飲食店を開業したい人の中には、テーマとコンセプトを検討している人もいますよね。また、テーマとコンセプトを決めるときの流れが知りたい人もいるでしょう。
当記事では、飲食店の開業におけるテーマとコンセプトを解説していきます。飲食店を開業する目的としてテーマとコンセプトを決めたい人は参考にしてみてください。
飲食店のテーマとコンセプトの必要性
テーマとコンセプトは、飲食店の方向性を示す要素のひとつです。テーマとコンセプトを決めずとも飲食店を開業できますが、テーマとコンセプトを決めることにより、飲食店の方向性を顧客に伝えられ、決めるべき事項の判断材料になる可能性があります。
たとえば、店舗の外装や内装を決める際、設定したテーマとコンセプトがヒントになるかもしれません。設定したテーマとコンセプトから店舗の外装や内装を決めることにより、一貫した雰囲気を感じられ、開業後の集客に寄与することも考えられます。
また、テーマとコンセプトを決めることにより、決めるべき事項の判断材料になるかもしれません。候補となる案が複数ある場合は判断に迷う可能性もありますが、テーマとコンセプトを決めておけば、テーマとコンセプトをもとに判断できることも考えられます。
なお、テーマとコンセプトは似て非なるものです。飲食店を開業する目的としてテーマとコンセプトを決めたい人は、予備知識としてテーマとコンセプトの違いを押さえておきましょう。
テーマとコンセプトは違う
それぞれは近しい関係にありますが、テーマとコンセプトは似て非なるものです。飲食店を開業する目的としてテーマとコンセプトを決めたい人は、テーマとコンセプトを決めるための予備知識としてそれぞれの違いを押さえておきましょう。
【テーマとコンセプトの違い】
項目 | 意味 | 具体例 |
テーマ | 主題 | LOHAS(ロハス) |
コンセプト | 構想 | 毎日訪れたくなる、バランスの取れたベジタリアンフードを提供する |
テーマとは、文学や映画などの芸術作品を通じ、作者が伝えたいことを短く言い表したものです。行動や創作などの基調となる考え方と表現されることもありますが、飲食店におけるテーマはそのお店を通じ、実現したい主題にあたります。
コンセプトとは、テーマの実現性を検討するときの判断軸になる考え方のことです。骨格となる発想や観点と表現されることもありますが、飲食店におけるコンセプトはそのお店が提供する価値を示し、全体を通しての一貫した構想を意味します。
なお、テーマとコンセプトを設定するときのポイントは、整合性がとれているかどうかです。整合性がとれていなければ、方向性を見失うおそれもあるため、テーマとコンセプトを決めるときは、それぞれを照らし合わせながら決めることを意識してみましょう。
飲食店のテーマとコンセプトを決めるときの流れ
テーマとコンセプトを設定する場合には、テーマを決めてからコンセプトを決めることになります。飲食店を開業する目的としてテーマとコンセプトを設定したい人は、テーマとコンセプトを決めるときの流れを押さえておきましょう。
【飲食店のテーマとコンセプトを決める流れ】
- 自由にテーマを書き出してみる
- テーマをコンセプトに落とし込む
- 設定したコンセプトを見直してみる
テーマとコンセプトを決めるときは、テーマとコンセプトを照らし合わせながら進めることになります。整合性がとれているかどうかを確認しながら進めることになりますが、まずは一連の流れとしてそれぞれの工程を確認してみましょう。
①自由にテーマを書き出してみる
まずは飲食店のテーマから決めることになります。テーマを決めてからコンセプトを考えることになるため、飲食店を開業する目的としてテーマを考えるときは、最初の工程として自由にテーマを書き出してみるところから始めてみましょう。
【飲食店におけるテーマの例】
開業の動機 | テーマの例 |
木曽檜を使ったおひつの良さを広めたい | 長野県の郷土料理と木曽檜のおひつが一緒に楽しめるお店 |
相模原市が生産する農畜産物の認知度を向上したい | 相模原産の採れたての卵と野菜をふんだんに使ったオムレットのお店 |
テーマを書き出すときのポイントは、開業の動機や理由を振り返ってみることです。開業の動機や理由は根幹にあたる部分となるため、開業の動機や理由を振り返ることにより、設定したいテーマが見えてくることがあります。
