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パン屋を開業するときの営業許可を解説

パン屋を開業予定の人の中には、営業許可に関する情報が知りたい人もいますよね。また、営業許可を取得するときの流れが知りたい人もいるでしょう。 当記事では、パン屋を開業するときの営業許可を解説します。営業許可の申請の流れも解説するため、パン屋の開業を考えている人は参考にしてみてください。

まずは取得する可能性がある営業許可を押さえる

パン屋を開業する場合は営業許可を取得することになりますが、必要となる営業許可は提供する料理や店舗の営業形態によっても異なります。想定しているパン屋の条件次第となるため、まずは取得する可能性がある営業許可を押さえておきましょう。

【パン屋における営業許可の例】

営業許可 営業許可の要否
菓子製造業許可 原則必要
飲食店営業許可 条件次第

取得する可能性があるのは「菓子製造業許可」と「飲食店営業許可」です。パン屋を開業する場合はいずれも取得する可能性があるため、パン屋を開業したい人は想定しているパン屋と照らし合わせながらそれぞれの営業許可の概要を確認してみましょう。

菓子製造業許可

パン屋を開業する場合、取得する可能性があるのは「菓子製造業許可」です。食品衛生法により、パン屋を開業するときは原則として菓子製造業許可を取得することになるため、パン屋を開業したい人は菓子製造業許可の概要を確認してみましょう。

【菓子製造業許可における範囲の例】

できること できないこと
・パン(調理パン含む)の製造、販売
・菓子の製造、販売
・冷凍パンの製造、販売
・冷凍菓子の製造、販売
・飲料のイートイン販売
・料理(スープ類含む)の提供
・アイスクリームの製造、販売

菓子製造業許可とは、「パン」「ケーキ」「餅菓子」「飴菓子」などの菓子を製造し、販売や営業を始めるときに必要となる許可のことです。法律上、食パンや菓子パンは菓子にあたるため、パン屋を開業するときは原則として菓子製造業許可を取得することになります。

また、菓子製造業許可を取得している施設の場合、総菜パンやサンドイッチなどの調理パンを製造することも可能です。パンに飲料を添えてのイートイン提供も認められるため、想定しているパン屋が当てはまるときは菓子製造業許可を取得することになります。

なお、営業許可の範囲の見解は自治体ごとに異なる場合があります。解釈が保健所の担当者によっても異なる可能性があるため、個別の事例を知りたい人は開業予定地を管轄する保健所の担当者に菓子製造業許可の範囲を確認することを検討してみましょう。

飲食店営業許可

パン屋を開業する場合、取得する可能性があるのは「飲食店営業許可」です。食品衛生法により、パン屋を開業するときは飲食店営業許可を取得する可能性があるため、パン屋を開業したい人は飲食店営業許可の概要を確認してみましょう。

【飲食店営業許可における範囲の例】

できること できないこと
・料理のイートイン、テイクアウト販売
・飲料のイートイン、テイクアウト販売
・アイスクリームのイートイン販売
・冷凍パン生地を焼成して販売
・アイスクリームのテイクアウト販売
・菓子のテイクアウト販売

飲食店営業許可とは、飲食店を営業するときに必要となる許可のことです。厚生労働省による飲食店営業の定義は「食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業」となるため、想定しているパン屋が該当する場合は飲食店営業許可を取得することになります。

また、飲食店営業許可を取得している施設の場合、既製の冷凍パン生地を焼成し、そのパン生地の小売販売も可能です。ホットドッグや揚げパンなど、提供するメニューによっては菓子製造業許可を取得せずとも小売販売が認められる可能性があります。

なお、営業許可の範囲の見解は自治体ごとに異なる場合があります。解釈が保健所の担当者によっても異なる可能性があるため、個別の事例を知りたい人は開業予定地を管轄する保健所の担当者に飲食店営業許可の範囲を確認することを検討してみましょう。

次は営業許可の要件を確認する

取得する可能性がある営業許可を押さえた人は、次は営業許可の要件を確認してみてください。営業許可を取得するには、所定の要件を満たしている必要があるため、パン屋を開業したい人は営業許可を取得するための要件を確認しておきましょう。

【営業許可を取得するための要件】

  • 食品衛生責任者を置く
  • 施設基準を満たす

営業許可を取得するときは、食品衛生責任者と施設基準に関する要件を満たしている必要があります。それぞれの要件を満たしていなければ、営業許可を取得することはできないため、パン屋を開業したい人はそれぞれの項目を確認してみましょう。

