過多ではないか)
  4. 事業主の人柄や過去の返済履歴や受賞歴、顧客リストはあるか
  5. きちんと収益が出せる事業計画を立てているか
(4)29歳未満の若者・55歳以上・女性には優遇金利がある

日本政策金融公庫独特の特徴として、女性・若者・高齢者が利用できる優遇措置があります。日本政策金融公庫の金利には基準金利と特別金利という2つの枠が存在しますが、女性や若者などについては特別金利で0.4%ほど優遇されます。

 

(5)日本政策金融公庫は日本全国に支店がある

金融機関から融資を受ける場合、書類提出と面談で実際に金融機関に足を運ばなければいけません。 

 

(6)団体信用保険にも加入できる

「日本政策金融公庫は低金利で融資をしてくれるが、銀行の住宅ローンみたいに団信に入れないからな」と考えている方がいるようです。しかし、日本政策金融公庫でも任意で団体信用保険に加入することは可能です。公庫の公式ページには、以下のような文章を見つけることができます。

「団体信用生命保険のご案内

日本公庫から事業資金の融資を受けられる個人事業主、中小企業法人または医療法人等が、任意で加入できる保険です。(※一部省略)

詳しくは公益財団法人公庫団信サービス協会のホームページをご覧ください。」 

 

②日本政策金融公庫で不動産事業の融資を受けるデメリット

続きまして、不動産事業で日本政策金融公庫から融資を受ける際のデメリットもお伝えします。

(1)他の金融機関の不動産担保ローンより着金が遅い

公的金融機関ならではのデメリットですが、民間の不動産担保ローンと比較して着金が遅いというデメリットがあります。面談をするまでに最低でも一週間はかかり、面談後に着金となるまで2週間はかかります。

(2)他の金融機関の不動産担保ローンより返済期間が短い

不動産担保ローンで借入期間が最大30年というところもネット検索で見つけられます。日本政策金融機関の場合は、最大で10年、女性やシニアで特例が認められても最大15年程度です。 

(3)他の金融機関の不動産投資ローンより提出書類が多い

ある民間の不動産担保ローンの契約で必要な書類と日本政策金融公庫の提出書類を比べてみましょう。 

 

日本政策金融公庫

民間の不動産担保ローン

提出書類

・借入申込書

・通帳

・本人確認書類

・支払い明細書

・不動産賃貸借契約書

・許認可を持つ証明書

・見積書

・会社謄本

・創業計画書 または

・事業計画書

※これ以外の提出を求められる場合もあります

・会社謄本

・印鑑証明書

・住民票

・実印

・本人確認書類

※これ以外の提出を求められる場合もあります


どうですか?日本政策金融公庫は手堅いみんなの金融機関ですが、提出書類は多いですよね。 

 

(4)現金をまったく持っていない方には不向き

日本政策金融公庫では現金保有を非常に重視します。今手元にあって提出できる預金や貯金がかき集めても10万円程度しかない方は、日本政策金融公庫の融資には通らないことでしょう。 

 

(5)平日の9時~17時に支店に行かなくてはいけない

日本政策金融公庫の営業時間は平時の9時~17時までのみです。サラリーマンをしながら副業の方は、この期間に出向かなくてはいけないので、その点で少し手間ですね。 

(6)融資の着金は事業主自身でおこなう必要がある

他の不動産ローンを扱う金融機関では、物件の買主に代わって融資のお金を預かってくれるところがあります。(代理受領と言う)しかし、日本政策金融公庫の場合は代理受領は行っていません。

  • あなたが日本政策金融公 庫に融資を申し込み
  • 日本政策金融公庫→審査をする
  • 日本政策金融公庫で融資を決定
  • あなたが指定した銀行口座に日本政策金融公庫からお金が振り込まれる

という流れになります。あなたが融資のお金で不動産物件を購入する場合、公庫から振り込まれたお金を不動産会社へ送金しなければいけません。

2.日本政策金融公庫で不動産投資のための融資は可能なのか

不動産賃貸業などの不動産関連の事業では融資(ローン)を受け付けてくれる日本政策金融公庫ですが、不動産投資として融資はしてくれるのでしょうか。

結論から申し上げますと、日本政策金融公庫に「不動産投資をしたいのですが」という持ちかけ方で融資を希望しても通るのは難しいでしょう。

なぜかというと、日本政策金融公庫では投資目的や借り換え目的の融資は行っていないからです。ですので、不動産投資という形ではなく別の事業として計画を立てて融資を受ける必要があります。 

①不動産投資で融資を受けられない理由がわかるデータ:国民生活事業部編

日本政策金融公庫には以下3つの事業部があります。

  • 国民生活事業部
  • 中小企業事業部
  • 農林水産事業部

3,000万円以下程度の小規模の融資、そして、はじめて日本政策金融公庫から事業融資を受ける場合は、「国民生活事業部」から融資を受けることになります。少規模事業・小規模融資を担当しているのが国民生活事業部だからです。

この国民事業部による「ご融資の対象となる方」という文書を見ますと、融資の対象となっているのは「飲食店」「喫茶店」「食肉販売業」「氷雪販売業」などの生活と衛生のための事業が書かれています。