また、テーマが思うように出てこないときは、頭に浮かんだ言葉をどんどん書き出してみることもポイントです。書き出した言葉の良し悪しを判断せず、まずは質より量を重視することにより、テーマのヒントになる要素を発見できることがあります。
テーマは飲食店における重要な要素のひとつですが、テーマそのものに正解はありません。飲食店を開業する目的としてテーマを決めるときは、自由にテーマを書き出してみるところから始めてみましょう。
テーマを掛け合わせてみることも方法のひとつ
飲食店のテーマを考えるときは、いくつかのテーマを掛け合わせてみることも方法のひとつです。いくつかのテーマを掛け合わせることにより、競合となる店舗との差別化につながる可能性もあります。
たとえば、食事と音楽を掛け合わせたテーマを設定した場合、食事しながら音楽を楽しめる空間を演出することも選択肢のひとつです。料理のメニューから音楽の方向性を決めることにより、競合となる店舗とは異なる空間を演出できるかもしれません。
また、食事と読書を掛け合わせたテーマを設定した場合、食事の後に読書を楽しめる空間を演出することも選択肢のひとつです。料理のメニューに関連する本を用意しておくことにより、食事の前からその料理の魅力を伝えられるかもしれません。
なお、「飲食店×散髪」や「飲食店×靴磨き」など、飲食業と別の業種を掛け合わせる方法もあります。その業種に特化した人との共同経営になるかもしれませんが、差別化を図りたい人は別の業種との掛け合わせからテーマを決めることも検討してみましょう。
②テーマをコンセプトに落とし込む
次は設定したテーマをコンセプトに落とし込むことになります。コンセプトはお店から顧客に対してのメッセージとなるため、テーマをコンセプトに落とし込むときは、次の工程として伝えたいメッセージを言語化してみるところから始めてみましょう。
【コンセプトの例】
設定したテーマ | コンセプトの例 |
北海道の海鮮を中心とした和食屋 | 北海道の本場の味がわかる |
お酒と音楽が楽しめる沖縄料理屋 | 沖縄料理を、もっと気軽に、もっと楽しく |
山形県の納豆汁や芋煮を味わえる郷土料理屋 | 山形県の郷土料理を味わえる、やすらぎ空間 |
コンセプトを言語化するときのポイントは、誰に何を伝えたいのかを考えてみることです。コンセプトはそのお店が提供する価値を示しているため、顧客となる人物像を想像することにより、コンセプトとして伝えたいメッセージが見えてくることがあります。
また、コンセプトが思うように出てこないときは、他の飲食店のコンセプトを参考にしてみることもポイントです。魅力や興味など、面白さを感じたコンセプトを参考にすることにより、コンセプトのヒントとなる要素を発見できることがあります。
コンセプトはそのお店が提供する価値を示し、お店から顧客に対してのメッセージとなります。お店に対する想いや考えが反映される場合もあるため、テーマをコンセプトに落とし込むときは、伝えたいメッセージを言語化してみるところから始めてみましょう。
5W2Hから考えてみることも方法のひとつ
コンセプトを決めるときは、フレームワークの「5W2H」に当てはめながら考えてみることも方法のひとつです。とくに、コンセプトが決まらない人は「why」「who」「what」「where」「when」「how much」「how」の視点から考えてみることも検討してみましょう。
【フレームワークの「5W2H」】
項目 | 項目の例 |
why(なぜ) | ・なぜ飲食店を始めるのか? ・なぜこの料理にしたのか? ・なぜこの店舗名なのか? |
who(誰に) | ・年齢層のターゲットは? ・性別のターゲットは? ・職業のターゲットは? |
what(何を) | ・メニューの種類は? ・サービスの特徴は? ・食材の仕入方法は? |
where(どこで) | ・開業する場所は? ・競合店の有無は? ・人通りの状況は? |
when(いつ) | ・営業時間は? ・定休日は? ・年末年始は? |
how much(いくらで) | ・料理の価格帯は? ・ランチの価格は? ・ディナーの価格は? |
