法人化を決める前に税金の違いを理解しよう
個人事業主の方が法人化を検討する理由のひとつに「所得税が高い」という 意見があります。所得税は累進課税となるため、所得が増えれば所得税も高くなります。 一方の法人税は一定額までは一律の税率となっているため、法人化のボーダーラインのひとつとして考えられています。 所得税だけを考えて法人化を検討しても良いものか、個人事業主と法人の税金の違いについてご紹介します。
1.個人事業主の税金
個人事業主の方に課税される税金の種類は全部で4種類あります。
上記の4つの税金を納めるために、申告する手続が「確定申告」です。確定申告から考えて納付時期の早いものから1つずつ説明していきます。
(1)所得税
個人事業主の方の多くが、「法人化」を考えるきっかけはこの所得税ではないでしょうか?所得税は1年間の収入から経費、控除を引いた金額(課税所得)に対して課税される税金です。
所得税の計算で用いられる税率は累進課税方式です。課税所得金額が高くなると税率も高くなります。
上記で算出された所得税額は、確定申告提出期限までに納付をする必要があります。
税金は現金一括納付が原則です。たくさん、課税所得のある個人事業主の方の場合、確定申告提出期限に支払う金額も大きくなるため、法人成りを考えるきっかけとなりますね。
(2)消費税
消費税は以下のいずれかの条件に当てはまる場合には、消費税を納める必要はありません。
だだし、前々年の売上は1,000万円を超えていない事業主の方でも下記に該当する場合には消費税を納める必要があります。
消費税は課税事業者に該当しない場合には、納めなくても良いというルールになっています。課税事業者に該当する場合には下記の算出式を用いて消費税を計算し、3月31日までに納付します。
(3)住民税
住民税は「所得割」と「均等割」の合計です。住民税は自治体から金額と納付方法についてのお知らせが届きます。そのため、ご自身で計算する必要はありませんが、算出するための計算式は以下の通りです。
所得割
所得割は前年の所得から所得控除を引いた金額に対して10%の税率が課税されます。基本的には一律10%となっていますが、地域によっては10%を超えている場合もあります。
均等割
均等割は一律で納める金額です。地域によって金額が異なります。ちなみに 関東地方の均等割はこんな感じです!
最新の情報は各自治体にお問合わせ下さい。
だいたい6月頃には各自治体から納付通知書が送られてきます。住民税は一括納付と4期に分けた分割納付(6月/8月/10月/1月)のいずれかで納付します。ちなみに、住民税はコンビニ払いも選択が可能です!
(4)個人事業税
個人事業税も住民税と同様に地方税ですが、対象となる業種が定められているという点と事業主控除が290万円と高額であるため、課税されない個人事業主の方が多い傾向にあります。
個人事業税の計算式は下記の通りです。
税率は業種によって異なります。3%~5%程度が一般的な税率となるようです。地方税となるため、地域によっても税率が異なります。詳細は各自治体にお問合わせください。
個人事業税も、自治体から納税通知書が送付されます。送付時期はだいたい8月頃です。納付は2期に分かれており、1期目が8月、2期目が11月です。
2.法人の税金
法人の場合、個人事業主よりも税金の種類はかなり多くなります。個人事業主と同じように国税と地方税にわけてみましょう。
上記の中で、個人事業主の税金と同じ意味合いを持つ「法人税」「消費税」「法人住民税」法人事業税」についてご説明します。
(1)法人税
個人事業主の所得税にあたる税金が法人税です。法人税は所得(当期税引前純利益)の金額によって課税される税率が異なります。
個人事業主の所得税と比較すると、法人税率はいたってシンプルですね。
税引前当期純利益が800万円までは15%、800万円を超えた部分には23.4%(23.2%)が課税されます。
税引前当期純利益が1,000万円という場合には、800万円までの部分は15%、残りの200万円には23.4%(23.2%)となります。
法人税は事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に確定申告を行ないます。個人事業主と同様に確定申告と納付を一緒に行ないます。
【法人には課税されないけれど、会社に務める個人には所得税が課税される】
会社の代表者など会社から給与の支給を受けている人は個人の給与所得に対して所得税が課税されます。課税される所得税率は個人事業の所得税と同様ですが、給与所得には給与所得控除が設けられています。
給与所得控除額は給与等の収入によって控除額が変わります。ちなみに、平成30年税制改正の大網では、給与所得控除の改正についても発表されました。
(2)消費税
消費税の扱いは基本的には個人事業主と同じです。
納税義務の対象となる課税事業者もほぼ同じですが、法人の場合は事業年度が基準となるため、個人のように1月1日~12月31日という区切りではありません。
(例えば、4月1日が事業年度開始の場合、4月1日~翌3月31日が事業年度となります。)
つまり、免税事業者の範囲は
となります。法人の場合、納付期限は法人税と同様に事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。
(3)法人住民税
個人事業主の住民税にあたる部分が法人住民税です。法人住民税は所得割に変わって「法人税割」と「均等割」の合計です。
法人税割
法人住民税は地方税となり、税率等は各地域によって異なります。参考までに東京都の税率をご紹介します。
均等割
法人住民税の均等割はの税率は資本金や、従業員の数によって異なります。
資本金が1,000万円以下で従業員数が50人以下という場合には均等割は7万円(都道府県民税均等割2万円/市町村民税均等割5万円)です。
法人割・均等割は県税事務所と市役所にそれぞれ納付する必要がありますが、東京23区は特別区という扱いになるため、都税事務所に納める分と区役所に納める分を合算して都税事務所に納付する形となります。申告・納付期限は事業年度終了から2ヶ月以内です。
(4)法人事業税
事業に対して課税される税金として、個人の場合には「個人事業税」がありました。個人事業税と同様に法人の場合には「法人事業税」があります。
法人事業税も、住民税と同様に地方税となりますので、税率は地域によって異なります。法人事業税は益金から損金を引いた法人の所得に対して税率をかけて計算されます。
法人住民税(都道府県民税)と一緒に申告・納付となりますので、事業年度終了の2ヶ月以内が期限です。法人事業税は法人税、法人住民税とは異なり、納付金の損金算入が可能です。
3.法人はひとつの「人格」という扱い
個人事業の場合には、個人に事業が紐付いているイメージです。そのため、個人事業主の方に課税される税金が個人事業の税金という位置付けになります。
一方、法人の場合には、人という文字が付くように、会社という人格が新たに作られることになります。代表者と会社は別という位置付けです。
法人には法人に対する税金が課税され、代表者個人には個人に対する税金が課税されます。法人化を検討する場合には、こういった様々な違いをしっかりと理解する必要があります。
まとめ
それでは、個人事業主と法人の税金の違いについてまとめてみましょう。
個人と法人の税金の種類についてご紹介しました。地方税の税率は地域によって異なる部分となり、細かいところまでご紹介できませんが、個人であれ法人であれ同じような種類の税金があるということをご理解いただければと思います。
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平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
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