少子化に歯止めの効果も?男性の育児休暇取得でもらえる両立支援等助成金とは?
少子高齢化。この言葉をあなたは一週間で何度テレビや新聞で目にすることでしょうか。近い将来、日本の経済が現状維持できなくなる要因として注目を浴びているキーワードです。少子高齢化を解決する1つの方法として、仕事と家庭を両立できる社会が求められています。また、女性の積極的な就業も叫ばれています。
現在、これらの問題に対して企業努力をした場合、その企業に対し厚生労働省から「両立支援等助成金」が支払われるという制度があります。一体どのような制度なのでしょうか?
1.両立支援等援助金とは?
両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立支援や女性の就業・活躍推進に取り込む中小企業に対して支払われる助成金です。
厚生労働省の定める中小企業とは、事業の種類により以下となります。
小売業(飲食店) | サービス業 | 卸売業 | その他の業種 | |
資本または出資の額 | 5千万円以下 | 5千万円以下 | 1億円以下 | 3億円以下 |
常用労働者 | 50人以下 | 100人以下 | 100人以下 | 300人以下 |
支給する助成金はさらに、子育てと介護を支援するコースが4つと、リアイアした方の再雇用を支援するコースが1つと、そして女性の活躍を推進する1つのコース、計6コースがあります。各コースは以下の通りです。
【子育てと介護を支援するコース】
・事業所内保育施設コース ※H28年4月から新規の受付を停止しています。
・出生時両立支援コース ※H30年4月に改正されています
・介護離職防止支援コース
・育児休業等支援コース
【妊娠・育児等の理由で退職した方の再雇用を支援するコース】
・再雇用者評価処遇コース
【女性の活躍を推進するコース】
・女性活躍加速化コース
今回の記事では、この中の「出生時両立支援コース」についてスポットを当てていきたいと思います。
2.出生時両立支援コースとは?
男性が育児参加しやすい職場の環境づくりや、一定期間以上の連続した育児休暇を社員に取得させたという実績のある事業主に対し、助成金が支払われます。支給条件や注意点を詳しくみていきましょう。
①条件は?
助成金は、以下のように2つの条件を満たして初めて支払われます。
条件1の例としては、子どもが生まれた男性従業員に対して管理職の人が「育休取れば?」と勧奨する、管理職に対して会社が「男性の育休取得に関する研修」を実施する、などが挙げられます。条件2の「一定期間以上」とは、具体的には男性従業員が子の出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は連続5日以上)の育児休業が取得すること、と規定されています。
平成30年4月よりもう一つの条件が増えました。条件1、2とは別に、育児目的休暇を導入・利用させた場合にも助成金が支給されます。具体的には、以下の要件となります。
●子の出生前後に育児や配偶者の出産支援のために取得できる休暇制度を導入すること。
●男性が育児目的休暇を取得しやすい職場づくりのため、子どもが生まれた男性従業員に対して管理職の人が「育休取れば?」と勧奨する、管理職に対して会社が「男性の育休取得に関する研修」を実施する、などの取組を行うこと。
●上記の新たに導入した育児目的休暇制度を、男性が、子の出生前6週間または出生後8週間
以内に合計して8日以上(中小企業は5日以上)取得すること。
②いくら支払われるの?
上記の図をご覧ください。まず、大前提として(条件その1)の男性社員が育休を取得しやすい職場作りを実施します。その上で、出生後8週間以内に開始する連続14日以上(中小企業は5日以上)の育児休暇を取得した男性社員が1名いれば、中小企業の場合は57万円、その他企業の場合は28.5万円の支給があります。
さらに、2人目以降の育児休暇取得の男性社員がカウントされるごとに、14.125万円が追加される計算です。平成30年4月に改正があり、条件2は中小企業の場合育休5日以上のみの一択でしたが、以下のように14日以上と1か月以上の3パターンに選択肢が増えました。
中小企業 | 中小企業以外 | |
1人目の育休取得 | 57万円 | 28.5万円 |
2人目以降の育休取得 | a 育休5日以上:14.25万円 | a 育休5日以上:14.25万円 |
b 育休14日以上:23.75万円 | b 育休14日以上:23.75万円 | |
c 育休1か月以上:33.25万円 | c 育休1か月以上:33.25万円 | |
育児目的休暇の導入・利用 | 28.5万円 | 14.25万円 |
ちなみに、この金額は2018年4月現在での情報となります。正確な金額については厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html)をご確認ください。
4.男性社員が育児休暇を取得しやすい職場づくりって?
では、具体的にどのような取り組みを企業として行っていけばいいのでしょうか。以下3つの項目が挙げられています。
・男性社員に対する育児休暇取得の案内の配布や周知
・子が生まれた男性管理職社員向けの育児休暇奨励
・男性管理職社員向けの育児休暇研修の実施
ここでのポイントは、「男性管理職」です。管理職外の社員は率先して育児休暇は取得しづらいものです。そこで、まず管理職から意識改革をしてください、というこの取り組みは、非常に評価できるのではないでしょうか。
5.支給額がアップする条件とは?
さらに、もっと支給額がアップする条件があります。厚生労働省の定める、生産性要件を満たした場合、以下の金額が支給されるのです。
条件2は現在、以下のように生産性要件を満たした場合の支給額が変更になっています。
- 育休5日=18万円
- 育休14日=30万円
- 育休1か月以上=42万円
育児目的休暇の導入・利用については生産性要件を満たした場合中小企業で36万円、中小企業以外で18万円の増額となります。
6.生産性要件をアップとは具体的にどうすればいい?
厚生労働省のホームページ内にある「生産性を向上させた企業は労働関係助成金が割増されます」を参照しますと、生産性要件算定シートがダウンロードできるようになっています。
このシートをダウンロードしますと、PDFで人件費や減価償却費などの項目と付加価値、雇用保険被保険者数、そして生産性・生産性の伸びという項目を目にすることができます。これらのシートに記入して、過去の会計期間よりも数値が改善していれば、助成金の支給額アップの対象となる訳です。この項目をみる限り、推測ですが厚生労働省は雇用保険者数を増加したいという意図がみて取れます。助成金を多少多めに支給しても、継続的に雇用保険者数を確保した方が将来の日本の経済の基盤作りのためには効果的といえるのでしょう。
参考:厚生労働省ホームページ
7.大切な注意点
この助成金の支給は1年度につき、1人までです。助成金欲しさに、まとめて5名ほど男性社員に育児休暇を取得させて、あとで赤字になってしまった、なんてことのないよう、計画的に助成金申請をしてください。
8.誰も損しない!WIN-WINの両立支援等助成金・育児休業等支援コース
この助成金を得ることで、家庭単位では男性の育児参加により配偶者のストレス緩和・出生率アップや女性の早期社会復帰も見込めます。また、企業単位では助成金の取得はもちろん、企業のイメージアップに繋がります。これは、新規雇用や株式にも非常に発展的に影響することでしょう。
さらに、日本政府としても家庭と仕事の両立は将来の日本経済の維持・衰退深度の食い止めに大きく貢献することでしょう。
まとめ
いかがでしたか?今回は、少子高齢化に密接にリンクする両立支援等助成金の一部である育児休業等支援コースについて触れさせて頂きました。出産後の子育ては女性一人ではなかなか心細いものです。家庭と仕事の両立は、欧米に見習い、日本でも積極的に浸透して欲しいテーマの1つといえるでしょう。
なお、具体的に検討される事業主様は支給要件の変更もある可能性もございますので、最新の厚生労働省からの通達を公式ホームページでチェックしてください。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
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2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
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