事業者の中には、費用が発生した際、消耗品費もしくは雑費のどちらで計上すべきか仕訳に迷う人もいるでしょう。
今回は、消耗品費と雑費の違いを解説します。
消耗品費とは
消耗品費とは、下記のいずれかに該当するものを購入する際の費用を言います。
● 使用可能期間が1年未満のもの
● 取得価額が10万円未満のもの
消耗品に該当する具体的な物品を挙げると、次のとおりです。
ここで注意が必要なのが、取得価額は取得した物品の単位ごとに判定されるということです。
たとえば、パソコンの場合、「モニター」「キーボード」「マウス」などがセットで取引されます。個々の金額が10万円未満だったとしても、まとめて10万円以上となった場合には消耗品費としてではなく、資産として計上しなければなりません。テーブルと椅子で1組である応接セットなども同様です。
なお、消耗品費として処理できる10万円未満の資産のことを少額減価償却資産と言います。少額減価償却資産は、事業年度において損金算入の経理処理をした場合のみ有効です。一度減価償却資産として計上すると、翌事業年度に消耗品費として損金処理を行おうとしても認められないので、注意してください。
また、青色申告者である中小企業者に限り使用できる、少額減価償却資産の特例があります。この特例を適用すると、取得金額が30万円未満の減価償却資産についても、合計額300万円を限度としてその取得金額の全額を一括して消耗品費として損金処理することが可能になります。
確定申告の際には、少額減価償却資産の取得価額に関する明細書の添付が必要であることを留意しておきましょう。
雑費とは
雑費とは、「他のどの科目にも該当しない費用」「科目はわかるが少額なもの」「使用頻度が少なく一時的に発生した費用」などのことを言います。
たとえば、各種証明書の発行手数料や引っ越し費用などが挙げられます。
雑費は、何にでも使える便利な科目ですが、消耗品費など他の科目に振り分けられる場合があります。どの科目に振り分けていいかわからないからと何でも雑費にしてしまうのではなく、雑費として計上するのは、どうしても他の科目に当てはまらない費用だけにしましょう。
雑費とする場合の注意点
雑費が多くなると、次のようなデメリットが出てきます。
● 支出の増減が把握しづらくなる
● 雑費が多額になると、税務署の調査が入る可能性がある
何でも雑費にしてしまうと、その支出の内容が見えなくなってしまいます。経費削減しようと考えても何を削れば良いのか判断ができず、適切な経営分析や経営判断の妨げとなるでしょう。
また、雑費が高額になると、不正に経費計上しているのではないかと税務署から目をつけられ、税務調査に入られる可能性もあります。
使用目的が明確でない雑費は、できるだけ減らしましょう。目安としては、経費の5%~10%以内です。
既存の科目に当てはまらない場合でも、取引が頻繁にあり費用が発生するであろう項目については、新たに勘定科目を作成して管理するのもひとつの手です。
消耗品費は決算時に振替が必要
購入した消耗品の仕訳方法は2通りあります。
● 購入価格を費用である消耗品費として処理
● 購入価格を資産である消耗品として処理
どちらの方法で処理をしても構いませんが、決算時には使用した分は「費用」として、未使用分があったら「資産」として計上しなければなりません。
(1)購入時に「費用」として計上する場合
購入した消耗品の購入価格を「費用」として計上するのであれば「消耗品費」勘定を使用します。
仕訳は、借方に消耗品費、ここでは現金で支払ったと仮定して、貸方を現金とします。
決算時、使いきれず残ったものがある場合には、使用しなかった分について「消耗品」勘定に振り替え資産として処理する必要があります。この場合の仕訳は、借方が消耗品、貸方が消耗品費となります。
(2)購入時に「資産」として計上する場合
購入したときに「資産」として処理をするには、借方を消耗品、上記の場合と同様に消耗品を現金で購入したとして、貸方に現金と仕訳をします。
決算時には使用した分の消耗品を資産である「消耗品」勘定から「消耗品費」勘定に振り替えて、費用として処理を行います。
ただし、各事業年度において一定数量を取得して、かつ経常的に消費する消耗品に限っては、その事業年度の費用として購入価格の全額を損金として計上して良いと税法上、認められています。期末に資産として振り替えする必要がないということです。
まとめ
今回は、消耗品費と雑費の違いについてまとめました。
全体の費用から見たら消耗品費は少額である傾向がありますが、日常的に使うことがある勘定科目のひとつです。
適切な経営分析をするためにも特徴を押さえ、正しく処理を行うようにしていきましょう。
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