少子高齢化と共働きの増加により、何でも屋の需要が増えています。
また、何でも屋は「初期費用を押さえて開業できる業種に見える」という点でもとても人気があります。
この記事では、そんな何でも屋・便利屋に興味をお持ちの皆さんが開業後に困らないよう、必要な資金・手続き・資格を中心に解説します。
1.非常に幅広い何でも屋の業務内容
何でも屋は別名:便利屋とも言われ、基本的には、依頼主が自分ではできない事、やってもらえると嬉しいという軽作業を提供します。ご近所づきあいがあり、家族が大人数だった昔は何でも屋は必要ありませんでした。しかし、いまは何でも屋の世間的認知と需要が高まっています。
①家の片付けをする
何ともないと思われる作業でも、高齢者が行えば高い所の作業や肉体労働は思わぬ事故やケガを招く可能性があります。何でも屋はそんな困っている依頼者の代わりに家具の修理・組み立て・取り付け・家事の手伝いなどを行います。
例えば、筆者は実際に受けたことがありますが、電気の交換と家具の移動を旦那様のなくなった高齢のご婦人により依頼されました。
②清掃・庭の掃除・害虫駆除をする
ハウスクリーニングとしてエアコンの清掃、ガスコンロの油やコゲの除去、水回りの汚れの清掃などを行います。また、ゴキブリ・ダニ・ノミ・クモ・シロアリなどの害虫駆除や庭の草むしりと草の処分も行います。
③不要品処理をする
家族が亡くなれば、亡くなった方の持っていた物を処分する必要があります。何でも屋では遺品処分も行います。また、引っ越しの際に処分しにくい大型家具や家電などの不用品処分の依頼もあります。
④代行をする
今はネット社会で買い物もスマホ一つで簡単に済ませられますが、緊急時や深夜に突然買わなくてはいけなくなった際には何でも屋の行う買い物代行は重宝されるサービスです。
また、筆者も実際に利用しましたが、今はペットシッターの需要も増えています。一人暮らしでもペットを飼っている方も増え、犬のお散歩代行は30分3,000円程度の手軽な料金で利用でき人気です。何でも屋では、ペットシッターの依頼を受けることもあります。
⑤病院・学校・習い事への送迎
60~90代の親を介護する人が近年では増えています。介護する家族が既に定年退職していれば別ですが、まだ仕事を続けている場合は病院への送り迎えが必要です。何でも屋では人員の不足するご家庭に向け、病院への送迎や学校・保育園・習い事などの送迎も承ります。
2.個人とフランチャイズの何でも屋の違い
①個人でやる何でも屋とは
(1)個人はネームバリューがないから、ポスティングをする資金があった方がいい
何でも屋の業務内容は一見、どれも難しくは見えません。簡単そうで、しかも、店舗も必要ないから敷居が低いと考えられがちです。敷居が低いと感じられる業種は、実は、競争相手が多い業種です。ネット通販やブログのアフェリエイトでも実際にやってみれば、集客するのがどれほど大変かを感じることでしょう。
何でも屋の集客はポスティング(チラシやマグネットをポストに投函)が主流です。ポスティングは①何万件単位で②定期的に③何度も投函しないと一定の効果は得られません。例えば、ある地域に20,000枚のチラシを1枚2.5円で撒く場合は1回のポスティングだけで5万円かかります。資金がない場合は、自分の足で地道にポスティングする覚悟が必要です。
(2)依頼主から「怪しい」と思われずに信頼されるための戦略を練ろう
何でも屋という職業は他人の家に入り、家の家族が亡くなったことやペットのことまで全てわかってしまうという個人情報を知ってしまう職業です。何でも屋の依頼主は個人情報をさらすのですから、何でも屋の信頼性を非常に重視します。
信頼はどうやって勝ち取ればいいのでしょうか。手っ取り早いのは有名人をイメージキャラクターにすることですが、莫大な費用がかかります。(便利屋!お助け本舗は元力士の舞の海関をイメージキャラクターにしています)
あなたが何でも屋の仕事のうち一つでもいいので経験があれば。一つでも経験があれば、「〇〇で〇年の経験を持つプロが伺います!」と信頼性を広告でアピールできます。
(3)大手お掃除サービスやフランチャイズに勝つための差別化が必要
何でも屋という業種は簡単そうに見えますが、一つ一つの業種は既に前からやっている競合相手がいる業種です。そのため、既に何年も同事業を行っている事業者にどうやって勝つのかという戦略を立てる必要があります。
何でも屋の売りはその名の通り「何でも」生活の困りごとの相談に乗るという敷居の低さです。
何でも屋としてすべての業務のプロを目指す必要はありません。何でも屋として窓口になり、他の業者と提携してマージンを取る、というビジネスモデルも考えられます。(その際は、かなりの件数を紹介しないと生活費は稼げません)
この他にも、何でも屋の予約が複数入った場合は「自分以外に人を雇う」ことも検討しなくてはいけない、運搬する際の車両の調達と駐車場の契約資金はどうやって捻出するか、といった点も注意が必要です。
②フランチャイズの何でも屋とは
(1)街の便利屋さんFamily、便利屋!お助け本舗など多数ある
「何でも屋 フランチャイズ」で検索すれば、多くの何でも屋・便利屋のWebサイトを見つけられます。これらフランチャイズの何でも屋は運営会社(本部)が研修でノウハウを教えてくれ、必要な資材やユニホームやホームページを用意してくれます。本部がダスキンや大手ホームセンターや大手リフォーム会社などと提携しているため、あなたは仕事の注文を受けたらダスキンなどに外注することも可能です。
その代わり、あなたがオーナーとして何でも屋の会社と契約する際には、自己資金が250万円程度必要です。(フランチャイズ加盟のための自己資金を日本政策金融公庫で借りることはできません)
また、無事にオーナー契約をして何でも屋を開業したあとは、毎月本部にロイヤリティとして5~8万円程度を支払い続けなければいけません。ロイヤリティの内訳はフランチャイズの運営会社により異なりますが、商標使用料やサポート費用となっている場合がほとんどです。
3.必要な資格はある?