食品衛生責任者を置く

営業許可を取得するときの要件のひとつは「食品衛生責任者を置くこと」です。食品衛生法の定めにより、食品の製造や販売を行う場合は食品衛生責任者を選任しなければならず、営業許可を申請するときは食品衛生責任者の資格証明の提出が必要になります。

食品衛生責任者とは、店舗における衛生管理全般に責任を持つ役割の人のことです。食品衛生責任者の有資格者がいなければ、その店舗の営業は認められないため、2店舗以上を出店する場合はそれぞれの店舗に1名以上の食品衛生責任者を置くことになります。

また、食品衛生責任者の資格を取得する場合、まずは食品衛生協会が主催する養成講習会に参加することになります。その後、「食品衛生学」「食品衛生法」「公衆衛生学」などの講習科目を受講し、講義の理解度や知識の定着度を確認するための修了試験に合格すれば、食品衛生責任者の資格を取得できます。

なお、製菓衛生士や調理師など、特定の資格を保有していれば、養成講習会の受講が免除されます。受講が免除される資格が気になる人は、開業予定地を管轄する保健所や食品衛生協会の公式サイトを確認してみましょう。

施設基準を満たす

営業許可を取得するときの要件のひとつは「施設基準を満たすこと」です。食品衛生法の定めにより、営業許可を取得する場合は施設基準を遵守しなければならず、営業許可の申請後は保健所の担当者による施設基準の検査が実施されます。

【施設基準の例】

設備 基準内容
<共通基準>
施設全体/区画
・屋内にあり衛生的であること
・十分な広さを確保すること
<共通基準>
床/内壁/天井
・清掃しやすい構造であること
・床と内壁は耐水性のある材料であること
<共通基準>
洗浄設備
・従事者専用の流水受槽式手洗い設備を設けること
・水栓は手指の再汚染が防止できる構造であること
<共通基準>
照明設備
・作業、検査及び清掃等を行える照度があること
・50ルクス以上の照度であること
<共通基準>
給水設備
・熱湯、蒸気等を供給できること
・貯水槽は衛生上支障のない構造であること
<菓子製造業の特定基準>
施設/区画
・「包装作業場」「製造作業場」など、作業区分に応じて区画すること
・原材料の保管場所と製品の保管場所を分けること
<菓子製造業の特定基準>
製造設備
・製造に必要な機械器具を揃えること
・必要に応じて冷蔵または冷凍設備を揃えること

過去の食中毒や食品事故の発生状況を踏まえ、施設基準は定められています。「区画」「洗浄設備」「給水設備」などの施設基準を満たせなければ、営業許可を取得することはできないため、営業許可を取得する場合はそれぞれの項目を確認することになります。

また、施設基準は「共通基準」と「特定基準」に分類されています。菓子製造業の営業許可を取得する場合は共通基準に加え、菓子製造業の特定基準も満たす必要があるため、菓子製造業許可を取得する場合はそれぞれの項目を確認することになります。

なお、施設基準に関する見解は自治体ごとに異なる場合があります。解釈が保健所の担当者によっても異なる可能性があるため、内装工事が始まる前に一度、開業予定地を管轄する保健所の担当者に施設基準に関する内容を確認することを検討してみましょう。

最後は営業許可の申請の流れを確認する

営業許可の要件を確認した人は、最後に営業許可の申請の流れを確認してみてください。書類準備や日程調整など、時間がかかることも考えられるため、パン屋を開業したい人は営業許可の申請の流れを事前に把握しておきましょう。

【営業許可を取得する流れ】

  1. 保健所に事前相談をする
  2. 営業許可の申請書類を提出する
  3. 施設検査を受ける
  4. 営業許可証が交付される

営業許可を申請するときは、まずは保健所の担当者に事前相談することになります。開業予定地を管轄する保健所ごとに見解が異なる可能性もあるため、内装工事を実施する前に一度、保健所の担当者に事前相談することを検討する余地があります。

営業許可の申請書類を提出したあとは、保健所の担当者が店舗に訪れ、施設検査を行うことになります。施設基準を満たしているかどうかを確認したのち、問題がなければ、検査後のおよそ1週間から10日後に営業許可証が発行されます。

