2019年10月1日。ついに国内での消費税10%が決行されました。
増税に対する反発が凄まじいためか、日本政府では消費者に向け「増税から9か月間、キャッシュレスで払うと最大5%をポイントで還元しますよ!」という太っ腹なキャンペーンをしています。
キャッシュレスのキャンペーンの内容をチェックすると、消費者としてはキャッシュレスにするメリットがあるようですが(ポイント還元)、事業者側がキャッシュレスにするメリットはあるのでしょうか。
実は、事業者のみなさまが店舗にキャッシュレスを導入するメリットは多いにあります!!
なぜなら、期間限定ですが、キャッシュレスに移行する事業者に向けた補助金(のようなもの)があるからです。
今回の記事では、まだキャッシュレスを導入していない事業主の方に向け、キャッシュレス補助金の内容やメリットなどをご説明します。
1.「キャッシュレス補助金」はない。「キャッシュレス・ポイント還元事業」だ
キャッシュレスとは、現金ではなくクレジットカードや電子マネーなどで支払うことを言います。キャッシュレス補助金の正式名称は「キャッシュレス・ポイント還元事業」。ネットでは正式名称が長いためか、正式名称を知らないからか、「キャッシュレス 補助金」などのキーワードで検索されている方が多いですね。
日本ではこのたび消費税が10%に増税されましたが、一般の人が対象店舗でキャッシュレスによる支払いをすると、購入金額の2または5%がポイントバックされます。しかし、それだけではありません。
対象者 |
事業名 |
①消費者 |
キャッシュレス・ポイント還元事業 |
②中小・小規模店舗事業者 |
|
③キャッシュレス決済事業者 |
キャッシュレス・ポイント還元事業の対象者は①消費者と②中小・小規模店舗事業者と③キャッシュレス決済事業者です。今回は、②中小・小規模店舗事業者にスポットをあてて、キャッシュレス・ポイント還元事業の内容やメリットをみていきましょう。
2.店舗がキャッシュレス導入するには
①キャッシュレス・ポイント還元事業のしくみ
キャッシュレス・ポイント還元事業の仕組みを図にしてみました。真ん中にいるのが消費者、右側にいるのは中小企業店舗です。
この図を見ると分かるように、中小企業店舗はまず「キャッシュレス決済事業者」に対して「うち、キャッシュレス・ポイント還元事業に参加しま~す!」とアピールしなければいけません。具体的には、登録作業が必要です。
しかし、キャッシュレス・ポイント還元事業はすべての店舗が参加できるわけではありません。条件があります。
登録をする前に「登録できる条件を満たしているのか」を確認しなければいけません。
②資本金と従業員数で縛りがある
【引用:経済産業省/キャッシュレス・ポイント還元事業 (キャッシュレス・消費者還元事業) 中小・小規模店舗向け説明資料】
キャッシュレス・ポイント還元事業に登録できる中小・小規模店舗は、業界ごとに①5000万円~3億円以下の資本金②常時使用する従業員の数が50人~300人以下である、という条件があります。
ここで一つの疑問が生まれます。マクドナルドのような大企業の場合も、キャッシュレス・ポイント還元事業に参加できるのか?という疑問です。マクドナルドもAmazon もキャッシュレス・ポイント還元事業の参加企業です。
試しに、マクドナルドのホームページで資本金と従業員数を見てみました。
【日本マクドナルド株式会社の資本金と従業員数】
資本金 |
従業員数 |
1億円 |
2,208名(2018年12月31日現在) |
【参照:会社概要 | McDonald's Japan - マクドナルド】
あれ?日本マクドナルドはサービス業(ハンバーガーレストラン事業)で資本金は5000万円超えている。だから、キャッシュレス・ポイント事業の対象外ではないの?と思いますよね。
しかし、フランチャイズについては以下の条件があります。
【引用:経済産業省/キャッシュレス・ポイント還元事業 (キャッシュレス・消費者還元事業) 中小・小規模店舗向け説明資料】
マクドナルドのような本部が大企業であるフランチャイズチェーンの場合、キャッシュレス・ポイント還元事業の対象となるかどうかは、直営店なのかフランチャイジーなのかによって異なります。
・直営店とは→本部起業が直接出資し、従業員の手配と店舗経営をするお店
・フランチャイジーとは→加盟店オーナーとして契約するオーナーが主体となって店舗経営をするお店
ちなみに、Amazonの資本金を調べましたが、残念ながら非公開でした。しかし、キャッシュレス・ポイント還元事業への登録企業ですので、条件を満たしているのでしょう。
3.キャッシュレス・ポイント還元事業への登録方法
①現時点でのキャッシュレス導入状況を確認し、どのキャッシュレスを使うかを検討する
クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレスを既に導入しているお店と導入していないお店では登録方法が少し異なります。既にキャッシュレスを導入している場合は、今後も同じキャッシュレス(例、Suica、VISAなど)を継続して利用するのか、新たに別のキャッシュレスを追加するのか、ということを検討しなければいけません。
具体的な流れは、上記のチャートをご参照ください。キャッシュレス・ポイント還元事業では①加盟店IDと②契約情報③端末情報の登録が必要です。わからない場合は、現在ご契約されているキャッシュレス事業者に連絡してみましょう。
②キャッシュレス決済事業者を選び、キャッシュレス決済事業者経由で申し込む
