経営力向上計画の固定資産税特例が終了したが他に減税制度はあるのか

経営力向上計画の固定資産税特例が終了したが他に減税制度はあるのか 更新日:2019.06.20 公開日:2019.06.07助成金・補助金 – 助成金の基礎知識
経営力向上計画 固定資産税

政府系の助成金や制度はリリースされた時期から遠のけば、恩恵が少なくなる傾向にあります。

新しい制度が開始する時期は制度が世間に浸透してほしいため、少し大きなメリットが付与されています。

けれども、制度の浸透と同時に「もう十分に世間的認知がされたから」という理由からか、助成金などの額(恩恵)はその後引き下げられてしまいます。

 今回ご紹介する経営力向上計画もその一つ。固定資産税の特例措置が令和時代になりカットされていますので、詳しくご紹介していきます。

助成金としていくらもらえるのか、利用できる助成金にどんな助成金があるのかなど、専門家の意見を聞いてみたいという方は下記診断をご利用ください。助成金の受給資格の有無など3分で確認できます。

 

 1.経営力向上計画の固定資産税の特例措置とはどんな制度だったのか

①事業に必要な設備を購入した際の固定資産税が3年間50%OFFだった

画像

50%OFF!これは、洋服のセールの割引率の話ではありません。経営力向上計画に認定されると、事業で必要な設備を購入した場合にかかる「固定資産税」という地方税が半額になるという特典がありま「した」。過去形にした理由としては、この制度が2019年(平成31年)3月30日をもって「終了」したからです。

 経営力向上計画をあなたが作って国に認定された場合、①事業での税制優遇②事業承継に関わる登録免許税・不動産登録税の特例③融資・信用保証での優遇措置、という3つのオトクが現在もありますが、固定資産税が3年間半額、という特典は最も事業者に人気があり破壊力がありました。

画像

しかし、上記の画像を見ればお分かり頂けるように、平成31年(2019年)1月18日に中小企業庁の公式ページで突如として「経営力向上計画に関わる固定資産税の特例措置は、平成31年3月31日をもって終了(しかも赤字)と公表されています。しかも、(期限の延長は行いません)とのダメ押し付きです。

②小売業・畜産農業・老人福祉と多彩な事業が認定を受けている制度

中小企業庁の公式ページでは、経営力向上計画に認定された企業の情報が一覧で見ることができます。経営力向上計画の申請は決して難解ではありませんが、ラクでもありません。経営力向上計画の申請書の書き方については、当サイトの以下記事にて詳しくご紹介しています。ご興味のある方は覗いてみてください。

経営力向上計画の申請書の内容は?申請書の書き方で注意すべき点とは

 経営力向上計画は、2018年8月31日時点で68,532件の企業(事業主)が認定を受けています。認定企業については、中小企業庁の公式ホームページで随時公開されています。さまざまな業種の企業が認定を受けています。ここでいくつかご紹介しましょう。

(1)【小売業】POSシステム導入→消費社のニーズなどを把握し生産性向上へ

企業名

株式会社ツルヤ

場所

長野県

業種

小売業(地域密着のスーパーマーケット)

経営力向上計画の内容

①今まで出店のなかった地域に新規店舗を開設、新規店舗にはPOSシステムを導入し、顧客の趣向と消費動向を売れ筋商品と販売数量を調査することで分析。顧客ニーズに対応した新商品開発に生かす計画。

②新規出店の店舗運営を若年世代へ任せ、今後の経営者の育成を図る。

③新規出店に際し、経営強化税制の税制優遇を利用。ショーケースやベーカリーオーブンなどの設備を導入し、顧客ニーズへの対応を図る。

長野県の株式会社ツルヤは地域密着型のスーパーです。新規店舗開設やPOSシステム導入、ショーケースやベーカリーオーブンといった大型施設の導入を、計画向上計画認定で使える①固定資産税特例措置と②税制優遇という二つの制度を利用し、支払う税金の軽減に成功しました。

 スーパーの新店舗の出店は特にお金がかかります。中小企業ビジネス支援サイト「J-Net21」によると、敷地面積30坪のミニスーパーでも開業する際にかかるお金は物件取得費を含まず、約3,000万円です。

J-Net21中小企業ビジネス支援サイト|業種別開業ガイド|ミニスーパー

※上記URLをクリックすると、外部サイトへリンクします

固定資産税の計算ですが、基本的には土地や棚卸資産(ベーカリーオーブンなど何年も使う設備のこと)の課税評価額に標準税率である1.4%をかけることで求められます。例えば、課税評価額が1億円のスーパーマーケットの固定資産税は140万円です。

 固定資産税=課税評価額×1.4%

スーパーマーケットの平均的な売り場面積は「統計・データでみるスーパーマーケット」というデータサイトを参照すると、1,037.8平方メートル、地方圏で1,369.71,037.8平方メートル。非常に面積が必要な事業のため、固定資産税についても莫大な金額がかかることが分かります。

