キッチンカーの開業を検討している人の中には、どういった許可が必要なのかを知りたい人もいますよね。また、許可を取得する手順を知りたい人もいるでしょう。
キッチンカーを開業するときは、「飲食店営業許可」「出店場所の出店許可」などが必要になります。とくに、飲食店営業許可の取得には手間と時間がかかる場合があるため、余裕を持って申請する必要があります。
この記事では、キッチンカーを開業するときに必要な許可を解説します。
キッチンカーの開業に必要な許可は飲食店営業許可
キッチンカーを開業するときは、飲食店営業許可を取得する必要があります。キッチンカーで食事を提供するときは、保健所から飲食店営業許可を受けることが、食品衛生法で定められているからです。
たとえば、東京都でキッチンカーを開業したいときは、東京都内の保健所で都内一円の飲食店営業許可を取得します。飲食店営業許可は取得した県内でしか有効でないため、千葉県や埼玉県などで出店したいときは、それぞれの保健所で飲食店営業許可を取得する必要があります。
なお、飲食店営業許可を受けるための審査基準は、保健所ごとに異なる可能性があります。飲食店営業許可を申請するときは、申請予定の保健所に事前相談をし、審査基準を確かめておきましょう。
飲食店営業許可を取得する手順
飲食店営業許可の手続きに不備があると、予定していた日にキッチンカーを開業できなくなるおそれがあります。そのため、キッチンカーを開業予定の人は、飲食店営業許可を取得する手順を把握しておきましょう。
【飲食店営業許可を取得する手順】
- 食品衛生責任者の資格を取得する
- 保健所に設備の相談をする
- 設備を考える
- 飲食店営業許可申請をする
- 仕込み場所を用意する
- 施設検査を受ける
なお、これは東京都で飲食店営業許可を取得する際の流れを参考にしています。保健所によっては、飲食店営業許可の申請手順が増える場合があるので、事前に申請を予定している保健所に申請の流れを問い合わせておくようにしましょう。
食品衛生責任者の資格を取得する
飲食店営業許可を取得するには食品衛生責任者の資格が必要です。飲食施設を開業するときは、食品衛生責任者を1人は配置しなくてはいけないことが、食品衛生法で定められているからです。
食品衛生責任者は食材や調理設備を適切に保管して衛生的に保ち、食中毒のような被害を防止する役割があります。キッチンカーの営業をするときは、常に1人は食品衛生責任者が常駐していなければいけません。
キッチンカーを1人で経営する場合は、開業者が食品衛生責任者を取得している必要があります。もし、2人や3人といった複数人で経営するときは、1人が食品衛生責任者を取得していれば、ほかの従業員は取得しなくても問題ありません。
ただし、仕込み場所を利用するときも食品衛生責任者が必要になる場合があります。シェアキッチンやレンタルキッチンを使用するときは、食品衛生責任者の資格を持っている人の利用しか認めない契約内容になっている場合もあるので、シェアキッチンやレンタルキッチンを利用したい人は注意が必要です。
保健所に設備の相談をする
飲食店営業許可を取得するときは、保健所に設備の相談をするようにしましょう。飲食店営業許可取得の条件は、地域の保健所ごとによって異なる場合があるからです。
たとえば、地域の保健所で飲食店営業許可の手続きを受け付けている窓口で、キッチンカーの開業をすることや、提供予定のメニューなどを相談します。飲食店営業許可のほかに必要な許可がある場合は、助言を貰うこともできます。
また、保健所に相談することにより、飲食店営業許可申請の手続きで今後必要になる書類や手続きの流れなどを知ることもできます。保健所の担当者には不明点を質問することができるため、その後の申請手続きを効率的に進めることが可能です。
なお、保健所によって満たさなければならない設備基準が異なる場合があります。千葉県で認められている設備が東京都では認められていない場合もあるので、複数の都道府県で飲食店営業許可を取得するときは、保健所ごとに設備基準を確認するようにしましょう。
設備を考える
飲食店営業許可を取得するときは、保健所に相談した内容を基にキッチンカーに搭載する設備を考えましょう。キッチンカーでは、満たしていなければいけない設備があります。
【キッチンカーが満たしているべき設計と設備】
