日本政策金融公庫の創業時の融資についてまとめて解説!公庫を知るならまずはここからスタート
「日本政策金融公庫」(通称「公庫」)の名前を聞いたことがありますか?もしあなたが起業を考えている方なら、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
頭に「日本」とついていることから、なんとなく公的な機関という認識がある方もいるのではないでしょうか?
今回の記事では、日本政策金融公庫がどんな金融機関であり、どんな制度があるのか、公庫から融資を受けるために具体的に必要な準備は何なのか、必要な情報を全て網羅してお届けします。
この記事で説明しきれない内容は、「資金調達ノート」の既存記事へのリンクも合わせて紹介していますので、それぞれの記事を読んでより理解を深めましょう。
1.日本政策金融公庫とはどんな金融機関?
(1)日本政策金融公庫は「日本に住むみんなのための金庫」
日本政策金融公庫は政府100%出資の公的金融機関です。こう説明してもあまりピンとこないかもしれません。
言い換えると、「日本に住むみんなのための金庫」です。
さかのぼると、日本政策金融公庫の設立は今から約12年前の2008年10月1日でした。
それ以前は、「国民生活金融公庫」・「農林漁業金融公庫」・「中小企業金融公庫」という名3つの金融機関が別々に存在していました。
それら3つの機関を1つに統合したのが、「日本政策金融公庫」です。
そのため、現在の日本政策金融公庫は前身の組織を受け継ぎ「国民生活事業」「中小企業事業」「農林漁業事業」の3つの事業で成り立っています。
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(2)日本政策金融公庫の「国民生活事業」とは
日本政策金融公庫(以下、公庫)の事業の1つである「国民生活事業」は、国民生活向上を目指し、事業目的の融資だけでなく下記の支援のような国民生活に密接な業務を行っています。
・小規模事業者の支援 |
・創業支援や地域活性支援 |
・国の教育ローン |
国民生活事業が実施する企業支援活動を表で一覧できるようにまとめました。
特に、創業時の融資を積極的に実施しているという点が特徴ですので起業を考えている方は覚えておきましょう。
(1)セーフティネット機能発揮 |
(2)創業企業支援 まだ実績のない創業時に金融機関から資金を調達するのは難しい場合がほとんどです。公庫の国民生活事業では、そういった創業者へ積極的に融資を行っています。公庫の発表によると、平成30年度の創業前及び創業後1年以内の企業への融資実績は2万7,979件でした。 【参照:創業企業を支援(日本政策金融公庫)】 |
(3)ソーシャルビジネス・海外進出企業支援 |
国民生活事業ではこれまで88万の企業に融資を実施しています。その約9割が従業員9人以下の小規模事業者で、平均融資額は702万円とほぼ小口融資で占められています。
その業種もさまざまで、パン屋から美容室、工務店などの地域密着型事業からIT関連事業まで、業種を問わず事業者のほとんどが利用可能な融資となっています。
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(3)日本政策金融公庫の「中小企業事業」とは
では、日本政策金融公庫のもう1つの事業である「中小企業事業」はどんな支援を行っているのでしょうか。
日本政策金融公庫の中小企業事業は、主に中小企業をサポートすることで日本経済を活性化することを目的としています。主な事業内容は下記の通りです。
・融資業務 |
・証券化支援業務 |
・信用保険業務 |
現在日本に存在する企業の約99%を中小企業・小規模事業者が占めています。
中小企業事業では長期資金を専門に取り扱っています。長期固定金利で、1件あたりの融資金額は約1億3000万円。融資件数は約4万企業を超え、多くの中小企業を支援しています。
中小企業事業の融資を利用できる対象者は業種および企業の規模(資本金・従業員数)で定められており、以下の通りです。
対象業種 |
対象規模 |
製造業 *1、建設業、運輸業など |
資本金3億円以下 または 従業員300人以下 |
卸売業 |
資本金1億円以下 または 従業員100人以下 |
小売業 |
資本金5千万円以下 または 従業員50人以下 |
サービス業 *2 (一部、対象とならない業種あり) |
資本金5千万円以下 または 従業員100人以下 |
【参照:中小企業事業の融資対象(日本政策金融公庫)】
*1 製造業のうち、ゴム製品製造業(自動車または航空機用タイヤ及びチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く)は、資本金 3 億円以下また
は従業員 900 人以下。
*2 サービス業のうち、旅館業は、資本金 5 千万円以下または従業員 200 人以下、ソフトウエア業及び情報処理サービス業は、資本金 3 億円以
下または従業員 300 人以下。
★国民生活事業との違いは?