 株式会社ツルヤは経営力向上計画の固定資産税の特例措置を使い、固定資産税を半額にできました。仮に固定資産税が140万円/年だったなら、70万円/年×3年で210万円もの減税となります。この額は大きいですね。

 ②【畜産農業】従業員減で効率よい生産体制の構築を目指す

企業名

アベファーム有限会社

場所

北海道

業種

畜産農業(チーズ・バターなどの乳製品の生産)

経営力向上計画の内容

①乳製品は今後海外勢との競争の激化が予想され、コスト削減が必須となる。また、従業員不足もあるためより効率よい生産性を構築したい。

②新たに牛舎を新築し、飼育羊頭数を増加。搾乳ロボットを取得し搾乳業務の負担を軽減し、労働生産性のアップを図る。

アベファーム有限会社は北海道にある畜産法人です。従業員不足と今後の価格競争を改善するため、新しい牛舎を設立し、そこに搾乳ロボットを導入し生産性の向上を図りました。

 酪農や畜産業は大きな設備投資が必要な業界です。牛舎の建築費用は建築面積462平方メートル、積雪量30cm・風速32./sの加重条件で茨城件筑西市に建設した場合、建築費用だけで1,470万円もかかります。

【参照】畜舎等の建築コスト低減(肉用牛事例)

 最近ではスマート牛舎といって建築基準法に基づく「型式適合認定」を受けた工法も人気です。スマート牛舎はゼロから設計するのではなく、無柱・大空間の型式から事業者が選択することで、工期を短くし、不要なコストをカットすることができます。

 アベファームは搾乳ロボットや新牛舎の導入で生産性をアップしつつ、固定資産税の半減に成功しました。畜産・酪農を営んでいられる方は、スマート牛舎や国・自治体の行う税制優遇を利用することとでコストカットが可能です。

 2.他に固定資産性の減税・軽減が期待できる国の制度とは

経営力向上計画の固定資産税の特例措置は終了してしまいました。ですが、2019年3月31日までに設備の取得が済んでおり、その領収書などの書類をきちんと保管されている方であれば、まだ対象となります。

 これから設備取得をする方で固定資産税を安くしたい方におすすめなのは、以下の制度です。

 ①中小企業等経営強化法の「先端設備等導入計画」を利用しよう

先端設備等導入計画は、認定経営革新等支援機関に事前確認をおこない、先端設備等導入計画を申請することで活用することができます。

中小企業庁「先端設備等導入計画」等の概要についてによれば、「新たに導入する設備が所在する市区町村が国から「導入促進基本計画」の同意を受けている場合に、中小企業者が認定を受けることが可能です。認定を受けた場合は税制支援などの支援措置を活用することができます。」とされています。

 経営力向上計画に認定による固定資産税の半減はなくなりましたが、これから設備投資を計画している事業主さんはこの「先端設備等導入計画」を利用できます。

 

②固定資産税がゼロから1/2に!先端設備等導入計画の概要

先端設備等導入計画は経営力向上計画と違い、市区町村(自治体)に申し込む計画です。主な要件は以下の通りです。

主な要件

内容

計画期間

3年間、4年間または5年間

労働生産性

計画期間において、基準年度比で労働生産性が年平均3%以上向上すること

画像

先端設備等の

種類

労働生産性の向上に必要な生産、販売活動等の用に直接供され る下記設備 【減価償却資産の種類】 機械装置、測定工具及び検査工具、器具備品、建物附属設備、 ソフトウエア

計画内容

・導入促進指針及び導入促進基本計画※に適合するものであること

・先端設備等の導入が円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること

・認定経営革新等支援機関(商工会議所、商工会等)において事前確認を行った計画であること

経営力向上計画と同様、労働生産性をアップする計画を立てて市区町村に認定されると固定資産税の軽減措置というメリットが与えられます。経営力向上計画では軽減率は50%でしたが先端設備等導入計画では固定資産税ゼロ~1/2と軽減率が増加しています。

 また、固定資産税だけでなく各種補助金の審査で加点措置や補助率アップなどのメリットもあります。

 上記の表は、中小企業庁の作成した以下のPDFでもご覧いただけます。

【生産性向上特別措置法】 先端設備等導入計画について

 まとめ

大型の設備投資を行う事業主は、政府や自治体の行う固定資産税の軽減措置は非常に助かります。

一つの制度がなくなっても、他に似たような制度がある場合があります。経営力向上計画の認定で固定資産税の軽減を狙っていたのであれば、今からは先端設備等導入計画の認定を狙いましょう。

経営力向上計画の認定を受けるには申請書の作成が必要です。自分で申請書が作れないという方は、認定支援機関という専門家に相談するのもひとつの手です。

弊社SoLaboも認定支援機関として、経営力向上計画の申請書作成サポートを行っております。「自分で書類作成できるか不安」という方は専門の担当が対応しますので、まずは一度ご相談ください。

お問合わせの際は「経営力向上計画の件」とお伝えいただくとスムーズです。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
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