民間金融機関からの融資には2種類あるって知っていますか?
法人の場合は、民間金融機関からの融資を受けている方も少なくありません。また、これから融資を受けることを考えている経営者の方もいるかと思います。
実際のところ、みずほフィナンシャルグループのシンクタンク「みずほ総合研究所」が2015年に実施した中小企業が希望する資金調達手法の調査によると、「公的金融機関からの借入」が39.9%、「事業性を評価した担保・保証によらない借入」が38.1%、「信用保証協会の保証付借入」が37.4%という結果になっています。
【参照:中小企業における資金調達の実態~金融機関の取組状況と中小企業における評価~(みずほ総合研究所)】
しかし、創業後間もない多くの小規模事業者は融資を受けた経験がないため、どうすれば資金調達できるのか戸惑ってしまうことが多いと思います。
今回は、創業後まもない小規模事業者※が民間金融機関から事業性資金の融資を受けるために必要なことを説明していきます。
※小規模事業者とは中小企業庁が下記のように定める企業を指しています。
業種分類 |
中小企業基本法の定義 |
製造業その他 |
従業員20人以下 |
商業・サービス業 ※「商業」とは、卸売業・小売業を指します。 |
従業員 5人以下 |
1.民間金融機関からの融資は「信用保証協会の保証付融資」と「プロパー融資」の2種類
銀行から融資を受ける方法は、大きく分けて「信用保証協会の保証付融資」と「プロパー融資」の2種類あります。
(1)信用保証協会の保証付融資
まず1つ目は、信用保証協会を経由して融資を受ける制度からご説明します。
信用保証協会とは、中小企業が金融機関から融資を受けやすくするための公的機関です。簡単に言えば、中小企業と金融機関を結びつける役割をしています。
この信用保証協会が貸付における保証人となり、返済力不足などで借入が難しい事業者が融資を受けられる制度が保証付融資です。
原則として、事業者は事業を行っている地域を管轄する信用保証協会に保証を申込むことになります。最寄りの信用保証協会を知りたい方は、下記サイトから検索可能です。
保証人なしで融資を受けられるため、資金力に乏しい経営者やまだ実績が少なく、返済能力が低いと認定されやすい創業間もない企業に適しています。
銀行はリスクを一部負うものの、信用保証協会もリスクを負担してくれます。万が一倒産して返済不能になった場合は、信用保証協会が一時的に借入金を立替える仕組みになっているのです。
一方、保証なしで融資を受けられるものの、事業主は信用保証協会に信用保証料を支払わなければいけない点に注意が必要です。また、融資の金額にも上限が設けられています。
(2)プロパー融資
では、プロパー融資とはいったいどんな制度でしょうか。
プロパー融資は先にご説明した保証付融資とは反対に、信用保証協会を経由しない融資を指します。
つまり、事業者自身が銀行から直接お金を借りる方法がプロパー融資です。
信用保証協会からの保証をもらう必要がなく、銀行自ら100%リスクを負って融資を行います。信用保証協会を通さないため、低い金利で融資を受けられるのがメリットです。
ただし、プロパー融資は誰でも受けられるわけではありません。銀行が貸し倒れのリスクを全て負うわけですから、実績と将来性があり、返済能力が十分な企業だと認められることが条件です。
2.小規模事業者が民間金融機関から融資を受ける際の必要書類
小規模事業者が民間金融機関から事業性の融資を受ける際の必要書類は以下の6種類に分けられます。
但し、利用する融資によって必要書類が異なる場合もありますので、申し込む際はまず各銀行が公表している「申し込みの条件」を必ず確認してください。
① 本人確認および事業や会社の存在を証明する書類 |
② 会社の人事や株主を証明できる書類 |
③ 事業や経営の状況がわかる書類 |
④ 資金の使い道がわかる書類 |
⑤ 納税したことを証明できる書類 |
⑥ 保証人がいる場合はその事実を証明する書類 |
以下から、各書類の種類について説明していきます。
①本人確認および事業や会社の存在を証明する書類
- 登記簿謄本