中小企業事業と国民生活事業、いずれも事業者へ融資を実施しているので「何が違うのか分からない」という質問をときどきいただきます。主な違いを下記表にまとめました。
|
国民生活事業 |
中小企業事業 |
① 融資の対象が違う
|
法人だけでなく個人事業主へ融資を実施 |
個人で利用は不可
融資金額は高く、最長20年の固定金利融資を実施 |
② 担保の有無が違う |
無担保無保証 |
担保を付けることがほとんど |
③ 融資金額が違う |
平均702万円の小口融資が中心 |
限度額4.8億円の高額融資 |
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2.日本政策金融公庫の融資制度
(1)創業時に使える融資には「創業融資」と「制度融資」の2種類ある
「起業のためにまずは手元資金を確保しておきたい!」そんな創業前の方が頼りにできるのが融資です。
融資制度は大きく分けて日本政策金融公庫の「創業融資」と「制度融資」の2種類あります。
1つ目の日本政策金融公庫の「創業融資」には、「新創業融資」と「中小企業経営力強化資金」の2種類あります。主な特徴を下記表にまとめました。
■「新創業融資」の特徴 ・無担保・無保証 ・金利は約2% ・個人での申し込みが可能 |
■「中小企業経営力強化資金」の特徴 ・新創業融資よりも低金利 ・自己資金要件無し ・認定支援機関を通しての申し込みが必要(個人は不可) |
2つ目の「制度融資」は主に中小企業や個人事業主を支援するために、地方自治体や信用保証協会、民間金融機関が連携して実施する融資制度です。
創業したばかりで資金力に乏しい中小企業や個人事業主の場合、返済能力が低いとみなされ金融機関から融資を受けにくくなってしまいます。その状況を回避するため、国が主導して中小企業や個人事業主への融資を促す制度になっています。
金利が低い(1~3%)だけでなく、審査の基準も民間の金融機関より低いというメリットがあります。しかし、審査に関係する機関が多いため、申込~手続き完了までの期間が約3ヵ月と長くなってしまいます。日本政策金融公庫の創業融資にかかる期間は1ヵ月なので、両者を比べるとスピードに欠けるデメリットがあります。
さらに知りたい方は下記へ 創業融資と制度融資の違いとは?創業時に利用できる資金調達方法2つ |
(2)日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の利用条件と審査に通るポイントは?
無担保・無保証で融資を受けられる日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、起業時に借りやすいとは言われているものの、もちろん審査があります。
下記に利用条件と審査に通る3つのポイントをまとめました。
【「新創業融資制度」利用条件】
創業の要件 |
新たに事業を開始する方 または 事業開始後税務申告を2期終えていない方 |
雇用創出要件 |
・雇用創出を伴う事業を開始する方 ・現在勤務している企業と同じ事業を開始する方 ・産業競争力強化法に定める認定特定創業支援事業を受けて事業を開始する方または、民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を創出する方 |
自己資金要件 |
新規事業を開始する方 または 税務申告を1期終えていない方は融資金額の10分の1以上の自己資金が必要 |
【「新創業融資制度」審査に通るポイント】
①事業の計画がしっかり立てられていること 業界に関する資格や経験、商品・サービスの値段設定、売上予想などの事業計画がしっかり立てられているかをチェックされます。 |
②計画実行の準備がしっかりできていること |
③計画が実行可能であること これまでの仕事・業務の経験をもとに作成した実行可能な事業計画かどうかがチェックされます。 |
「新創業融資制度」は資金もまだ十分ではなく、実績もない創業したばかりの企業にも積極的に融資を実行している制度です。これから起業を考えている方はぜひ活用してみてください。
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3.日本政策金融公庫の創業時に利用できる制度の金利
日本政策金融公庫の創業時の融資制度について説明してきたところで、次に具体的な金利を知っておきましょう。
「新創業融資」と「中小企業経営力強化資金」のそれぞれの金利は下記の通りです。
【新創業融資制度】※令和2年4月27日の数値、年利%
基準 利率 |
特別 利率A |
特別 利率B |
特別 利率C |
特別 利率D |
特別 利率E |
特別 利率J |
特別 利率P |
特別 利率Q |
2.46 ~ 2.75 |
2.06 ~ 2.35 |
1.81 ~ 2.10 |
1.56 ~ 1.85 |
1.81 ~ 2.10 |
1.06 ~ 1.35 |
1.41 ~ 1.70 |
2.26 ~ 2.45 |
2.06 ~ 2.35 |
【中小企業経営力強化資金】
基準利率 |
1.21~2.45 |
※但し、次のすべてに当てはまる場合は基準利率A |
①「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である |
②「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している |
【参照:中小企業経営力強化資金の概要】
なお、3ヶ月に1回程度金利の変動がありますので、 最新の金利については日本政策金融公庫のWebサイトをご参照ください。
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4.日本政策金融公庫から融資を受けるには?