how(どのように) | ・理想の空間は? ・料理の提供方法は? ・テーブル席やカウンター席は? |
たとえば、お店の根幹となる要素は「why(なぜ)」に該当します。「なぜ飲食店を始めるのか?」「なぜこの料理にしたのか?」「なぜこの店舗名なのか?」など、お店の根幹にあたる部分は「why(なぜ)」に当てはめることになります。
また、顧客の要素は「who(誰に)」に該当します。「年齢層のターゲットは?」「性別のターゲットは?」「職業のターゲットは?」など、ターゲット層とも言われる顧客の部分は「who(誰に)」に当てはめることになります。
なお、「5W2H」の視点からコンセプトを考えるときは、コンセプトシートを作成する進め方があります。コンセプトシートを作成することにより、「5W2H」の項目を整理できるため、コンセプトが決まらない人はコンセプトシートの作成を検討してみましょう。
③設定したコンセプトを見直してみる
最後は設定したコンセプトを見直してみることになります。設定したコンセプトに違和感があれば、コンセプトを再考する余地があるため、設定したコンセプトを見直すときは、最後の工程として違和感があるかどうかを確認してみましょう。
【コンセプトを見直すときの項目の例】
- テーマとコンセプトの整合性はとれているか?
- 事業として実現できるコンセプトになっているか?
- メッセージとして伝わるコンセプトになっているか?
たとえば、事業として実現できるコンセプトになっているかどうかは、設定したコンセプトを見直すときのひとつのポイントです。設定したコンセプトが事業として実現できなければ、その価値を顧客に提供できず、非現実的なものになってしまいます。
また、メッセージとして伝わるコンセプトになっているかどうかは、設定したコンセプトを見直すときのひとつのポイントです。コンセプトはお店から顧客に対してのメッセージとなるため、その内容が伝わらなければ、お店の魅力も伝えきれないかもしれません。
設定したコンセプトに違和感があれば、コンセプトを再考する余地があります。コンセプトに正解はありませんが、設定したコンセプトに何かしらの違和感がある人はあらゆる角度から見直してみることを検討してみましょう。
コンセプトはお店の魅力を伝えるアピールポイントにもなる
コンセプトはお店の魅力を伝えるアピールポイントにもなります。コンセプトを伝える場面はいろいろ考えられるため、飲食店を開業する目的としてコンセプトを考えている人は、お店の魅力を伝えるアピールポイントにもなることを念頭に置いておきましょう。
たとえば、飲食店を紹介する目的としてホームページを活用する場合、ホームページにコンセプトを載せることがあります。お店からのメッセージとしてコンセプトを載せることになるため、そのお店の魅力を伝えるアピールポイントのひとつでもあります。
また、飲食店を紹介する目的としてSNSを活用する場合、SNSにコンセプトを公開することがあります。宣伝の一環としてコンセプトを公開することになるため、そのお店の魅力を伝えるアピールポイントのひとつでもあります。
設定したコンセプトを伝える場面はいろいろあります。お店の魅力を伝えるアピールポイントとして発信することも考えられるため、飲食店を開業する目的としてコンセプトを考えている人は、コンセプトを世に発信する可能性においても意識しておきましょう。
まとめ
テーマとコンセプトは、飲食店の方向性を示す要素のひとつです。テーマとコンセプトを決めずとも飲食店を開業できますが、テーマとコンセプトを決めることにより、飲食店の方向性を顧客に伝えられ、決めるべき事項の判断材料になる可能性があります。
また、テーマとコンセプトは似て非なるものです。飲食店を開業する目的としてテーマとコンセプトを決める場合は予備知識としてテーマとコンセプトの違いを押さえておくこともポイントです。
そして、テーマとコンセプトを決めるときは、テーマとコンセプトを照らし合わせながら進めることになります。整合性がとれているかどうかを確認しながら進めることになるため、テーマとコンセプトを決めるときは一連の流れを確認しておきましょう。
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