起業後に個人事業主が利用できる銀行融資について

起業後に個人事業主が利用できる銀行融資について 2018.07.14起業後の資金調達 – 銀行/信用金庫の融資
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個人事業主でも銀行融資を受けることができます

事業主は事業運営にかかる運転資金や設備資金の事業資金を、銀行や日本政策金融公庫などの金融機関から借入れることができます。

銀行からの事業資金の借入は、コンビニやATMで自由に借入、返済が行えるカードローンに比べて審査が厳しいとされています。その反面、最大14%の金利であるカードローンに比べて、最大8%の金利とされている点ではメリットです。

個人事業主でも事業が黒字であり、開業届や青色申告などの法的手続きをしっかり行っていることで銀行融資を受けることができます。個人事業主で銀行融資をお考えの方は、下記記事もご参考ください。

銀行からの融資は個人事業主でも受けられる?

今回は起業後に、個人事業主の方が利用できる銀行の融資制度、融資に必要なものや申込方法についてご紹介します。

 

1.銀行融資の特徴

起業後の資金調達として最も利用されるのが銀行融資です。審査が厳しくなく、安易に借りることができる反面、金利が最大で14%というカードローンに比べて、銀行融資の金利は平均して1~4%、最大でも8%と安いため、事業者にとってメリットとなります。

その反面、審査は厳しく、融資の申込に必要な書類が多い、また実際に調達できるまでの時間が長いなどがあることも銀行融資の特徴です。

難点はあるものの、銀行という信頼性と低金利などの貸付条件において事業者の利用率が高くなるのも分かります。

一言に銀行と言っても、

本店が大都市にあり全国的に銀行業務を行う「都市銀行」

本店が地方都市にありその地域に向けた銀行業務を中心に行う「地方銀行」

本店が海外にあり国内に支店を持つ「外資系銀行」

店舗を持たずネット専門の銀行である「ネット銀行」

コンビニやスーパーなどの商業施設を中心に業務を行う「流通系銀行」

業務形態は異なるものの、多くの銀行が存在します。

銀行の種類

代表的な銀行

「都市銀行」

三井住友銀行・三菱UFJ銀行・みずほ銀行・りそな銀行 など

「地方銀行」

千葉銀行・横浜銀行・北陸銀行・伊予銀行・群馬銀行 など

「外資系銀行」

BANK OF AMERICA・Goldman Sachs・Morgan Stanley など

「ネット銀行」

楽天銀行・住信SBIネット銀行・SBJ銀行 など

「流通系銀行」

イオン銀行・セブン銀行・ローソン銀行 など

今回の記事でご紹介する融資制度は、「都市銀行」「地方銀行」が行っている融資制度です。銀行融資には、下記の方法があります。

 

2.銀行融資の種類

銀行融資の中でも利用率が高い融資制度は下記のものです。

金銭消費貸借契約書の提出を行う【証書貸付】

融資後の返済方法や金利、融資金額などが記載された書面を「金銭消費賃借契約書」と言います。別名「借用証書」と呼ばれることもあります。融資を受ける際に保証人を立てる場合はその該当者の氏名、住所などもこの契約書に記載されます。

この金銭消費貸借契約書を提出し、融資を受ける方法が証書貸付です。

〈証書貸付の特徴〉

  • 1年以上の長期融資
  • 運転資金での借入期間は7年以内、設備資金での借入期間は15年以内
  • 金利は8%前後となることが多い
  • 返済は、融資額である元金を均等割にし、毎月の元金返済額が同額となる「元金均等返済」が一般的
  • 融資額にかかる利息は、残っている元金額に対して計算され、元金返済額と利息を毎月の返済として支払う

約束手形を担保に融資を受ける【手形貸付】

期日までに取引先から記載金額が支払われることが約束された証券のことを「約束手形」と言います。この約束手形を担保として金融機関に渡し、約束手形に記載されている金額分の融資を受ける方法が手形貸付です。

〈手形貸付の特徴〉

  • 利用者の多くは単発的な運転資金として利用することが多い
  • 金利は1~4%となることが多い
  • 借入期間は1年以内の短期借入
  • 返済は期日での一括返済、利息は一括で先払いが基本
  • 期日前の返済(一部)や利息の分割払いは、事情により認められることもある

手形から割引料を引いて銀行が買い取る【手形割引】

取引先と決めた金額を期日までに支払うことを交わした証書のことを「手形」と言います。この手形に記載されている期日前に、銀行に手数料や利息を引いた金額の融資を受ける方法が手形割引です。手数料や利息は、手形に記載された期日を基に計算されます。

〈手形割引の特徴〉

  • 手形貸付同様、単発的な運転資金として利用することが多い
  • 金利の目安は3%前後となることが多い
  • 取引先からの支払いが万が一滞った場合には、割引依頼者(融資を受けた側)が全額を支払う可能性がある

融資限度額の中で自由に借入や返済ができる【当座貸越】

個人でも利用できるカードローンの仕組みと同様で、融資の限度額内であれば自由に融資を受けられる方法が当座貸越です。当座貸越には2種類があります。

小切手や手形で支払いが行われ、主に事業主のための業務用口座のことを「当座預金」と言いますが、この当座預金が関係しないものを「専用当座借越」、反対に関係するものを「一般当座貸越」と言います。