融資の申込には自分で申し込む方法と、融資を専門としている「認定支援機関」を経由する方法の2パターンがあります。
(1)自分で日本政策金融公庫に融資を申し込む際の流れ
まず、融資を自分で申し込む際の主な流れを知っておきましょう。
①電話またはWebで相談予約をする 日本政策金融公庫の下記Webサイトから相談の訪問日を予約することが可能です。https://www.jfc.go.jp/n/service/heijitsu_soudan.html |
②支店を訪問する 事業計画書(創業計画書)を持参し、公庫の融資担当者と面談します。 |
③借入申込書を提出する 借入申込書のフォーマットと記載例は日本政策金融公庫のサイトから入手できます。 |
④必要な書類を準備する(※必要書類については別途説明しています) |
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(2)認定支援機関を経由して日本政策金融公庫に融資を申し込む際の流れ
認定支援機関は国から認定された公的な支援機関で、中小企業や小規模事業者の経営サポートを行っています。
それでは、認定支援機関を経由して申し込む際の流れも確認しておきましょう。
①認定支援機関に電話で問い合わせをする |
②必要書類の作成・準備 |
③専門家が融資資料を日本政策金融公庫へ郵送する 認定支援機関の専門家がチェックした書類を日本政策金融公庫へ郵送します。 |
④日本政策金融公庫の担当者が書類のチェック・事業所場所を訪問 |
⑤融資の決定 |
⑥借入金が振り込まれる 申込者名義の銀行口座に資金が振り込まれます。 |
「認定支援機関」を経由するメリットは一言で言えば資料作成や公庫とのやり取りをプロに任せることで、手間が省けるという点にあります。
自力で申し込みを行った場合、申し込みから融資完了まで目安として1か月半から2か月ほどかかってしまいます。
一方、認定支援機関を経由して申し込んだ場合、最短で1か月から1か月半ほどで資金調達が可能です。
一方、デメリットは認定支援機関に支払う手数料が発生することです。
融資申請の手間と時間は最小限に抑えて、事業の準備に集中したいという方には認定支援機関にサポートを依頼することがおすすめです。
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(2)日本政策金融公庫の融資審査の通過率は50~60%。落ちる人の条件は5つ
日本政策金融公庫の融資に成功する確率は、50~60%です。
日本政策金融公庫の審査で主に見られているのは、申し込みをする事業主の返済能力です。貸したお金を返せる事業主だと判断されれば、融資審査に通過することができます。
審査に落ちてしまう、返済能力のないと判断されてしまう人の5つの条件は下記の通りです。
(1)自己資金がない |
(2)税金や支払いに未納や滞納がある |
(3)金融商品の返済を遅延したことがある |
(4)計画性がない |
(5)面談で真摯な対応が出来ず失敗してしまう |
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(3)日本政策金融公庫の融資では希望金額の「10分の1以上」の自己資金を用意することが望ましい
日本政策金融公庫から融資を受ける際、借りられる金額は自己資金の最大9倍までと決まっています。
つまり、希望金額の10分の1以上は自己資金を用意するのが望ましいです。創業までに少しでも多く自己資金が貯められるよう工夫していきましょう。
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(4)日本政策金融公庫の融資では、預金通帳のコピー提出が必須
では、自己資金はどこで確認するのでしょうか?