- 印鑑証明書
- 会社案内の書類
- 許認可の証明書
融資を受けるためには、まずはその事業や会社が確実に存在しているという証明ができなければいけません。
融資を申し込んだ会社が実は許認可を受けておらず違法な状態だったり、実態のない会社だったりするケースもあるからです。
そのため、まずは自社が存在しているという証明になる書類が必要です。また、どんな事業を行っている会社かわかる資料もあわせて必要になります。
②会社の人事や株主を証明できる書類
- 株主名簿
- 役員名簿
銀行は融資する先の人事関係も重視しています。というのも、全ての金融機関は反社会的勢力と関係している法人には融資をしない姿勢を取っており、役員や株主に反社会的勢力に関する人物がいないかチェックするためです。
③事業や経営の状況がわかる書類
- 決算書
- 試算表
- 資金繰り表
- 事業計画書
会社の経営状況は融資を決定する上で非常に重要です。経営状態からその人の返済能力がわかるからです。
もし決算が赤字だったり、業績が低下する一方だったりした場合は、融資を受けるのが難しくなります。
④資金の使い道がわかる書類
- 見積書や契約書
事業資金を融資する際には、その資金がどう使われて、本当にそれが必要なのかも見られます。そのため、まずは資金の使用用途を明確にしましょう。
その上で、業者からの見積もりや取引先との契約書が資金の使い道を示す重要な書類となります。
そして、各資金が事業をする上でなぜ必要なのかも説明できるように準備しておく必要があります。
⑤納税したことを証明できる書類
- 納税証明書
金融機関は税金を滞納している人には融資をしません。
税金を滞納しているということは、資金繰りが悪いとみなされるからです。
当然ですが、脱税はコンプライアンスにも関わる違法行為ですので、絶対にやめましょう。
⑥保証人がいる場合はその事実を証明する書類
- 保証人の本人確認書類
- 保証人の住民票
- 保証人の印鑑証明書
- 保証人の財産状況がわかる資料
保証人が必要な際は、その保証人の実在性や返済能力もチェックされます。
保証人が不要であれば、用意する必要はありません。
以上が民間金融機関から融資を受ける際の必要書類です。
なお、銀行から融資を受けるうえでのポイントについては、下記既存記事で詳しく解説していますので、具体的な書類の書き方など知りたいという方はぜひこちらもご一読ください。
3.小規模な事業者なら信用金庫や信用組合がおすすめ
民間の金融機関には大きく分けて、メガバンク、地方金融機関、信用金庫・信用組合の3つあります。
この中で、創業後まもない小規模な事業者でしたら、信用金庫・信用組合からの融資がおすすめです。
まず、メガバンクとはいわゆる大手の都市金融機関です。具体的には、三井住友金融機関、三菱UFJ金融機関、みずほ金融機関がそれにあたります。
メガバンクは主に大手企業に対する事業資金の融資を手掛けています。そのため、小規模事業者が融資を申込んでも取り合ってもらえません。
地方金融機関は千葉金融機関や横浜金融機関などその地域のみでビジネスを行っている金融機関です。中小企業に対する融資を行っていますが、主に資本金が3億円ほどでそれなりの規模のある企業がメインです。
最後の、信用金庫・信用組合は創業直後の小規模事業者に対しても融資を行ってくれます。そのため、まずは信用金庫・信用組合からの融資を検討しましょう。
4.まとめ
民間金融機関から融資を受けるために必要なのは、自身の信用力です。
信用力のない人に融資をして、返済不能になるのは金融機関にとって最も避けたい事態だからです。
そのために、融資において必要な書類は確実に用意し、しっかりと融資を受けて返済するつもりがあることをアピールしましょう。
資金調達マニュアルについてもっと見る(一覧ページへ)>
平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上
【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
inQup » https://inqup.com/