キャッシュレス事業者は以前、クレジットカード会社やJR系列の「Suica」セブン系列の「nanaco」ぐらいしか代表的なものはありませんでした。しかし、スマホアプリのLINEがLINEPAY(ラインペイ)をリリースしたあたりから、最近ではキャッシュレス決済事業者の数も増加しています。
一般社団法人キャッシュレス推進協議会による「キャッシュレス・ロードマップ 2019」という資料によりますと、これまでは圧倒的にクレジットカードの利用率が高かったキャッシュレスですが、2008年頃から徐々に電子マネーの利用率が増えています。
キャッシュレス決済事業者の選択ですが、キャッシュレス・ポイント還元事業の公式ページの中にある以下のページでキャッシュレス決済事業者とそのプランが掲載されています。ぜひご利用ください。
キャッシュレス・消費者還元事業に登録されたキャッシュレス決済事業者のプラン
重要なポイントですが、キャッシュレス・ポイント還元事業はキャッシュレス事業者経由で申込みをしなければいけません。
また、キャッシュレス決済事業者は個々に利用料率や入金タイミングなどがなります。
例えば、「アメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッド」というキャッシュレス事業者の場合は、利用できるキャッシュレス決済の種類はクレジットカードのみで、利用料率は~3.25%、キャッシュレス・ポイント還元事業の終了後の自動継続はなし、利用決済端末は据置型端末、という内容になっています。
そのため、店舗経営者としてどのキャッシュレスがいいのか、利用料率などを考慮した上で適切なキャッシュレス事業者を選びましょう。
利用できるキャッシュレスの種類(PASMO、楽天カードなど)ですが、以下の資料をご参照ください。
【引用:経済産業省/キャッシュレス・ポイント還元事業 (キャッシュレス・消費者還元事業) 中小・小規模店舗向け説明資料】
4.中小・小規模店舗事業者にはどんなメリットがあるの?
①ポイントバックする原資は国持ち
キャッシュレス・ポイント還元事業では、事業に参加するお店の負担がないよう、ポイントバックするための資金は国が負担します。イメージを図にすると、以下のような感じです。
私たち消費者としては、ポイントバックされる店を重視して店選びをするはずです。同じような場所で同じような商品が売っていたら、ポイント還元される店で選びますよね。
お店としてポイント還元に必要なお金はいくらなのか考えてみましょう。例えば、毎月の売上が100万円で9か月間5%のポイント還元をしたとしましょう。
100万円×9か月×5%=45万円
なんと、45万円という結果になりました。スゴクないですか?
キャッシュレス・ポイント還元事業の対象店舗として登録すれば、45万円(100万円売上で9か月の場合)のポイント還元分の資金が支給されるのです。
ポイント還元目当てで、期間中はお客様が増加されると思います。お店を本当に気に入ってくれれば、ポイント還元機関終了後もそのまま顧客として定着していくことでしょう。
②加盟店手数料は期間中、実質2.166%以下になる
「キャッシュレス決済、やってみたいけど加盟店手数料が高いじゃな~い」と考えているそこのアナタ。確かに、キャッシュレス決済って手数料がかかりますよね。何も割引がない場合、クレジットカードなどの加盟店手数料の相場は4~7%です。
例えば、1000円の商品を売っても加盟店手数料で7%持っていかれたら、70円はクレジットカード会社に持っていかれ、930円があなたの元に残るわけですよね。
しかし、キャッシュレス・ポイント還元事業の期間中(~2020年6月末まで)は加盟店手数料がかなりオトクになりますよ。まず、すべてのキャッシュレス決済の加盟店手数料が最大で3.25%までと引き下げられます。
1000円の商品を売った場合、加盟店手数料が3.25%であれば事業者側の手残りが967.5円となり増えますね。
さらに、現在ではヤフー系列のPAYPAYのように期間限定で加盟店手数料を一切無料にしているキャッシュレス決済サービスもあります。
【加盟店手数料が期間限定で無料のスマホ決済】
キャッシュレス決済サービス名(種類) |
加盟店手数料 |
・PAYPAY(スマホ決済) |
2021年9月30日まで無料 (その後は未定) |
・楽天ペイ(スマホ決済) |
2020年6月まで3.24% |
③決済端末等の導入費用の1/3を国が補助
キャッシュレス決済に後ろ向きな事業者さんの中には「決済端末を購入したくないから」という方もいらっしゃいます。専用の決済端末(ターミナル)は一括で2万円程度のもの、または毎月1500円ぐらいの分割費用がかかるものもあります。
しかし、今回実施中のキャッシュレス・ポイント還元事業の登録事業者であれば、端末導入費用の1/3を国が補助してくれます。
まとめ
2019年10月~2020年6月末までのキャッシュレス・ポイント事業の内容を事業者目線でご紹介いたしました。
キャッシュレスのメリットは導入費用の補助・端末導入の補助があります。また、ポイント還元目当てでこれまで来なかった顧客が集客できる可能性が高まります。
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平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
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