あなたの業種は、お客様の依頼を受けて何かを創る事業ですか?
であれば、お客様から「見積書をください」と頼まれることも多いのではないでしょうか。
今回の記事では、建築業やWeb制作などでよく利用される「見積書」の例文について解説します。
1.見積書はなぜ必要なのか?
①定額でない仕事の値段を決めるため
見積書とは、定額が決まっていない仕事を相手から頼まれた時に提示する書類です。世の中の仕事はルーチン(定型)とルーチンではない仕事に分けることができます。ルーチンの方が仕事の成果としての報酬は計算しやすく、例えば「1枚の紙を半分に折る=1枚1円」、などのように単純計算できます。この場合、紙を500枚折ったら報酬は1円×50枚で500円。単純計算できます。しかし、ルーチンではない方の仕事はそうではありません。計算が複雑なので、見積書が必要になってくるのです。
②高額な仕事の明細が分かり、相手に信頼性を与えるため
飲食店を例にするとよくわかります。マクドナルドやケンタッキーなどのチェーン店では店内のメニューに「ハンバーガー 100円」のように商品名と価格が書かれています。けれども、銀座の割烹料理店がさばく時価の魚であればどうでしょうか。日によって値段は変わりますし、調理方法でも値段を買えるので「値段は直接聞いてください」となるのです。
世の中にはこの見積書が必要な仕事がたくさんあります。よく知られている仕事は建築・不動産業界の仕事です。ビルや家を建てるのは立地が大きく影響しますし、使う資材でも家屋の価格は変動します。国内や海外の手軽なパッケージツアーであれば見積書は特に不要ですが、団体旅行や法人旅行や高額な手配旅行の場合、見積書はよく使われています。
見積書を見れば、以下のように行ごとに明細が記載されています。
<海外旅行の見積例>
航空券代金 ¥49,000 数量2 小計98,000
航空保険料・燃油サーチャージ等 ¥4,600 数量2 小計9,200
成田空港施設使用料 ¥2,090 数量2 小計4,180
ホテル代金 ¥65,000 一室 小計65,000
合計 ¥176,800
この見積を見れば、176,800円という代金に何と何が含まれているのかを正確に理解することができます。顧客が正確に理解できるということは、事業者にとっても信頼性を高めるというメリットがあります。信頼性は、業者と顧客間のトラブル防止にも効力を発揮します。
2.建築業の見積書の書き方
①見積書は表紙・内訳書・条件書の3つの項目に分けられる
建築業での見積書はありとあらゆる見積書の中で最も複雑です。先日、筆者の居住するマンションで配管工事を行うことになり、見積書が配られましたがA4サイズで20ページほどある分厚い内容でした。簡易な工事(~数十万円程度)では表紙・条件書などは必ず必要ではなく一枚にまとめて記入できます。しかし、工事の規模が大きい場合は見積書に掲載すべき事項も多くなるため表紙・内訳書・条件書の3部構成で作成します。
(1)表紙
建築業での見積書には、主に以下7つの項目を網羅します。場合によってはさらに追加で記載すべき項目が出てくることもあります。
- 1.タイトル:御見積書、でOKです
- 2.宛名:㈱にせず株式会社、と正式名称で記入します
- 3.担当者名:分かっている場合はその方の所属する部署名と合わせて記入します
- 4.日付:忘れず記入します。顧客が見積有効期限の目安を知る上でも重要です
- 5.金額:改ざんされないように也や横棒一本を入れましょう。消費税の内税、外税の違いも明記します
- 6.工事概要:工事の件名、工事の場所、工事期間、支払い方法、工事種別を記入します
- 7.工事業者名:この見積書を出す工事業者名と問合せ先を記入します
紙の向きは横でも縦でも構いませんが、表紙を入れる場合は横向き・1枚で完結する場合は縦書きになる傾向にあります。
(2)内訳書
内訳書には基本的には①工事の名称②単位③金額の3点を記入します。仮説工事1式で30万円、といった具合にです。この内訳書はできるだけ細かく、単位も正確に書いた方が工事事業者の信頼性は上がります。
以下の例では単位を「式」だけにしましたが、式以外では「本」も使われています。実際に使う資材の詳細が分かる場合は、mや㎡、組といった単位も使うことになるでしょう。
内訳書ではそれぞれの工事が本体工事にあたるのか付帯工事にあたるのかを明確にします。付帯工事は本体工事以外に必要な工事であり、解体工事や屋外給排水工事、屋外ガス・電気工事・造成・整地工事などが該当します。