専用当座貸越は、普通預金や当座預金とは別に当座貸越専用の口座を用意し、その中で借入や返済を行う方法です。

一般当座貸越は、当座預金額以上に借入を行いたいときに、当座預金での不足分が貸越されることで、借入を行う方法です。

〈当座貸越の特徴〉

  • 利息は不足分にのみかかる
  • 金利は0.5%程度となることが多い
  • 借入方法は「借入申込書」を銀行へ提出するか、専用のカードでATMから引き出す方法の2種類がある
  • 審査は厳しい
  • 返済期間が決められてなく、貸し倒れのリスクの高さから優良企業や大手企業に対して認められることが多い
  • 一般当座貸越は、当座預金を利用している企業が審査に通りやすい

信用保証協会が保証人となる【保証付き融資】

中小企業や小規模企業の金融に関する問題を円滑化するために設立された機関が「信用保証協会」です。信用保証協会は、事業主と金融機関を結ぶ役割を持ち、金融機関から借入を行うことが難しい事業主の保証人となり、返済が難しくなった場合は事業主の債務保証を行う役割を持ちます。

この信用保証協会からの保証を付けたうえで、融資を受ける方法が保証付き融資です。

〈保証付き融資の特徴〉

  • 事業主の返済能力や信用性を補ってくれる
  • 銀行に対しての金利3%程度と信用保証協会への保証料1.5%程度がかかる
  • 1年を超える長期借入や7年前後の返済期間が可能なことが多い
  • 審査期間は1ヶ月かかることもある
  • ほとんどの業種が対象だが、農林漁業や金融業、遊興娯楽業の一部対象業種などは保証付き融資の対象外となる

銀行から直接融資を受ける【プロパー融資】

プロパーは「本来の」「固有の」という意味を持ちます。“本来銀行が金融機関として行うサービス” という意味合いから、現在の呼び方である「プロパー融資」と呼ばれるようになりました。

具体的には信用保証協会からの保証無しで直接、事業主が銀行から融資を受ける方法がプロパー融資です。事業主からの返済が滞り、融資額の回収ができなくなった場合は銀行が損失を負うことになるため、審査は厳しくなります。

〈プロパー融資の特徴〉

  • 融資額に上限がない
  • 保証料がなく、金利が1~3.5%となることが多い
  • 審査は厳しい
  • 起業して間もない企業への融資は難しく、実績のある企業が対象となることが多い
  • 1年を超える長期融資であっても返済期間3~5年のように比較的短い

所有する土地や建物を担保とする【不動産担保融資】

土地や建物を所有していた場合に、それらを担保として銀行に差し出し、融資を受ける方法が不動産担保融資です。事業主が返済困難となった場合に、担保とした建物などで銀行の損失を補うことを約束し、融資が実行されます。

差し出す建物価値や、事業主の返済能力から審査が行われ、融資金額が決定していきます。

〈不動産担保融資の特徴〉

  • 融資金額の上限は建物の価値により1億円を超えることもある
  • 手数料として1~3%、担保にするものにもよるが金利は5%前後となることが多い
  • 10年単位の長期返済が可能
  • 1~2週間程度での融資が一般的とされている
  • 担保として差し出した不動産に価値が無ければ融資を受けることができない

売掛債権を担保とする【売掛債権担保融資】

事業活動によって得た売上で、まだ受け取れていない代金(支払われるのは数か月後など)の請求できる権利のことを「売掛債権」と言います。この売掛債権を担保として融資を受ける方法を売掛債権担保融資と言います。

売上金(売掛金)の支払い前に資金が必要となった際に、この融資を受け、売上金が支払われた後に銀行へ返済を行う流れです。

〈売掛債権担保融資の特徴〉

  • 売上金の支払いを行う対象企業の規模によって融資額が異なる
  • 売掛債権を担保に融資を行うことを取引先へ通知をする方法か、通知をしないで融資を受ける方法か選ぶことができる
  • 金利は2.5%~14%まで設定されている
  • 売掛債権担保融資を行うことを取引先が知った場合に、資金繰りなどの問題から取引に影響する可能性がある
  • 売上金の入金がない場合でも返済は行う必要があり、入金がない場合は取引先の代わりに返済を負う可能性もある

 

3.個人事業主の利用率が高い融資制度

個人事業主は銀行からの融資を受けるのは難しいと言われています。ですが、事業において黒字経営を行い、開業届や青色申告などの法的手続きをしっかり行っていることで銀行融資を受けることは可能です。

中でも個人事業主からの利用率が高いのは信用保証協会の保証による「保証付き融資」です。返済期間も長く設定されているため、気持ち的にも余裕を持つことができます。

仮に、資金繰りが厳しくなって返済が困難となっても、信用保証協会が事業主の返済代弁を行ってくれることもあって、資金力の弱い個人事業主には有効な融資方法です。

ただし、1,000万円の融資額に対して50万円の信用保証料がかかるなど、プロパー融資時にはかからない費用が必要となるため、覚えておきましょう。

※都市銀行よりも地方銀行の方が融資を受けやすい

地方銀行よりも都市銀行の方がサービスや金利において優れていますが、その分審査は厳しいのが現状です。また、都市銀行は保証付き融資よりもプロパー融資などの審査基準が高いものの融資を中心としています。

