審査の対象として現場視察が行われることがあります
銀行などの金融機関から融資を受ける際は、決算書や事業計画書など提出するべき書類がたくさんあります。しかし、融資を希望する会社の情報収集は資料などの書面だけでなく、実は現場の細部にわたって見られています。
新規の融資取引を行う場合には、銀行支店の最高責任者である支店長、あるいは営業の責任者である渉外担当役席が必ず現場である会社を視察しに来ます。提出資料の中身がよくても現場を見てみたらまったく違ったということがないように金融機関は実際の現場に出向き、資料と実態との矛盾がないかを確認するのです。
今回は、金融機関の職員が現場視察時に会社のどこをチェックしているのかを紹介していきます。
1.オフィス
銀行員が会社を訪ねてきたとき、従業員は笑顔できちんとあいさつできるようにしておきましょう。従業員の第一印象が “暗い” “活気がない” などと思われてしまうと、『従業員が幸せそうではなく辞めてしまうのではないか?仕事に対しての取り組み方が前向きではなく売上にも影響しているのではないか?』という悪い評価に繋がり、会社の将来性を疑われてしまうことに繋がります。
従業員の様子が、会社の状況に反映していることがあるため、従業員が生き生きと元気良く仕事をしており、活気があるかなども銀行員は見ています。
ただし、社内の雰囲気や従業員の応対など、すぐに変えることは難しく時間を要します。日頃から従業員に対しての教育や働きやすい環境づくりをしていくことが大切です。
また、部屋の中はもちろんですが、机の上も整然としておくと印象が良いです。
一般的に、整理整頓がしっかりできている会社とできていない会社を比較した場合に、整理整頓ができている会社の方が経営管理の面もしっかりできているという印象を持ちます。大切な仕事の資料が乱暴に置かれていたり、どこに何の資料があるのか分からない状態は、銀行員からしたらマイナス評価となるため、整理整頓も日頃から意識しておきましょう。
オフィス編
☐ 机や社内が綺麗に整理整頓されている |
☐ 業務に関係のある賞状やトロフィー(受賞歴など)が置いてある |
☐ オフィスに活気がある |
☐ 訪問時に従業員は挨拶をする |
☐ 従業員の服装が適している |
☐ 従業員の構成(年代比・男女比・職種比など)が適している |
☐ 経営者と従業員の風通しが良い |
2.工場・倉庫
銀行は、提出された書類を基に記載されているモノの有無を確認しています。たとえば、機械や設備などの備品類、商品や在庫などです。
決算書には記載されていたが、実際には在庫がなかった場合には、虚偽の報告書である粉飾決算を疑われる可能性もあります。反対に、明らかにわかるほどの大量の在庫があれば、長期間売れずに残ってしまった不良在庫なのではないか、と疑われ印象も悪くなります。
印象の良い書類を作成しても、現場視察にて疑われるような事があっては融資の審査は難しいため、提出書類は嘘のない数字で作成し、説明できる状態にしておくことが大切です。
また、倉庫だからといって整理整頓にも気を抜かないようにしましょう。どこに何の商品があるのか分からない、バラバラに置かれている状態、などでは悪い評価を受けることになります。
倉庫内の整理整頓がされていることで棚卸もスムーズに行える、在庫管理もしっかりされているという良い印象に繋がるため、倉庫内の整理整頓も日頃から意識しておきましょう。
工場・倉庫編
☐ 立地が適している(なぜ、そこに工場を構えるのか) |
☐ 生産工程・生産ラインがスムーズである |
☐ 機械の稼働率が高い・未稼働の機械がない |
☐ 働いている人数のバランス |
☐ 工場・倉庫内の清掃が行き届いている |
☐ 原料・在庫・完成品の整理整頓がされている |
3.店舗(小売店/飲食店)
小売店
銀行員は数多くの業種・店舗を見てきているため、店舗の立地や人通り、競合店の有無などから大体の売上目安を立てます。全ての項目を問題なくすることは難しくとも、何かマイナス要素になる部分があるならば、対策案を立てておき、銀行員へ説明できるようにしておきましょう。