画像

日本政策金融公庫にはさまざまな融資のプラン(制度)がありますが、その中に生活衛生貸付という制度があり、上記の文書はそれについて説明しているものです。また、国民事業部による融資実績というデータをみますと、融資対象のほとんどが製造業・卸売・小売業・飲食店・宿泊業・サービス業・建設業となっています。 

 

不動産投資はこの中でどの部類に入るのでしょうか。サービス業でしょうか。いいえ、「その他」に該当するのではないでしょうか。不動産投資とは購入した物件を第三者へ貸したり売ったりして、物件の利回りから利益を得ることです。つまり、不動産を第三者へ貸して利益を得る場合は不動産賃貸業と表現することができます。事業の実態が不動産賃貸業に当てはまらない場合(大家にならない場合)は、日本政策金融公庫で融資を受けることはできません。 けれども、ワンルームマンションなどの賃家の家賃収入があるのなら、融資をパスする可能性があります。

②不動産投資で融資を受けられない理由がわかるデータ:中小企業事業部編

また、中小企業事業部による文書では明確に「投資目的の融資はしていません」という内容は、日本政策金融公庫による以下の文書の一番下の部分に書かれています。 

「次の業種のかたは、中小企業事業の融資等の対象になりません。~(中略)住宅用の土地の賃貸業、非営利団体、一部の風俗営業、公序良俗に反するもの、投機的なもの」

以上の理由から、日本政策金融公庫へ「不動産投資で融資をしてください」というやり方では融資は通らないということがお分かり頂けると思います。日本政策金融公庫で不動産投資のために融資を受けるのであれば、不動産賃貸業として申告する必要があります

3.ズバリ!不動産賃貸業で融資を受ける場合の金利は何%?

不動産投資ではなく不動産賃貸業の場合、基本的には担保ありとなります。現在は以下の金利です。 

(平成31年10月1日現在)

基準金利

特別金利Aの場合

1.21~2.00

0.81~1.60

 

日本政策金融公庫の金利は2018年頃は最高潮に最低金利でしたが、2019年の半ばから徐々に少しずつ利率が上がってきています。

4.不動産投資で日本政策金融公庫から融資を受けるためにできる準備

最後に、日本政策金融公庫から融資を受けるためのコツ5つをお伝えしましょう。

  •  ①面談でも事業計画書でも、「不動産投資」という言葉は一切使わない

不動産投資ではなく、不動産賃貸業などの言葉を使いましょう

  • ②担保物件を提供する(1件のみ)

担保物件は不動産事業で融資を受けたいのであれば必須です。低価格で高利回りの木造物件やマンションなど、評価額が高く見込める担保を提出したいとことです。

ちなみに、日本政策金融公庫では複数の物件の申込みは受けつけていません、一つの融資で1物件までとなっています。

  • ③不動産賃貸業を営む

不動産賃貸業などの経験がないのであれば、融資は難しいでしょう。

  • ④返済シミュレーションをする

日本政策金融公庫の公式ぺージには、返済シミュレーションツールがついています。

公庫では融資をしてきちんろ返済できるかを非常に重視しますので、ご自身でしっかりと返済できるという計画を立ててから融資を申し込みしましょう。

  • ⑤確定申告書を提出していないのであれば、提出して税金を納める

税金から運営されている日本政策金融公庫ですので、税金未納はご法度です。

特に、最後の⑤はお問合せされる方の中でも多いのですが、公的政策金融機関のため、税金未納者には融資をしないという大前提があります。

5.不動産投資ってやった方がいい?これまでの不動産投資と今後の不動産投資とは

不動産投資という言葉を聞く機会が増え、実際にやっている人も非常に増えています。不動産投資セミナーの勧誘や「絶対に稼げる不動産投資」という内容のノウハウ提供サイトも増えています。

不動産投資をした方がいいかどうかは、物件や経済にも多々影響を受けますので、一概にどうとは言い切れません。しかし、今現在は空き家が増えたこともあり、10~20年前の高利回りの賃家が全盛期だった時代よりは勢いがないような感があります。

  情報が増えると、本当のことがなかなかわからなくなります。情報を参考にするのは大切ですが、情報はバラツキがあり、中には正反対のことを言っている場合だってあります。どのサイトや書籍でも書かれていることの中に、ものごとの「核心」があるのではないでしょうか。不動産投資で失敗しないために、十分かつ正しい情報を得てから動くようにしましょう。

まとめ

不動産賃貸業で日本政策金融公庫から融資を受けることは可能ですが、現在は積極的に融資をしている時期ではありません。そのメリット・デメリットを考え決定しましょう。

また、不動産「投資」では融資は受けられないので、融資を受けてご自身のやりたいことができるかは、当サイトなどの認定支援機関に事前に確認してから申し込みしましょう。

資金調達についてプロに相談する(無料)>
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
経営支援ガイド » https://support.so-labo.co.jp/

融資支援実績 6,000件超独立・開業・事業用資金の資金調達を
ソラボがサポートします。

  • 独立するための資金調達をしたい
  • 金融機関から開業資金の融資を受けたい
  • 手元資金が足りず資金繰りに困っている

中小企業庁の認定を受けた認定支援機関である株式会社SoLabo(ソラボ)が、
あなたの資金調達をサポートします。

ソラボのできること

新規創業・開業の相談受付・融資支援業務、既存事業者の融資支援業務(金融機関のご提案・提出書類作成支援・面談に向けたアドバイス・スケジュール調整等)

今すぐ融資の無料診断