その反面、地方銀行は丁寧かつ親身になって対応を行ってくれることや、審査は都市銀行よりも比較的通りやすいこともあります。将来的に金融機関との信頼関係を深めておくためにも、個人事業主で融資を希望する場合は地方銀行を利用することをおススメします。

 

4.融資を受ける際に必要なもの

(1)融資申込に必要なもの

  • 確定申告書(3期分)
  • 税務署に提出した開業届
  • 資金の使用用途を表す資料(運転資金やつなぎ資金の場合)
  • 事業計画書(新しく別で事業を行う場合)
  • 返済時期を明記した資金繰り表
  • 戸籍謄本もしくは住民票

申込時に必要な書類は、融資を申し込む銀行や融資額を何に使用するのかによって、異なります。場合により追加で資料提出を求められることもあるため、融資実行までの期間を早めるためにも書類に不備がないよう、事前に何が必要になるのかを調べておくと良いでしょう。

(2)審査に必要なもの

実際の審査には、申込時に提出した書類を基に審査が行われます。主に重要視されるのは “資金繰り表” です。

融資金額をどのように使用し、どのくらいの売上が見込め、どのくらいで返済が完了するのか、融資金額の返済が可能だということを証明し、融資担当者を納得させるためにも重要な書類となります。

個人事業主として黒字であることがなによりもの条件ですが、審査の対象となる面談時にも事業状況に対しての質問を受けます。質問に対してすぐに答えられるよう、下記のことは最低限把握しておきましょう。

  • 行っている事業内容、現在の事業状況、事業の将来性について
  • 今後の返済計画において返済に問題がないという説明(資料を使って提示する)
  • 融資金額の使用用途と必要な金額の説明
  • 新しく事業を行う場合は行う事業が成長を見込めるものであるということについて

(3)契約に必要なもの

  • 印鑑証明書
  • 実印
  • 銀行印

審査に通った後は融資実行に向けての契約になります。申込を行う融資制度によって異なりますが、上記の3つは最低限必要となるため、あらかじめ準備しておきましょう。

ここで注意すべき点は、契約内容の確認をしっかり行ってから署名と捺印をすることです。

“銀行だから大丈夫” と安心するのではなく、融資金額や返済期間、金利などに間違いがないか確認をした後に契約を行いましょう。

 

6.銀行融資の流れ

申込

銀行融資の流れは制度によって異なりますが、まずは融資制度の申込を行います。申込は、営業担当者が自社に訪れて申込を行う方法と、事業主が直接銀行を訪れる方法がありますが、営業を待っていても時間だけが過ぎて行ってしまうため、直接銀行を訪れる方法で申込を行いましょう。

融資担当者にはどのような事業でいくら必要なのかを伝えなければなりませんが、その際に口頭のみではなく、3期分の確定申告を持参することで銀行側も事業状況を把握することができ、話をスムーズに進めることができます。

面談日時の調整

借入申込書を窓口に提出し、準備書類に不備があった場合は追加で提出を行います。それらの準備が終わったら、融資面談の日時についての調整を行います。

面談時は融資が必要だということ、返済能力があるということをきちんとアピールしましょう。また、少なからず人柄も審査の対象となります。身なりに決まりはありませんが、清潔感を意識した身なりで行くようにしましょう。

審査~融資実行

その後、銀行での審査が行われ、審査を通過できれば融資が決定し、融資実行となります。

申込から融資実行までの期間の目安としては、1ヶ月と思っておきましょう。準備資料の不備があればその分期間が延びてしまいます。

もしも融資申込が2度目で、1度目の融資をきちんと完済している実績があれば、審査もスムーズに進み実行までの期間が1~2週間程度に早まる可能性もありますが、余裕をもって融資の申込を行うことをおススメします。

 

まとめ

個人事業主にとって日々の資金繰りは大事な問題です。今回は銀行融資についてご紹介しましたが、銀行融資は金利が低く抑えられているため、経営が不安定な個人事業主の方でも安心して資金を借り入れることができます。

しかし、実際に銀行から事業資金の融資を受けるには、さまざまな手続きと厳しい審査が必要、融資実行までの期間がかかることを覚えておきましょう。

個人で事業を営んでいて事業資金の借り入れを検討している方は、事前に必要な手続きや必要書類を確認し、準備が整ったうえで融資を受けるようにしましょう。

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株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
【プロフィール】
平成22年04月 資格の学校TAC入社、財務諸表論講座講師を5年間務める
平成24年04月 税理士事務所で勤務
平成24年08月 個人で融資サポート業務をスタート
平成27年12月 株式会社SoLabo設立
現在までの融資実績は1600件以上

【書籍】
『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方35の秘訣』(幻冬舎)

【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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