助成金や税金の控除など、事業をする上でのオトクな制度は自分から調べて動くことが重要です。
今回ご紹介する制度は、国による中小企業者向けの「経営力向上計画」。以前あった固定資産税軽減がなくなるなど、その内容は変更されているので要チェックです。
1. 経営力向上計画とは?
「経営力向上計画」は経済産業省の外局である中小企業庁が企画した中小企業等のための制度です。(個人事業主やNPO法人も対象)一言で言えば、経営力が向上する計画を中小事業者自らが作成し、それを国が認めると、認定された中小事業者に税制の優遇などのオトクが与えられるというシステムになっています。
もっとわかりやすく説明します。あなたが小学校のクラスに在籍していて、クラス対抗ドッチボール大会が1か月後に開催されると仮定しましょう。担任の先生がこう言いました。「みんな、ドッチボール大会で優勝するにはどうすればいいと思う?意見を言ってください!」
ここで、朝練をする、上手な子を選抜に入れる、などの意見を出して先生に認められた小学生は、「先生から積極的な子供だと認められる」「内申点がよくなる」(なんてことはナイと思いますが)などのメリットがあるわけです。また、それだけではなく、この意見を言った生徒は「ドッチボール大会で優勝するためにクラスはどうしたら良いか」という課題について自分の頭で考え提案し実行するという経験もできるのです。
経営力向上計画をあなたの事業で作成し中小企業庁に認められるということは、このように、事業主が自分の頭で経営力を強化するために考えて実行するという経験をさせてくれます。「経営力向上計画認められると補助金に通過しやすいらしいから」などメリット重視で申請する方も多いと思いますが、この事業主が自分で計画することの重要性は忘れないようにしたいものです。
経営力向上計画については、当サイトの以下既存記事もぜひ併せてご覧ください。
2.認定されるメリットは?どんな事業者が狙うべきか
とは言え、事業を走らせながら同時に経営者が助成金や補助金などについて調べながら申請書の準備をするのは大変なことです。それ相応のメリットがないと、働く時間を削ってまで「経営力向上計画に申し込もうかな」という気持ちにならないというのが本音だと思います。
あなたの立てた経営力向上計画が国に認定されると、現在では以下3つの恩恵が受けられます。このことから、経営力向上計画に認定されることでメリットを多く享受できる事業者は、防災設備を導入を検討している事業、事業承継を行う予定の事業、そして事業融資で設備投資をする予定の事業の事業者と言えるでしょう。
【最新・経営力向上計画に申し込むことで受けられる3つのメリット】
出典:中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(平成30年11月30日版)
ちなみに、平成31年3月31日までは「事業のために購入した機械や設備にかかる固定資産税が軽減になる」というメリットがありましたが、今は終了になっています。また、経営力向上計画に認定されるとものづくり補助金の審査で加点対象になるというようなネット情報も見受けられますが、最新の手引きでは補助金での加点については記載されていません。
3.防災強化設備を購入した場合の税制優遇ってオトクなの?
1つ目は防災強化設備を購入した場合の税制優遇です。日本と災害は今後ますます、切っても切れない関係と言えます。特に、南海トラフ沖など今度地震の確率が高いと言われている地域の事業所であれば、防災強化設備を導入するのは事業を継続させる上で賢明な選択です。
例えば、電気を使った事業で絶対に電気が切れたら事業はつぶれてしまう!というものがあるとしましょう。サーバーを提供していて電気が切れたら大変ですし、今や野菜の生産でも電気を使う生産者さんが増えていますよね。自家発電機の事業用を購入するとしたら、200万円はかかります。この200万円を、経営力向上計画に認定された事業者であれば20%の特別償却ができるのです。
特別償却とは、通常の原価償却とは別の枠で認められている特別な償却です。例えば200万円の自家発電機のように高額な設備を購入した際、通常は原価償却といってその設備の耐用年数で割って計上するのが通常です。
【耐用年数6年の自家発電機の減価償却費】
200万円 ÷ 6年 = 30万円
上記のように、耐用年数が6年の場合は200万円を6で割り、1年単位の原価償却費は30万円となりました。特別償却20%が認められているということは、この30万円にプラス40万円を上乗せできるという計算になります。(合計で償却費は70万円)
減価償却費は税金のコントロールをしやすい大切なポイントで、減価償却資産を多く計上することで、課税を先送りすることができます。
4.事業承継等に関わる登録免許税・不動産取得税の特例ってオトクなの?
日本人の高齢化に伴い、最近やたらと日本政府が事業承継を勧めています。確かに、新たな事業をイチから始めることも大切ですが、事業承継してもらった方が日本経済の安定には効果的な気がします。
この事業承継、その制度や手続きが煩雑だということで、事業承継になかなか乗り気でない事業主も少なからずいるのが現状です。
この特例を使えば、以下の条件に合う中小企業者が事業の合併や会社分割、事業譲渡を通じて不動産を含む事業資産を取得した際に、登録免許税と不動産取得税の軽減というメリットを受けられます。
【中小企業者とは?】
- 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人
- 資本金もしくは出資金を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人
- 協同組合等(中小企業等経営強化法第2条第2項に規定する「中小企業者等」に該当するものに限る)
では、どれぐらい軽減になるのか見てみましょう。
【登録免許税】
- 事業に必要な資産の譲り受けによる移転の登記→1.6%(通常よりマイナス0.4%)
- 合併による移転の登記→0.2%(通常よりマイナス0.2%)
- 分割による移転の登記→0.4%(通常よりマイナス1.6%)
対して変わらないな~!という感想をお持ちになるかもしれませんが、事業承継の移転に関わる登録免許税の計算は不動産の価額が基準になっています。3,000万円の不動産を合併うで移転登記する場合の登録免許税をちょっと計算してみましょう。
【通常】3,000万円×0.4%=12万円
【特例アリ】3,000万円×0.4%=6万円
どうですか?6万円も変わります。3,000万円の不動産の場合でこの差額なので、もっと高額な不動産を移転する場合は、この特例を受けた方がよりオトクになります。
【不動産取得税】
不動産の価格から1/6相当額を課税標準から控除
また、不動産取得税は土地・住宅の場合は不動産の価格×3.0%となっています。不動産の価格から1/6相当額を課税標準から控除できるということは、3,000万円の不動産の場合は1/6である500万円を控除して2,500万円で計算できるようになり、不動産取得税は90万円から15万円抑えられ75万円となります。
5.日本政策金融公庫の融資で0.9%引き下げってオトクなの?
最後のメリットは、融資を受ける際の金利が引き下げられるというものになります。日本政策金融公庫は日本政府が100%出資している政府系金融機関で、中小企業者のための事業用資金を低金利(2%前後)で貸付しています。
元もとかなり低金利な金融機関ですが、経営力向上計画に認定されると特別金利(マイナス0.9%)が適用され、1%台で融資を受けることが可能になります。事業融資を受ける予定のある事業者さんにはメリットが大きいのではないでしょうか?
まとめ
中小企業に対し、中小企業庁では助成金や補助金などとともに経営力向上計画のような支援も随時実施しています。
有効利用し、少しでも節税や事業継続に役立てていきましょう。
弊社SoLaboは認定支援機関として、経営力向上計画の申請書作成サポートを実施しております。「申請書の書き方がわからない」「自分で書類作成できるか不安」という方は専門の担当が対応しますので、まずは一度ご相談ください。
お問合わせの際は「経営力向上計画の件」とお伝えいただくとスムーズにお繋ぎできます。

平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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