何でも屋を開業する時点では必要な資格は特にありません。個人事業主として開業する場合は、開業後1か月以内に事業所(自宅など)を管轄する税務署に開業届という書類を提出します。
けれども、何でも屋は前述した通り、かなり幅広い業種をカバーしています。あなたが何でも屋としてどの仕事を請け負うかにより、以下のような資格が必要になります。
あなたが行う業務 |
何でも屋で必要となる資格の名称(取得する場所) |
不用品を引き取って販売する |
古物商許可 (事業所を管轄する警察署経由で都道府県の公安委員会) |
依頼主を車両に載せて運転する |
普通2種運転免許(運転試験場で技能試験を受ける) |
コンセントの交換など電気工事に関わる仕事を請け負う |
電気工事士(第一種、第二種)、(全国各地・インターネット受験) |
一般家庭のごみなどの廃棄物を処分するために処理場まで運ぶ |
産業廃棄物収集運搬業の許可(都道府県知事または政令市長から許可) |
ペットシッターの仕事を請け負う |
第一種動物取扱業の「保管」登録(自治体における保健所) |
個人でこれらの資格をゼロからすべて取っていくのはお金も時間もかかります。必要に応じ、既にこれらの資格を持つ事業者と連携することも視野に入れましょう。
このほかに、資格ではないですがWEBに強いことも何でも屋として合った方が良いスキルです。ブログ運営やアフェリエイトで稼げている方は、WEBから何でも屋の集客が可能です。
4.何でも屋で必要になる開業資金
①個人で開業する場合は車ありなら最低70万円~
(1)車の費用で100万円
何でも屋をするには、軽トラックなどの運搬車両が必要です。店舗は必要ありません。自宅を店舗として、電話も固定電話ではなく携帯電話で受注できます。既に車をお持ちの方であれば、開業資金はほぼゼロでできると考えてしまうかもしれません。
(2)宣伝広告費で50万円
何でも屋のサービスを始めるには、お客さんにあなたのビジネスを知ってもらうための宣伝ツールであるチラシとホームページと名刺が必要です。チラシとホームページ作成で50万円はみておきましょう。無料でできる宣伝としては、ツイッターやFacebookなどのSNSがあり、地道に毎日続ければ効果も見込めます。
(3)道具と作業費で10万円
何でも屋は身体一つでできるイメージがありますが、作業に必要な工具や清掃用具は必須です。道具一式と作業着を揃える資金として10万円は必要です。
(4)車両維持費(毎月1万円)と通信費(毎月1万円)で毎月2万円
車のガソリン代や保険代や税金、そして依頼主と連絡するための通信費は毎月最低でも2万円はかかります。ハウスクリーニングを請け負う場合は、保険を車だけでなくハウスクリーニング保険(年間で7~8万円)にはいっておくことも検討しましょう。
(5)開業後の生活費で90万円
何でも屋は思った以上に集客が難しいので、開業後の生活資金として毎月最低15万円×半年分で90万円ほど用意しましょう。
②フランチャイズで開業する場合は300万円~
フランチャイズの場合は必要な道具やホームページは全て本部が用意してくれるため、あなたが用意すべき点はとにかくお金です。フランチャイズに加盟する際は250万円、研修だけを受ける場合は100万円程度で何でも屋を開業できます。
5.何でも屋の年収は集客とリピーターしだい
初期投資をあまりしなくても開業できる業種なので、飲食店のように何年もかけて設備費用を回収する必要はありません。但し、何でも屋として注文を受けることは飲食店にお客さんを呼ぶより難しいかもしれません。
毎日ポスティングをして、注文が入ったら雨でも夜でも駆けつける、という気構えで仕事をすれば、徐々に注文を取ることができるでしょう。
何でも屋の年収には平均という概念があまりありません。個人の裁量によるところが非常に大きく、稼げない人はひと月に0円、稼ぐ方はひと月に100万円と格差があります。
6.何でも屋はガテン系に向いている感謝される仕事
何でも屋についていろいろ調べた結果、ネット上で考えられているほどラクな仕事ではないという印象を受けました。しかし、高齢者が増えているのは事実なので需要は今後も増える見込みの業種です。
何でも屋に向いている人柄をまとめると、以下のような要素があります。
- 人あたりが良い
- 肉体労働にも抵抗がない
- ごみの処理などにも苦痛を感じない
- 新しいことにも進んでチャレンジできる
- お客様に対して細かい気配りができる
- お客様との約束を果たせる
自分が何でも屋の仕事に向いている!と感じるならば、まずは開業したい場所の近隣で競合の何でも屋はいないかリサーチするところから始めましょう。
まとめ
何でも屋の起業に必要な知識をまとめてご紹介致しました。今後ますます増えると見込まれる何でも屋の需要。
頑張り次第では稼げる業種のため、若い方や体に自信のある方に向いているのではないでしょうか。
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平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。
【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)
【運営サイト】
資金調達ノート » https://start-note.com/
創業融資ガイド » https://jfc-guide.com/
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