上記の画像では表紙の額と内訳書の金額は異なっておりますが、見積書の表紙に書かれている金額と内訳書の合計の数字が同じ(イコール)であることが大前提です。
(3)条件書
条件書に関しては、総合工事業者および専門工事業者から構成される「建設生産システム合理化推進協議会」という組織が「工事見積条件をクリアにしよう」という意図で「施工条件・範囲リスト」(標準モデル)を掲げています。
この施工条件・範囲リスト(標準モデル)を参考にすると、建設工事の見積書で書かれるべき条件書の内容は以下7点で構成されています。
- 1.工事場所
- 2.工事概要
- 3.予定後期
- 4.設計図書
- 5.工法
- 6.支給品の有無
- 7.上記以外の施工条件・範囲
総合工事業者・ 専門工事業者間における 工事見積条件の明確化について「 施工条件・ 範囲リ スト 」 ( 標準モデル)の作成について
※上記URLをクリックすると、一般社団法人建設業振興基金の作成したPDFへリンクします
3.Web制作の見積書の書き方
Web制作の需要が増えたため、Web制作での見積書を書く方も非常に増えています。単純にランディングページを一つ制作する、という場合では見積書はさほど複雑ではありません。しかし、サイトを1つまるまる制作するとなると、しっかりした見積書を作成する必要があります。以下の例では、Webサイト制作費の内訳としてトップページデザイン、HTML・CSS制作・フォーマットページ制作・WordPress組み込み、の4つに分けて見積りました。
Webサイト制作費=216,000円、とだけ書かれている見積書より、各作業ごとの単価と作業内容が書かれている見積書の方がユーザーフレンドリーです。建築業での場合と同じように、Web制作でも見積書というタイトルと見積有効期限・Web制作業者の名前と連絡先、そして作業毎の工賃(品番・品名)と数量・単価を記入します。これだけでも十分見積書としての機能は果たしているのですが、見積を渡す相手がWebにあまり詳しくない場合はこれに補足資料を付け加えると良いでしょう。
例えば、パワーポイントで「トップーページデザインとは」「HTML・CSS制作とは」のような見出しをつけ、実際に制作した場合のイメージ画像をつけて参考資料とするのです。
例えば、こんな感じです。題して「見積参考資料」。
トップページデザインって何よ?という方にも、こういう感じです!と実際に画像をみせた方が話は早いですよね。
PCを見ながら説明してもいいのですが、こんな感じで親切に添付資料を作れば、仕事を依頼する側もイメージしやすくなり商談もうまく進むことでしょう。
4.IT~システム開発の見積書の書き方
システム開発の見積書の場合は「工数」と言う考え方があります。工数とは、一つの作業を完了するまでにどれぐらいの人材と時間がかかるかを計算し、その総量を提示することです。例えば、メーラーシステムを構築するために一人のプログラマーが2日間計20時間かかるとしましょう。プログラマーの時給が2,000円で合った場合、その際の工数は2,000円×20ですので40,000円で2日間となります。会社の場合は、この40,000円に会社が得るべき利益などを乗っけて、見積書を作成すればいいのです。
<基本の工数の求め方>
ある作業にかかる一人当たりの作業時間×ある作業をする一人あたりの時給=ある作業に対する工数
工数を見積書に記載するとごちゃごちゃしますので省きますが、商談の際に見積額の詳細を説明する際に取引先に電卓をたたきながら説明すると良いでしょう。工数を適当に見積もってしますと、納期の面で苦労します。ITのシステム開発ではたいてい相見積もりを取られています。「この数字はどうして?」「納期もう少し早まらない?」と相手からいろいろ突っ込まれる可能性もあります。きちんとした根拠をいつでも説明できるよう準備しておきましょう。
ITのシステム開発の見積項目は、システム機能定義・画面レイアウト・デザイン・管理システム実装・データ移管作業・テスト・保守などがあります。
まとめ
見積書は見積書でも、頂く金額が高くなれば高くなるほど丁寧でボリュームのある見積書を作成することになるでしょう。
あくまで分かりやすく、説明しやすいように工夫をして、受注につながるように見積書は作成します。
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