それは、預金通帳です。日本政策金融公庫の融資では、過去半年分の預金通帳のコピー提出が必須となっています。
コツコツ貯金しているかどうかは、その人の通帳を見れば一目瞭然です。もし自己資金がゼロという方は、創業のスケジュールを見直し、手元資金を準備することを検討してみてはいかがでしょうか。
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5.創業融資で必要な書類とは?
(1)必要書類は過不足なく揃えよう
日本政策金融公庫のWebサイトでは、相談・申込時に以下の書類が必要と記載されています。
・借入申込書 |
・創業計画書※認定支援機関を通す場合は、別途「事業計画書」も必要 |
・(設備資金の申込の場合は)見積書 |
・履歴事項全部証明書または登記事項証明書 |
・(担保ありで借りる場合)不動産の登記簿謄本または登記事項証明書 |
・(生活衛生関係の事業の場合)都道府県知事の推薦書(借入額500万円以上の場合) |
【参照:創業予定の方(日本政策金融公庫)】
しかし、さらに融資の面談時には上記のほかに用意すべき書類が多数あります。大まかに分類すると、下記の3種類です。これらを過不足なく準備することが融資に通過するかどうかを左右します。
①本人と本人の保持する自己資金を確認するための書類 |
②本人に必要なお金の支払い(ローン)や事業に必要な資金を確認するための書類 |
③事業を知るために必要な書類 |
また、必要書類は個人事業主か法人かでも異なります。詳しい解説は下記の記事をご覧ください。
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(2)融資成功のカギを握るのは創業計画書にアリ!
これから創業する方もしくは創業から1年以内の方が日本政策金融公庫の創業融資を受ける場合、創業計画書の提出が必須です。
創業計画書とは、これから創業する事業がどのような内容で、具体的にどのような計画を立てているかを公庫の担当者に説明するための重要な書類です。
見開き1枚分なので一見するとすぐに準備できそうに見えるかもしれませんが、融資成功のカギを握る重要な書類ですので、各項目のポイントをしっかり掴んで作成する必要があります。
▼創業計画書のフォーマット
詳しい書き方とポイントは、下記記事で解説していますので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
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なお、「中小企業経営力強化資金」制度に申し込む場合は、別途「事業計画書」も必要です。こちらの書き方は下記既存記事で説明しています。
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6.融資面談のポイントは?
日本政策金融公庫で融資を受ける場合、審査の過程に必ず面談が設けられます。
まず前提として、公庫の担当者は面談を通じて、貸したお金が必ず返済できる人かどうかを見極めたいと思っています。
特に、創業前はまだ実際の売上は生じていないので、これからはじめようとしている事業で売り上げの見込みがしっかり立つと理解してもらうことが重要です。
面談を控えている方は、面談でよく聞かれる項目やおさえるべきポイントを解説した下記記事を読んで準備することをおすすめします。
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7.審査結果の連絡はどんな方法?通過後に必要な書類は?
融資審査の可否は基本的に郵送で通知されます。基本的には面談後2週間程度で結果が分かりますが、混雑具合で変わりますので、あくまで目安として考えましょう。
無事審査に通過した場合は、同封されている書類を記入・返送します。
書類に不備がなければ公庫に書類が到着して3営業日後に指定の口座に着金されます。
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8.まとめ
これから創業を考えている方にとって、日本政策金融公庫の融資制度は資金調達の心強い味方です。
ご紹介してきた通り、知っておきたいポイントは多数あり非常に手間がかかると思った方もいるのではないでしょうか。しかし、計画的に準備するほど審査に通過する確率は上がりますので、コツコツと進めていきましょう。
ひとつでも不安があるなら、融資の専門としている認定支援機関に頼るのも手段のひとつです。当サイトを運営する株式会社SoLaboも日本政策金融公庫の融資サポートをする認定支援機関です。相談は無料ですので、まずはお気軽にお問合せください。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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