作業場区画 |
調理スペースは運転席と完全に区切られている必要があります。 |
作業場 |
調理スペースの「天井」「床」「内壁」は耐水性に優れていて掃除がしやすく、密閉性にすぐれてほこりや排ガスなどの外部汚染が防げる設計である必要があります。 |
冷蔵設備 |
食品を安全に保管するため、冷蔵庫や冷凍庫などの設備が必要です。 |
原材料の保管設備 |
食材によって適切な保管ができるように、原材料ごとに保管できる設備が必要になります。 |
洗浄剤、殺虫剤等の保管設備 |
調理器具を洗うための洗浄剤や殺虫剤などを保管しておく棚なども必要です。薬剤が食品を汚染してしまわないように、食材に触れない場所で保管されている必要があります。 |
廃棄物容器 |
ゴミ箱も必要です。ゴミ箱は蓋つきで、汚液や汚臭が漏れない構造になっていなければいけません。 |
清掃用具等 |
箒や台布巾など、調理スペースの清掃に必要な道具と収納するためのスペースが必要です。 |
消毒薬 |
手指を消毒するためのアルコール消毒薬などが必要です。 |
洗浄設備 |
食材や調理器具、手指を洗浄するためにシンクや手洗い用水道などが必要です。水道設備は菌による汚染を防ぐため、ハンドルを操作する必要のない非接触水道である必要があります。 |
給排水設備 |
キッチンカー内で使用する水と使用後の水を貯めておくことのできるタンクが必要です。 |
これらの設備は全国の保健所で共通して満たしている必要があるものです。提供する料理によっては、食中毒を防ぐために追加で必要になる設備がある可能性があります。
また、提供する料理に合わせて給排水設備も適したものを選ぶ必要があります。給排水設備の容量によって行える調理工程数が決まっているため、給排水設備の容量が少ないと手間のかかるメニューは提供できない場合があります。
【給排水設備のタンク容量による違い】
40L |
40Lの給排水設備では、簡易的な調理しかできません。お弁当などすでに提供できる状態になっているものや冷凍品の加熱処理、ソフトクリームや自家製飲料などが販売できます。提供できるメニューは単1品目のみです。 |
80L |
80Lの給排水設備では、「切って焼く」など調理が2工程で完了する料理の提供が可能です。丼物や調理パン、トッピングが必要な調理などが可能で、複数品目の提供ができます。 |
200L |
200Lの給排水設備では、調理工程や提供できる料理に制限はありません。原則どのような料理でも提供することができるため、ピザやハンバーガーのような手間のかかるメニューの販売も可能です。複数品目の提供ができます。 |
なお、保健所によって満たさなければならない設備基準が異なる場合があります。東京都で認められている設備がほかの都道府県では認められていない場合もあるので、複数の都道府県で飲食店営業許可を取得するときは、保健所ごとに設備基準を確認するようにしましょう。
飲食店営業許可申請をする
飲食店営業許可を取得するときは、保健所に飲食店営業許可の申請をしましょう。飲食店営業許可の申請では準備した書類を提出し、実際にキッチンカーの制作に取り掛かっても問題がないかどうかを確認します。
たとえば、キッチンカーの設計図や平面図などの図面を提出します。実際に搭載する調理設備の配置を記載しておくことにより、キッチンカー作成後に修正が発生するおそれを防ぐことにもつながります。
また、設計図や平面図に不備があると、書類審査に通りません。キッチンカーの作成に取り掛かってしまっていると、改修作業が発生してしまう可能性があるので、キッチンカー作成は書類審査後が望ましいです。
なお、キッチンカーの設計図や平面図の書き方は保健所によって異なります。設計図や平面図の書式が決まっている場合もあれば、自由に書いていい場合もあるので、申請前は保健所に設計図や平面図の書式について確認しましょう。
仕込み場所を用意する
キッチンカーで飲食店営業許可を取得するときは、仕込み場所が必要になる場合があります。キッチンカーでは、原則として仕込み作業を行うことができないからです。
たとえば、キッチンカーでカレーを提供するときに、具材を切ったり、焼いたり、煮込んだりする作業が仕込み作業に該当します。給排水設備が40Lや80Lで、調理工程数に制限がある場合は仕込み場所が必要です。