なお、営業許可は一定期間後、更新手続きが必要となります。厚生労働省によると、営業許可の有効期間は5年から8年に設定される傾向があるため、営業許可証が交付された後は記載されている有効期間を確認しておくことを留意しておきましょう。

営業許可の取得後はHACCPに沿った衛生管理を実施する

営業許可を取得したあとはHACCPに沿った衛生管理を実施することになります。食品事業者はHACCPに沿った衛生管理を行うことが義務付けられているため、パン屋においてもHACCPに沿った衛生管理を行っていくことになります。

【HACCPに沿った衛生管理の概要】

項目 概要
衛生管理計画の作成 厚生労働省が定めた「一般的な衛生管理」「HACCPに沿った衛生管理」にもとづいて「衛生管理計画」を作成する。
手順書の作成 必要となる場合は「清掃」「洗浄」「消毒」「食品の取扱い」などの具体的な方法を定めた手順書を作成する。
実施状況の記録 「衛生管理計画」と「手順書」にもとづいた衛生管理の実施状況を記録する。
効果の検証 「衛生管理計画」「手順書」の効果を定期的に検証し、必要となる場合はその内容を見直す。

HACCP(呼称:ハサップ)とは、衛生管理の手法のことです。「衛生管理計画の作成」「手順書の作成」「実施状況の記録」「効果の検証」など、食品事業者の中でも小規模事業者はHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の実施が義務付けられています。

営業許可の取得後はHACCPを取り入れた衛生管理を実施することになりますが、実施状況を記録するよう厚生労働省の指示がある関係上、営業許可の更新時は保健所の担当者から記録状況の提出が求められる可能性もあります。

なお、厚生労働省の公式サイトには、「パン類の製造における食品衛生管理の手引書」があります。衛生管理計画や手順書などの書類作成時に参考にすることにより、実務に合わせた衛生管理を行える可能性があるため、パン屋を開業する人は確認しておきましょう。

営業許可の代わりとして営業届出が必要となる場合もある

パン屋の営業形態次第では、営業許可の代わりとして営業届出の提出が必要となる場合もあります。余計な時間を使ってしまうことも考えられるため、パン屋を開業したい人は営業届出が必要となる業種を確認しておきましょう。

【営業届出が必要となる業種の例】

業種名 具体例
冷凍・冷蔵倉庫業 既製品のパンを仕入れてネットでの冷凍販売を行う。
乳類販売業 パンの販売に加え、店舗での牛乳の冷蔵販売を行う。

食品を扱う業種は「営業許可業種」「営業届出業種」「許可も届出も不要な業種」に分類されます。営業届出業種に分類される業種の要件の中には、温度管理が必要となる包装食品の販売業に関する内容があるため、該当する場合は要件を満たしている必要があります。

営業届出と営業許可の違いは「施設基準要件がない」「有効期限がない」「取得手数料がかからない」といった点です。食品衛生責任者の設置要件は満たす必要があるため、営業届出を保健所に提出する場合は食品衛生責任者の資格を証明する書類を提出することになります。

なお、菓子製造業許可を取得していれば、冷凍・冷蔵倉庫業に関する届出は不要となる場合があります。想定しているパン屋の営業形態によっても届出の要否は異なるため、気になる人は開業予定地を管轄する保健所の担当者に確認することを検討してみましょう。

まとめ

パン屋を開業する場合は営業許可を取得することになりますが、必要となる営業許可は提供する料理や店舗の営業形態によっても異なります。想定しているパン屋の条件次第となるため、まずは取得する可能性がある営業許可を押さえておきましょう。

取得する可能性がある営業許可を押さえた人は、次は営業許可の要件を確認してみてください。営業許可を取得するには、所定の要件を満たしている必要があるため、パン屋を開業したい人は営業許可を取得するための要件を確認しておきましょう。

そして、営業許可の要件を確認した人は、最後に営業許可の申請の流れを確認してみてください。書類準備や日程調整など、時間がかかることも考えられるため、パン屋を開業したい人は営業許可の申請の流れを事前に把握しておきましょう。

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この記事の監修者

田原 広一(たはら こういち)

株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者

田原 広一(たはら こういち)

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。
平成24年8月以降 副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。
平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。
お客様の融資支援実績は、累計6,000件以上(2023年2月末現在)。
自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。

【書籍】
2021年10月発売 『独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎)

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