たとえば、人通りに不安点があるならば出張サービスを実施する、競合店舗が多いならば競合店とは異なるイベントやキャンペーンを実施するなど、対策案を立てることで銀行員を納得させるとともに、事業の売上向上の対策にもなります。
融資を受けることは資金調達という意味だけではなく、利益獲得の対策ができているかどうかも気づかせてくれるのです。
店舗(小売店)編
☐ 立地は適している(アクセス・住宅街など) |
☐ 周辺の状況に問題がない(人や車の流れ) |
☐ 競合店舗に問題がない(競合店舗の多さや対策など) |
☐ 看板等の外観が目に入る |
☐ 狭すぎず店舗の広さが適している |
☐ 陳列されている商品に不備がない |
☐ 顧客の出入りがスムーズ(回転している) |
☐ 店員の人数が適している |
☐ 店員の接客態度・在庫管理の状況に問題がない |
飲食店
飲食店の場合は、下記のチェック項目を見ています。立地によっては小売店よりも競合店が多い確率が高くなるため、競合店対策は一つではなく思いつくものをいくつか用意しておくといいでしょう。
店舗(飲食店)編
☐ 立地は適している(アクセス・住宅街など) |
☐ 周辺の状況に問題がない(人や車の流れ) |
☐ 競合店舗に問題がない(競合店舗の多さや対策など) |
☐ 内装とイメージにズレがない |
☐ 店内のレイアウトに問題がない(席数など) |
☐ メニューが豊富である |
☐ 顧客の滞在時間に問題がない(回転率など) |
☐ 清潔感がある |
4.ホームページ
担当者は、ホームページからも多くの情報を入手しようとします。更新頻度や情報発信など、顧客が求める情報が掲載されているのかどうか、ホームページを見て会社のことを理解できるものかなどを見ています。
そのため、ホームページの更新は定期的に行いましょう。更新が長期間されていないということは、情報発信や販売促進に対して消極的だと見られてしまい悪い印象を与えてしまいます。
ホームページ編
☐ 会社概要に不備がなく分かりやすく提示されている |
☐ 経営理念と行う事業にズレがない |
☐ 製品・サービスについての説明がある |
☐ 料金が提示してある |
☐ 人材募集情報がある(社員の受入れを積極的に行っている) |
☐ ブログや情報発信を頻繁に行っている |
☐ 顧客が見やすいホームページになっている(ページメニューなど) |
※現場視察をしない場合もある
現場視察も融資の審査基準ではありますが、融資制度や会社形態によっては現場視察を行わない場合もあります。代表的なもので言えば、金利が高い「ビジネスローン」、インターネットが中心となる「インターネット事業」などです。
金利が高いビジネスローンの場合、返済困難となり貸付金の回収ができずに損失してしまう貸し倒れのリスクが高いということを金融機関側もある程度は予想しています。そのため、現場視察を行ってコストがかかるよりも、決算書を基に融資希望者の信用度の点数化(スコアリングシステム)を行い、高い金利での融資を行った方がいいという銀行員の判断から、現場視察をしないことがほとんどです。
インターネット事業の場合、インターネットの中のみで事業体制が整っていることが最近では多い特徴があります。そのため現場視察をしても見られる部分が少ないために現場視察は行わずに提出書類のみで融資審査に移ることが多いのです。
まとめ
銀行員が行う現場視察は、提出書類との相違点があるとデメリットに働いてしまいますが、融資を含め、会社の状況に沿った多彩なサービスを提供してもらえることや、受注電話が頻繁にかかってきていて売上が増加していくのではないか、従業員の接客や対応が素晴らしく顧客からのリピート率にも繋がるのではないか、などのメリットに働く部分も多くあります。
上記の各チェック項目が融資の審査にも影響してきますので、ご自身の会社やお店に当てはめて確認してみてください。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>
平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
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