また、仕込み場所として利用できるのは、飲食店の厨房やシェアキッチンのような保健所から営業許可を取得できている施設です。そのため、自宅を仕込み場所にすることはできません。
なお、キッチンカーの給排水設備の容量が200Lである場合は、キッチンカー内で仕込みを行うことができます。仕込み場所の準備が難しいときは、給排水設備の容量を増やし、キッチンカーで仕込みを行うことを検討してみてください。
施設検査を受ける
飲食店営業許可を取得するときは、保健所から施設検査を受けましょう。保健所に提出した設計図通りにキッチンカーが作られているかどうかが審査されるからです。
たとえば、調理設備や棚の取り付け位置、壁にカビが発生しにくい材質を使われているかなどが確認されます。実物のキッチンカーの衛生基準が、保健所の基準を満たしていれば飲食店営業許可を取得できます。
また、キッチンカーの施設検査は出店する地域の保健所に車両を持っていくことが求められます。遠方の地域にも出店したいときはキッチンカーを運ぶ手間がかかり、申請手続きに不備があると何度も往復しなくてはならない可能性があります。
なお、提出した設計図と異なるキッチンカーを作ってしまうと、飲食店営業許可を取得できない可能性があります。修正作業が発生すると費用もかさむことにつながるので、提出した設計図から変更を加えたいときは、都度保健所に確認を取るようにしましょう。
飲食店営業許可を申請するには費用がかかる
飲食店営業許可を取得するときは、申請手数料として費用がかかります。金額は都道府県やその地域によっても異なります。
飲食店営業許可を申請するときの保健所の指定は、仕込み場所の有無や自動車の保管場所などによっても異なります。その際、都道府県によって申請先の保健所の指定が異なる場合があります。
なお、飲食店営業許可の取得申請を行政書士に代行してもらうこともできます。事務所によって費用は異なるので、行政書士のような専門家を利用するときは相見積もりを取り、費用やサービス内容を検討するようにしましょう。
出店場所によっては出店許可が必要
キッチンカーを出店する場所によっては、出店許可を取得する必要があります。出店許可を取得しないと無断出店となり、土地や建物の所有者から法的に訴えられる可能性があるからです。
たとえば、ビジネス街に出店するためにビルの敷地の一角に出店したいときに、ビルの管理者や土地の所有者から出店許可が必要になります。他者の土地に無断で出店してしまうと、不法侵入や営業妨害などで訴えられる可能性があります。
キッチンカーを出店したい場所から許可を得るときは、原則として自身で建物や土地の所有者と交渉をしなければいけません。交渉では、出店の可否や出店する場合の出店料などについて話し合います。
ただし、自身で交渉するときは出店許可を得られない可能性があります。とくに、サービスエリアやショッピングモールなどでは、すでに競合する飲食店が存在する場合、キッチンカーの出店を控える傾向にあります。
なお、キッチンカーと出店場所をマッチングするサービスを利用する方法もあります。キッチンカーを呼びたい人の情報が集まっていて、個人で交渉を行うよりも出店許可が得やすい場合があるので、出店場所の交渉が不安な人は利用を検討してみてください。
路上に出店するときは道路使用許可を取得する
キッチンカーを路上に出店したいときは、道路使用許可を取得する必要があります。道路上に交通の妨げとなる可能性がある出店を行うには、道路使用許可が必要であることが道路交通法で定められているからです。
たとえば、歩道にキッチンカーを停めて出店するときには、道路使用許可が必要です。道路使用許可は、地域を管轄している警察署から取得しなければいけません。
なお、道路使用許可の申請に当たっては、道路使用許可申請書が必要です。道路の区間や見取り図がわかる添付書類と合わせて提出する必要があり、警察庁の公式サイトや地域の警察署の窓口で取得することができます。
ただし、状況によっては、道路使用許可が下りない場合があります。出店計画が交通妨害に該当すると判断されると受理されないため、出店地域の警察署に事前相談をするようにしましょう。
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